お盆にまたね
お盆、私は家族と一緒におばあちゃんの家に来ていた。
田舎だから何もなくて、近くには畑ばかり。
お店もなければ他の家すらも離れたところにポツンポツンとあるだけ。
だから来たくなかったのに、お母さん達が無理矢理連れてくるから。
お盆だからお墓参りしなさいって、お母さん達だけ行けばいいのに。
もう五年生なんだから、数日一人だって留守番もできる。
こんなとこ来たってやることなんてないよ。
「ほら、お墓参りに行くわよ」
「えー、暑いよ」
「帽子をかぶれば大丈夫よ」
おばあちゃんの家に荷物を置くと、私はお母さんに帽子を被せられ皆でお墓に向かう。
この辺は道と言う言葉が当てはまらないほど足場が悪い為、車ではなく徒歩。
帽子をかぶったところで全く意味がなく、私は汗だくになりながら文句を言っていた。
おばあちゃんはもうお墓参りに行ったらしく、家で素麺を準備して待っていてくれるらしい。
早く冷たいそうめんと麦茶が飲みたい。
「喉乾いたー」
「はい、お茶」
「これ来るときに買ったやつじゃん。この暑さでホットになってるよ」
ブーブー言ってたら、水分はとらないと脱水症状になるからって、結局温かいお茶を飲まされ更に暑くなる。
これじゃあ脱水症状の前に熱中症になりそう。
それからしばらく歩いてお墓につくと、線香をあげて墓石の前で手を合せた。
掃除やお花はおばあちゃんがやってくれていたからこれでお終い。
あとはそうめんが待つ家に帰るだけ、と思いきや、親戚の人がやってきてお母さん達と話し始めた。
こうなると、大人の会話は長くなることを知っているから、私は先に帰ることにした。
またこの暑い中帰るのは考えるだけで気が遠くなるが、家でそうめんと麦茶が待っていると思うと私の足は早足で進み出す。
「暑い! 暑い暑い暑い暑い暑い!!」
気温に怒っても仕方ないのに叫んでいると、更に暑くなった。
このまま溶けてしまうんじゃないかと思っていたとき、私の名前を呼ぶ声が聞こえ視線を向ける。
そこにいたのはおじいちゃん。
この場所は苦手だけど、おじいちゃんはいつも私に優しいから大好き。
だから毎年ここに来る。
手招きをするおじいちゃんの元へ行くと、そこは木陰になっていた。
「んー、気持ちい」
草の上で寝転がると、少しの風が吹く。
おじいちゃんはいつも私が退屈にしていると、田舎ならではのことを色々教えてくれる。
こんな風に草の上に寝転ぶなんてここじゃなきゃできない。
心地いい風が眠気を誘い、私は瞼を閉じた。
「なさ……お……起きなさい!」
バッと起き上がると、そこにはお父さんとお母さんの姿。
どうやらすっかり寝てしまったみたい。
「まったく、先に帰るって言っておいてこんなところで眠って」
「だって暑かったから仕方ないじゃん」
私はお母さん達と一緒におばあちゃんの待つ家へと帰った。
でもそこにおじいちゃんの姿はなくて、部屋にある仏壇を見て思い出した。
おじいちゃんは去年、亡くなったんだ。
そう、だから今年は来る気になれなかった。
だって、毎年迎えてくれたおじいちゃんが今年はいないから。
お葬式にも行ったけど、おじいちゃんがいない現実を私は見たくなかった。
でも、おじいちゃんは会いに来てくれた。
私は仏壇の前で手を合わせると、また来年も会いに来てねと心で呟く。
《完》
田舎だから何もなくて、近くには畑ばかり。
お店もなければ他の家すらも離れたところにポツンポツンとあるだけ。
だから来たくなかったのに、お母さん達が無理矢理連れてくるから。
お盆だからお墓参りしなさいって、お母さん達だけ行けばいいのに。
もう五年生なんだから、数日一人だって留守番もできる。
こんなとこ来たってやることなんてないよ。
「ほら、お墓参りに行くわよ」
「えー、暑いよ」
「帽子をかぶれば大丈夫よ」
おばあちゃんの家に荷物を置くと、私はお母さんに帽子を被せられ皆でお墓に向かう。
この辺は道と言う言葉が当てはまらないほど足場が悪い為、車ではなく徒歩。
帽子をかぶったところで全く意味がなく、私は汗だくになりながら文句を言っていた。
おばあちゃんはもうお墓参りに行ったらしく、家で素麺を準備して待っていてくれるらしい。
早く冷たいそうめんと麦茶が飲みたい。
「喉乾いたー」
「はい、お茶」
「これ来るときに買ったやつじゃん。この暑さでホットになってるよ」
ブーブー言ってたら、水分はとらないと脱水症状になるからって、結局温かいお茶を飲まされ更に暑くなる。
これじゃあ脱水症状の前に熱中症になりそう。
それからしばらく歩いてお墓につくと、線香をあげて墓石の前で手を合せた。
掃除やお花はおばあちゃんがやってくれていたからこれでお終い。
あとはそうめんが待つ家に帰るだけ、と思いきや、親戚の人がやってきてお母さん達と話し始めた。
こうなると、大人の会話は長くなることを知っているから、私は先に帰ることにした。
またこの暑い中帰るのは考えるだけで気が遠くなるが、家でそうめんと麦茶が待っていると思うと私の足は早足で進み出す。
「暑い! 暑い暑い暑い暑い暑い!!」
気温に怒っても仕方ないのに叫んでいると、更に暑くなった。
このまま溶けてしまうんじゃないかと思っていたとき、私の名前を呼ぶ声が聞こえ視線を向ける。
そこにいたのはおじいちゃん。
この場所は苦手だけど、おじいちゃんはいつも私に優しいから大好き。
だから毎年ここに来る。
手招きをするおじいちゃんの元へ行くと、そこは木陰になっていた。
「んー、気持ちい」
草の上で寝転がると、少しの風が吹く。
おじいちゃんはいつも私が退屈にしていると、田舎ならではのことを色々教えてくれる。
こんな風に草の上に寝転ぶなんてここじゃなきゃできない。
心地いい風が眠気を誘い、私は瞼を閉じた。
「なさ……お……起きなさい!」
バッと起き上がると、そこにはお父さんとお母さんの姿。
どうやらすっかり寝てしまったみたい。
「まったく、先に帰るって言っておいてこんなところで眠って」
「だって暑かったから仕方ないじゃん」
私はお母さん達と一緒におばあちゃんの待つ家へと帰った。
でもそこにおじいちゃんの姿はなくて、部屋にある仏壇を見て思い出した。
おじいちゃんは去年、亡くなったんだ。
そう、だから今年は来る気になれなかった。
だって、毎年迎えてくれたおじいちゃんが今年はいないから。
お葬式にも行ったけど、おじいちゃんがいない現実を私は見たくなかった。
でも、おじいちゃんは会いに来てくれた。
私は仏壇の前で手を合わせると、また来年も会いに来てねと心で呟く。
《完》
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