運命の腐れ縁
もしも好きの気持ちを伝えたら、今の関係は崩れてしまうかもしれない。
それでも、伝えない後悔より伝えた方のがいいと思うから、今日こそ伝えようと手に力が入る。
おはよう、といつものように挨拶を交わすのは、女が好きな相手であり、家がお隣同士の幼馴染み、鈴裏 馬殊 。
いつもの時間に家を出て、馬殊と一緒に学校へ行く。
この関係をずっと続けてきたが、今日が最後となる日だ。
「馬殊」
「お前さ」
二人の声が重なり馬殊からいいよというと、馬殊は頬をかき口を開いた。
内容は、告白したい相手がいるというものであり、女は想いを伝えていないにも関わらず恋が終わったのだ。
それでも笑みを浮かべながら馬殊の相談にのるが、きっと今の自分は上手く笑えていないだろう。
泣きたくなる気持ちをぐっと押さえ込み話を聞くが、何を話したのか全く覚えていない。
それから学校に着くと、何時ものように隣には馬殊がいる。
席が隣同士で最初は嬉しかったが、今は離れたくて仕方がない。
結局その日はずっと上の空で、どう過ごしていたのか全く記憶にない。
「帰ろうぜ」
「ごめん。今日は用事があるから一緒に帰れないんだ」
本当は用事なんてないが、今は一人になりたかった。
馬殊は疑うことなく頷き、馬殊が教室を出ていったあとしばらくして女も教室を出た。
帰り道、一人になった瞬間一気に辛い感情が込み上げ、視界が涙で歪む。
その場で立ち止まり涙を拭っていると、目の前に誰かが立っているのが歪む視界でもわかる。
慌てて涙を拭い顔を上げると、そこにいたのは馬殊だった。
先に帰ったはずの馬殊が目の前にいる。
これは夢なのだろうかと固まってしまうと、大きな男の手が頭に乗せられた。
「お前は昔からそうだよな。辛いことや嫌なことがあると一人で帰る癖」
「べつに馬殊には関係ないでしょ」
「関係あるだろ。俺達は昔っから一緒の腐れ縁だろ」
そう言いニッと笑う馬殊。
いつもそうだった。
辛いことや悲しいことがあると、馬殊はいつも慰めてくれる。
でも、今日ばかりは馬殊にはどうすることもできない。
何故なら、今悲しくて辛いのは馬殊のせいだから。
何故泣いているのか尋ねられても答えることなどできるはずがなく、顔を伏せたままでいると、両頬を手で挟まれ馬殊へと向かされてしまう。
瞳に溜まった涙が頬を伝い、こんな姿見せたくないというのに、馬殊の手は離れない。
「話したくないなら話さなくていい。でも、お前が泣いてると俺がいやなんだよ」
「何よそれ」
意味がわからないと言うと、唇に何かが触れる。
目の前には馬殊の顔があり、距離が離れると、女は自分の唇に触れる。
馬殊の唇が触れた感触がまだ残っており、頬に熱が集まる。
訳がわからなくなった女は、頬を染めたまま驚きの表情を浮かべ馬殊を見詰めていた。
「昔っから一緒で、家も隣同士。腐れ縁なんて言ったけどさ、俺はこれを運命だと思ってる」
そのあとに言われた好きだという言葉に、先程とは違う涙が流れる。
そんな女の涙を馬殊は指先で掬い取ると、もう泣くな、と笑みを浮かべる。
でも、馬殊には好きな人がいたはずではと思い尋ねると、本当に鈍いよなと笑われてしまう。
「俺が好きなのは、昔も今もお前だけだ」
腐れ縁でいつも一緒だった二人。
だが、これを運命だという馬殊の言葉に、女もそうなのかもしれないと笑みを浮かべた。
《完》
それでも、伝えない後悔より伝えた方のがいいと思うから、今日こそ伝えようと手に力が入る。
おはよう、といつものように挨拶を交わすのは、女が好きな相手であり、家がお隣同士の幼馴染み、
いつもの時間に家を出て、馬殊と一緒に学校へ行く。
この関係をずっと続けてきたが、今日が最後となる日だ。
「馬殊」
「お前さ」
二人の声が重なり馬殊からいいよというと、馬殊は頬をかき口を開いた。
内容は、告白したい相手がいるというものであり、女は想いを伝えていないにも関わらず恋が終わったのだ。
それでも笑みを浮かべながら馬殊の相談にのるが、きっと今の自分は上手く笑えていないだろう。
泣きたくなる気持ちをぐっと押さえ込み話を聞くが、何を話したのか全く覚えていない。
それから学校に着くと、何時ものように隣には馬殊がいる。
席が隣同士で最初は嬉しかったが、今は離れたくて仕方がない。
結局その日はずっと上の空で、どう過ごしていたのか全く記憶にない。
「帰ろうぜ」
「ごめん。今日は用事があるから一緒に帰れないんだ」
本当は用事なんてないが、今は一人になりたかった。
馬殊は疑うことなく頷き、馬殊が教室を出ていったあとしばらくして女も教室を出た。
帰り道、一人になった瞬間一気に辛い感情が込み上げ、視界が涙で歪む。
その場で立ち止まり涙を拭っていると、目の前に誰かが立っているのが歪む視界でもわかる。
慌てて涙を拭い顔を上げると、そこにいたのは馬殊だった。
先に帰ったはずの馬殊が目の前にいる。
これは夢なのだろうかと固まってしまうと、大きな男の手が頭に乗せられた。
「お前は昔からそうだよな。辛いことや嫌なことがあると一人で帰る癖」
「べつに馬殊には関係ないでしょ」
「関係あるだろ。俺達は昔っから一緒の腐れ縁だろ」
そう言いニッと笑う馬殊。
いつもそうだった。
辛いことや悲しいことがあると、馬殊はいつも慰めてくれる。
でも、今日ばかりは馬殊にはどうすることもできない。
何故なら、今悲しくて辛いのは馬殊のせいだから。
何故泣いているのか尋ねられても答えることなどできるはずがなく、顔を伏せたままでいると、両頬を手で挟まれ馬殊へと向かされてしまう。
瞳に溜まった涙が頬を伝い、こんな姿見せたくないというのに、馬殊の手は離れない。
「話したくないなら話さなくていい。でも、お前が泣いてると俺がいやなんだよ」
「何よそれ」
意味がわからないと言うと、唇に何かが触れる。
目の前には馬殊の顔があり、距離が離れると、女は自分の唇に触れる。
馬殊の唇が触れた感触がまだ残っており、頬に熱が集まる。
訳がわからなくなった女は、頬を染めたまま驚きの表情を浮かべ馬殊を見詰めていた。
「昔っから一緒で、家も隣同士。腐れ縁なんて言ったけどさ、俺はこれを運命だと思ってる」
そのあとに言われた好きだという言葉に、先程とは違う涙が流れる。
そんな女の涙を馬殊は指先で掬い取ると、もう泣くな、と笑みを浮かべる。
でも、馬殊には好きな人がいたはずではと思い尋ねると、本当に鈍いよなと笑われてしまう。
「俺が好きなのは、昔も今もお前だけだ」
腐れ縁でいつも一緒だった二人。
だが、これを運命だという馬殊の言葉に、女もそうなのかもしれないと笑みを浮かべた。
《完》
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