波
ヒロインの名前
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高校生と大学生の境界線って結構大きいと思う。年齢は然程変わらないのに、何とも不思議な物である。
それとも、高校時代に付き合っていた元彼が子供っぽいから?目の前の大学1年の時に告白した相手がダンディー過ぎるから?
ぐるぐる脳内で考えていると、目の前には高そうな車が止まっていた。
「待たせたか?すまんな」
「ううん、今来た所」
そう言って片手を上げた筋肉質で健康的な小麦肌の彼は、車のドアを開けて、「乗ってくれ」と促した。私は小さく頷き、スカートが皺にならないように優しく持ち上げて助手席に座り込んだ。
ブーーンッと窓から見える海をぼんやり見詰めるとある夕方。今日は、彼が久々にバスケの練習が休みで午後の授業の後は空いてるからと、ドライブデートを申し込まれたのだ。
付き合って1ヶ月。メッセージのやり取りは多くもなく少なくもない。「今日は暑かったね」などの当たり障りのない内容。
高校の時は新作映画行こう、ファミレスの新作メニュー食べようと随分幼稚だったのだとしみじみ思う。
隣を見れば、ホクロさえもチャームポイントに過ぎない整った顔立ちの彼。
「俺の顔、何か付いてるか?」
「え!?ううん、何も」
見詰め過ぎていたらしく、私は慌てて海に視線を向けた。
夕陽が差し込んで茜色に染まる海が燃えているように情熱的で、私の今の恋模様に似ているみたいだ。
「…あの、ありがとうね。忙しいのに休み、取ってくれて」
高校の時からバスケ界では多くの人が知る知名度の彼。大学でもバスケを続けて、将来はスポーツ関連の仕事になるらしい。
毎日漠然と講義を受けて課題をこなすだけの自分と大きな差を感じた。年齢は同じなのに、後数年したらお互い卒業して、就職して…。まだ先の話ではあるけれど、嫌でも来てしまう未来の出来事。
ずっと今の時間が続けば良いのにと、我儘な私の心がそう叫び、メラメラと真っ赤な炎が燃え盛っている。
「いや、俺の方こそ活動が忙しくてろくに時間も作ってやれなくて悪かったよ」
大人顔負けの対応に、またしても惚れてしまう。
歳上のようでそうでない。去年はサーフィンをしていた彼は、ハンドルを握り締めながら、ちらりと海を見た。
砂浜には子供の手を引く家族連れもいて、夏の日差しが日々大きくなる季節。そろそろ海開きだなと思っていると、駐車場が見えた。
「ちょっと、海でも見ないか?」
「うん!」
オートロックの車がガチャッと音を立て、キーを胸ポケットに仕舞う彼の隣を寄り添い、ザザーーンと音を立てて押し寄せる波を眺めた。
どちらかと言えば、休日はレンタルした映画を観たり、スマホで漫画を読んだりしてゆっくり過ごすインドアな私。
海は嫌いではないけれど特別好きって訳でもないけど、思わず見惚れるように見てしまうのは、好きな人といるから?
…ううん、自分を見ているみたいで親近感が湧くからだ。
私自身、精神面に波があると思う。牧紳一と言うスターと付き合って、釣り合わないんじゃないかとマイナスな気持ちになる時。彼と共に時間を共有したり、何気ないドライブデートで、優しく手を握ってくれる優しい彼の愛を感じてプラスな気持ちになる時。それが潮の満ち引きに似ていて、自分と重ねてしまう。
「そんなに海が好きなの、嫉妬してしまう俺は子供かもな」
「へ?」
嫉妬?紳一君が?
いつも余裕気でコートの上でも落ち着いて点を取りに行く、勝利に対する飢えを持って常に高みへと目指す。欲しい物なんて手に入れ尽くしてるのではと思っちゃう人なのに?
