Z=17 石神村
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東京を出た、魅真、羽京、クロム、コハクは、静岡までの道を歩いていた。
「そういえば、去年、司を止めるため、火薬を作るために、私と千空と大樹と杠で、この道を歩いたっけ…。懐かしい!」
その道中、去年箱根まで行った時のことを思い出し、懐かしんだ。
「でも、今回は闘いのためじゃないから、ちょっとしたプチ旅行気分だね」
「旅行って…」
「遊びに行くわけではないぞ」
「まあね。基本は石油を探すためだけど、たぶん千空が私を指名したのって、それだけじゃないと思うから」
「「「?」」」
三人は魅真の言ってる意味がわからず、疑問に思った。
Z=17 石神村
一同が静岡を目指して歩いていると、静岡の手前で、羽京はある音を感じとった。
「滝の音…」
それは滝の音だった。
そして今度は、コハクが何かを視認すると、木に登り、ずば抜けた視力で滝をみつけ、その方角を指さした。
「ヤベー…」
「千空の地図とまるで違うぞ。描き間違えたのか!?」
「いや、僕だって、地理を覚えてるわけじゃないけど、3700年前には絶対無かったはずだよ――。静岡手前に、こんなナイアガラの滝みたいな、大瀑布は……!!!」
「うん。それに、こんな大きな滝があったら、絶対観光地になってると思う…」
その滝は、ナイアガラの滝のような巨大なものだったので、全員困惑した。
特に、現代人である魅真と羽京は、ないはずのものが存在しているので、疑問を抱いた。
「昔っから、石神村の西方面はボッコボコでよ。俺もイマイチ探索しきれてねぇ…」
クロムは下を確かめるために、崖を伝って降りていく。
「クロム、危ないよ!」
「平気だって。探索王にまかせろ!」
道具も何もなしで降りようとしているので、魅真は注意するが、クロムは笑うだけだった。
「ヤベェエエエエ!!」
しかし、魅真に答えた瞬間、案の定というべきか、クロムは手と足をすべらせてしまい、下に落ちていった。
その様子に、魅真と羽京はショックを受けるが、コハクはあきれていた。
クロムが落ちるのを見た魅真は、背負っていたリュックの中からロープを取り出し、先端をしばると、近くにある木に何周か巻き、今度は反対側の長い方で二回しばると、崖の方に戻って、ロープをつかんで下に降りていった。
魅真はあっという間に下に着くと、クロムのもとへ駆け寄った。
「クロム、大丈夫!?」
「お、おぅ…なんとかな…」
いくつかコブがあるものの、あれだけの高さから落ちても無事だったので、魅真は驚いたが、ほっとした。
「じゃあクロム、私の背にのって」
クロムが無事な姿を見ると、魅真はクロムに背を向けてしゃがんで、おんぶをする時の体勢になる。
「え!?ちょ…」
「いいから早く!」
「お、おぅ」
一度背負われたことはあるが、あの時は強制だったし、やはり女性に背負われるのは恥ずかしいので、躊躇していたが、魅真が強めに言うと、クロムは魅真の背にのった。
クロムが背中にのったのを確認すると、魅真は立ち上がり、ロープの前まで来た。
「じゃあクロム、手と足を、私の首と体に巻きつけて。落ちないように」
「お……おぅ…」
体勢が体勢なので、更にはずかしくなったが、そうも言ってられないので、クロムは素直に従った。
「じゃあ行くよ」
クロムが手と足を、魅真の首と体に巻きつけると、魅真はロープをにぎって、あっという間にまっすぐな崖を登った。
ロッククライマー顔負けの速さなので、羽京もコハクもクロムも驚いた。
「ただいま」
上につくと、平然とした顔で、羽京とコハクに声をかけた。
普通なら、崖を登ればいくらか疲れると思うが、魅真はまったく疲れを見せていないので、三人はそこにも驚いた。
「あの、"一番巨大な山"を目印に、そこから西が荒れているな」
魅真とクロムが戻ってくると、コハクは気をとりなおして、滝の前にある山を見ながら指をさした。
コハクが山を指さすと、全員そちらに注目した。
そこにあったのは富士山で、富士山を見た羽京は、目を見開いて固まった。
「そうだ。そうだよ。僕らは、いまだに甘く見てたのかもしれない。3700年っていう、時の流れを……!!」
富士山を見ると、羽京はあることに気がついたので、そのことを千空に報告するために、携帯がある石神村に向かった。
