真っ直ぐな貴方に魅せられて
ヒロインの名前
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「別に行きたきゃ行けば良いじゃん」
「…な、何なの?その言い方。何か怒ってる?」
「怒ってねぇよ。精々、男に媚びでも売れば?」
「……何があったか知らないけど、八つ当たりやめてよね。私の家、直ぐ其処だから。じゃあね」
ぷいっと顔を背けて走り出した小さな背中は段茜色の夕日をバックに段々と小さくなっていった。
「クソッ…情けねぇ…。」
やり場のない怒りから逃れたいが、どうしようもなくて。ガンッと音を立てて電柱を力一杯殴った。拳からは血が出たが、それ以上に俺の心からはナイフで刺したようにドクドクと血が噴き出し、痛く苦しかった。
******
時刻は翌日の21時前。お洒落な外装のイタリアンカフェ前でうろうろしながらスマホの時計を30秒毎に確認しては入口付近を見詰めていた。
あれだけ言った癖に、結局気になって来てしまった。どのツラ下げて来たんだって話だけど、家の中でモヤモヤしたままベッドの上で転がっているよりはマシだと思ったからだ。
店内からは賑やかな若い声が複数重なって聴こえる。今頃はカップル成立もしていたりして……。またしても昨日の妄想の続きと言わんばかりに、告白後に肩を寄せ合って笑い合うエリナと神さんが浮かんできやがった。
いやいやいや、とネガティブな考えを打ち消すように心の中で“まだそうと決まった訳じゃない”と呟いた。
「!来た」
カランコロンとドアベルが鳴り、ゾロゾロと出てくる数名の男女。
一番最後に出て来たエリナは神さんに肩を抱かれて親しげに会話を交わしていた。そのワンシーンだけで、2人の親睦が深まっている事が物語っている。
「今日はありがとう。じゃあ、此処で解散するので気を付けて帰ってね」
その言葉に全員がはーいと間伸びした返事をしてそれぞれの方向へ歩み出した。
「…あれ?ノブ」
「よ、よお。偶々近くを通り掛かってな」
一瞬目を見開いたが、昨日の今日なので直ぐに顔を顰めて、何の用?と言わんばかりに睨んできた。
「へえ、買い物袋もなさそうだけど唯の散歩?」
「神さん…。そうっす!何となく、夜風を浴びたいなー…なんて」
「ふーん。それより、エリナちゃん本当に良い子だよね。趣味も合うし、真面目で優しいし」
「そ、そんな事ないですよ!神さんも、直向きで熱心で素敵じゃないですか」
「ふふ、ありがとう」
え?ええ!?エリナ…ちゃん?たった数時間で苗字呼びから名前呼びって…。神さん、意外とプレイボーイ?
あわあわする俺を挑発的な目で見る神さんに逡巡したが、逃げれば多分、一生後悔する。そう思って俺は言葉を紡いだ。
「…エリナ。昨日は…ごめん。余裕がなくて、キツイ事言っちまって…。」
「本当だよ。傷付いたんだからね」
「うっ…。」
「これから先、エリナちゃんを辛い思いにさせるなら、俺が頂いちゃうけど?」
言葉に詰まっていると、とんでもない事を言い放つ神さんに目を丸くした。隣のエリナも口をぽかんと開けて頬を染めているが、俺にとってはちっとも面白くない。
ざわざわっと胸の内を黒い何かが覆い被さり、またしても焦りへと繋がる。
「じ、神さんった…ご冗談を…。」
「冗談じゃないよ。信長にその気がないなら、俺は___「例え相手が神さんだとしても、エリナは譲りませんっっ!!」
「ノブ…。貴方までどうしたのよ…。」
大きな瞳が此方を捉えた。クラスのマドンナで告白なんてされ慣れているとは思うが、いきなり2人からアプローチされ掛けて、流石に困惑しているのだろう。形の良い桜色の唇は少し震えていた。
「……お前の事が、ずっと前から好きなんだよ!」
「え………。」
「真っ直ぐで、クラスの皆に分け隔てなく接して、率先して面倒事を引き受ける可愛くて優しいエリナが好きだってんだよ!」
「ちょ…待ってよ、声大きい!」
まだ愛の告白を言おうとした俺の口はエリナの手によって押さえられた。
「私も、明るくて真っ直ぐなノブが好き。幼馴染から変化はなさそうだなって何処かで諦めてたけど、そんな風に想ってくれてて嬉しい…っ!」
「…ふふ、ははは!」
「「!?」」
まさかの返事に、両想いだと判明して呆然とした。
笑い声がする方へ視線を傾ければ、お腹を押さえて笑う神さんが映る。笑うポイントではないのに笑われたので、訝しげな顔をした。
