Z=20 特別な命
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魅真が羽京に、将来はソナーマンになると告げた次の日…。
「これでよし…!」
羽京は探索に出かける前に、いつものように、魅真のケガの手当てをした。
「少しだけど良くなってきたね。でも、完全に治るには、まだまだ時間がかかるだろうから、安静にしててね」
「わかった。ありがとう」
手当てが終わると魅真はお礼を言い、羽京は近くに置いてあった、探索用の荷物を背負った。
「じゃあ魅真、またいつもぐらいの時間に帰ってくるから、大人しく待ってるんだよ」
「うん。行ってらっしゃい、2人とも」
出発前に声をかけると、魅真は羽京とクロムを見送る。
「じゃあ行ってくるぜ」
「行ってきます」
魅真に見送られると、2人はあいさつをして、石油を探すために森の中へ入っていった。
Z=20 特別な命
魅真に見送られ、森の中に入ると、羽京は3700年前の、あの日のことを思い出す。
3700年前、震災が起こった時、羽京は休みだったのだが、ちょうどその時、突然地震が起こり、救助要請が入ったので、羽京も出動することになり、震災が起こった地へと赴いた。
数時間後に被災地にたどり着くと、羽京は何人かの隊員と一緒に、救助が必要な人間がいないかどうかを、その優れた聴力で、被災者の声や音がしないかどうか探していた。
「う…あ…あぁあぁあああぁああああ!!」
その時、目の前の、倒壊してしまっている家の中から、子供…魅真の泣き声が聞こえてきた。
「この中から、人の声がします」
「何!?」
「誰かいますか!?」
中から人の声を聞きとると、周りにいる隊員に報告して、中にいる魅真に声をかけた。
「誰かいませんか?いたら返事を!!」
声をかけたが、中から声がしないので、再度中にいる魅真に聞こえるように声をかける。
「いる!!いるよ!!助けて!!」
すると、今度は反応があった。
「この中に、生きてる人がいます」
声を聞き取ると、羽京は周りにいる隊員に報告をする。
「よし。今助けに行くから、そこでジッとして待ってて!!」
「うん!」
報告をすると、もう一度声をかけ、中にいる魅真に、助けに行く旨を伝え、注意を促した。
それから、羽京をはじめとする数人で、魅真の救助にあたった。
しかし、目の前にあるこの家は、一階の部分がつぶれており、二階の部分も壁や柱が折れたり曲がったりして、半分くらいの高さになっており、窓もつぶれているので、入れそうなところがどこにも見当たらなかった。
けれど、中にいる人は助けなきゃいけないので、なんとか試行錯誤して、2時間ほど経つと、ようやく出入口を確保した。
出入口ができると、羽京が中をのぞいて状況を確認する。
「女の子が1人います!!」
目の前には、まだ小学生の女の子供がいたので、周りの他の隊員に情報を伝えた。
「君、もう大丈夫だからね。今からそっちに行くから、そこで動かないで待ってて!」
「わかった」
羽京は他の隊員に情報を伝え、魅真に待つように言うと、顔を再び魅真に向けて、1人で中に入った。
部屋はそんなに広くなく、魅真は壁から数メートル離れたところにいたので、羽京は慎重に進んでいき、魅真のもとにたどり着いた。
「もう大丈夫だよ」
「お兄ちゃあん!!」
羽京は魅真に合わせてしゃがむと、魅真に手を差し伸べた。
すると、魅真は羽京に抱き着き、涙を流した。
この状況で無事でいたので、羽京はほっとしたが、長居もできないので、魅真を抱きあげると、早々に外へ脱出した。
外に出て少しすると、魅真が突然羽京の体に顔をうずめてきたが、きっと家に閉じこめられた恐怖で、そういう行動をとったのだろうと思った。
「もう大丈夫。助かったよ」
