気付けば好きになっていた
ヒロインの名前
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諺とは、昔からある物なのに近代でも「ああ、成る程確かにな」と共感出来る物は数多くあるが、どう頑張っても「それは違う」と否定する言葉がある。
【若い時の苦労は買ってでもせよ】
いや、馬鹿か?人の将来なんて分かりゃしないのに後の経験に繋がるからとか言われてもそれ以前に人生全体を通して苦難なく過ごしたいだろう。
「…血の滲むような練習メニューだけでも十分苦労してるけどな」
昼休みの真っ只中に、購買で買ったパンに齧り付きながらそんな事を話していると花形が的確な突っ込みを入れてきた。
「それは苦労でも耐えられるし、バスケは好きだから良いんだよ」
理屈になっていない感情論で返答する俺に花形は顔色一つ変えずに「確かにな」と安直な答えを口に出した。
そんな時、後ろから女子の会話の声が聞こえてきた。
「え、エリナ今日もバイト?働き過ぎじゃん。何連勤よ?」
「5連勤かなぁ」
指折り数えて答える彼女は俺のクラスメイトの二階堂 エリナ。幼い頃に父親を亡くして片親で家計が貧しく、部活する時間は勿論なくて、バイトと学校で多忙な勤労少女だ。
正しく先程話していた【若い時の苦労】とは彼女が現在小さい肩で背負っている物だろう。
大変だよな、まだ高校生なのに。学校帰りに友達とタピオカ飲んだりパンケーキの写真をSNSに載せて「映えるわー」なんて笑う暇もなく、終わりの会が終わったら鞄を持って足早に教室を出て自転車で職場へ向かう。
少なくとも、俺なら自分の未来を嘆くだろう。どうしても自由溢れる周りと比較して悲観的になるのが目に見える。でも、二階堂は弱音吐かずに自分の運命を受け入れて乗り越えている。…て、何で二階堂の事を真剣に考察なんてしてるんだと我に返った。偶々疑問に思った諺が彼女と一致してただけだろう。だから、思慮深くなっていたんだと自己解決する。
「5連勤!?大変だね…来週、試験あるし身体に負担掛けないようにね」
「ありがとう!ぼちぼち頑張るよ。もし、授業中居眠りしてノート取り忘れたら貸してね」
「それくらい良いよ!」
それから二階堂が「ありがとう、恩に着るよー」と感謝の言葉をあげて数分後に予鈴が鳴って5限目に突入するのであった。
******
ピーーッと笛の音が体育館内に響き渡り、「今日の練習終わりー」と告げて後片付けと清掃が行われる。
「帰りにバーガー食べに行かね?」
「お、いいね!藤真さんもどうですか?」
「あー、ごめん。今日はパス」
特に理由はなかったが、今日は家でゆっくりしたい気分だった。後輩達は「またいつか行きましょうね」と返事をして足早にハンバーガーショップへと足を進めるのであった。
花形は図書室で調べ事があったと言って帰りは1人だ。季節は初夏で日が沈んでいても空気が生温くて早くお風呂に入りたい。練習で掻いた汗と一緒に早く洗い流したいなと思いながら暫く歩いていると、数メートル先に倒れている女の子がいた。翔陽の制服を着ているので同じ学校かとそれで判断する。
「大丈夫ですか?」
急いで駆け寄ると其処には同級生の二階堂が倒れている事に気付いた。声を掛けても返事がなくて咄嗟に脳内に地図を浮かべて自宅から徒歩7分に総合病院があるから其処へ連れて行くかと判断した。
この時、人間の脳は不思議でパニックになるように思えるが意外と冷静に考えられる物なんだなと思いながら二階堂を運ぶ。
先程、ハンバーガーショップへ行くのを断っていて良かった。もしかしたら、虫の知らせだったのかもしれない。そう思いながら病院の入り口を入り、受付の人に状況を説明すると瞬く間に二階堂は検査する為、運ばれた。幸い、平日の夜でいつもより空いていた。
「彼女の住所や電話番号は生徒手帳に記載されていると思いますので…。」
それでは、と言って退散しようとすると看護師に止められた。
「待って下さい…!彼氏さんも一緒にいた方が心強いかと思われますし…。」
「え…?えっと…。」
あれ?何で違いますって即答出来ないんだ…?俺自身の行動に疑問が生まれた。何だか今日は疑問ばかり浮かべている気がする。
考えて見れば、人が倒れているなら大声で叫んで助けを呼び119番すれば済んだのに、自分の余暇の時間を削ってまで彼女に付き添えたのは…何故だろう。もし、仮に二階堂じゃなかったら俺は………どうしていたんだっけ?
