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お礼画面

スキ!ありがとうございました😉牧紳一夢載せますので良ければご覧下さいませ。同級生設定です。ヒロイン視点です。



私は、昔から気が弱くて受け身で、二次創作大好きなオタクである。終わりの会が済んで各自、席を立つ。勿論、私も椅子を引いて立とうとしたら…目の前にスクールカーストが上の部類に入る派手目なクラスメイトの笠原朋花が席の前に現れた。


「ねぇ。今日は用事があるから日誌の作成と黒板消ししといてくれない?」
「…え」
「今度、購買でジュース奢るから!ね?」
「えっ…う、うん…。」


吃りながら返事をするとその子は「ありがとう」と言いながら鞄を肩に掛けて彼氏と見られる男の子と話しながら教室を出て行った。
…成る程、【用事】と言うのは彼氏と遊ぶ事なのか。てっきり、バイトや家族の体調が悪くて看病するのかと勝手に理由を考えていたが、それ以上に軽い理由に落胆した。
…別にこの後予定ないし部屋に戻っても好きな作品の漫画を描くくらいしかないから良いけどね。
閉まった筆箱からシャーペンを出して頭の部分を数回カチカチ、と押して書き始めた。
うわ、この子(笠原朋花)全く書いてないじゃん。1限目から6限目の授業すら書かず、ほぼ白紙の状態だ。
せめて、今日の出来事欄くらいは埋めといてよ。なんて小言を誰もいない教室で静かに呟く。


「…そう言えば、大学とかまだ決まってないなぁ」


日誌を書きながらふと、向き合わなくてはならない現実に焦点を当てる。
学生生活も残す所半年になった今、そろそろ進路を決めないと不味いよね。しかし私は、これと言ってやりたい事もなくただ毎日漠然と時を過ごしていた。小学生の頃は「漫画家になるー!」と言って、よく自由帳にフリーハンドで線を引いて漫画とか描いてたよなー。なんて追憶してしながら適当に日誌を書き進める。後少しで完成しそうだ。
ガラッッ
突然、ドアが開いて誰が入って来たのかと日誌から視線が逸れて音がした方を見た。すると、少し息が乱れたクラスメイトの牧君が居た。


「うっかりタオルを忘れてな…。あれ?今日は日直当番、笠原じゃなかったっけか?」
「あー…そうなんだけど、彼氏さんとデートらしくてさ。代わりに書いてるの」
「え!?君だって忙しいだろ。断れば良いのに…って、Noとは言えない性格だもんな」
「…へ?」


それは、自分が気が弱いのを知っているから?クラスでも中心人物と言っても過言ではない彼からほんの少しでも自分と言う存在が刻まれているのが何故か誇らしげになった。


「…俺も手伝うよ。黒板消しくらい出来るし」
「そんな!悪いよ!貴重なバスケ部の練習の時間を割いてまでっ!」
「小柄な君だとぴょんぴょん蛙みたいに飛びながら消してたら時間が掛かるだろ?」
「なっ!蛙って…せめて兎にしてよ」
「…そう言う問題か?」


此処まで会話が続く自分に驚いた。…あれ、私…普通に男子と話せてる。と言うより、彼の場合【紳士】だから同級生ではなく、成人済みの男性と話している感覚だ。
他愛のない話をしている間に文字で埋め尽くされていた白い黒板が綺麗になっていく。私も今日の出来事欄をさらさらっと書いてパタンと日誌を閉じた。


「本当ありがとうね。助かったよ」
「別に良いさ。…職員室通るからついでに日誌返して来るよ」
「え!?何から何まで…ごめんね」
「謝る事じゃないだろ。笠原が悪いんだから…それと……。」


急に牧君の大きな手が私のでこに伸びてきて前髪を掴んだ。


「前髪、長過ぎないか?折角綺麗な瞳をしているんだから」


そう言って前髪を上に上げて顔を覗き込んでくる。堀が深くダンディーな顔立ち、2枚目俳優も目じゃないルックスにクラッと足元が蹌踉めきそうになぅた。


「綺麗じゃないよ!笠原さんの方が…美人だし」
「何で其処で笠原が出て来るんだよ」


眉を下げて困ったように笑った。


「だって、事実だもん。背が高くてスタイル良いし少し吊り目だけど綺麗な二重だし…。」


それに比べて私は平均身長より低めだし特別スタイル良い訳でもないし…と後半の自虐の言葉は胸の奥にしまい込んだ。すると、信じられない言葉を牧君が口にした。


「俺は君の方が可愛らしくて好きだよ」
「好きっ!?て、え?その…。」
「あ、済まないな。人として好きって事で…気持ち悪がらないでくれ…。」


普段、冷静な牧君が顔を少し赤らめて手を振るのが新鮮で、恐らく誰も見た事ないような新しい一面を発見したみたいで優越感に浸った。


「気持ち悪がらないけど…あ、職員室…。」


同じ距離なのに、いつもより短く感じる距離。私達の距離も少しは近付いたのかなぁ…と思っていると、耳元で低い声で囁かれた。そして、その言葉は私の体温を上げる程に破壊力のある言葉だった。
バッと上を見上げれば意地悪そうに微笑み、唇に人差し指を当てる。『この事は内密にな』と言う意味だろう。首を縦に振ると頭をポンポン叩き、職員室へと入って行った。
中では、「すみません、日誌返しに来ました」「今、担任の先生は不在だから後で渡しておくね」と声が聞こえた。そして、暫くするとガラッと扉が開くと牧君が出て来た。


「俺は部活あるから体育館に戻るよ。気を付けて帰るんだぞ」
「うん!部活、頑張ってね」


そして、彼の背中が見えなくなるまでぼーっと見詰めて先程の言葉が脳裏に焼き付いて離れない。…今の私の顔は多分、ニヤけてると思う。側から見れば変な人に見えるよね?
だって…私の耳元で言われたのは『人として好きではあるが、それと同時に女性としても意識してるぞ』
これを言われて平静を保てる人っているのかな…?『内密にな』とは、彼の人気と知名度から推測すると瞬く間に噂が流れて学校中所か他校のファンからも質問攻めに合うと見越しているからに違いない。緩む口元を手で抑えながら足早に帰路へと着いた。
そして翌日、目が隠れるまで長い前髪だった私が突然、前髪を切ったのでクラスが騒ついてどう言う風の吹き回しだとプチ騒ぎになったのは言うまでもない。

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