暑い夏の日の凍える出来事
ヒロインの名前
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「何だ?宮城の奴。やけに嬉しそうじゃねぇか」
「ふふ、この天才には分かる。あれは…彼女が出来たな」
天才と言う割には50人に振られ続けてたじゃねぇかと言う突っ込みを忘れる程、【彼女が出来た疑惑】は青春真っ只中の三井にとってはショックであり、先を越されたような悲しさもあったが、それ以上に事実を知りたい。脱非リア充が本当なのかこの目で確かめてみたくなってきた。
「何っ!?あいつ俺を差し置いて…。なぁ、冷やかしに行かね?そもそもレンタル彼女かもしれねぇし」
「面白そうだな!ラーメンは後日にして尾行しようぜ」
まさか2人がついて来ているなど微塵も思わない俺は、足繁く通っている公園へ向かうとエリナちゃんが見えた。
「ごめんね、毎回待ってくれて。そう言えば、エリナちゃんって学生?学校やバイトとか忙しいだろうに」
そう言うと一瞬表情を曇らせた後、直ぐに明るい笑顔になって「大学1年でバイトはしてないから大丈夫だよ」とだけ言った。それから話は今日あった抜き打ち小テストがズタボロだったとか、ラーメンを奢る奢らないの言い合いをしていた三井サンと花道の話をした。
「小テストお疲れ様。賑やかで良いなー。部活帰りのラーメンって絶対美味しいよね!」
「うん!…その、今日は他にも伝えたい事がありまして…。」
「ん?どうしたの、改まっちゃって」
深呼吸をしてから、彼女の目を見て言葉を紡いだ。
「…好きです。明るく綺麗なエリナちゃんが!話していて凄く心が楽なんだ。だからっ!俺と付き合って下さい…っ!」
わー、もっとちゃんとした文を用意しておけば良かったと後悔した。告白に倒置法使っちゃったし…少し早口だったし。ああ、クソッと戻らない時間を悔やみながらエリナちゃんをチラリと見ると両頬を手で押さえて震えていた。
「本当…?私もリョータが好き。ずっと一緒にいたいなって」
「え!?って事は…両想い?」
「うん…!じゃあ、いこっか!」
「いくって、こんな時間じゃお店閉まってるしまた日を改めた方が良いんじゃないの?」
「ううん、イマ逝クノ」
急に片言になり、此方を見て笑っているがその笑顔が普通ではなかった。目は半月型で口は弧を描いて俺の知るエリナちゃんではない何かを垣間見た気がする。只ならぬ殺気と異変を感じて距離を置こうと立ち上がったが、右腕を掴まれて逃げられない。女性の力とは思えない凄まじい勢いで、少しでも気を抜けば何処かに引き摺り込まれそうだ。
目を細めて、ぐぎぎぎっ…と足に力を入れるがその抵抗も虚しく、靴に抉られた土が当たりどう足掻いても脱出は不可能に近かった。
もう一度、話し合えば分かるかな?そう思って口を開こうとしたら……。
「リョーちん!!おい、リョーちんってば!」
「宮城!!起きてんなら返事しろ!」
「……ん?あれ?花道と…三井サン?」
何故か其処にはエリナちゃんではなく、今頃ラーメン屋にいるであろう花道と三井サンが視界に映った。
俺が中々目を開けないからか、頬に強い痛みが走る。こんなに強く叩かなくたっていいじゃんかと思いながら体を起こせば、2人は俺が意識を取り戻したからか安堵の息を吐いた。
「お前、頭の病院行くべきだろ。ずっと誰もいない公園でベラベラ話し出したかと思えば、突然自分の首を締め出して呻き苦しみ出すもんだから」
「そうだぞ!俺達が駆け付けなかったらどうなってた事か」
「……は?エリナちゃんって言う女子大生と話してたんだけど」