なので羽京は、安心させるように、優しく微笑みながら、優しく声をかけると、魅真は羽京に顔を向けた。
その後、羽京は魅真を避難所に送り届けるために、魅真を背負って、避難所までの道を歩いた。
「体調は大丈夫?ケガはなかったけど、もし体の調子が悪くなったら、遠慮なく言ってね」
「うん、大丈夫だよ。どこも悪くなってないから」
「そっか。それならよかった」
道中羽京は、魅真の体調面を心配して声をかけるが、魅真からの返事が返ってくると、うれしそうに笑った。
それから羽京は、魅真を安心させるため、緊張をほぐすために、避難所に着くまでの間、ずっと魅真と話をしていた。
魅真の家から避難所までは、近くもないが、そう遠くもないので、数十分ほどで着き、避難所に着くと、羽京は魅真をおろし、魅真と向かい合った。
「お兄ちゃん、助けてくれて、本当にありがとう!」
「うぅん、いいよ。助かってよかったね」
魅真はうれしそうな顔でお礼を言ってきたので、きっと助かって安心したのだと思うと、羽京もうれしくなって、笑顔で返した。
「お兄ちゃん、本当にかっこよかったよ。まるでヒーロー…神様みたいだね」
「あはは…。それは大げさかな。でもありがとう、うれしいよ」
ヒーローだけでなく、神様とまで言われたので、羽京はオーバーリアクションをしてると思ったが、そんなに悪い気もしないので、魅真の言葉を受け取った。
「それで…それでね!私も、お兄ちゃんみたいに、自衛隊になることにしたの!」
「え…?」
「私も自衛隊になって、今回みたいに、困っている人たちの命をたくさん救いたい!お兄ちゃんみたいになりたいの!」
突然魅真が、将来自衛官になると言いだしたので、一瞬呆然としたが、すぐに笑顔に戻って魅真をみつめた。
「そっか。がんばってね」
そして、笑顔のまま、魅真の夢を応援する。
「うん、絶対になる!それで、お兄ちゃんに会いにいくの!」
「僕に?」
「うん。だから、お兄ちゃんの名前を教えてほしいんだ」
すると、会いに行くと言われただけでなく、名前を聞かれたので、羽京は少し驚いた。
「僕は、西園寺羽京といいます」
名前を聞かれたが、特に拒む理由もないため、羽京はあっさりと名乗った。
「羽京……お兄ちゃん…」
名前を名乗ると、魅真は頬をゆるませて、羽京の名前を呼んだ。
「私は真田魅真だよ。本当にありがとう、羽京お兄ちゃん!私絶対になるよ、自衛隊に!」
「楽しみにしてるよ。がんばってね」
その後、魅真が将来の夢を話すと、羽京はもう一度エールを送る。
「じゃあ、僕はもう行くよ。他にも、救助を待ってる人がいるだろうからね」
「うん。がんばって、みんなを助けて!」
話がひと段落ついたし、救助活動はまだ続いているので、羽京は早く戻って、他の被災者を助けなければと思い、そこから去ろうとすると、今度は魅真にエールを送られたので、そのうれしさに頬がゆるんだ。
「ありがとう。がんばって、みんなを助けるよ」
羽京はもう一度笑顔を見せ、エールを送られたことのお礼を言うと、踵をかえして歩き出した。
それから、救助活動が終わって、しばらく経ったある日のこと…。
その日羽京は、自衛隊の隊舎の、自分の部屋にいた。
すると、外から扉を2回ノックする音がした。
「おい、西園寺」
「あ、先輩。どうしたんです?」
ノックする音が聞こえると、その後すぐに扉が開き、同僚の男性が入ってきた。
「手紙がきてるぞ」
「手紙…ですか?」
彼が入ってきたのは、羽京宛の手紙を預かっているからだった。
「(誰だろう?母さんからかな?)」
誰から…とは言われなかったので、一番身近な人物を思い浮かべながら、差出人の欄を見た。
「真田…魅真…!?」
そこには、聞き覚えのある名前が書かれていた。
「誰だ、彼女か?」
「いえ、この子は確か…」