石神村につくと、村はずれにある千空の天文台に行き、そこにある携帯で、司帝国に電話をかけた。
「あ゙ぁ、そうか。海岸線もボコボコだったがな」
「内地もだね」
「どしたの?」
「ククク。良く考えりゃたりめーだ。相変わらず、俺も科学使いが聞いてあきれるぜ。周期はたったの数百年だぞ――」
羽京からの報告を聞くと、千空は目の前にある富士山に目を向けた。
「富士山の大噴火―――。一発でも、地形変わるレベルの大惨事だっつうのによ。俺らが石化中の3700年で、少なくとも4~5回。多けりゃ、10回以上ぶっ放してるわけだ!!現代人の地形図なんざ、もうクソの役にも立ちやしねえ…!!!」
「ひぃいいい~~。めっちゃ怖…」
ナイアガラの滝のようなものがあったのも、海岸線や内地がボコボコだったのも、すべては富士山の噴火が原因で、先程羽京が、富士山を見て気がついたのは、そのことだった。
「新しい地図がいるよ。少しずつでも作っていかないと」
「おぅ、んなもん無くたって、なんとかすんぜ!!」
「いや、右も左もわからず、闇雲に油田を探すなんてのは、ただの神頼みだし、危険すぎる」
「そうなると、ここを中心に、少しずつでも情報を集めていかないといけないね」
さっそくつまずいたので、これから先のことを、どうしようかと悩んでいたが、それ以上悩んでも、今はまだ答えが出ないので、千空の、また連絡するのひと言で、ひとまずは通話を切った。
「これからどうしようか」
「さっきも言ったけど、闇雲に動くのは危険だから、千空からの連絡を待ちつつ、こちらも何か対策を考えるしかないよ」
「とりあえず、今は作業は中止にしよう。道中歩きっぱなしだったからな」
「あ~…えっと……それならさ、コハクとクロムに、一つお願いがあるんだけど…」
「「?」」
いきなり指名されたので、その願いというのは、一体なんなのだろうとコハクとクロムは思った。
魅真に頼み事をされて、魅真、羽京、クロム、コハクがやって来たのは、石神村の墓地だった。
「お墓参り?でもなんで…?」
お願い事の内容に、コハクとクロムを指名したのはわかったが、何故初めて来た村の墓参りに行くのか、羽京はわからなかったので、魅真に聞いた。
「この石神村の創始者は、千空のお父さんの百夜さんなんだって。千空の家とは、家族ぐるみの付き合いがあったから、家族も同然なの」
魅真は羽京の質問に答えると、コハクとクロムの後に続いて上の方まで登っていき、羽京も魅真の後に続いて登っていった。
「ここが…百夜さんの?」
「うむ。だが、墓標はもうないんだ。司軍を寝返らせろ作戦のために使ったレコードが、墓石の中に、たいむかぷせるされていたからな」
「ああ、あのレコード!どこからそんなもの?って思ってたけど、ここにあったんだね」
「うむ…」
墓石のあとはあるのに、肝心の墓石がないので、ふしぎに思っていたが、すぐにコハクが答えたので、魅真は納得した。
そして、魅真は墓石があった場所に顔を向けて、静かに手を合わせた。
魅真が手を合わせると、コハク、クロム、羽京も、続いて手を合わせる。
少しの間手を合わせると、魅真は三人がいる方へふり向くが、三人は魅真を見るとぎょっとした。
「魅真、大丈夫か?」
「いきなり泣くとか、どこか痛いのかよ?」
それは、魅真が涙を流していたからだった。
「ごめっ…百夜さんのお墓参りをしたら、急に…。百夜さんは家族も同然だったから。すごく明るくて、楽しい人で、私は百夜さんのこと大好きで…。村のみんなと会えたのはうれしいし、村の人たちがいなかったら、司軍にも勝てなかっただろうけど……。でも、もう百夜さんに二度と会えないんだって思ったら、すごく悲しくなって、寂しくなったの……」
涙を流したのは、百夜のことを思い出してしまったからで、三人は、魅真の涙が止まるまで待っていた。
墓参りが終わると、魅真達は、先程の天文台に戻ってきた。
「地図を作って石油を探すとなると、しばらくここに泊まるんだよね」
「そうだね。コハク、クロム、私達、どこで寝泊まりしたらいいのかな?」
天文台に戻ってくると、今度は今後寝泊まりする場所について、コハクとクロムに聞いた。
「村の人間は、ほとんどが司帝国にいっから、別にどこでもいいと思うけどよ…」
