花子さん

 下校時間。
 突然友達が怖い話大会をしようと言い出したことにより、女子三人での怖い話大会が始まった。

 だが、自分も、もう一人の友達も作り話でワイワイ盛り上がり、次は最後に残った言い出しっぺの女の話のみとなる。

 二人とも、その子も作り話で驚かそうとしてくるだろうと思っていると、口から出た言葉は花子さんだった。



「ちょっと、花子さんなんて有名じゃない」

「だよね」



 二人で笑っている中、その女だけは無表情のまま笑わず、何だか笑える空気ではなくなり二人は苦笑いを浮かべる。

 花子さんと言えば、住む地域によっても違うようだが、学校のトイレのドアを三回ノックすると花子さんが現れ引きずり込まれるというものだ。



「じゃあ、最近この学校で密かな噂になってる話は知ってる?」

「え? 知らない。知ってる?」

「私も知らない」



 一体どんな噂なのか聞くと、女はその噂について話始めた。

 この学校の花子さんはトイレの花子さんとは違い、そのなの通り花を持った少女が突然現れこう尋ねるのだ。



〝お花、いりませんか?〟



その言葉に、くださいなどの貰うという返事を返すと、花子さんはその人に花を一輪手渡し帰っていく。



「何それ? いい花子さんじゃん」

「でも、そのあと――」



 言いかけた女の言葉を遮る形で先生が教室に入ってきたため、三人の怖い話大会はここでお開きとなった。

 結局続きは聞けずじまいだったが、花をくれるんだから良い子ではないかと考えながら帰路を歩いていると、突然裾を誰かに引っ張られ立ち止まると視線を向ける。
 するとそこには小さな女の子の姿があり、その手には花が握られていた。

 先程の噂を思い出すが、とくに怖くもない話だったため気にするほどでもない。



「どうしたの? もう暗くなるからお家に帰った方が――」



 女が話している途中で、その子の言葉と重なる。



〝お花、いりませんか?〟



 よくわからないが、折角小さな子がくれるといっているのだからと思い受け取ると、女の子はニコリと口許に笑みを浮かべ何処かへと行ってしまった。

 そして女は家へと帰ると、貰った花を瓶に差し、綺麗な花だなと眺めていた。


 それから数日が経ったある日、その女は亡くなってしまった。
 なんでも、突然体が痩せ細り、そのまま亡くなったそうだ。

 そしてその女の部屋の窓辺には、枯れてしまった一輪の花があったらしい。


《完》
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