甘い悪戯
ヒロインの名前
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バレンタインとはまた違う、お菓子を貰うイベントのハロウィン。街を歩けば、ジャック・オー・ランタンを象ったグッズや仮装グッズが並ぶお店が賑わっている。
そして、今日が当日。社内には仮装をした上司がホワイトボード前にお菓子を置き、ご自由にお取り下さいと書かれた紙が置いてある。
「ハロウィンかー。もうこの歳じゃ喜ばないかな」
「とか言って、お菓子ちゃっかり貰う癖に」
へへ、バレたか…と眉を下げて同期の恋人、彰の方を振り向いた。
渋谷では毎年ハロウィンで若者達がはしゃいで沢山の塵を残す…と昨今ではあまり良いイメージが持てない。子供の頃は給食がハロウィンメニューでかぼちゃプリンにテンションが上がってたのに。今では、半分冷めた目でああ…もうそんな時期かと他人事のように感じていた。
「仕事忙しいのに頑張ってるからお菓子くらいタダで貰っても罰は当たらないわよ」
「まあな。…少し鼻声だけど、風邪気味?」
「うん。季節の変わり目だからね。薬飲んだけど、咳は多少出るわ」
そう言うと、「ちょっと待って」とその場でステイするよう促した彰は踵を返してオフィスのドアを開けた。
きょとんとした私は数回瞬きを繰り返して、薬なら鞄にあるのにと、薬を買って来てくれるのかと思ったが、待ってと言われたからには動かない方が良いだろう。
そうして待つ事5分で彼は姿を現した。
「はい、これ飲んで。水筒に冷たいお茶とか入れてるでしょ?」
渡された温かいアールグレイティー。手にはじんわりとした熱が流れて来てカイロのような役割を果たしている。しかも、最近買った花柄のミニ水筒の中には冷蔵庫で冷やした緑茶を入れているのでビンゴだった。彼氏になると此処まで彼女の事を分かってると、最早エスパーと疑いたくなる。
これを買う為に、走ってオフィスのロビーにあるコンビニへ買いに行ってくれたと思うと胸がキュンと締め付けられる。温かい飲み物なら、同じフロアの自販機にお茶やコーヒーがあるのに。
多分、最近紅茶にハマってると言ったから彼なりの気遣いだろう。何気ない会話で相手の好きな物を覚えてくれているのは案外、嬉しかったりする。
心と紅茶の温もりで熱々な手を彰の手に重ねて、ニコリと微笑んだ。
「ありがとう」
「…!エリナちゃんのその顔、他の人に見せたくねぇ」
「え?」
鏡がないのでどんな顔で言ったのか分からないので、そんなに変な顔だったのかと考えていると、後ろから声がした。
「其処っ!イチャ付くのは仕事終わってからにしろ」
ごほんっと態とらしく咳払いする上司に私達は平謝りし、業務へと取り掛かった。
仕事はそれなりに忙しくて、頭を何とか働かせてキーボードをカタカタ打つ。
時折、彰がくれたアールグレイティーを飲みながら。冷たい物よりヒリヒリした喉が少し痛みが軽減している気がする。
明日から、熱い紅茶でも淹れようかな。帰りにコンビニで甘い物買って帰ろうっと。紅茶と甘い物を飲食するのって、居酒屋で1日の終わりに社会人が生ビールを呑むのと同じくらいの楽しみになりつつある。
ふふ、と小さく笑い退勤時間までの数時間をラストスパート、と心の中で自分にエールを送ってやり過ごした。
「はぁーーっ、やっと終わったぁ」
「お疲れ様。明日、しんどそうなら休んでね?」
「ん。でも今日から3連勤だからどうせ休むなら、明後日の方が良いかなー。」
「成程な。…あ、もう駅か」
会社の最寄駅に着いた。乗る路線が異なる私達は、いつも駅の改札を通った所で別れの挨拶をする。