彼とて同じ大学生の1人であり、人間なのだと再認識させられる。聞き間違いかと耳を疑うが、居酒屋みたいに騒がしい訳でもない。辺りは人気がなく、時々通る車の音と波の音のみが聞こえるだけ。
聞き間違える可能性は低い。
「エリナ…。好きだ」
そう言って頬に手を添えて唇に触れるだけの優しいキスを落とされた。
「っ!?」
手を繋いだ事はあるけれど、キスはまだだった。今まで、そう言うムードになった事はあったけれど、いつも恥ずかしくて断るチキンな私。その隙を与えない程に自然とされたので驚いた。
目を丸くした私に、彼は優しく微笑み、「何だよ、その顔」とおでこをツンと優しく指で突かれた。
「だ、だだ…だって!」
「俺だっていつまでもお預けはごめんだ」
「おお、お預けって…!確かに、ムードはあったけど、心の準備が…!」
「はは、それならこの先のステップはどうなるんだよ」
困ったように笑う紳一君。耳が夕陽に照らされてるからか、褐色肌でも分かるくらいに真っ赤だった。
…もしかして、相当照れながら言葉を発している…?だとすると、ダンディーな彼からは想像出来ないギャップと可愛らしさにきゅんと胸が高鳴ってしまう。
…ん?でも待てよ。ステップって何の事だと冷静に考える自分。手を繋ぐ、キスをする、…すると次は恋人同士がスるあの行為が脳裏を掠めた。
「〜〜っ!?」
ボンッと顔が真っ赤に染め上がり、茹蛸みたいになってると思う。
こんな私でも元彼はいたし、処女ではないけれど異性の前で裸になる恥ずかしさは幾つになっても慣れない。しかも、最近少し太ったから無駄な肉のない、鍛え抜かれた筋肉質な彼の前で晒すのはある意味拷問かもしれない…。
明日からダイエットしよう…とこっそり決断するのであった。
「はは、シャイで可愛いなエリナは」
「なっ!揶揄わないでっ!」
ポカポカ胸を叩くが全く効いてなくて、はははと大らかに笑い、それを海と夕陽が優しく見守っているように見えた。
そう言えば、割と最近の話。紳一君には話していないけれど、学校の女子に「二階堂みたいな何処にでもいる女、所詮愛人止まり」と陰口を言われているのを聞いてしまった。
それに反論も出来なくて、近くのトイレに逃げ込んで涙を押し殺したあの日。多分、それからかな?私の気持ちが波のようにマイナス、プラスへと変動するのは。
他人の目が怖くて。本命以外になりたくなくて。愛人なんて嫌だよと。それでも、弱気な私は胸の奥に封じ込めて気にしない振りして交際を続けていた。
でも、目の前には私だけを見て、甘い言葉を囁く紳一君がいて。
女子の陰口がどんどん消えて、彼しか見えなくなっていた。
「…何に悩んでいるのかはエリナが話すまで聞かないが、いつでも力になるからな」
「え…。」
意外と鈍い彼が、気付いていたなんて思わなくて、瞬きを数回繰り返す私の頭を撫で、「1人で抱え込むな」と言って大きな腕が背中に回る。抱き締められていると脳が認識するのに少し時間が掛かった___。
燃え尽きるだけでは終わらない。枯れるまで精一杯燃えてやる。彼との情熱的な気持ちに応えるように、私も腕を回して抱擁し合った。
悲しいハートは貴方が溶かしてくれた。そう思いながら、どちらからともなく唇を落とし、深い物へと変わるのだった。
*END*
あとがき
リクエストありがとうございました。質問の答え貰う前に書いてすみません💦感想頂けると嬉しいです。歌詞で私的に浮かんだイメージを書きましたが、悲しい系の恋ではなく大人の恋愛をし始めていくとの事なのでそれを意識しました。
最近、花粉や黄砂が多く辛い季節ですが体調を整えて日々お過ごし下さいね。
それとも、高校時代に付き合っていた元彼が子供っぽいから?目の前の大学1年の時に告白した相手がダンディー過ぎるから?
ぐるぐる脳内で考えていると、目の前には高そうな車が止まっていた。
「待たせたか?すまんな」
「ううん、今来た所」
そう言って片手を上げた筋肉質で健康的な小麦肌の彼は、車のドアを開けて、「乗ってくれ」と促した。私は小さく頷き、スカートが皺にならないように優しく持ち上げて助手席に座り込んだ。
ブーーンッと窓から見える海をぼんやり見詰めるとある夕方。今日は、彼が久々にバスケの練習が休みで午後の授業の後は空いてるからと、ドライブデートを申し込まれたのだ。
付き合って1ヶ月。メッセージのやり取りは多くもなく少なくもない。「今日は暑かったね」などの当たり障りのない内容。
高校の時は新作映画行こう、ファミレスの新作メニュー食べようと随分幼稚だったのだとしみじみ思う。
隣を見れば、ホクロさえもチャームポイントに過ぎない整った顔立ちの彼。
「俺の顔、何か付いてるか?」
「え!?ううん、何も」
見詰め過ぎていたらしく、私は慌てて海に視線を向けた。
夕陽が差し込んで茜色に染まる海が燃えているように情熱的で、私の今の恋模様に似ているみたいだ。
「…あの、ありがとうね。忙しいのに休み、取ってくれて」
高校の時からバスケ界では多くの人が知る知名度の彼。大学でもバスケを続けて、将来はスポーツ関連の仕事になるらしい。
毎日漠然と講義を受けて課題をこなすだけの自分と大きな差を感じた。年齢は同じなのに、後数年したらお互い卒業して、就職して…。まだ先の話ではあるけれど、嫌でも来てしまう未来の出来事。
ずっと今の時間が続けば良いのにと、我儘な私の心がそう叫び、メラメラと真っ赤な炎が燃え盛っている。
「いや、俺の方こそ活動が忙しくてろくに時間も作ってやれなくて悪かったよ」
大人顔負けの対応に、またしても惚れてしまう。
歳上のようでそうでない。去年はサーフィンをしていた彼は、ハンドルを握り締めながら、ちらりと海を見た。
砂浜には子供の手を引く家族連れもいて、夏の日差しが日々大きくなる季節。そろそろ海開きだなと思っていると、駐車場が見えた。
「ちょっと、海でも見ないか?」
「うん!」
オートロックの車がガチャッと音を立て、キーを胸ポケットに仕舞う彼の隣を寄り添い、ザザーーンと音を立てて押し寄せる波を眺めた。
どちらかと言えば、休日はレンタルした映画を観たり、スマホで漫画を読んだりしてゆっくり過ごすインドアな私。
海は嫌いではないけれど特別好きって訳でもないけど、思わず見惚れるように見てしまうのは、好きな人といるから?
