続くから

 私のご先祖様は、あの有名な明智あけち 光秀みつひでだと亡くなったおじいさんに聞かされていた。

 そして私はその事をずっと前から知っていた。
 何故なら、私の記憶があるときから側には光秀がいたから。

 小さい頃の私に光秀は「私の事は誰にも話してはいけませんよ」と言った。
 だから私は誰にも話さなかったのだが、大きくなるにつれて、光秀が言った言葉の糸を理解した。

 みんなには見えない光秀の事を話せば、私が気味悪がられたりいじめられたりするかもしれない。
 だから話しちゃいけないなんて言ったんだ。

 今の私は中学生で、おじいさんが亡くなって丁度一年。
 私はお墓の前で手を合わせていた。



「あのおじいさんは私の事を伝えてくれた。前の代の者も、その前の者も……」

「私も光秀のこと伝えていくよ。だから、光秀はいなくなんてならないよ」



 光秀のことを伝える者がいなくなったとき、光秀自身もこの世から消えてしまう。

 伝えたからといって、光秀を見ることができるとは限らない。
 実際おじいさんには見えなかった。

 でもいつか、また私みたいな人は未来に現れる。

 私が大人になって結婚して子供ができたら、光秀がご先祖様だと伝える。
 そしてその子もまた次へと繋いでいく。

 光秀はみんなの中で生き続ける。
 この先もずっと。


 100年後──。

 年季の入った家の中で、ドタバタと駆け回る足音が響く。
 光秀を呼ぶ女の子の声が足音と共に近付いてくる。


「私の事は誰にも話してはいけませんよ」



 やっぱり未来にも──。


《完》
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