当たり前
ヒロインの名前
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「また釣りしてる!部活に行かないと駄目だよー!」
ふわぁあーと大きな欠伸をしながら後ろへ振り向けば、缶コーヒーを顔の前へ差し出される。
マフラーと手袋を付けて寒さ対策バッチリの彼女。俺は反射的に受け取った温かさが残る缶コーヒーとエリナちゃんを交互に見詰めて、ありがとうと微笑んだ。
吐く息の白さと悴む手足に缶コーヒーをカイロの代わりにしながら一口飲むと胸の奥にほろ苦さと温かさが広がって、満たされた気持ちになる。
「こんなに寒いのに釣りなんて…変わってるよね」
「そうか?気長に待つのが醍醐味なんだよ」
「ふーん…。」
あまりにも素っ気ない返事なので、質問したのに何だよと思いながら、俺はエリナちゃんを横目で見るとぼんやりと海原を眺めていた。
遠くを見渡す限りの広い波を見ていると大抵の事はどうでも良くなる…そんな不思議な場所でもあると俺は思う。
元々、釣りが好きってのもあるけど海を見るのが好きなのも一つの理由かもしれない。
エリナちゃんは俺の彼女でも幼馴染でもない、唯の知り合い。可愛くて明るい子だなってのが第一印象。
今年の春にバスケ部のマネージャーになったので話す事は何回かあったが、飽くまで部活上の関係に過ぎなかった。
「…何か悩んでる?」
「え?…べ、別に…。せ、仙道といると私までサボり扱いになるじゃん!早く体育館に行こうよ」
グイッと袖を引っ張るが男と女で俺は図体がデカイから1ミリも動かない。例えるなら熊を兎が運ぶくらい無謀なのである。
んーっと顔を赤くさせて力の限り引っ張るから袖が伸びそうになるので、俺の方から白旗を上げる。
「分かったよ、今片付けるから。でも…」
「でも?」
「俺になら本音で話してもいいよ」
何かあったんだろ?と大人が子供に優しく話し掛けるように聞けば俯きながら肩を小刻みに振るわせた。
「あ、悪い。言いにくかったら無理に言わなくても……「彼女いるの?」
後から考えたら言い方は優しくても相手が話すように誘導してるんだから、若干脅迫だよなと数分前の自分を後悔した。急いで訂正しようと言葉を紡げば俺の言葉を遮り、予想外の返答があった。
彼女がいたら、真冬の中釣りしてないと思うんだけどなぁ…。勿論、恋人がいたとしても釣りに行くかもだけど明らかに今より頻度は減るし、部屋でイチャつく時間の方が増えるだろう。
「いや、いないけど」
「本当!?…良かったぁ」
良かった?何がと聞こうとしたら耳まで真っ赤になって…慌てふためくエリナちゃんが居た。
部活中の手際の良さやテキパキとした対応をする彼女ばかり見ていたからか新鮮だった。この子もこんな顔するんだなぁ…。もしかして部活の中で俺だけが知ってる一面なんだろうかと俺の中で小さな優越感に浸っている。
…あれ?エリナちゃんの事、好き…なのかな?興味ない人間だとしたら優越感に浸らない…よな?
「も、もしね!彼女さんがいたら私が幾らマネージャーと言えど部活に連行してたら悪い気になってたんじゃないかなって思ったの!」
誤解させないよう、身振り手振りで一生懸命説明する真面目なエリナちゃんが愛おしくなって。
好きだったのに気付かない自分の鈍感さに苦笑いを浮かべた。サボり魔の俺を懲りずに釣り堀まで足を運び、元気よく背中を押して笑い掛けたり時折、飲み物やお菓子の差し入れを太陽のような優しく温かい笑顔でくれる姿がいつの間にか俺の中で“当たり前”の一部になっていたんだ。その当たり前がなかったら味のないガムを噛み続けるような…しけた時間を繰り返してた。其処迄の結論に至った俺は自然と告白をした。
「…じゃあさ、俺と付き合ってよ」
「んっ??」
そうすれば、悩む必要ないでしょ?と顔を覗き込み、へにゃっと砕けた笑顔を向ければ目を見開き両頬を手で押さえた。
「うん…。宜しく…ね」
ごにょごにょと小声で話すエリナちゃんの手を引っ張って走り出した。勿論、部活に行く為に。部活が終わったら帰りに寄り道して帰るのも悪くないなと頭の中で簡単なデートプランを練る。伊達にPGやってないから構想を組み立てるのは得意な方なんだよなぁ。
「ちょっ、どうしたの?突然元気になって…!」
「エリナちゃんと恋人になれたからな。さぁ、いこーか」
「なっ!恥ずかしいから大きな声で言うなーっ!」
練習中に俺がいつも以上に機嫌が良いので先輩や同期達に何かいい事あった?と聞かれる度に、当たり前を大切にしたのでと答えると全員が頭にはてなマークを浮かべたような顔になりそれが面白かった。
2人の関係を知るのは少し先の話…。
*あとがき*
久々の更新です(^_^;)パッと思い付きで書きましたので至らない部分あるかもですが大目に見て下さい笑