「だが、いつ誰が戻ってくるかわからんぞ。それに、少なくとも、隠居と一部の子供たちはいるわけだ」
「それなら、やっぱ千空のとこの天文台かな…」
「おぅ。その下にある、俺のコレクション部屋でもいいぜ」
「じゃあ、私は千空の天文台にするよ。さすがに、年頃の男女が一緒の部屋で寝るわけにはいかないし」
「いや…。千空だって、いつこっちに来るかわかんねえぞ」
魅真は、クロムが年頃の男の子なので、その辺を考慮したが、千空がこちらに来る可能性もあるため、そのことをつっこんだ。
「確かに…幼馴染とはいえ、年頃の男女には違いないんだけどね。千空とは付き合い長いけど、クロムはまだ出会って日が浅いからさ」
「まあ、そうかもしんねえけどよ…」
「そうなると、僕は自然とクロムのところかな」
「あ、ごめん。なんか勝手に決めちゃって…」
「ううん、いいよ。魅真の言うことは、間違ってないから…」
魅真はなんだかんだと、自分と羽京が寝泊まりする場所を勝手に決めてしまったので、罪悪感を感じたが、羽京も、付き合ってない女性と一緒は抵抗があったので、特に気にしてはいなかった。
「しかし、幼馴染だが、千空と魅真も、年頃の男女だろう?大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫!一年くらい前までは、司帝国近くにあるツリーハウスで、一緒に暮らしてたことがあるし。千空と間違いなんて、天地がひっくり返ったって、絶っっっ対にありえないからさ」
「そ、そうか…」
「すごい言いきるね」
先のことは誰にもわからないのに、断言しきった魅真を見て、千空と幼馴染というのもあり、羽京とクロムはどこか納得した。
「では、寝泊まりする場所が決まったところで、今度は村を案内するぞ」
荷物はもう天文台に置いてあるので、今度は村の中に行くことにした。
魅真と羽京は、コハクとクロムのあとに続いて、天文台の前にある坂道を歩いていくと、何分もしないうちすぐについた。
「ここが…百夜さんが創った…石神村!」
そこには、湖の上に、丸い形の崖のようなものが二つあり、そこにはいくつか家が建っていて、今立っている崖と丸い崖には橋がかけられていた。
居住区に続く橋の前まで来ると、魅真はそれだけで感動して、目を輝かせる。
「話を聞いてから、ずっと来てみたかったんだ。私を指名してくれた千空に感謝しなきゃ」
「そういえば、千空が魅真を指名したのは、石油探しのためだけじゃないと道中言っていたが、あれはどういう意味なのだ?」
魅真が目を輝かせて笑っていると、コハクは疑問に思っていたことを聞いてみた。
「千空から村のことを聞いた時、行ってみたいって言ったことがあるから、気を使ってくれたんだと思う…。あの性格だから、運動神経がいいからとか体力があるからとか、適当言ってたみたいだけどね」
千空が魅真を指名した理由は、確かに石油探しのためもあるかもしれないが、本当のところは、魅真が石神村に行きたがっていたからだった。
しかし、立場上、個人の感情を表立って出すわけにはいかないし、元からの性格もあり、それっぽい理由をクロムに伝えたのを、魅真は見抜いていた。
魅真がコハクの質問に答えると、全員橋を渡り、居住区に入った。
「うわぁ!なんか、日本史の教科書にのってるような家だね」
「日本史?教科書?」
「なんだよ、それは?」
「日本史は、日本の歴史のことで、学問の一つ。教科書は、勉強する人が使う本のことだよ」
居住区を近くで見ると、魅真は感動し、旧時代の人間にしかわからないことを口にした。
なので、ストーンワールドで生まれ育ったコハクとクロムは、魅真の言ってる意味がわからないので、羽京が簡単に説明をする。
「これはこれは、よくお越しくださいました」
「ようこそ、石神村へ」
そこへ、村の隠居達がやって来て、魅真と羽京にあいさつをした。
「あ…。はじめまして、千空の親友の、真田魅真といいます。よろしくお願いします」
「西園寺羽京です。お世話になります」
隠居達がやって来ると、魅真と羽京はそちらに顔を向けて、あいさつを返す。
「まあまあ、それじゃああなたが、あの噂の魅真さんなのね?」
「噂…ですか?」
「えぇ。村人たちの間では、もちきりでしたのよ。司帝国で、千空と別れて闘っている、千空のお仲間さん」
