Z=32 科学の鍵
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魅真たちは、後宮の教育係の女性から、水が入った竹筒をもらうと、それを頭にのせて、アマリリス、魅真、コハク、銀狼の順で、一列に並んで歩いていた。
「科学の鍵はみつけた。だが、どうやって密かに、千空たち科学チームに伝える!?通信は一方通行だ。連絡手段さえあれば……!!」
歩きながら、コハクは先程見つけた科学の鍵を、どうやって千空たちに伝えようか思い悩んでいた。
「現代だったら、LINEとかメールとか電話とか使うんだけどね。残念ながら、この世界にないし…」
「何それ?」
「科学の連絡手段」
「船で連絡した時みたく、一か八か大声で叫びまくるとか…」
「ハ!後宮でそんな奇声を振りまいて、無事で済むわけもないがな」
「せっかく潜入したのに、全部無駄になっちゃうじゃん」
宝箱の在り処を千空たち科学チームに伝えるための手段を考えていたが、いい方法は思い浮かばなかった。
魅真が言った方法は、物がないので無理だし、銀郎の言う方法はあまりに無謀すぎるので、コハクもアマリリスも却下した。
「よかった。コハクもそこまで無謀じゃないのね」
「え?」
すると、突然魅真が歩みを止めて、コハクと向き合ったので、コハクも、コハクの後ろにいる銀狼と、魅真の前を歩いていたアマリリスも、歩みを止めた。
「さっき、制止をふりきってとびだした時は、本当に肝が冷えたんだから。今朝説教したばかりなのに、全然こりてないのかなって」
「いや、そんなつもりは…」
「意味があって行動したのはわかってる。でもね、あまりこういう言い方したくないけど、ここでは私がリーダーなんだから。千空からの連絡がある時以外は、基本私の指示に従って。せめて、行動する前に、理由くらいは話して。ね!」
「う…うむ…。すまなかった…」
魅真は、先程コハクが、止めたにもかかわらず速攻を出したの怒っていた。
本人はそんなつもりはないが、魅真は話しているうちに圧がかかり、目が据わり、コハクの肩に手を置いて、しかもその手にこめられた力が若干強かったので、魅真の圧に負けたコハクは、思わず謝ってしまう。
「魅真ちゃん、冷静に淡々と話すところがまた怖いわね」
今朝の、コハクとスイカへの説教を聞いていなかったアマリリスは、初めて見る魅真の顔に驚いて引いていた。
「そこ、お喋り!!」
「痛だぁ!!!」
「聞いてんのかい。あんたらまだ見習いだからね。後宮に入るまで一週間!こういう姿勢良く歩く鍛錬とか、礼儀作法をみっちり仕込んでやるから覚悟しな!!」
すると、魅真たちに目をつけた教育係の女性が、一番後ろにいる銀狼の背中を、ハリセンでたたきながら注意をした。
銀狼はほとんどしゃべってないのに、とんだとばっちりだった。
Z=32 科学の鍵
それから数分後…。
「あ゙ー、聞こえてっかコハク」
「!」
「ククク。この後そっちに、ちーと面白ぇもんが行くぞ。科学のネズミだ……!!」
教育係の女性から離れてまた少し歩くと、千空から通信があり、出入り口の方から、何かが橋を走行してきた。
「ククク。現代人が見りゃ、こんなもん、ミニ四駆モロ出しもいいとこだがな!」
「いや~~。工作が雑すぎちゃって、動きドイヒーのガタガタだから、逆に意外と♪それっぽく見えんじゃない?」
それは、ネズミの形をしたミニ四駆で、コハクは近くまで走ってきたミニ四駆を、下にとび降りてキャッチすると、木にとび移って、またもとの場所に戻った。
「何してるの、そこ!!」
すると、また教育係の女性がやって来たので、コハクはミニ四駆を見られないように胸に抱えこんだ。
「おっきなネズミが出ちゃって、すっごい怖かったです…。でも、コハクちゃんが捕まえてくれて…。ありがと」
けど、アマリリスが体を震わせ、涙を流して、かよわい女の子を演じてフォローしたので、なんとかなった。
そして、教育係の女性がいなくなると、コハクとアマリリスは豹変して、鋭い目をして親指をたてた。
