枯れた花
毎日仕事、それも残業もあって帰るのは深夜三時過ぎ。
家ではご飯、お風呂を済ませたら眠るだけの毎日。
休みは週に一日。
その休みの日まで持ち帰った仕事で深夜まで仕事。
誰から見ても私の働き先はブラック会社。
周りからは、早く新しいところを見つけた方がいいと言われて心配され、最初の頃は私も他の会社に面接を受けに行ったりしていた。
でも、日々の疲れのせいで暗い印象と見た目。
通知の結果は不採用。
その後、何社もの面接を受けるも不採用。
目の下のクマも消して、なるべくハキハキと答えていたのに全て落ちた私は、もう今の仕事しかないんだと諦めた。
今日も仕事帰りの深夜、帰り道にあるコンビニに寄りおにぎり二つとお茶を購入。
食生活もしっかりしたいけど、ゆっくり食べてる時間なんて私にはない。
明日も仕事なんだから、少ない睡眠時間を更に減らすわけにはいかない。
早く帰ろうとマンションの近くまで着いたとき、ゴミ捨て場に植木鉢があることに気づく。
ゴミの日でもないし、この鉢以外のゴミもない。
よく見ると花は枯れかかっていたけど、これならまだ助かるかもしれないと思った私はその鉢を家へと持ち帰る。
働く前は花を育てていたことがあったから、まだ生きてる花をそのままには出来ず持ってきてしまった。
一体なんの花だろうか。
今は枯れてしまっているし、花も蕾のようでこれではまだわからない。
その日から私の日常生活の中に、花に水をあげるという仕事が増えた。
花には人の心を癒やす力があるというが、こうして枯れた花の世話をしていると何故か心が安らぐ。
「一体あなたは何の花なのかしらね」
久しぶりに笑みを浮かべ呟くと、私は布団に入り眠る。
そんな日々を繰り返すこと数週間。
枯れていた花は嘘のように元気になり、葉や茎は緑色に変わっていた。
でも、肝心の花だけはヘタリと枯れたまま。
ここまで元気になったんだから、きっと花も大丈夫と信じて世話を続けた。
「先輩、最近どうかしたんですか?」
「え? なんで?」
「いや、何か雰囲気が明るいというか」
花を育て始めてから、周りに変わったと言われることが多くなった。
自分ではよくわからないけど、確かに花のお陰で癒やされて、顔を洗うときに気づいたけどクマも消えていた。
今の私なら面接を受けられる気がして、数日後、私は面接を行くことが決まった。
家を出る前に花を見ると、昨日まで枯れていた花は蕾が膨らみ咲きそうな状態。
「私、頑張ってくるから、あなたも頑張って咲かせてね」
そう告げて向かった面接の結果は数日後に来て、私は採用された。
喜んでいた私の目に映ったのは、窓際に置かれた鉢。
蕾だった花は窓から入る日差しでキラキラと輝きながら花ひらいていた。
その花はとっても綺麗な青い花。
でも、咲かせた瞬間花びらはヒラヒラと散り、茎や葉はみるみる色を変えて枯れてしまった。
結局何の花かもわからず、不思議なことにあの鉢は翌日跡形もなく消えていた。
それから私はというと、ブラック会社を辞めることができ、今は楽しい毎日を過ごしている。
「朝の水やりっと。じゃあ、行ってくるね」
窓際には、新しく購入した花の植木鉢を置き、私は今も花を育てている。
——数日後のとあるゴミ捨て場。
一人の疲れきった男が見つけたのは枯れた花の鉢。
「花か……」
仕事漬けで疲れた男の目には、この花がまるで自分の様に思えた。
ブラック会社で疲れた自分はこの花と同じ様に枯れて終わる人間なんだと。
でも、もしかしたら、まだ生きられるかもしれない。
男は花を家へと持ち帰った。
持ち上げた鉢からヒラヒラと何かが落ちるが男は気付かず行ってしまう。
地面に落ちた、青い花びらに——。
《完》