脳内をぐるぐると駆け巡り答えを考えても咄嗟には浮かばなくて。
「あのー…?」
ハッとなって看護師が困ったように此方を眺めているから不思議に思ったのだろう。
考えたら彼氏ではない事は事実だし、その旨伝えようと口を開いた時だった。
医者と一緒に二階堂が出て来たのは。血の気が引いたように顔色は少し悪くら多忙による睡眠不足と貧血との事。
「鉄分と睡眠を沢山取って下さい。若いからと言って無茶し過ぎてはいけませんよ」
「はい…。ご迷惑お掛けしました。…藤真君もごめんなさい。部活忙しいのに」
「いや、別に大丈夫。…あんまり無理すんなよ」
そう言って頭にぽんぽんと手を乗せて「また明日な」と踵を返す。
「あのっ!帰り道途中まで一緒に帰って良いかな?」
「別に良いけど」
他愛のない話をする帰り道。挨拶程度の関係でそれ程仲良くなかったのに話してみると面白くて明るくて楽しい奴だった。
…二階堂と付き合うと毎日こんなにキラキラしてるんだろうな。看護師に彼氏と間違えられた事を重ねて、急に意識している自分が恥ずかしくなり首を左右に振った。そんな俺を不思議そうな顔で見詰める彼女に、「何でもない」と答えた。
「あのさ…。」
「ん?」
「もし良かったら…お礼も兼ねてカフェとか行かない?お茶の一杯くらい奢りたいし」
「お、良いな。んー…でも、お茶だけかー」
それを聞いた二階堂は顔をギョッとさせた。もしかして、高額な物を買わされると身構えてるのか…?そんな訳ないのに。俺は……
“お茶だけじゃなくて、二階堂が欲しいな”
言葉で表現するのは小っ恥ずかしいから心の中で呟いた。
「…お金に余裕ないから、気持ちだけで許してくれない?今はこれが精一杯」
有名な映画のセリフと共に差し出された手には一粒のチョコレート。コンビニで30円程度で買える有名なお菓子。
「じゃ、有り難く頂くな。二階堂の気持ち。後、これからも都合が合えば遊びに行こう」
ニコッと笑うと二階堂は目を丸くして数回瞬きをして微笑んだ。笑った顔…凄く可愛い。無意識の内に彼女に恋していたんだ。
「勿論!私、家の方角こっちだから!また明日学校でねー!」
そうすると二階堂は姿が見えなくなるまで手を振り、俺は心が満たされたような気持ちになり体温が上がっていく。これはきっと…暑さのせいではなく、二階堂だ。
先程貰ったチョコの包み紙を開けて口に入れると手の体温で少し溶けた甘いミルクチョコが口に広がり、幸せな気分のまま家の玄関を開けると母親に「何だか機嫌良いけど、何かあった?」と聞かれたのは言うまでもなかった。
*END*
此処まで読んで下さってありがとうございました✧*。٩(ˊωˋ*)و✧*。久々の更新です。書いてて藤真さんってもっとはっきり自分の気持ち伝えそうなイメージありますが、彼も思春期の高校生と言うのをテーマに上手く伝えられない感じに仕上げました。
【若い時の苦労は買ってでもせよ】
いや、馬鹿か?人の将来なんて分かりゃしないのに後の経験に繋がるからとか言われてもそれ以前に人生全体を通して苦難なく過ごしたいだろう。
「…血の滲むような練習メニューだけでも十分苦労してるけどな」
昼休みの真っ只中に、購買で買ったパンに齧り付きながらそんな事を話していると花形が的確な突っ込みを入れてきた。
「それは苦労でも耐えられるし、バスケは好きだから良いんだよ」
理屈になっていない感情論で返答する俺に花形は顔色一つ変えずに「確かにな」と安直な答えを口に出した。
そんな時、後ろから女子の会話の声が聞こえてきた。
「え、エリナ今日もバイト?働き過ぎじゃん。何連勤よ?」
「5連勤かなぁ」
指折り数えて答える彼女は俺のクラスメイトの二階堂 エリナ。幼い頃に父親を亡くして片親で家計が貧しく、部活する時間は勿論なくて、バイトと学校で多忙な勤労少女だ。
正しく先程話していた【若い時の苦労】とは彼女が現在小さい肩で背負っている物だろう。
大変だよな、まだ高校生なのに。学校帰りに友達とタピオカ飲んだりパンケーキの写真をSNSに載せて「映えるわー」なんて笑う暇もなく、終わりの会が終わったら鞄を持って足早に教室を出て自転車で職場へ向かう。
少なくとも、俺なら自分の未来を嘆くだろう。どうしても自由溢れる周りと比較して悲観的になるのが目に見える。でも、二階堂は弱音吐かずに自分の運命を受け入れて乗り越えている。…て、何で二階堂の事を真剣に考察なんてしてるんだと我に返った。偶々疑問に思った諺が彼女と一致してただけだろう。だから、思慮深くなっていたんだと自己解決する。
「5連勤!?大変だね…来週、試験あるし身体に負担掛けないようにね」
「ありがとう!ぼちぼち頑張るよ。もし、授業中居眠りしてノート取り忘れたら貸してね」
「それくらい良いよ!」
それから二階堂が「ありがとう、恩に着るよー」と感謝の言葉をあげて数分後に予鈴が鳴って5限目に突入するのであった。
******
ピーーッと笛の音が体育館内に響き渡り、「今日の練習終わりー」と告げて後片付けと清掃が行われる。