彰は名残惜しそうに私の髪に指を通し、優しい眼差しで見詰める。その綺麗な茶色の瞳には私しか映っていなくて、まるで世界に2人だけしか存在しないような気持ちにさえなる。デコに触れるだけのキスを交わす彰は、「また明日な」と別れ難いが仕方がないと言った感じで片手を上げた。
「あのっ、良かったら、私の家でお茶…しない?」
「え、良いの?凄い楽しみ___はは、そう言えばやってなかったな」
返事の途中で何かを思い出した彰はぽつりと呟いた。
「え?」
「トリックオアトリート」
大きな掌を差し出すが、これからスイーツを買う予定だった私はその手を自分の方へ引っ張り、ホームへと足を進めた。
「奮発して、ケーキ屋のにしよっか」
「おう。…でも、俺的にはスイーツない方が良いな」
「何で?甘い物嫌いじゃないでしょ?」
「そうじゃねぇけど…だってさ。お菓子貰ったら、エリナちゃんに悪戯出来ないだろ?」
色気を帯びた顔で覗き込まれた私は、瞬く間に頬を紅葉させて、ぼぼぼっと効果音が出そうだ。顔は紅葉にも負けない赤色に違いない。
予想通りの反応だったからか、彰がはははっと笑う。
悪戯って、どんな悪戯なんだろう。私は盛ってるつもりはないけど、てっきり性的な物なのかなと勝手な予想をする。だが、万が一こちょこちょとか子供のような内容だとしたら大きな勘違いで恥ずかしくなる。
「悪戯って、何するの?」
そう問えば、貴方は目を少し細めて、何かを企んだような瞳で私に言った。
「此処では言えない事」
そして、ケーキは買ったけれど「明日食べるから今、悪戯する」と言って、子供みたいな無邪気な笑顔で身体に触れられた私は、ハロウィンってこんなに甘い1日だったっけと固定観念が崩れ落ちたのでした。
*END*
あとがき
此処まで読んで下さってありがとうございました。ハロウィン当日ですが間に合って良かったです笑 ヒロインは体調あまり優れていませんが、何かあれば仙道さんは悪戯は切り上げるのでご安心下さい笑
そして、今日が当日。社内には仮装をした上司がホワイトボード前にお菓子を置き、ご自由にお取り下さいと書かれた紙が置いてある。
「ハロウィンかー。もうこの歳じゃ喜ばないかな」
「とか言って、お菓子ちゃっかり貰う癖に」
へへ、バレたか…と眉を下げて同期の恋人、彰の方を振り向いた。
渋谷では毎年ハロウィンで若者達がはしゃいで沢山の塵を残す…と昨今ではあまり良いイメージが持てない。子供の頃は給食がハロウィンメニューでかぼちゃプリンにテンションが上がってたのに。今では、半分冷めた目でああ…もうそんな時期かと他人事のように感じていた。
「仕事忙しいのに頑張ってるからお菓子くらいタダで貰っても罰は当たらないわよ」
「まあな。…少し鼻声だけど、風邪気味?」
「うん。季節の変わり目だからね。薬飲んだけど、咳は多少出るわ」
そう言うと、「ちょっと待って」とその場でステイするよう促した彰は踵を返してオフィスのドアを開けた。
きょとんとした私は数回瞬きを繰り返して、薬なら鞄にあるのにと、薬を買って来てくれるのかと思ったが、待ってと言われたからには動かない方が良いだろう。
そうして待つ事5分で彼は姿を現した。
「はい、これ飲んで。水筒に冷たいお茶とか入れてるでしょ?」
渡された温かいアールグレイティー。手にはじんわりとした熱が流れて来てカイロのような役割を果たしている。しかも、最近買った花柄のミニ水筒の中には冷蔵庫で冷やした緑茶を入れているのでビンゴだった。彼氏になると此処まで彼女の事を分かってると、最早エスパーと疑いたくなる。
これを買う為に、走ってオフィスのロビーにあるコンビニへ買いに行ってくれたと思うと胸がキュンと締め付けられる。温かい飲み物なら、同じフロアの自販機にお茶やコーヒーがあるのに。