聞き覚えのある名前に、まさかと思い、羽京は手紙を開封し、折りたたまれている便箋を広げると、内容を読んだ。
「やっぱり…」
「誰なんだ?一体」
一人で納得しているので、ふしぎに思った男性は、送り主を聞いてみた。
「この子…この前の震災で、僕が助けた女の子です」
羽京は、魅真が名乗ったのを覚えていた。
その、聞き覚えのある名前と、手紙の内容で、最近の震災で助けた少女であるというのがわかった。
「そうか。わざわざ手紙を送ってきてくれたんだな。なんて書いてあったんだ?」
「救助したことに対する謝礼と、将来自衛官になって、国と、困ってる人々を助けると…」
手紙の内容を話すと、羽京の頬はゆるみ、目が潤んだ。
「そっか。女の子で自衛官て、めずらしいな」
「はい。僕も初めてです」
「でもよかったな。無事でいてくれてさ」
「はい……。よかったです。生きていてくれて……」
そして、内容を知り、男性と話しているうちに、感極まった羽京は、涙を流した。
それから、時は流れて3700年後…。
いつものように、夕方近くになると、羽京とクロムは油田探しから戻ってきて、羽京が魅真の手当てをした数分後に、千空と龍水が帰ってきた。
その後で、また夕飯のために、居住区に全員で移動し、魅真は羽京が背負っていった。
魅真を背負っている羽京はすごくうれしそうで、優しい笑顔をしており、魅真を気づかっていた。
1時間ほどすると夕飯を終え、魅真は天文台に、羽京はクロムのコレクションルームにいた。
その時も、羽京はずっと笑顔だった。
「どうしたんだ?羽京。最近機嫌いいけど、なんかいいことでもあったのかよ?」
魅真がケガをした日から、ずっと機嫌がいいので、そのことを、クロムは羽京に指摘する。
「うん…。そうかもね」
羽京は自分でも原因がわかっており、特に否定はしなかった。
一方、上の天文台では、魅真がそこにある天体望遠鏡で、星を見ていた。
「テメーもあきねえな。毎日毎日よ」
「まあ、月とか星は好きだからね。千空ほどじゃないけど」
近くで作業をしている千空は、自分が知るかぎり、魅真はずっと夜に星を眺めているので、あきれてるわけではないが、何気なく聞いてみた。
「懐かしいね」
「あ゙?」
「小学生の頃は、千空の家に行った時、よくこうやって千空の部屋で、星を眺めたよね。大樹も一緒にさ」
「そうだな」
「今はこうして、油田探しのために村にいるけど…。いつ油田がみつかって、船が完成して、ここから離れるかわからないから、なるべく毎日見ておきたいんだよね。やっぱり、肉眼で見るのと、天体望遠鏡で見るのは違うからさ」
「…まあな」
どこか感傷的になっていると、魅真は千空が返事をした後は何も言わず、星を眺め続けた。
「(……羽京は、今頃どうしてるのかな。あれ以来、羽京がどうしてるのか、気になって仕方ない)」
星を眺めてはいるが、同時に羽京のことも考えていて、羽京のことを思い出してから、羽京のことが気になり、つい目で追ってしまっていた。
「(やっぱり、初恋の相手だってことを思い出したからかな?まあ、それだけじゃないんだけど…。でも、なんか最近、羽京が優しい気がするのよね。もとから優しかったけど、前よりも更に…。まあ、なんだかんだ言って、うれしいことはうれしいけどね)」
下の階にいる羽京も機嫌がいいが、魅真もまたすごく機嫌がよく、天文台に来てから、ずっと笑っていた。
「それより魅真」
「何?」
「ケガの具合いはどうだ?」
すると、再び千空が声をかけてきて、ケガの具合いを聞かれた。
「前よりは良くなったけど…。まだまだね。復帰には遠いよ」
「そうか。まあ、あんまはしゃぎすぎて、またブッ壊れんなよ」
「わかってる。ありがとう」
ぶっきらぼうな言い方だが、心配してくれたので、魅真は微笑みながらお礼を言う。