「そんな顔するなって。エリナちゃんに対する好きの度合いを確かめたかったんだよ」
「え…。」
驚く俺をよそに、神さんは話を続ける。
「もし、気持ちが軽かったら殴ろうと思ったけどそれなら任せられるよ。お幸せに」
手をひらひら振って街灯に照らされた道を歩く神さんの後ろ姿を俺達はぽかーんとしながら眺めていた。殴るって爽やかな笑顔でさらっと言うもんだから、やっぱり怒ると凄い怖い人だなと改めて実感した。
「…神さんには全てお見通しみたいだね」
「だな」
中々前に踏み出せない俺に発破を掛けてくれたんだ。
ありがとう、神さん。と心の中でお礼して帰路へと急いだ。エリナを家の前まで送り、「また明日な」と手を振ろうとした時……唇に柔らかい感触とちゅっとリップ音が鳴り、キスされたと認識するのに時間は掛からなかった。
「な、なな!?」
「ふふ、照れちゃって可愛い」
「あのなぁ…揶揄うなよ」
俺達2人を星空は優しく照らし、其処に笑うエリナがいる。それだけで、幸福を感じる程に惚れてるんだなと再確認した。いつまでも、仲睦まじい関係が続きますようにと願いを込めて夜空を見上げるのであった。
*END*
あとがき
此処まで読んで下さってありがとうございました!神さんが清田さんの気持ちを知りつつ発破を掛けるシーンを書きたいなと思い、出来上がった作品です。
そう言えば、いよいよ映画公開日が発表されましたね。12/3が楽しみです。その日は休み入れて朝一で観に行こうかなと薄ら考えています😌皆様は何時頃映画観に行くんですかね?中にはDVDで家でゆっくり観る方もいらっしゃるかもしれませんが。個人的には朝一の人が少ない映画館で真ん中より後ろの席で座って観るのが好きです。子供の頃は映画前の広告や宣伝が焦ったくて早く観たい気持ちが大きかったのですが、大人になるとそれを観るのも楽しみの一つであり好きになりました☺️
「…な、何なの?その言い方。何か怒ってる?」
「怒ってねぇよ。精々、男に媚びでも売れば?」
「……何があったか知らないけど、八つ当たりやめてよね。私の家、直ぐ其処だから。じゃあね」
ぷいっと顔を背けて走り出した小さな背中は段茜色の夕日をバックに段々と小さくなっていった。
「クソッ…情けねぇ…。」
やり場のない怒りから逃れたいが、どうしようもなくて。ガンッと音を立てて電柱を力一杯殴った。拳からは血が出たが、それ以上に俺の心からはナイフで刺したようにドクドクと血が噴き出し、痛く苦しかった。
******
時刻は翌日の21時前。お洒落な外装のイタリアンカフェ前でうろうろしながらスマホの時計を30秒毎に確認しては入口付近を見詰めていた。
あれだけ言った癖に、結局気になって来てしまった。どのツラ下げて来たんだって話だけど、家の中でモヤモヤしたままベッドの上で転がっているよりはマシだと思ったからだ。
店内からは賑やかな若い声が複数重なって聴こえる。今頃はカップル成立もしていたりして……。またしても昨日の妄想の続きと言わんばかりに、告白後に肩を寄せ合って笑い合うエリナと神さんが浮かんできやがった。
いやいやいや、とネガティブな考えを打ち消すように心の中で“まだそうと決まった訳じゃない”と呟いた。
「!来た」
カランコロンとドアベルが鳴り、ゾロゾロと出てくる数名の男女。
一番最後に出て来たエリナは神さんに肩を抱かれて親しげに会話を交わしていた。そのワンシーンだけで、2人の親睦が深まっている事が物語っている。
「今日はありがとう。じゃあ、此処で解散するので気を付けて帰ってね」
その言葉に全員がはーいと間伸びした返事をしてそれぞれの方向へ歩み出した。
「…あれ?ノブ」
「よ、よお。偶々近くを通り掛かってな」
一瞬目を見開いたが、昨日の今日なので直ぐに顔を顰めて、何の用?と言わんばかりに睨んできた。
「へえ、買い物袋もなさそうだけど唯の散歩?」
「神さん…。そうっす!何となく、夜風を浴びたいなー…なんて」
「ふーん。それより、エリナちゃん本当に良い子だよね。趣味も合うし、真面目で優しいし」
「そ、そんな事ないですよ!神さんも、直向きで熱心で素敵じゃないですか」
「ふふ、ありがとう」
え?ええ!?エリナ…ちゃん?たった数時間で苗字呼びから名前呼びって…。神さん、意外とプレイボーイ?