当たり前のように言うと2人は顔を青ざめて、幾ら彩子(さん)に振り向いて貰えないからと言って、架空の恋人を作り幻覚まで見える程おかしくなってたのかと思うのであった。取り敢えず、もう時間も遅いし帰るぞと3人は立ち上がりそれぞれの家へと戻って行く。周りを見渡してもエリナちゃんの姿はなくて。
ふと、あの時掴まれた右腕を見るとくっきりと赤い手形が付いていた。ゾクゾクッと背筋が凍り付く。その手形は先程まで彼女と一緒にいた事を物語っていた。
それ以来、怖くなってその公園へ行く事はなかった。
******
「二階堂 エリナ?…ああ、知ってるよ」
あの一件から数週間後、ふとエリナちゃんが「其処の角を曲がって直ぐ」と言っていた住宅地の周辺に木暮さんの家があった事を思い出して、確信はないがもしかしたら知っているのかもしれないと、淡い期待を抱いて問い掛けた。
「彼女、湘北高校出身で俺より2個上だったんだよ」
成る程、俺が1年の頃にはもう卒業していたのか。だから学校が同じなのも気付かなかったんだ。そして木暮さんは話を続けた。
「バスケ部の先輩に聞いた話だけど、美人で真面目で頭も良くて優しいからクラスの人気者でね。彼氏が出来たらしいんだけど、仲が良いのは初めだけでさ。その彼氏が浮気性でどうしようもない奴だったんだ。それでみるみる内に関係は悪くなって別れようとしたけど男の方が『お前と付き合ってると俺のステータスが上がるから絶対別れない。次そんな事言ったら友達と輪姦するぞ』って言って、大学に行っても関係が続いて更にサークルでは上手く馴染めなかったらしい。精神的に色々追い詰められて、何処かの公園で自殺したんだってさ」
「それにしても、彼氏が嫌な奴で酷い話だよな。可哀想だ」と言いながらユニフォームをハンガーに掛ける木暮さんの背中をぼんやり見詰めながら言葉を失った。何だよそれ…。何でだよ。彼女がこの世に存在しなかったのは薄々感じていたけれど、それ以上にクソみたいな奴の所為で命を絶った現実に無性に腹が立った。もし、生きていたら俺が幸せにしてやりたかった。下唇を噛んで涙を堪える事しか出来ない自分が悔しいが、どうしようもなくて。
「…ぎ?宮城!どうした?」
黙り込んでいる俺を不思議そうに見る木暮さんに、「何でもないっす」と答えて更衣室を出た。俺より3学年上だから、本当は大学2年(真面目で頭が良いから留年する事はないだろう)なのに大学1年と答えたのはエリナちゃんの中では1年で時が止まっているからに違いない。
これは単なる憶測だが、きっと彼女は寂しくて今度こそ自分の事を一途に愛してくれそうな人を探していたんだ。俺をあの世に引き摺り込んで2人で仲良く過ごしたかったんだろう。一歩間違えれば俺も命を落とす危険性があったと思うと身震いがする。あの時助けてくれた三井サンと花道には感謝している。
もう会う事はないかもしれないけど、いつか成仏して天国で安らかに眠って欲しいなと願いながら靴紐を結んで歩き出した。
*END*
あとがき
此処まで読んで下さってありがとうございました。8月も残す所1週間を切り、蝉の声が殆どしなくなりました。まだ暑さは続きますが、そんな中で背筋が寒くなる少し怖い話を書いてみたくなって書きましたが如何でしたでしょうか?かく言う私もホラー耐性0ですが笑 まだ文字だけなら何とかいけるかな?程度です。
本作の中で補足を幾つか挙げますが①幽霊ですが足があります。これはとある芸人さんの話ですが普通に人に紛れて生活してる霊もいるとの事なのでもしかしたら足があるタイプもいるのではと思い、足を付けました。②スマホを持っていないと言っていましたが、本当は持っていましたが今は人ではないので持っていないのです。③トイレへ行ってから出てこないのはトイレで首を吊ったから元々本体があった其処に戻った感じです。勿論、遺体はもうありませんけどね。