「(この裏表。女の子怖!てか、アマリリスちゃんが怖!!)」
コハクとアマリリスを見た銀狼は、2人があまりにも裏表がありすぎるので、ドン引きしていた。
「なんかあった時は、そのネズミ発射して~~。要は、SOSのお手紙ね♪」
「『てがみ』ってなあに?」
「手紙っていうのは、その時の気持ちや用事とかを、紙に文字を書いて表す、連絡手段の一つよ」
「なるほどな。救難信号のようなものか」
「まあ、そんなところ」
「じゃあ、その手紙ってのを書いて、ネズミで送れば、千空たちに連絡できるじゃん。コハクちゃんが見つけた、勝利の鍵のこと………!!」
魅真が手紙について説明すると、アマリリスは目を輝かせた。
「うん。そうなんだけど…」
「何か問題なのか?魅真たち現代組は、皆文字とやらの読み書きができるのだろう?」
「手紙はいいんだけど、肝心の紙とペン…その代替品すらないのよね…」
まさか、そんなものがいるとは思わなかったため、持ってきていないので、魅真はどうすればいいのか悩んだ。
「ハ!諦めるのはまだ早いぞ、魅真」
「え?」
しかし、コハクには何か打開策があるようで、魅真に話しかけると同時に、ドレスのスカートの左側を破いた。
「コハク?何を…」
「魅真、頼みがある…」
「え?」
そして、コハクは魅真の耳に顔を近づけると、小さな声で頼み事をした。
「え……。本当にいいの?そんな…」
「無論だ。文字を書けるのは魅真だけだからな」
「わかった」
魅真はコハクに頼み事をされると、それを了承した。
そして全員で、割り当てられた家に行くと、魅真とコハクと銀狼は奥に行き、アマリリスがこの家の前にいる兵士に声をかけている隙に、銀狼が、魅真とコハクが見えないように盾となり、コハクはドレスの切れ端を床に置くと、右手の親指を切った。
「始めてくれ、魅真」
「うん」
コハクは合図をすると、指を切っていない方の手で布を押さえながら、魅真に指を切った方の手を出し、魅真は右手で布を押さえながら、左手でコハクの手を持って、文字を書いていった。
魅真がコハクの手を動かして文字を書き、血が出なくなったら、コハクがまた指を切る。それを何度かくり返すと、『プラチナをみつけた』という、短い文章を書きあげた。
そして、手紙を書き終えると、コハクはそれをミニ四駆に入れた。
「アマリリス!」
準備が整うと、コハクはアマリリスの名前を呼び、呼ばれたアマリリスは、適当に兵士との話を終わらせると、中に入った。
「終わったの?」
「ああ、魅真のおかげでな」
あとはもう発射するだけとなったので、兵士たちの目につかない場所まで行くと、ミニ四駆を走らせ、そこから別の場所に移動をした。
「頭首の棲む、大木の根元。異様な球形は、人工物によるものだ。何千年も耐えうる、特別に鍛えらえた科学の球体。それは、千空の父上たちが遺した、究極の宝箱。宇宙船ソユーズ」
「そうなんだ。あの木の中に…」
「ああ…。それでな、魅真…」
コハクは魅真に声をかけると、再び耳打ちをする。
「わかった。気をつけて。でも、ムチャだけはしないで」
「わかっている」
それは、今後の作戦の相談だった。
それから夜になると、コハクは行動を開始し、魅真、銀狼、アマリリスは割り当てられた家に残ることになった。
「(どうか…コハクが無事に帰ってきますように…)」
周りは敵だらけなので、いくらコハクが素早くて強いと言っても、やはり心配だった。
「(でも、心配ばかりしていても仕方ない。今後のことを考えよう)」
けど、すぐに頭を切り替えて、これからどうすればいいかを考えた。
「(司帝国に潜入していた時はゲンがいたけど、今回はゲンみたいな人はいないから、深いところにもぐるのはかなり難易度が高いし、まず不可能といって良い。だからせいぜいが、主力であるイバラ、モズ、キリサメ、オオアラシの基本的な情報、後宮の作り、地の利を活かした闘いを考えることと、兵の大体の人数と見張りの配置と警備体制、ざっくりとした動きと武器くらいかな…。できればシフトも、何時くらいに交代するかは知りたい…)」