あわあわする俺を挑発的な目で見る神さんに逡巡したが、逃げれば多分、一生後悔する。そう思って俺は言葉を紡いだ。
「…エリナ。昨日は…ごめん。余裕がなくて、キツイ事言っちまって…。」
「本当だよ。傷付いたんだからね」
「うっ…。」
「これから先、エリナちゃんを辛い思いにさせるなら、俺が頂いちゃうけど?」
言葉に詰まっていると、とんでもない事を言い放つ神さんに目を丸くした。隣のエリナも口をぽかんと開けて頬を染めているが、俺にとってはちっとも面白くない。
ざわざわっと胸の内を黒い何かが覆い被さり、またしても焦りへと繋がる。
「じ、神さんった…ご冗談を…。」
「冗談じゃないよ。信長にその気がないなら、俺は___「例え相手が神さんだとしても、エリナは譲りませんっっ!!」
「ノブ…。貴方までどうしたのよ…。」
大きな瞳が此方を捉えた。クラスのマドンナで告白なんてされ慣れているとは思うが、いきなり2人からアプローチされ掛けて、流石に困惑しているのだろう。形の良い桜色の唇は少し震えていた。
「……お前の事が、ずっと前から好きなんだよ!」
「え………。」
「真っ直ぐで、クラスの皆に分け隔てなく接して、率先して面倒事を引き受ける可愛くて優しいエリナが好きだってんだよ!」
「ちょ…待ってよ、声大きい!」
まだ愛の告白を言おうとした俺の口はエリナの手によって押さえられた。
「私も、明るくて真っ直ぐなノブが好き。幼馴染から変化はなさそうだなって何処かで諦めてたけど、そんな風に想ってくれてて嬉しい…っ!」
「…ふふ、ははは!」
「「!?」」
まさかの返事に、両想いだと判明して呆然とした。
笑い声がする方へ視線を傾ければ、お腹を押さえて笑う神さんが映る。笑うポイントではないのに笑われたので、訝しげな顔をした。
「そんな顔するなって。エリナちゃんに対する好きの度合いを確かめたかったんだよ」
「え…。」
驚く俺をよそに、神さんは話を続ける。
「もし、気持ちが軽かったら殴ろうと思ったけどそれなら任せられるよ。お幸せに」
手をひらひら振って街灯に照らされた道を歩く神さんの後ろ姿を俺達はぽかーんとしながら眺めていた。殴るって爽やかな笑顔でさらっと言うもんだから、やっぱり怒ると凄い怖い人だなと改めて実感した。
「…神さんには全てお見通しみたいだね」
「だな」
中々前に踏み出せない俺に発破を掛けてくれたんだ。
ありがとう、神さん。と心の中でお礼して帰路へと急いだ。エリナを家の前まで送り、「また明日な」と手を振ろうとした時……唇に柔らかい感触とちゅっとリップ音が鳴り、キスされたと認識するのに時間は掛からなかった。
「な、なな!?」
「ふふ、照れちゃって可愛い」
「あのなぁ…揶揄うなよ」
俺達2人を星空は優しく照らし、其処に笑うエリナがいる。それだけで、幸福を感じる程に惚れてるんだなと再確認した。いつまでも、仲睦まじい関係が続きますようにと願いを込めて夜空を見上げるのであった。
*END*
あとがき
此処まで読んで下さってありがとうございました!神さんが清田さんの気持ちを知りつつ発破を掛けるシーンを書きたいなと思い、出来上がった作品です。
そう言えば、いよいよ映画公開日が発表されましたね。12/3が楽しみです。その日は休み入れて朝一で観に行こうかなと薄ら考えています😌皆様は何時頃映画観に行くんですかね?中にはDVDで家でゆっくり観る方もいらっしゃるかもしれませんが。個人的には朝一の人が少ない映画館で真ん中より後ろの席で座って観るのが好きです。子供の頃は映画前の広告や宣伝が焦ったくて早く観たい気持ちが大きかったのですが、大人になるとそれを観るのも楽しみの一つであり好きになりました☺️
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