家ではご飯、お風呂を済ませたら眠るだけの毎日。
休みは週に一日。
その休みの日まで持ち帰った仕事で深夜まで仕事。
誰から見ても私の働き先はブラック会社。
周りからは、早く新しいところを見つけた方がいいと言われて心配され、最初の頃は私も他の会社に面接を受けに行ったりしていた。
でも、日々の疲れのせいで暗い印象と見た目。
通知の結果は不採用。
その後、何社もの面接を受けるも不採用。
目の下のクマも消して、なるべくハキハキと答えていたのに全て落ちた私は、もう今の仕事しかないんだと諦めた。
今日も仕事帰りの深夜、帰り道にあるコンビニに寄りおにぎり二つとお茶を購入。
食生活もしっかりしたいけど、ゆっくり食べてる時間なんて私にはない。
明日も仕事なんだから、少ない睡眠時間を更に減らすわけにはいかない。
早く帰ろうとマンションの近くまで着いたとき、ゴミ捨て場に植木鉢があることに気づく。
ゴミの日でもないし、この鉢以外のゴミもない。
よく見ると花は枯れかかっていたけど、これならまだ助かるかもしれないと思った私はその鉢を家へと持ち帰る。
働く前は花を育てていたことがあったから、まだ生きてる花をそのままには出来ず持ってきてしまった。
一体なんの花だろうか。
今は枯れてしまっているし、花も蕾のようでこれではまだわからない。
その日から私の日常生活の中に、花に水をあげるという仕事が増えた。
花には人の心を癒やす力があるというが、こうして枯れた花の世話をしていると何故か心が安らぐ。
「一体あなたは何の花なのかしらね」
久しぶりに笑みを浮かべ呟くと、私は布団に入り眠る。
そんな日々を繰り返すこと数週間。
枯れていた花は嘘のように元気になり、葉や茎は緑色に変わっていた。
でも、肝心の花だけはヘタリと枯れたまま。
ここまで元気になったんだから、きっと花も大丈夫と信じて世話を続けた。
「先輩、最近どうかしたんですか?」
「え? なんで?」
「いや、何か雰囲気が明るいというか」
花を育て始めてから、周りに変わったと言われることが多くなった。
自分ではよくわからないけど、確かに花のお陰で癒やされて、顔を洗うときに気づいたけどクマも消えていた。
今の私なら面接を受けられる気がして、数日後、私は面接を行くことが決まった。
家を出る前に花を見ると、昨日まで枯れていた花は蕾が膨らみ咲きそうな状態。
「私、頑張ってくるから、あなたも頑張って咲かせてね」
そう告げて向かった面接の結果は数日後に来て、私は採用された。
喜んでいた私の目に映ったのは、窓際に置かれた鉢。
蕾だった花は窓から入る日差しでキラキラと輝きながら花ひらいていた。
その花はとっても綺麗な青い花。
でも、咲かせた瞬間花びらはヒラヒラと散り、茎や葉はみるみる色を変えて枯れてしまった。
結局何の花かもわからず、不思議なことにあの鉢は翌日跡形もなく消えていた。
それから私はというと、ブラック会社を辞めることができ、今は楽しい毎日を過ごしている。
「朝の水やりっと。じゃあ、行ってくるね」
窓際には、新しく購入した花の植木鉢を置き、私は今も花を育てている。
——数日後のとあるゴミ捨て場。
一人の疲れきった男が見つけたのは枯れた花の鉢。
「花か……」
仕事漬けで疲れた男の目には、この花がまるで自分の様に思えた。
ブラック会社で疲れた自分はこの花と同じ様に枯れて終わる人間なんだと。
でも、もしかしたら、まだ生きられるかもしれない。
男は花を家へと持ち帰った。
持ち上げた鉢からヒラヒラと何かが落ちるが男は気付かず行ってしまう。
地面に落ちた、青い花びらに——。
《完》
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