魅真は、司帝国にいた時と同じように調べようと思ったが、あまり深いところを調べるのは難しかった。だが、それでもなんとかしようと思っていた。
「(だけど、ドローンを使うとなると、あまり遮蔽物があるところじゃダメだよね。開けた場所がいい。そういうところも探さないと。あと、できれば石化武器の発動のさせ方なんかも知りたい。頭首の力なのに、キリサメが使えるということは、私たちにも使えるはずだから。投げただけで使えるのか、それとも何か条件が必要なのか…。だけど、一つわからないことがある。何故頭首の力を、キリサメが使えるの?キリサメは頭首の一族なの?でも、頭首のとこの最強戦士ということは、違う可能性の方が高い。一体何故…)」
そして、闘い本番となった時のことや、石化武器やキリサメのことを考えていると、窓からコハクが入ってきた。
「コハク!」
「戻ったぞ」
「どうだったの?」
「ソユーズをみつけたことはみつけた。しかし、何か固いモノで覆われていた」
「固いモノ?」
「ああ、何か石のようなもので覆われていたぞ」
「石?」
「なんだかごつごつしているが、手触りはすべらかで、灰色だったな」
コハクは、見たことのないものでソユーズが覆われていたので、現代人の魅真なら何か分かるだろうと思って聞いた。
魅真はコハクから聞いた特徴をもとに、現代のもので何かあてはまるモノがないかと模索した。
「ごつごつしてるけど、手触りがすべらかで灰色?…あ……ひょっとして、コンクリート!?」
「コンクリート…というのか?」
「たぶんね。見てないから予想だけど…」
「あとは、その周りを黒いモノで覆っていたな。以前、道路というものを作った時に使ったモノに似ていたぞ」
「それはたぶん、アスファルトね。おそらく、いつ千空が起きて、宝箱のもとに来るか分からないから、保存するために、ソユーズを覆ったんだわ」
「なるほどな。だが、こんなところで力ずくであければ、間違いなく敵が来るからな。断念して戻ってきた」
「それは正解ね。でないと、すべて台無しになるから」
「これからどうする?」
「プラチナのことは知らせたから、絶対に千空が、次の手を考えてくれてる。その時まで待ちましょう。こんな敵陣で無理をすれば、間違いなく石化されるから」
「分かった」
今ここで打てる手はないので、千空からの指示があるまで待つことにした。
そして次の日…。
「あ゙ーー。聞こえてっか、スパイチーム。いよいよ、プラチナ入りのお宝箱、開封ミッションといこうじゃねえか……!!!」
千空から連絡があり、少しすると、ミニ四駆が何台か来たので、コハクはそれをすべてとると、魅真、アマリリス、銀狼のもとへ行った。
「魅真と銀狼と、トリオで監視の注意を引いてくれ」
「それって、ソユーズの?」
「ああ…」
「分かった。まかせて、コハクちゃん」
アマリリスが引き受けると、コハクはミニ四駆を持って、頭首が棲む大木まで降りていった。
「でも、注意を引くってどうやって?」
「ダンスよ」
「ダンス!?」
そういうのは、アマリリスの方が得意だろうと思った魅真は、アマリリスに聞いてみると、簡単に答えが返ってきた。
「(ダンス!?私、せいぜい盆踊りしか踊ったことないのに。いや、でもやるしか…)」
しかし、ダンスをやったことないので、魅真はどうやろうか考えた。
そして、3人で監視のもとまで行った。
「あの…ちょっと恥ずかしいんですけど、頭首様のためのダンス、練習しときたくて、皆さんに見て頂けたらなって…」
そこにはオオアラシと数人の兵士がおり、アマリリスが声をかけると、全員魅真たちの周りにすわった。
彼らがすわると、アマリリスはドレスの両端を上品につまみあげ、披露した。
「クゥ~~!や・る・じゃねえか。ミラクルダンス!!」
アマリリスのダンスは、彼らに好評だった。
「(こんな上品なダンス踊ったことないから、適当にやったら、どう考えても盛り下がってしまう。それなら、アマリリスの見よう見まねで!!)」
