真夜中の来訪者
ある日の真夜中、ベッドでスヤスヤと寝息をたてていると、どこからか話し声が聞こえ目を覚ました。
枕元に置いていたスマホで時間を確認する。
時刻は深夜2時。
先程聞こえた話し声は気のせいだったのか、部屋は静寂に包まれていた。
「気のせいか」
まだ起きるには早いため、もう一度眠りにつこうと瞼を閉じる。
「お前のせいで、危うく見つかるところだっただろうが」
「え、ボクのせいですか」
今度はハッキリとした声に「誰!?」と大きな声を出すと、ガタガタと音がし、再び部屋に静けさが戻る。
「なんだ、気のせいか」
一言呟き寝ようとしたその瞬間、ほっと言う安堵の溜息を耳にし、私は直ぐ様起き上がると部屋の電気をつけた。
突然ついた明かりに驚いた何かは、天井から床へと落下する。
「おバカさんね。あれだけ声や音がして、気のせいなわけないじゃない」
「痛いよー」
「くッ、人間のくせに俺を騙したのか!」
「何言ってんのよ。今からアンタ達を警察に──」
突き出してやると言いかけたが、床に倒れる二人を目にし、言葉は飲み込まれた。
一人は白い翼、もう一人は黒い翼を背中からはやしており、私はその羽を引っ張り出す。
「痛い、痛いですよ!」
「な、何しやがる! いてーだろーが」
「何が痛いよ。こんな羽なんてつけちゃって。この変質者」
グイグイ引っ張るものの羽は取れず、服に接着剤でくっつけているのだろうかと思ったその一瞬の隙をつき、黒い羽の男が私の両腕を掴み床へ押し倒す。
びくともしない力に恐怖を感じていると、男はとんでもないことを口にする。
「えーと、もう一度お願い」
「だから、俺は悪魔でアイツは天使だっつってんだよ」
ヒュッと私の上から退くと、男の全身を羽が包み込むみ、羽が広がった次の瞬間、男の姿は一瞬で人間ではない姿に変わる。
そして気づかないうちに、もう一人の男の姿も変わっていた。
「なるほど……」
「わかってくれたんだね」
「ようやくわかったか。貴様が誰を相手にしているのか」
ニコニコと笑みを浮かべる白い羽の男。
腕を組、偉そうにしている黒い羽の男。
そんな二人にかけた私の第一声の言葉に、今度は二人が驚く。
「なるほど、イリュージョンね」
「何でそうなるんだよ!!」
「ほら、よく見て。ボク達の背中にはちゃんと羽がはえてるよ」
白い羽の男が背を向けたため、私はその羽を触り付け根を見る。
すると驚くことに、その羽はその肌からしっかりとはえていた。
「な、なんてことなの……」
「ようやくわかってもらえた」
「全く手間のかかる女だな」
ガクガクと震える私に、白い羽の男は「怖がらなくても大丈夫だよ」と優しく声をかける。
だが、黒い羽の男は逆に「もっと怖がりやがれ」と笑い出す。
そんな二人を前にゆらゆらと立ち上がると、私は黒い羽の男に近づき羽を観察し始めた。
「凄いわ! こんなコスプレ見たことがない」
「はい?」
「はっ?」
一体羽は何で作られているのか、どうやって人間の皮膚にくっつけているかなどを質問攻めにしていると、その迫力に二人は窓から飛び去ってしまった。
「え? もしかして、本当に悪魔と天使だった、とか?」
まさかね、なんて笑いながら二度寝をした翌日。
目を覚ました私の顔はひきつっていた。
何故なら、床には黒と白の羽が一枚ずつ落ちていたから。
「夢じゃ、なかったんだ……」
真夜中の来訪者は、本当に悪魔と天使だったのか。
もし本当だとしたら、一体何をしに現れたのか、それを知るすべは今の私にはない。
《完》
枕元に置いていたスマホで時間を確認する。
時刻は深夜2時。
先程聞こえた話し声は気のせいだったのか、部屋は静寂に包まれていた。
「気のせいか」
まだ起きるには早いため、もう一度眠りにつこうと瞼を閉じる。
「お前のせいで、危うく見つかるところだっただろうが」
「え、ボクのせいですか」
今度はハッキリとした声に「誰!?」と大きな声を出すと、ガタガタと音がし、再び部屋に静けさが戻る。
「なんだ、気のせいか」
一言呟き寝ようとしたその瞬間、ほっと言う安堵の溜息を耳にし、私は直ぐ様起き上がると部屋の電気をつけた。
突然ついた明かりに驚いた何かは、天井から床へと落下する。
「おバカさんね。あれだけ声や音がして、気のせいなわけないじゃない」
「痛いよー」
「くッ、人間のくせに俺を騙したのか!」
「何言ってんのよ。今からアンタ達を警察に──」
突き出してやると言いかけたが、床に倒れる二人を目にし、言葉は飲み込まれた。
一人は白い翼、もう一人は黒い翼を背中からはやしており、私はその羽を引っ張り出す。
「痛い、痛いですよ!」
「な、何しやがる! いてーだろーが」
「何が痛いよ。こんな羽なんてつけちゃって。この変質者」
グイグイ引っ張るものの羽は取れず、服に接着剤でくっつけているのだろうかと思ったその一瞬の隙をつき、黒い羽の男が私の両腕を掴み床へ押し倒す。
びくともしない力に恐怖を感じていると、男はとんでもないことを口にする。
「えーと、もう一度お願い」
「だから、俺は悪魔でアイツは天使だっつってんだよ」
ヒュッと私の上から退くと、男の全身を羽が包み込むみ、羽が広がった次の瞬間、男の姿は一瞬で人間ではない姿に変わる。
そして気づかないうちに、もう一人の男の姿も変わっていた。
「なるほど……」
「わかってくれたんだね」
「ようやくわかったか。貴様が誰を相手にしているのか」
ニコニコと笑みを浮かべる白い羽の男。
腕を組、偉そうにしている黒い羽の男。
そんな二人にかけた私の第一声の言葉に、今度は二人が驚く。
「なるほど、イリュージョンね」
「何でそうなるんだよ!!」
「ほら、よく見て。ボク達の背中にはちゃんと羽がはえてるよ」
白い羽の男が背を向けたため、私はその羽を触り付け根を見る。
すると驚くことに、その羽はその肌からしっかりとはえていた。
「な、なんてことなの……」
「ようやくわかってもらえた」
「全く手間のかかる女だな」
ガクガクと震える私に、白い羽の男は「怖がらなくても大丈夫だよ」と優しく声をかける。
だが、黒い羽の男は逆に「もっと怖がりやがれ」と笑い出す。
そんな二人を前にゆらゆらと立ち上がると、私は黒い羽の男に近づき羽を観察し始めた。
「凄いわ! こんなコスプレ見たことがない」
「はい?」
「はっ?」
一体羽は何で作られているのか、どうやって人間の皮膚にくっつけているかなどを質問攻めにしていると、その迫力に二人は窓から飛び去ってしまった。
「え? もしかして、本当に悪魔と天使だった、とか?」
まさかね、なんて笑いながら二度寝をした翌日。
目を覚ました私の顔はひきつっていた。
何故なら、床には黒と白の羽が一枚ずつ落ちていたから。
「夢じゃ、なかったんだ……」
真夜中の来訪者は、本当に悪魔と天使だったのか。
もし本当だとしたら、一体何をしに現れたのか、それを知るすべは今の私にはない。
《完》
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