思い付きで書いたので色々設定が変な所があるかもしれませんが、其処はご了承下さい…。
「ふふ、この天才には分かる。あれは…彼女が出来たな」
天才と言う割には50人に振られ続けてたじゃねぇかと言う突っ込みを忘れる程、【彼女が出来た疑惑】は青春真っ只中の三井にとってはショックであり、先を越されたような悲しさもあったが、それ以上に事実を知りたい。脱非リア充が本当なのかこの目で確かめてみたくなってきた。
「何っ!?あいつ俺を差し置いて…。なぁ、冷やかしに行かね?そもそもレンタル彼女かもしれねぇし」
「面白そうだな!ラーメンは後日にして尾行しようぜ」
まさか2人がついて来ているなど微塵も思わない俺は、足繁く通っている公園へ向かうとエリナちゃんが見えた。
「ごめんね、毎回待ってくれて。そう言えば、エリナちゃんって学生?学校やバイトとか忙しいだろうに」
そう言うと一瞬表情を曇らせた後、直ぐに明るい笑顔になって「大学1年でバイトはしてないから大丈夫だよ」とだけ言った。それから話は今日あった抜き打ち小テストがズタボロだったとか、ラーメンを奢る奢らないの言い合いをしていた三井サンと花道の話をした。
「小テストお疲れ様。賑やかで良いなー。部活帰りのラーメンって絶対美味しいよね!」
「うん!…その、今日は他にも伝えたい事がありまして…。」
「ん?どうしたの、改まっちゃって」
深呼吸をしてから、彼女の目を見て言葉を紡いだ。
「…好きです。明るく綺麗なエリナちゃんが!話していて凄く心が楽なんだ。だからっ!俺と付き合って下さい…っ!」
わー、もっとちゃんとした文を用意しておけば良かったと後悔した。告白に倒置法使っちゃったし…少し早口だったし。ああ、クソッと戻らない時間を悔やみながらエリナちゃんをチラリと見ると両頬を手で押さえて震えていた。
「本当…?私もリョータが好き。ずっと一緒にいたいなって」
「え!?って事は…両想い?」
「うん…!じゃあ、いこっか!」
「いくって、こんな時間じゃお店閉まってるしまた日を改めた方が良いんじゃないの?」
「ううん、イマ逝クノ」
急に片言になり、此方を見て笑っているがその笑顔が普通ではなかった。目は半月型で口は弧を描いて俺の知るエリナちゃんではない何かを垣間見た気がする。只ならぬ殺気と異変を感じて距離を置こうと立ち上がったが、右腕を掴まれて逃げられない。女性の力とは思えない凄まじい勢いで、少しでも気を抜けば何処かに引き摺り込まれそうだ。
目を細めて、ぐぎぎぎっ…と足に力を入れるがその抵抗も虚しく、靴に抉られた土が当たりどう足掻いても脱出は不可能に近かった。
もう一度、話し合えば分かるかな?そう思って口を開こうとしたら……。
「リョーちん!!おい、リョーちんってば!」
「宮城!!起きてんなら返事しろ!」
「……ん?あれ?花道と…三井サン?」
何故か其処にはエリナちゃんではなく、今頃ラーメン屋にいるであろう花道と三井サンが視界に映った。
俺が中々目を開けないからか、頬に強い痛みが走る。こんなに強く叩かなくたっていいじゃんかと思いながら体を起こせば、2人は俺が意識を取り戻したからか安堵の息を吐いた。
「お前、頭の病院行くべきだろ。ずっと誰もいない公園でベラベラ話し出したかと思えば、突然自分の首を締め出して呻き苦しみ出すもんだから」
「そうだぞ!俺達が駆け付けなかったらどうなってた事か」
「……は?エリナちゃんって言う女子大生と話してたんだけど」
当たり前のように言うと2人は顔を青ざめて、幾ら彩子(さん)に振り向いて貰えないからと言って、架空の恋人を作り幻覚まで見える程おかしくなってたのかと思うのであった。取り敢えず、もう時間も遅いし帰るぞと3人は立ち上がりそれぞれの家へと戻って行く。周りを見渡してもエリナちゃんの姿はなくて。