やったことのない者が我流で踊ると、絶対とは言いきれないが、変になる可能性が高いため、魅真は持ち前の優れた動体視力と運動能力で、アマリリスの動きをマネした。
「ほぅ…。そっちの女もなかなかやるじゃねえか」
踊り出すと、アマリリスほどではないが、まあまあの評価は得られた。
「(魅真ちゃんもアマリリスちゃんもスゴ…)」
近くで踊っている銀狼も、2人の動きに目を見張った。
「それに比べて、こっちの女はなんだお前」
「お前もちゃんと踊れ!」
「(できるわけないじゃんかぁ、そんなのぉお!!)」
魅真とアマリリスのダンスは良かったが、銀狼のダンスは動きが固く、まるでロボットダンスのようで、不評だった。
一方、大木にいるコハクは、宝箱の開封ミッションを始めるために、ミニ四駆のフタをあけると、その中には、いくつかの試験管に入った硫酸と白い粉工具が入っていた。
そして、インカムから千空の指示を受け、工具を回転させて穴をあけるが、コンクリートなので音がしてしまった。
「ん~~~~~…?」
「ちょっと音しね?ゴリゴリ」
「頭首様の樹の方……??」
しかもその音は、オオアラシたちにも聴こえていた。
「(マズイ…。今確かめに行かれたら!!)」
「(ヤバ!!どうしたら…)」
その音は、間違いなくコハクが宝箱を開封している音なので、魅真とアマリリスは顔が青ざめた。
すると、今度は魅真たちがいる近くで音がした。
その音をたてているのは銀狼で、銀狼は兵士の槍を使って、橋をこすっていた。
「あぁ、俺の槍」
「何してんだ、お前!?」
「ややや、槍の演舞!?そういう踊りですぅううう」
「あ~~~~!?」
許可もなく、勝手に槍を使っていたので、当然責められるが、銀狼はとっさに説明をした。
「(助かった…)」
「(ありがと銀狼!でも、槍の演舞なんて、できないのすぐバレ…)」
銀狼がフォローしたので、魅真もアマリリスもほっとした。
だがアマリリスは、やったことのないものができるわけないと思ったので、次の懸念が生まれたが、槍を武器にしている銀狼は、背後と頭上で槍を回転させた後、肩にかけた。
「「「「うお!??」」」」
その後また橋をこすったので、コハクもその音に合わせて、コンクリートに穴をあけていった。
「うぉおおおお」
「「「すげぇええ!!」」」
3人のダンスは好評で、全員が興奮しながら見ていた。
「え?スゴすぎない!?どこでそんな槍術……」
「いや、一応僕、村の門番だし」
銀狼のことを詳しく知らないアマリリスは、興奮しながら聞いた。
「いつだって、戦わずに逃げれるように、こういうそれっぽいだけの無意味な槍の動き!ずっと練習してきたんだからね……!!」
「なんかキメてるけど、カッコいいこと言ってないからね!?」
銀狼らしい答えが返ってきたので、魅真は驚きもしなかったが、アマリリスは大きくつっこんだ。
そしてその後も、コハクがまだ戻ってきてないので、ダンスを続けた。
そのコハクは、穴をいくつか等間隔であけると、硫酸と無水硫酸カルシウムという薬品が入った、二種類の試験管を一つの穴の中に入れて、楔でフタをした。
それから数時間後…。
夜となり、コハクは再び、宝箱のもとへ赴いた。
すると、昼間あけた穴を中心にヒビが入り、コンクリートは破壊されたので、コハクは一つ一つ瓦礫をとっていった。
けど、途中で割ってしまったので、コハクは混乱した。
混乱しながらも、無事だろうと思ったが、本当に割れていた上、ただの砂だったので、ショックを受けた。
その上、音に気づいたオオアラシと数人の兵士が、宝箱のもとへ走ってきたので、コハクは焦った。
だがその時、ここに来る前に魅真が、「金色に光る砂にある」と言ったことを思い出すと、砂に価値があるのだとわかり、可能なかぎり砂をスカートに入れて、魅真たちのもとへ戻った。
「お帰り。首尾はどう?」
「ああ、それらしきものをみつけたぞ」
