午前3時のおやつ
午後3時は、甘い甘いおやつの時間。
そして午前3時は――。
「今日の3時のおやつは何かな」
「私の家は、ママが作ったケーキだよ」
赤いランドセルを背負い歩いているのは、小学3年生の女の子二人。
どうやら今日のおやつが楽しみのようだ。
ママがケーキを作ってくれるなんていいなと羨ましがりながら、自分のママはお菓子なんて作ってくれたことがなく、いつもスーパーで買った食パンやスナック菓子なんだよと項垂れる。
自分のママもこのお友達のようにお菓子を手作りしてくれたらいいのに、なんて言っていると、女の子は、あっと声を上げ、午前3時のおやつって知ってる、と言い出す。
「午前3時のおやつ? それって夜中だよね」
「そう! 午前3時丁度に起きて、何処でもいいからお家の中の扉を開けるの」
開けたらどうなるのか聞くと、その子も詳しくは知らないらしく、その先はわからないようだ。
だが、こんな噂が広がるくらいだから、きっとおやつが一杯食べられるんだよと女の子は言う。
午前3時まで起きていたらママに叱られそうだが、今日くらいはいいよねと思い、友達に言われたことを実践してみることにした。
そしてやって来た夜。
時間は0時。
女の子は寝ないように自室のベッドに座り、目の前にある扉をじっと見詰める。
だが、なかなか3時にならない。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうのに、待つ時間は長く感じるから不思議だ。
いつもならとっくに寝ている時間。
次第に瞼は重くなり、体がコックリコックリと揺れる。
そしてハッと目を覚まし、時計を見ると午前3時の3秒前。
友達はこうも言っていた。
午前3時を1秒でも過ぎてはいけないと。
慌てて扉をバッと開けると、そこはいつもと変わらない自分の家。
午前3時を過ぎてしまったのか、それともこの話自体噂に過ぎなかったのかはわからないが、急にお腹が空いてしまいリビングに向かう。
すると、何やら甘い香りがしてくる。
こんな時間に何かを作っているのだろうかとリビングの扉を開けると、ママがキッチンに立ち何かを作っている。
「ママ、こんな時間に何してるの」
「おやつのケーキを作ってるのよ」
平然と答えるママだが、こんな時間におやつなんて今までになかった。
その上、ママが手作りをしてくれたことすらない。
もしかしたら、これが午前3時のおやつの正体なんじゃないかと思った。
理由はわからないが、午前3時に扉を開けるとママが自分の食べたいおやつを作ってくれるのだろう。
友達がママにケーキを作ってもらうと言っていたのを聞いて、今日羨ましくなったのを思い出す。
「あれ? あの子の名前何て言うんだっけ」
ケーキのスポンジは出来上がり。
後は間に甘いフルーツと真っ赤な赤色の生クリーム。
出来上がったケーキは、自分の子供に食べさせよう。
これは甘い甘いケーキ。
フルーツは、子供の甘い耳や目玉。
真っ赤なクリームは子供の血液を混ぜて、今日もあの子が招いたお友達をケーキにする。
甘い甘いあの子が大好きなケーキに。
《完》
そして午前3時は――。
「今日の3時のおやつは何かな」
「私の家は、ママが作ったケーキだよ」
赤いランドセルを背負い歩いているのは、小学3年生の女の子二人。
どうやら今日のおやつが楽しみのようだ。
ママがケーキを作ってくれるなんていいなと羨ましがりながら、自分のママはお菓子なんて作ってくれたことがなく、いつもスーパーで買った食パンやスナック菓子なんだよと項垂れる。
自分のママもこのお友達のようにお菓子を手作りしてくれたらいいのに、なんて言っていると、女の子は、あっと声を上げ、午前3時のおやつって知ってる、と言い出す。
「午前3時のおやつ? それって夜中だよね」
「そう! 午前3時丁度に起きて、何処でもいいからお家の中の扉を開けるの」
開けたらどうなるのか聞くと、その子も詳しくは知らないらしく、その先はわからないようだ。
だが、こんな噂が広がるくらいだから、きっとおやつが一杯食べられるんだよと女の子は言う。
午前3時まで起きていたらママに叱られそうだが、今日くらいはいいよねと思い、友達に言われたことを実践してみることにした。
そしてやって来た夜。
時間は0時。
女の子は寝ないように自室のベッドに座り、目の前にある扉をじっと見詰める。
だが、なかなか3時にならない。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうのに、待つ時間は長く感じるから不思議だ。
いつもならとっくに寝ている時間。
次第に瞼は重くなり、体がコックリコックリと揺れる。
そしてハッと目を覚まし、時計を見ると午前3時の3秒前。
友達はこうも言っていた。
午前3時を1秒でも過ぎてはいけないと。
慌てて扉をバッと開けると、そこはいつもと変わらない自分の家。
午前3時を過ぎてしまったのか、それともこの話自体噂に過ぎなかったのかはわからないが、急にお腹が空いてしまいリビングに向かう。
すると、何やら甘い香りがしてくる。
こんな時間に何かを作っているのだろうかとリビングの扉を開けると、ママがキッチンに立ち何かを作っている。
「ママ、こんな時間に何してるの」
「おやつのケーキを作ってるのよ」
平然と答えるママだが、こんな時間におやつなんて今までになかった。
その上、ママが手作りをしてくれたことすらない。
もしかしたら、これが午前3時のおやつの正体なんじゃないかと思った。
理由はわからないが、午前3時に扉を開けるとママが自分の食べたいおやつを作ってくれるのだろう。
友達がママにケーキを作ってもらうと言っていたのを聞いて、今日羨ましくなったのを思い出す。
「あれ? あの子の名前何て言うんだっけ」
ケーキのスポンジは出来上がり。
後は間に甘いフルーツと真っ赤な赤色の生クリーム。
出来上がったケーキは、自分の子供に食べさせよう。
これは甘い甘いケーキ。
フルーツは、子供の甘い耳や目玉。
真っ赤なクリームは子供の血液を混ぜて、今日もあの子が招いたお友達をケーキにする。
甘い甘いあの子が大好きなケーキに。
《完》
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