多分、最近紅茶にハマってると言ったから彼なりの気遣いだろう。何気ない会話で相手の好きな物を覚えてくれているのは案外、嬉しかったりする。
心と紅茶の温もりで熱々な手を彰の手に重ねて、ニコリと微笑んだ。
「ありがとう」
「…!エリナちゃんのその顔、他の人に見せたくねぇ」
「え?」
鏡がないのでどんな顔で言ったのか分からないので、そんなに変な顔だったのかと考えていると、後ろから声がした。
「其処っ!イチャ付くのは仕事終わってからにしろ」
ごほんっと態とらしく咳払いする上司に私達は平謝りし、業務へと取り掛かった。
仕事はそれなりに忙しくて、頭を何とか働かせてキーボードをカタカタ打つ。
時折、彰がくれたアールグレイティーを飲みながら。冷たい物よりヒリヒリした喉が少し痛みが軽減している気がする。
明日から、熱い紅茶でも淹れようかな。帰りにコンビニで甘い物買って帰ろうっと。紅茶と甘い物を飲食するのって、居酒屋で1日の終わりに社会人が生ビールを呑むのと同じくらいの楽しみになりつつある。
ふふ、と小さく笑い退勤時間までの数時間をラストスパート、と心の中で自分にエールを送ってやり過ごした。
「はぁーーっ、やっと終わったぁ」
「お疲れ様。明日、しんどそうなら休んでね?」
「ん。でも今日から3連勤だからどうせ休むなら、明後日の方が良いかなー。」
「成程な。…あ、もう駅か」
会社の最寄駅に着いた。乗る路線が異なる私達は、いつも駅の改札を通った所で別れの挨拶をする。
彰は名残惜しそうに私の髪に指を通し、優しい眼差しで見詰める。その綺麗な茶色の瞳には私しか映っていなくて、まるで世界に2人だけしか存在しないような気持ちにさえなる。デコに触れるだけのキスを交わす彰は、「また明日な」と別れ難いが仕方がないと言った感じで片手を上げた。
「あのっ、良かったら、私の家でお茶…しない?」
「え、良いの?凄い楽しみ___はは、そう言えばやってなかったな」
返事の途中で何かを思い出した彰はぽつりと呟いた。
「え?」
「トリックオアトリート」
大きな掌を差し出すが、これからスイーツを買う予定だった私はその手を自分の方へ引っ張り、ホームへと足を進めた。
「奮発して、ケーキ屋のにしよっか」
「おう。…でも、俺的にはスイーツない方が良いな」
「何で?甘い物嫌いじゃないでしょ?」
「そうじゃねぇけど…だってさ。お菓子貰ったら、エリナちゃんに悪戯出来ないだろ?」
色気を帯びた顔で覗き込まれた私は、瞬く間に頬を紅葉させて、ぼぼぼっと効果音が出そうだ。顔は紅葉にも負けない赤色に違いない。
予想通りの反応だったからか、彰がはははっと笑う。
悪戯って、どんな悪戯なんだろう。私は盛ってるつもりはないけど、てっきり性的な物なのかなと勝手な予想をする。だが、万が一こちょこちょとか子供のような内容だとしたら大きな勘違いで恥ずかしくなる。
「悪戯って、何するの?」
そう問えば、貴方は目を少し細めて、何かを企んだような瞳で私に言った。
「此処では言えない事」
そして、ケーキは買ったけれど「明日食べるから今、悪戯する」と言って、子供みたいな無邪気な笑顔で身体に触れられた私は、ハロウィンってこんなに甘い1日だったっけと固定観念が崩れ落ちたのでした。
*END*
あとがき
此処まで読んで下さってありがとうございました。ハロウィン当日ですが間に合って良かったです笑 ヒロインは体調あまり優れていませんが、何かあれば仙道さんは悪戯は切り上げるのでご安心下さい笑
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