コハクは家に入ると、得意げに、持って帰ったものを魅真に見せた。
「これではないのか?魅真が千空に聞いたという、プラチナは?」
「私も石には詳しくないけど……これは……砂金?」
「砂金とはなんだ?」
「書いて字のごとく、金の砂つぶよ。きっとこれだわ。砂金の中にプラチナがあるって千空が言ってたから…」
魅真も詳しいことは分からないが、ここに来る前に、千空に特徴を聞いていたのと、砂が光ってるのを見て、たぶんこれだろうと思った。
「ならば、明日の朝に、さっそく千空たちに届けるぞ!」
砂金を届けるのは明日にして、コハクは持ってきた砂を袋に入れてしばると、その日は就寝した。
次の日、朝起きると、コハクはさっそく、昨日手に入れた砂金を、ミニ四駆で千空たちのもとへ送った。
魅真は、これで船のみんなを復活させられるだろう…。そう思った。
だが、次の日の昼頃になると、突然、同じ日に後宮に来た他の女の子たちも一緒に、一ヵ所に集められた。
魅真たちがいる一段上の橋には、服を着ていない龍水の石像が木にしばりつけられていたので、魅真たちはびっくりした。それと同時に、魅真はマズイと思った。龍水の石像がここにあるということは、イバラに自分たちのことを疑われているか、最悪スパイだとバレてしまったかもしれないからだ。
「おじちゃんね、みんなにね、スッッゴい残念なお知らせ!みんなの中にね、侵入者がいるかもしんないの。炙り出さなきゃいけなくなっちゃった」
思った通りだったので、魅真たちは肝が冷えた。
まだ、ギリギリではあるがバレてはいないので、そこだけは良かったのだが、魅真はバレるのも時間の問題だと思った。
「この石像の男の仲間じゃないなら、壊すのなんて平気でしょ…?」
もしやらなかったら、何をされるかわからない。もしかしたら、石化されるかもしれない。最初に壊す女の子は躊躇していたが、自分の身を護るために、オオアラシが持っていた斧で、龍水の左腕を切り落とした。
「よぉし次ィー!!」
女の子が左腕を切り落とすと、次は違う子の番になった。
この残酷なやり方に、魅真は強い怒りがわいたが、ボロを出さないためになんとかこらえ、冷静さをたもった。
「なんと、惨いことを…!!!」
だが、コハクは今のを見ただけで怒りがわき、とび出しそうになった。
「やめなさい、コハク!!」
「ダメダメダメ。我慢して!!」
「コハクちゃん、トッコーしないでぇええ」
だが、そこを魅真が前からコハクの肩をおさえ、アマリリスが後ろからコハクを抱きしめておさえつけ、銀狼がコハクの横からコハクを止めた。
「ホ…ホラぁあ、だって、壊されたって死んだとか決まってないでしょ!?組み立てて復活液かければ治るんだからさぁああ」
更に銀狼がフォローすると、多少は大人しくなったが、それでもまだ納得していない雰囲気だった。
「コハク!」
その時、千空からの通信が入り、何やら作戦を伝えた。
「次、そこの娘(こ)~。コハクちゃんって言ったっけ?」
「どうした、壊せねえのか。あ~~~~??まさか侵入者じゃ…」
次はコハクの番となると、コハクは下の段から上の段にかけられた橋ではなく、その場から跳んで上の段まで行くと、空中ひざ蹴りをかまして、龍水の顔を、横に半分に砕いた。
更には、両手で何度も殴り、龍水の石像をバラバラにした。
まさかの行動に、イバラたちは全員呆然とし、兵士に至っては顔面蒼白になっていた。
「龍 水 がぁあああああ…」
コハクのやり方に、銀狼もアマリリスもショックを受けるが、魅真は、何故コハクがこの行動をとったのか分かり、平然としていた。
そして、龍水の石像は、コハクが何度か殴りつけると、ロープから抜けて、橋の上に崩れ落ちた。
「指示通り破壊したぞ!何か問題が?」
「いや、いいと思います…」
石像を破壊し終えたコハクは、近くにいる兵士に聞くと、コハクの力にびびった兵士は、声も体も震え、最後は声が小さくなっていた。
「あはは。やだもうコハクちゃん、こんな散らかしちゃってー。私が片づけとくね~~!」