「帰りにバーガー食べに行かね?」
「お、いいね!藤真さんもどうですか?」
「あー、ごめん。今日はパス」
特に理由はなかったが、今日は家でゆっくりしたい気分だった。後輩達は「またいつか行きましょうね」と返事をして足早にハンバーガーショップへと足を進めるのであった。
花形は図書室で調べ事があったと言って帰りは1人だ。季節は初夏で日が沈んでいても空気が生温くて早くお風呂に入りたい。練習で掻いた汗と一緒に早く洗い流したいなと思いながら暫く歩いていると、数メートル先に倒れている女の子がいた。翔陽の制服を着ているので同じ学校かとそれで判断する。
「大丈夫ですか?」
急いで駆け寄ると其処には同級生の二階堂が倒れている事に気付いた。声を掛けても返事がなくて咄嗟に脳内に地図を浮かべて自宅から徒歩7分に総合病院があるから其処へ連れて行くかと判断した。
この時、人間の脳は不思議でパニックになるように思えるが意外と冷静に考えられる物なんだなと思いながら二階堂を運ぶ。
先程、ハンバーガーショップへ行くのを断っていて良かった。もしかしたら、虫の知らせだったのかもしれない。そう思いながら病院の入り口を入り、受付の人に状況を説明すると瞬く間に二階堂は検査する為、運ばれた。幸い、平日の夜でいつもより空いていた。
「彼女の住所や電話番号は生徒手帳に記載されていると思いますので…。」
それでは、と言って退散しようとすると看護師に止められた。
「待って下さい…!彼氏さんも一緒にいた方が心強いかと思われますし…。」
「え…?えっと…。」
あれ?何で違いますって即答出来ないんだ…?俺自身の行動に疑問が生まれた。何だか今日は疑問ばかり浮かべている気がする。
考えて見れば、人が倒れているなら大声で叫んで助けを呼び119番すれば済んだのに、自分の余暇の時間を削ってまで彼女に付き添えたのは…何故だろう。もし、仮に二階堂じゃなかったら俺は………どうしていたんだっけ?
脳内をぐるぐると駆け巡り答えを考えても咄嗟には浮かばなくて。
「あのー…?」
ハッとなって看護師が困ったように此方を眺めているから不思議に思ったのだろう。
考えたら彼氏ではない事は事実だし、その旨伝えようと口を開いた時だった。
医者と一緒に二階堂が出て来たのは。血の気が引いたように顔色は少し悪くら多忙による睡眠不足と貧血との事。
「鉄分と睡眠を沢山取って下さい。若いからと言って無茶し過ぎてはいけませんよ」
「はい…。ご迷惑お掛けしました。…藤真君もごめんなさい。部活忙しいのに」
「いや、別に大丈夫。…あんまり無理すんなよ」
そう言って頭にぽんぽんと手を乗せて「また明日な」と踵を返す。
「あのっ!帰り道途中まで一緒に帰って良いかな?」
「別に良いけど」
他愛のない話をする帰り道。挨拶程度の関係でそれ程仲良くなかったのに話してみると面白くて明るくて楽しい奴だった。
…二階堂と付き合うと毎日こんなにキラキラしてるんだろうな。看護師に彼氏と間違えられた事を重ねて、急に意識している自分が恥ずかしくなり首を左右に振った。そんな俺を不思議そうな顔で見詰める彼女に、「何でもない」と答えた。
「あのさ…。」
「ん?」
「もし良かったら…お礼も兼ねてカフェとか行かない?お茶の一杯くらい奢りたいし」
「お、良いな。んー…でも、お茶だけかー」
それを聞いた二階堂は顔をギョッとさせた。もしかして、高額な物を買わされると身構えてるのか…?そんな訳ないのに。俺は……
“お茶だけじゃなくて、二階堂が欲しいな”
言葉で表現するのは小っ恥ずかしいから心の中で呟いた。
「…お金に余裕ないから、気持ちだけで許してくれない?今はこれが精一杯」
有名な映画のセリフと共に差し出された手には一粒のチョコレート。コンビニで30円程度で買える有名なお菓子。
「じゃ、有り難く頂くな。二階堂の気持ち。後、これからも都合が合えば遊びに行こう」
ニコッと笑うと二階堂は目を丸くして数回瞬きをして微笑んだ。笑った顔…凄く可愛い。無意識の内に彼女に恋していたんだ。
「勿論!私、家の方角こっちだから!また明日学校でねー!」
そうすると二階堂は姿が見えなくなるまで手を振り、俺は心が満たされたような気持ちになり体温が上がっていく。これはきっと…暑さのせいではなく、二階堂だ。
先程貰ったチョコの包み紙を開けて口に入れると手の体温で少し溶けた甘いミルクチョコが口に広がり、幸せな気分のまま家の玄関を開けると母親に「何だか機嫌良いけど、何かあった?」と聞かれたのは言うまでもなかった。
*END*
此処まで読んで下さってありがとうございました✧*。٩(ˊωˋ*)و✧*。久々の更新です。書いてて藤真さんってもっとはっきり自分の気持ち伝えそうなイメージありますが、彼も思春期の高校生と言うのをテーマに上手く伝えられない感じに仕上げました。
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