ふと、あの時掴まれた右腕を見るとくっきりと赤い手形が付いていた。ゾクゾクッと背筋が凍り付く。その手形は先程まで彼女と一緒にいた事を物語っていた。
それ以来、怖くなってその公園へ行く事はなかった。
******
「二階堂 エリナ?…ああ、知ってるよ」
あの一件から数週間後、ふとエリナちゃんが「其処の角を曲がって直ぐ」と言っていた住宅地の周辺に木暮さんの家があった事を思い出して、確信はないがもしかしたら知っているのかもしれないと、淡い期待を抱いて問い掛けた。
「彼女、湘北高校出身で俺より2個上だったんだよ」
成る程、俺が1年の頃にはもう卒業していたのか。だから学校が同じなのも気付かなかったんだ。そして木暮さんは話を続けた。
「バスケ部の先輩に聞いた話だけど、美人で真面目で頭も良くて優しいからクラスの人気者でね。彼氏が出来たらしいんだけど、仲が良いのは初めだけでさ。その彼氏が浮気性でどうしようもない奴だったんだ。それでみるみる内に関係は悪くなって別れようとしたけど男の方が『お前と付き合ってると俺のステータスが上がるから絶対別れない。次そんな事言ったら友達と輪姦するぞ』って言って、大学に行っても関係が続いて更にサークルでは上手く馴染めなかったらしい。精神的に色々追い詰められて、何処かの公園で自殺したんだってさ」
「それにしても、彼氏が嫌な奴で酷い話だよな。可哀想だ」と言いながらユニフォームをハンガーに掛ける木暮さんの背中をぼんやり見詰めながら言葉を失った。何だよそれ…。何でだよ。彼女がこの世に存在しなかったのは薄々感じていたけれど、それ以上にクソみたいな奴の所為で命を絶った現実に無性に腹が立った。もし、生きていたら俺が幸せにしてやりたかった。下唇を噛んで涙を堪える事しか出来ない自分が悔しいが、どうしようもなくて。
「…ぎ?宮城!どうした?」
黙り込んでいる俺を不思議そうに見る木暮さんに、「何でもないっす」と答えて更衣室を出た。俺より3学年上だから、本当は大学2年(真面目で頭が良いから留年する事はないだろう)なのに大学1年と答えたのはエリナちゃんの中では1年で時が止まっているからに違いない。
これは単なる憶測だが、きっと彼女は寂しくて今度こそ自分の事を一途に愛してくれそうな人を探していたんだ。俺をあの世に引き摺り込んで2人で仲良く過ごしたかったんだろう。一歩間違えれば俺も命を落とす危険性があったと思うと身震いがする。あの時助けてくれた三井サンと花道には感謝している。
もう会う事はないかもしれないけど、いつか成仏して天国で安らかに眠って欲しいなと願いながら靴紐を結んで歩き出した。
*END*
あとがき
此処まで読んで下さってありがとうございました。8月も残す所1週間を切り、蝉の声が殆どしなくなりました。まだ暑さは続きますが、そんな中で背筋が寒くなる少し怖い話を書いてみたくなって書きましたが如何でしたでしょうか?かく言う私もホラー耐性0ですが笑 まだ文字だけなら何とかいけるかな?程度です。
本作の中で補足を幾つか挙げますが①幽霊ですが足があります。これはとある芸人さんの話ですが普通に人に紛れて生活してる霊もいるとの事なのでもしかしたら足があるタイプもいるのではと思い、足を付けました。②スマホを持っていないと言っていましたが、本当は持っていましたが今は人ではないので持っていないのです。③トイレへ行ってから出てこないのはトイレで首を吊ったから元々本体があった其処に戻った感じです。勿論、遺体はもうありませんけどね。
思い付きで書いたので色々設定が変な所があるかもしれませんが、其処はご了承下さい…。
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