お礼を言うと、魅真は椅子の上で、お尻を回転させるように動かし、望遠鏡に向けていた顔を千空に向けた。
「……あのさ、千空…」
「ん?」
「一つ、お願いがあるんだけど…」
「なんだ?」
千空と向かい合うと、言いにくそうに口を開き、千空に声をかける。
「石油がみつかったらでいいからさ、その……気球に乗せてくれないかなって…」
「あ゙?」
「いや…。私も乗ってみたくて。今はケガしてるし、石油探さなきゃならないから無理だけど。私も、空からの地球を見てみたくて…。今は無理だってわかってるから、みつかってからでいいの。だから、一度だけでもいいから…乗せてほしいなって…」
科学王国のクラフトに関係していることではなく、個人の要望なので、相手が気心知れた千空でも、やはり言いにくかった。
「まあ、石油探しが終わったらな」
「ほんと?」
けど、千空は了承してくれたので、魅真は顔が明るくなった。
「ああ」
「やった!ありがとう、千空。絶対だよ!」
「おう」
約束をすると、魅真はまた望遠鏡に顔を向けて、星を眺めるのを再開した。
それから半月後。魅真は地上探索チームに復帰した。
「今日からまた、地上探索チームに復帰するよ。穴あけちゃった分がんばるね」
ほとんど回復してるが、まだ完全に回復したとは言い難いので、無理しない程度に、危険だと判断したら、すぐに戻ることを条件にだが、久しぶりの油田探しに行けるので、かなりはりきっていた。
「魅真、またケガをしたら危ないから、あまりはりきりすぎたらダメだよ」
けど、そこを羽京が、やんわりと注意する。
「ごめん。なるべくゆっくり行くよ」
「そうだね。無理は禁物だよ」
「おぅ、そうだぜ。せっかく回復してきたんだからよ。もっと気をつけなきゃダメだぜ」
「わかった」
羽京だけでなく、クロムにも注意されると、魅真は笑顔でうなずく。
「…なんか、この前からよ、魅真…雰囲気変わってねえか?」
「そう?気のせいじゃないかな」
ケガをして以来、体も心も軽くなっているのは魅真もわかっているが、人に言うつもりはないので、適当にごまかす。
ごまかされるが、クロムはそれ以上は、何もつっこむことはしなかった。
魅真とクロムは、2人で話しながら、石油を中心に、新しい食糧や資材などがないかを探し、その後ろを羽京が歩き、優しく微笑みながら見守っていた。
その日の夜、夕飯もお風呂も終えた魅真は、いつものように天体望遠鏡で星を眺めていたが、急にやめて、外に出ようとした。
「おい」
外に出ようとしたタイミングで、千空が声をかけたので、魅真は無言で千空に顔を向ける。
「…あんま遠くに行くんじゃねえぞ…」
「…わかってる」
千空が一言だけ言うと、魅真も短く返して、外に出ていった。
魅真が前々から、夜になると1人で出かけているのは知っていたが、千空は止めることはなく、注意だけ促していた。
そうやって魅真は、ケガが治ってからも毎日のように、夜になると、1時間ほどだが、外に出るようになった。
そして、ケガが治ってから、数日が経った日のこと…。
その日も魅真は、外に出るためにはしごを降りて、森に向かおうとした。
「魅真…」
しかし森に入ろうとすると、後ろから羽京に声をかけられた。
魅真は、千空以外の人間にみつかってしまったので、内心焦った。
「こんな時間にどこに行くの?夜に1人で森に行くのは危険だよ」
「…………」
羽京にみつかってしまったので、魅真は森に行くことを断念した。
そして、羽京に促され、真ん中あたりまで来ると、火を起こし、丸太にならんですわった。
「それで、どうして、こんな夜中に近い時間に、森に入ろうとしたの?」
「…それは……」
丸太にすわると、羽京は再度理由を聞くが、魅真は言いにくそうにしていた。
