妖精の庭

 私はお花が大好きで、屋敷の庭では沢山の花を育てている。
 そんな私が思ったことは一つ。
 何故お花には色がないのか。

 花はモノクロで、どのお花も同じに見えてしまうから、人は目にもとめない。

 もし華やかな色がついていたとしたら、人はきっと足を止めてくれるかもしれないのに。


 私は自分の育てたお花を見ながら庭を歩く。
 そしてあることに気づく。
 色がないなら、自分で色をつけてしまえばいいのだと。

 屋敷の中から絵の具を持ってくると、私は庭をキャンバスに見立て色を塗る。
 このお花には真っ赤な花びら。
 このお花は晴れた清々しい空の様な青色。

 沢山の絵の具を使い、何日もかけて全てのお花に色を付けた。


 使用人達はその美しい光景に目を奪われ、屋敷の外からその美しい庭を目にした者は足を止めた。

 今までモノクロだったお花は美しく色づき、近づく蝶が更にその美しさを引き立たせる。



「お嬢様、とてもお美しい庭になりましたね」

「いいえ、違うわ。お花は最初から美しかったのよ」



 誰も気づかなかっただけで、本当はこんなにも美しかった。

 笑っているように見えるそのお花の庭は、いつしかフェアリー庭園と呼ばれるようになり、その花を育てる私を誰かが妖精だといった。


《完》
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