その花ひらく時
ただの町娘が王様に恋をする。
決して叶うことのない恋。
それでもせめて、王様に少しでも近づきたいと思った。
それから六年後、私は王様に気に入られ世話係となった。
王様の側にいることは誰よりも多く、何より信頼されていることが嬉しい。
「紅茶をお持ちいたしました」
「ああ、ありがとう」
王様は、私のような者にもお礼を言ってくれる。
そんな優しい王様のことを知れば知るほど想いは募っていく。
「王様、なぜあの様な娘を世話係に選ばれたのですか?」
王様の部屋をノックしようとしたとき、中から聞こえてきた女性の声に手を止める。
この声は間違いなく、最近王様にちょっかいを出している者の声。
一体何故、彼女が王様の部屋にいるのかと心に黒い何かが渦巻く。
でも気にする必要はない。
私も彼女も元は町娘、どんなに想おうとも叶わない恋なのだから。
彼女も王様に想いを寄せているのは知っている。
王様から相手にされていないことも。
相手にされない彼女より、世話係を任された私の方のが王様に思われている。
いくらこの恋が叶わなくても、この特別があるのなら私はそれだけで充分だった。
なのに、部屋の中から聞こえた言葉に私は言葉を失い頭が真っ白になった。
そして、心にあった黒い何かが広がっていく――。
「おお、どうかしたのか?」
その夜、部屋に訪れた私を、王様は迎え入れてくれる。
でもまだ王様は気づいていない、私の後ろ手に持たれた物に。
でも仕方がない。
王様のあの言葉を聞いてしまったから。
『私に想いを寄せている者は、何でも言うことを利いて便利だからな』
思われなくてもいいと思っていた。
でも、私の気持ちを踏み躙り、人の心を物のように扱う王様が許せない。
心にあった黒い花はひらき、私は歪んだ笑みを浮かべ背に隠していた刃物を振り上げる。
《完》
決して叶うことのない恋。
それでもせめて、王様に少しでも近づきたいと思った。
それから六年後、私は王様に気に入られ世話係となった。
王様の側にいることは誰よりも多く、何より信頼されていることが嬉しい。
「紅茶をお持ちいたしました」
「ああ、ありがとう」
王様は、私のような者にもお礼を言ってくれる。
そんな優しい王様のことを知れば知るほど想いは募っていく。
「王様、なぜあの様な娘を世話係に選ばれたのですか?」
王様の部屋をノックしようとしたとき、中から聞こえてきた女性の声に手を止める。
この声は間違いなく、最近王様にちょっかいを出している者の声。
一体何故、彼女が王様の部屋にいるのかと心に黒い何かが渦巻く。
でも気にする必要はない。
私も彼女も元は町娘、どんなに想おうとも叶わない恋なのだから。
彼女も王様に想いを寄せているのは知っている。
王様から相手にされていないことも。
相手にされない彼女より、世話係を任された私の方のが王様に思われている。
いくらこの恋が叶わなくても、この特別があるのなら私はそれだけで充分だった。
なのに、部屋の中から聞こえた言葉に私は言葉を失い頭が真っ白になった。
そして、心にあった黒い何かが広がっていく――。
「おお、どうかしたのか?」
その夜、部屋に訪れた私を、王様は迎え入れてくれる。
でもまだ王様は気づいていない、私の後ろ手に持たれた物に。
でも仕方がない。
王様のあの言葉を聞いてしまったから。
『私に想いを寄せている者は、何でも言うことを利いて便利だからな』
思われなくてもいいと思っていた。
でも、私の気持ちを踏み躙り、人の心を物のように扱う王様が許せない。
心にあった黒い花はひらき、私は歪んだ笑みを浮かべ背に隠していた刃物を振り上げる。
《完》
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