「別に怒ってるんじゃない。心配なんだ。森には猛獣がいるかもしれないし、暗いし、1人なんだ。魅真だって、それは重々承知のはずだ。だけど、それでも森に入ろうとしている。そのわけがあるんだろう?」
「……………」
だが羽京は、夜に森に入ろうとしたのを、ただ危険だからと、頭から否定して怒るのではなく、ちゃんとした理由があるのだと理解してくれているので、魅真は罪悪感を感じた。
「できれば、理由を聞かせてほしいんだ。魅真が危険な目に合うのは…嫌だから……」
「羽京……」
森に入ろうとした理由を知りたいとは思っているが、理由を話すことを、羽京は強制してはいなかった。
「……両親の石像を…探してるの……」
けど、罪悪感を感じたのと、心配されたのがうれしかったのとで、魅真は理由を話し始める。
「両親の?」
「うん…。復活した時から、ずっと探してた。ツリーハウスにいた時も、司帝国にいた時も、村に来てからも…。だけどみつからない…。だから探していたの……」
「だからって……何も、こんな時間に探さなくても……。昼間、油田を探している時に探せばいいんじゃ…」
「昼間も探している。でもみつからない!だから、夜も探しているの……」
魅真の行動は、あまりにも軽率だった。ヘタしたら、周りの人間に迷惑がかかるかもしれないほどの…。
しかし、いつも冷静な魅真が、こんな短絡的な行動をとったのは、それだけ両親に会いたかったのだということも、ケガをしたあの日、いきなり荷物を置いて崖に登るという奇妙な行動をとったのにも、羽京は納得がいった。
「私は両親が大好きだよ。だから、今はまだ復活させることはできないけど、それでも、石像でいいから会いたい…。会って安心したい…。私には、千空も…大樹も…杠もいるけど、両親の代わりは、誰もいない……」
魅真は続きを話した。
話しているうちに感極まった魅真は、目じりに涙が浮かび、自分を守るように、自分の体を両手で抱きしめる。
「会いたい……会いたいよ…!!」
自分自身を抱きしめると同時に、目じりに浮かんだ涙は、頬を伝って地面に落ちた。
隣にいる羽京は、魅真の感情に影響され、悲しそうな顔をした。
「…魅真…。魅真が…森に入ろうとした理由はわかった。でも…やっぱり僕は、納得いかないよ」
「え?」
森に入ろうとした理由には納得しても、夜の森に入ることは納得できない羽京が話しかけると、魅真は顔を羽京の方に向ける。
「夜の森が危険だからだよ。猛獣がいるかもしれないし、真っ暗闇だから、またケガをするかもしれない。もし魅真に何かあったら、僕は嫌だよ…!」
「羽京……」
「魅真…。僕も一緒に、魅真の両親の石像を探すよ」
「え!?」
「僕も協力するから!だから……もう、夜の森に行くなんて危険なマネは…しないでほしい…」
「羽京の申し出はありがたいけど……これは、私の問題だから…」
「気にしなくていいよ。僕がやりたいから言ってるだけなんだ」
羽京が両親の石像探しの協力を申し出ると、魅真は遠慮したが、それでも羽京は再度申し出たので、それが羽京の優しさだとわかった魅真は、うれしくなって顔を赤くする。
「ありがとう……」
そして、静かにお礼を言った。
本当は、今日も森に入ろうとしたが、羽京の優しさと気遣いで心が満たされ、この日は行くのをやめた。
それから数十分後…。
魅真はひざにひじを置き、その上に顔を置いて眠ってしまった。
最初は顔をうつむかせた状態で寝ていたが、そのままだと首と腰が痛くなるので、羽京が自分の方にひき寄せて、膝枕をして、魅真の背中にそっと手を置いた。
すると、天文台の扉が開き、千空がふとんを持っておりてきて、2人のもとまで歩いて来た。
千空に気づいた羽京は、千空がふとんを持っているのは、魅真にかけるためだとわかったので、千空が目の前までやって来ると、魅真の背中から一度手をどかし、羽京が手をどかすと、千空は持ってきたふとんを魅真にかけ、魅真にふとんがかけられると、羽京は再び魅真の背中に手を置き、ふとんをかけた千空は、羽京の隣にすわる。