そこへ、魅真たちが橋を上がってコハクのもとまでやって来ると、石像をひろい集めた。
「ハ!案ずるな。杠のいない今、汚く粉々にされては戻せんからな。私の手で綺麗に外したのだ」
それから、石像をひろい集めると、ミニ四駆を何度も発射した。
「なんだい。ネズミ多いね、今日は!」
「ごご、ごめんなさい!コハクちゃんが、全部捕まえてくれると思うんで❤」
あまりのネズミの多さに、教育係の女性がうろたえていると、アマリリスがフォローをする。
ネズミが多いのは、先程コハクが破壊した龍水の石像を、コハクがミニ四駆で発射しているからだった。
こうやって、破壊した石像を少しずつ外に運び出して、龍水を脱出させて千空たちのもとに届けて龍水を復活させるという、千空の狂気的な作戦だった。
そして、今は地面にいて、魅真、銀狼、アマリリスで、周りに誰かいないかを見張りながら、コハクが龍水の石像をミニ四駆に入れて発射していた。
「『はっはー!よくぞバラバラに砕いてくれた、貴様ら!!おかげで俺は!人類初の、二回復活者という、トロフィーを手に入れたぞ』と言っているぞ、龍水は」
「妄想でしょ、それ!??」
「でも、ホントに言いそう」
「うん。龍水だしね」
コハクが龍水のモノマネをすると、龍水を知らないアマリリスはつっこんだが、魅真と銀狼は納得していた。
石像を、ミニ四駆に乗せて少しずつ送っていたので、結構時間はかかったが、なんとか全部運び出すと、魅真たちは再び橋の上に戻った。
「(龍水はなんとか無事だった。あとは、千空たちがなんとかしてくれる。それに、一つ確かな情報も手に入れた。イバラは、アマリリスが言っていた以上に、相当に疑り深いということ…。たぶん気弱で、いくつも保険をはるタイプ。他の主だった戦士の基本情報も、警備体制も、だいぶわかってきた。でも、一つだけわからない。それは、頭首がまったく顔を出さないということ。確かにトップなら、容易に顔は見せないだろうけど、アマリリスの話だと、アマリリスも頭首を見たことがあるようだから、一般人の前にも姿を見せることがある。それなのに、一切顔を出さないなんて…。あの小さな居城の中で、ずっと生活してるっていうの?外にも出ずに?食事を運ぶ様子もないし、お手洗いに行く様子もない。あんな小さな場所にあるとも思えないし…。そうでなくても、あそこからずっと動かずにっていうのも、違和感しか感じない。生活してる感じがまったくない。本当に生きてるの??後宮選抜だってそう…。なんで頭首の後宮なのに、イバラが選んでるの?頭首の命というよりも、イバラの好みで選んでいる感じなのも気になる。そもそも、イバラが頭首の意見を聞いて指示出しって、なんで頭首は自ら指示を出さないの?そういう世界だから?それに、あそこは警備はあるけど、イバラ以外は入ってない。なんで……!?)」
魅真は、コハクたちと橋を歩きながら、手に入れた情報と、感じとった違和感について考えていた。
「(それに、モズのことも気がかりだわ。モズはコハクの強さを見抜いただけで、何か目的があることも見抜いた。俺には関係ないと言ってたけど、後宮を潰そうとしたら、全力で止めるとも言っていた。私たちは、敵の情勢を探り、石化光線を奪いに来ただけだけど、いつ条件がそろって、モズのスイッチが入るか分からない。用心しなくちゃ…)」
その中でも気になるのは、頭首のこととモズのことだった。
モズは、基本的には傍観者のようだが、いつ襲いかかってくるか分からない。そのことで、緊張が高まっていた。
また頭首の方は、違和感しか感じなかった。頭首が住んでる家があるのは、敵陣の真ん中にある大木のてっぺんで、場所によっては見えないところもあり、何よりも、ずっと見張ってるわけではないが、魅真は一度も頭首の姿を見ていないので、ずっとふしぎに思っていた。
だがそれは、すぐに知ることとなる。
最悪な形となって……。
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