ふわぁあーと大きな欠伸をしながら後ろへ振り向けば、缶コーヒーを顔の前へ差し出される。
マフラーと手袋を付けて寒さ対策バッチリの彼女。俺は反射的に受け取った温かさが残る缶コーヒーとエリナちゃんを交互に見詰めて、ありがとうと微笑んだ。
吐く息の白さと悴む手足に缶コーヒーをカイロの代わりにしながら一口飲むと胸の奥にほろ苦さと温かさが広がって、満たされた気持ちになる。
「こんなに寒いのに釣りなんて…変わってるよね」
「そうか?気長に待つのが醍醐味なんだよ」
「ふーん…。」
あまりにも素っ気ない返事なので、質問したのに何だよと思いながら、俺はエリナちゃんを横目で見るとぼんやりと海原を眺めていた。
遠くを見渡す限りの広い波を見ていると大抵の事はどうでも良くなる…そんな不思議な場所でもあると俺は思う。
元々、釣りが好きってのもあるけど海を見るのが好きなのも一つの理由かもしれない。
エリナちゃんは俺の彼女でも幼馴染でもない、唯の知り合い。可愛くて明るい子だなってのが第一印象。
今年の春にバスケ部のマネージャーになったので話す事は何回かあったが、飽くまで部活上の関係に過ぎなかった。
「…何か悩んでる?」
「え?…べ、別に…。せ、仙道といると私までサボり扱いになるじゃん!早く体育館に行こうよ」
グイッと袖を引っ張るが男と女で俺は図体がデカイから1ミリも動かない。例えるなら熊を兎が運ぶくらい無謀なのである。
んーっと顔を赤くさせて力の限り引っ張るから袖が伸びそうになるので、俺の方から白旗を上げる。
「分かったよ、今片付けるから。でも…」
「でも?」
「俺になら本音で話してもいいよ」
何かあったんだろ?と大人が子供に優しく話し掛けるように聞けば俯きながら肩を小刻みに振るわせた。
「あ、悪い。言いにくかったら無理に言わなくても……「彼女いるの?」
後から考えたら言い方は優しくても相手が話すように誘導してるんだから、若干脅迫だよなと数分前の自分を後悔した。急いで訂正しようと言葉を紡げば俺の言葉を遮り、予想外の返答があった。
彼女がいたら、真冬の中釣りしてないと思うんだけどなぁ…。勿論、恋人がいたとしても釣りに行くかもだけど明らかに今より頻度は減るし、部屋でイチャつく時間の方が増えるだろう。
「いや、いないけど」
「本当!?…良かったぁ」
良かった?何がと聞こうとしたら耳まで真っ赤になって…慌てふためくエリナちゃんが居た。
部活中の手際の良さやテキパキとした対応をする彼女ばかり見ていたからか新鮮だった。この子もこんな顔するんだなぁ…。もしかして部活の中で俺だけが知ってる一面なんだろうかと俺の中で小さな優越感に浸っている。
…あれ?エリナちゃんの事、好き…なのかな?興味ない人間だとしたら優越感に浸らない…よな?
「も、もしね!彼女さんがいたら私が幾らマネージャーと言えど部活に連行してたら悪い気になってたんじゃないかなって思ったの!」
誤解させないよう、身振り手振りで一生懸命説明する真面目なエリナちゃんが愛おしくなって。
好きだったのに気付かない自分の鈍感さに苦笑いを浮かべた。サボり魔の俺を懲りずに釣り堀まで足を運び、元気よく背中を押して笑い掛けたり時折、飲み物やお菓子の差し入れを太陽のような優しく温かい笑顔でくれる姿がいつの間にか俺の中で“当たり前”の一部になっていたんだ。その当たり前がなかったら味のないガムを噛み続けるような…しけた時間を繰り返してた。其処迄の結論に至った俺は自然と告白をした。
「…じゃあさ、俺と付き合ってよ」
「んっ??」
そうすれば、悩む必要ないでしょ?と顔を覗き込み、へにゃっと砕けた笑顔を向ければ目を見開き両頬を手で押さえた。
「うん…。宜しく…ね」
ごにょごにょと小声で話すエリナちゃんの手を引っ張って走り出した。勿論、部活に行く為に。部活が終わったら帰りに寄り道して帰るのも悪くないなと頭の中で簡単なデートプランを練る。伊達にPGやってないから構想を組み立てるのは得意な方なんだよなぁ。
「ちょっ、どうしたの?突然元気になって…!」
「エリナちゃんと恋人になれたからな。さぁ、いこーか」
「なっ!恥ずかしいから大きな声で言うなーっ!」
練習中に俺がいつも以上に機嫌が良いので先輩や同期達に何かいい事あった?と聞かれる度に、当たり前を大切にしたのでと答えると全員が頭にはてなマークを浮かべたような顔になりそれが面白かった。
2人の関係を知るのは少し先の話…。
*あとがき*
久々の更新です(^_^;)パッと思い付きで書きましたので至らない部分あるかもですが大目に見て下さい笑
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