初詣
ヒロインの名前
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年が明けて日が跨いだ瞬間にあけおめとSNSで送るのが当たり前となった便利な世の中。神社へ行けば大勢の参拝客で賑わいを見せていた。幾つか出店もあって、夏祭りと比べると数は少ないけれど、ベビーカステラに唐揚げ、フランクフルトと言った定番のお店だ。
朝はおせちや雑煮、お餅を食べ過ぎたと苦笑するエリナちゃんの隣に並んで賽銭箱に小銭を投げて鐘を鳴らした。
「何をお願いしたの?」
「ん?今年も可愛いエリナちゃんと仲良く過ごせますようにってね」
「なっ…!」
“可愛い”と普段から口にしているのに未だに慣れなくて頬を真っ赤にして照れ隠しでぽかぽか腕を叩く姿が愛おしい。本当なら抱き締めたいけれど、公共の場で大胆な事をするとエリナちゃんが嫌がるのでしない。
「エリナちゃんは?何をお願いした?」
「…今年こそ、陵南バスケ部が全国に行けますようにって」
「へ?」
俺は思わず素っ頓狂な声を出した。マネージャーでもないしバスケ部の彼女に過ぎないのに俺よりも部活の事を大切に思っているなんて。
「私は、バスケをする彰が誰よりも好き。煌めいていて多くの人を虜にするプレイも…。だから、全国でもっと名を轟かせて欲しいなって」
下を向いてボソボソ話すが耳が赤いので照れていると分かるには十分だ。エリナちゃんは自分の幸せよりも周りの幸せを願う優しく可憐な女の子だ。そんな彼女なので辛い時も楽しい時も支え合って歩んで来た。だから、期待に応えないとバチが当たりそうだ。
手をグッと丸めて力を込めて、彼女の方を見て伝えた。
「任せといて。全国への切符は必ず掴み取るから」
「うん!」
パッと太陽のような笑顔で溢れた顔。しかし、直ぐに仏頂面になって、「練習サボったり遅刻したら越野君に言い付けるからね」と、とんでもない発言をしたので眉を下げて苦笑いした。
「えー、それは勘弁してよ」
「だーめ」
ちぇーと唇を尖らせたが、こうして些細なやり取りをする時間さえも幸福に満ちているなと実感出来るんだ。
それから御神籤を引いて、エリナちゃんは大吉で俺は吉だった。“正しき道を歩み切磋琢磨取り組めば何事も道は開き、願いが叶う”と書かれていて、正に彼女の願いが俺の行動で変わるんだと言われているみたいで神様は何でもお見通しだなと小さく微笑んだ。
「来週から始業式だけどちゃんと時間前に来るのよ!」
「うん。じゃあ、またね」
神社を出て人気のない道へ出た。そろそろ別れ道になる。簡単な別れの挨拶を終えて手を振ろうとしたその時、俺の頬を白い手で挟んで唇に触れるだけの柔らかく温かい感触がした。
「また始業式で会いましょう」
ニコリと優しく笑みを浮かべて去って行った。
エリナちゃんの姿が見えなくなるまで眺めていた。そして俺も帰るか、と踵を返す。
ビュウッと強い風が吹いて身体を通り抜けて手が震えそうだったが、唇だけはカイロのように温かく熱を帯びていた。
*END*
朝はおせちや雑煮、お餅を食べ過ぎたと苦笑するエリナちゃんの隣に並んで賽銭箱に小銭を投げて鐘を鳴らした。
「何をお願いしたの?」
「ん?今年も可愛いエリナちゃんと仲良く過ごせますようにってね」
「なっ…!」
“可愛い”と普段から口にしているのに未だに慣れなくて頬を真っ赤にして照れ隠しでぽかぽか腕を叩く姿が愛おしい。本当なら抱き締めたいけれど、公共の場で大胆な事をするとエリナちゃんが嫌がるのでしない。
「エリナちゃんは?何をお願いした?」
「…今年こそ、陵南バスケ部が全国に行けますようにって」
「へ?」
俺は思わず素っ頓狂な声を出した。マネージャーでもないしバスケ部の彼女に過ぎないのに俺よりも部活の事を大切に思っているなんて。
「私は、バスケをする彰が誰よりも好き。煌めいていて多くの人を虜にするプレイも…。だから、全国でもっと名を轟かせて欲しいなって」
下を向いてボソボソ話すが耳が赤いので照れていると分かるには十分だ。エリナちゃんは自分の幸せよりも周りの幸せを願う優しく可憐な女の子だ。そんな彼女なので辛い時も楽しい時も支え合って歩んで来た。だから、期待に応えないとバチが当たりそうだ。
手をグッと丸めて力を込めて、彼女の方を見て伝えた。
「任せといて。全国への切符は必ず掴み取るから」
「うん!」
パッと太陽のような笑顔で溢れた顔。しかし、直ぐに仏頂面になって、「練習サボったり遅刻したら越野君に言い付けるからね」と、とんでもない発言をしたので眉を下げて苦笑いした。
「えー、それは勘弁してよ」
「だーめ」
ちぇーと唇を尖らせたが、こうして些細なやり取りをする時間さえも幸福に満ちているなと実感出来るんだ。
それから御神籤を引いて、エリナちゃんは大吉で俺は吉だった。“正しき道を歩み切磋琢磨取り組めば何事も道は開き、願いが叶う”と書かれていて、正に彼女の願いが俺の行動で変わるんだと言われているみたいで神様は何でもお見通しだなと小さく微笑んだ。
「来週から始業式だけどちゃんと時間前に来るのよ!」
「うん。じゃあ、またね」
神社を出て人気のない道へ出た。そろそろ別れ道になる。簡単な別れの挨拶を終えて手を振ろうとしたその時、俺の頬を白い手で挟んで唇に触れるだけの柔らかく温かい感触がした。
「また始業式で会いましょう」
ニコリと優しく笑みを浮かべて去って行った。
エリナちゃんの姿が見えなくなるまで眺めていた。そして俺も帰るか、と踵を返す。
ビュウッと強い風が吹いて身体を通り抜けて手が震えそうだったが、唇だけはカイロのように温かく熱を帯びていた。
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