「千空は…知ってたの?」
千空が隣にすわると、先程魅真が森に行こうとしたことを、千空に問う。
「あ゙ぁ…」
「知っていたなら、なんで…」
「言ったところで聞く奴じゃねぇからな。天文台もあるし、問題はねぇ」
知っていたのに行かせていたので、何故そんなことをするのか疑問だったが、最後の言葉で、羽京は千空の言った意味を理解した。
「優しいんだね、千空は」
「あ゙?んなわけねえだろ、寝ぼけんな」
そして、千空を褒めると、千空は悪態をつくが、羽京は気にしていなかった。
「まあ、コイツの両親を復活させんのは、全人類70億人復活させるっつー、俺の目標でもあるしな」
「そういえば、魅真と千空の家は、家族ぐるみの付き合いがあったんだっけ?」
「あ゙ぁ。百夜が訓練でアメリカに行っちまってから、コイツんちで飯食ったり、泊めてもらったりもしたしな。俺も、コイツの両親には、アホほど世話んなった」
千空は羽京に、魅真の両親のことを少しだけ話した。
とても懐かしそうにしており、また、魅真をとても優しい目で見ていた。
「…あのさ、千空」
「なんだ?」
「魅真って…どんな子なの?」
「はぁ!?いきなり恋愛脳かよ??」
話は変わり、いきなり魅真のことを聞かれると、千空は、羽京が魅真に惚れたのかと思った。
「いや、そんなんじゃないよ。ただ……」
「ただ……なんだ?」
「……千空はさ、魅真が東京に引っ越してきた理由を知ってる?」
理由を話すには、魅真のことを話さなきゃいけなかった。千空は魅真の幼馴染なので知ってるだろうが、内容がデリケートかつセンシティブなものなので、もし知らなかった時のことを考えて、遠回しに質問をした。
「まあ、幼馴染だからな」
「その話を、以前魅真に聞いたんだ」
「被災して、自衛官に助けられたっていう奴か?」
「うん……。それで、その自衛官っていうのが、実は僕なんだ」
「マジか!?世間は意外とせめぇな」
魅真が小学生の頃に被災して、自衛官に助けられたことは千空も知っていたが、それが羽京だというのは知らなかったので、とても驚く。
「でも、なんでそれが、魅真のことを知りたいに直結すんだ?」
しかし、それが何故最初の質問につながるのかは、理解できなかった。
「魅真が、僕が助けた命だって思い出した時、僕は魅真を大切にしたいと思ったんだ。魅真が困っていたら、力になりたい。守りたいと思った。それには、まず魅真のことを知らなきゃいけない。だから知りたいんだ。もちろん、他の人の命と差別をする気なんてないよ。ただ……やっぱり、自衛官として助けたとわかった時、別の感情が生まれたんだ」
羽京が魅真のことを知りたかったのは、恋愛の意味ではなかったが、過去に救助した人物であると思い出したからだった。
「魅真は……僕が過去に救った……特別な命なんだ…!!」
羽京の性格は知っていたが、ここまでとは思わず、千空は目を丸くする。
「…ククク。魅真は羽京……俺や大樹や杠よりも、むしろテメーとの方が、気が合うかもしんねえな…」
けど、すぐに頬が緩み、いつものように笑った。
「え…」
「あいつは、誰よりも命を慈しむ奴だ。人も自然も、地球にあるもの全ての命を大切にする…。家族思いで…仲間思いの…とても愛情深くて、慈悲深い…。超絶お優しい……ただの善人様だ」
羽京は帝国時代から、魅真のそういうところをたまに見かけていた。
何よりも、幼馴染で、基本的に本質しか言わない千空が、そこまで言うということは、本当のことだろうと確信する。
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