…ううん、自分を見ているみたいで親近感が湧くからだ。
私自身、精神面に波があると思う。牧紳一と言うスターと付き合って、釣り合わないんじゃないかとマイナスな気持ちになる時。彼と共に時間を共有したり、何気ないドライブデートで、優しく手を握ってくれる優しい彼の愛を感じてプラスな気持ちになる時。それが潮の満ち引きに似ていて、自分と重ねてしまう。
「そんなに海が好きなの、嫉妬してしまう俺は子供かもな」
「へ?」
嫉妬?紳一君が?
いつも余裕気でコートの上でも落ち着いて点を取りに行く、勝利に対する飢えを持って常に高みへと目指す。欲しい物なんて手に入れ尽くしてるのではと思っちゃう人なのに?
彼とて同じ大学生の1人であり、人間なのだと再認識させられる。聞き間違いかと耳を疑うが、居酒屋みたいに騒がしい訳でもない。辺りは人気がなく、時々通る車の音と波の音のみが聞こえるだけ。
聞き間違える可能性は低い。
「エリナ…。好きだ」
そう言って頬に手を添えて唇に触れるだけの優しいキスを落とされた。
「っ!?」
手を繋いだ事はあるけれど、キスはまだだった。今まで、そう言うムードになった事はあったけれど、いつも恥ずかしくて断るチキンな私。その隙を与えない程に自然とされたので驚いた。
目を丸くした私に、彼は優しく微笑み、「何だよ、その顔」とおでこをツンと優しく指で突かれた。
「だ、だだ…だって!」
「俺だっていつまでもお預けはごめんだ」
「おお、お預けって…!確かに、ムードはあったけど、心の準備が…!」
「はは、それならこの先のステップはどうなるんだよ」
困ったように笑う紳一君。耳が夕陽に照らされてるからか、褐色肌でも分かるくらいに真っ赤だった。
…もしかして、相当照れながら言葉を発している…?だとすると、ダンディーな彼からは想像出来ないギャップと可愛らしさにきゅんと胸が高鳴ってしまう。
…ん?でも待てよ。ステップって何の事だと冷静に考える自分。手を繋ぐ、キスをする、…すると次は恋人同士がスるあの行為が脳裏を掠めた。
「〜〜っ!?」
ボンッと顔が真っ赤に染め上がり、茹蛸みたいになってると思う。
こんな私でも元彼はいたし、処女ではないけれど異性の前で裸になる恥ずかしさは幾つになっても慣れない。しかも、最近少し太ったから無駄な肉のない、鍛え抜かれた筋肉質な彼の前で晒すのはある意味拷問かもしれない…。
明日からダイエットしよう…とこっそり決断するのであった。
「はは、シャイで可愛いなエリナは」
「なっ!揶揄わないでっ!」
ポカポカ胸を叩くが全く効いてなくて、はははと大らかに笑い、それを海と夕陽が優しく見守っているように見えた。
そう言えば、割と最近の話。紳一君には話していないけれど、学校の女子に「二階堂みたいな何処にでもいる女、所詮愛人止まり」と陰口を言われているのを聞いてしまった。
それに反論も出来なくて、近くのトイレに逃げ込んで涙を押し殺したあの日。多分、それからかな?私の気持ちが波のようにマイナス、プラスへと変動するのは。
他人の目が怖くて。本命以外になりたくなくて。愛人なんて嫌だよと。それでも、弱気な私は胸の奥に封じ込めて気にしない振りして交際を続けていた。
でも、目の前には私だけを見て、甘い言葉を囁く紳一君がいて。
女子の陰口がどんどん消えて、彼しか見えなくなっていた。
「…何に悩んでいるのかはエリナが話すまで聞かないが、いつでも力になるからな」
「え…。」
意外と鈍い彼が、気付いていたなんて思わなくて、瞬きを数回繰り返す私の頭を撫で、「1人で抱え込むな」と言って大きな腕が背中に回る。抱き締められていると脳が認識するのに少し時間が掛かった___。
燃え尽きるだけでは終わらない。枯れるまで精一杯燃えてやる。彼との情熱的な気持ちに応えるように、私も腕を回して抱擁し合った。
悲しいハートは貴方が溶かしてくれた。そう思いながら、どちらからともなく唇を落とし、深い物へと変わるのだった。
*END*
あとがき
リクエストありがとうございました。質問の答え貰う前に書いてすみません💦感想頂けると嬉しいです。歌詞で私的に浮かんだイメージを書きましたが、悲しい系の恋ではなく大人の恋愛をし始めていくとの事なのでそれを意識しました。
最近、花粉や黄砂が多く辛い季節ですが体調を整えて日々お過ごし下さいね。
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