「私たちも、ぜひ一度会ってみたくてね」
「そうなんですね。私も、千空のお父さんが創ったというこの村に、ぜひ来てみたかったんです。それに、村の方たちにもお会いしたかったので、こうして会えて、とてもうれしいです」
「おや、これはうれしいことを言ってくれる」
あいさつをすると、隠居達は、魅真と和やかに会話をした。
すると、今度はそこへ、村の子供達が集まってきた。
「あ、魅真だ!」
「魅真!」
「奇跡の洞窟で、千空たちと戦った英雄!」
「え、英雄?」
子供達は、魅真の前にやって来るなり、興奮気味に話しだした。
「だって、あの氷月とかいう、悪い奴をやっつけたんだろ?」
「英雄だよ!」
「さすが千空の仲間だ!」
子供達は、奇跡の洞窟での闘いのことを、他の村の者に聞いていたので、魅真が氷月と戦った時のことを、興奮しながら話していた。
「正確には、武器破壊して、木刀ですべての急所を殴っただけだから、倒したわけじゃないんだけどね」
「いや、十分すげえだろ」
「確かにな…。氷月のあの槍の回転はすさまじい。だからこそ、一瞬にして、刃を接続しているひもを切ったのは、すさまじい技術だ」
魅真は謙遜していたが、クロムもコハクも、子供達と同じように、魅真を称賛した。
「一体どうやったのだ?あれは」
「そうだね…。簡単に言えば、氷月の槍全体の長さと、持ち手と刃の部分と接続面とひもの面積、石器のナイフの切れ味、氷月と私の身長の比較、氷月が攻撃する際に腕を伸ばした時の、槍のリーチと高さ、私との間合い、それを諸々計算しただけかな」
「だけって…」
「どこが簡単だよ」
コハクに対する質問に、かなり難しいことを、さも簡単であるように答えたので、羽京とクロムはつっこんだ。
「まあ、それだけじゃできないだろうから、治療の時に使う、小型の石器のナイフで練習してたんだけどね」
「それだと、ヘタしたらやられるじゃないか」
「うん。賭けでもあったんだけどね。でも、リーチのある武器は、遠くに離れた相手にも攻撃できるけど、逆に懐に入っちゃえば、攻撃できなくなるから、そこを狙ってたのもあるんだ」
「なるほど。確かにそうだね」
「それであの時、敵の人数や、武器の種類だけでなく、武器の大きさも説明していたのだな」
奇跡の洞窟に行く前、何故武器の大きさの説明もしていたのか、コハクはようやく納得がいった。
「やっぱ魅真すげえ!!」
「コハクみたいに強いんだな」
子供なのでまだよくわかっていないが、会話の雰囲気からしてすごいものなのだと思った子供達は、更に興奮した。
「あれ?」
「どうしたの?羽京」
「電話が鳴ってる。千空かな?」
「じゃあ、一度天文台に戻りましょうか」
話している途中で、羽京は電話の音を聞きとったので、一度天文台に戻ることになった。
子供達は関係ないのだが、ついていきたいというので、魅真達と一緒に天文台に行った。
同じ頃、天文台では…。
「はいはい、今出ますよ」
天文台に残っていた隠居の女性…あるみが、先に電話をとった。
「はい、もしもし?」
「おぅ、俺だ」
「あら、千空?」
「そうだ。魅真はいっか?」
「魅真ちゃんは、今居住区にいるのよ」
「そうか。なら、またあとでかけるように言ってくれ」
かけてきたのは千空で、魅真に用事があったのだが、魅真がいないので、早々に切ってしまった。
千空が電話を切った時、数百メートル手前の坂道を、魅真達が歩いていた。
すっかり子供達に懐かれた魅真は、たくさんいるうちの二人の子供と、手をつないで歩いていた。
「あ、コハクちゃん達」
天文台の前につくと、天文台から、あるみが顔をのぞかせた。
「うむ。電話があったみたいだが、もう切れてしまったのか?」
「いいえ、千空から電話でね。魅真ちゃんに用事があったみたいなんだけど…」
「私ですか?」
「ええ…。けど、いないってわかったら、すぐに切っちゃったのよ」
「千空らしい」
魅真は苦笑いをすると、子供達の手を離して、一人天文台に上がると、電話をかけた。
「おぅ、俺だ」
「ああ、千空?」
「魅真か。早かったな」
「羽京が音を感じとったからね。で、なんの用?」
「テメーに、石油探し以外でのミッションだ」
「ミッション?ゲンいわく、地獄のドイヒー作業とか?」
「そんなんじゃねえよ。テメーには、なれたミッションだ」
「一体何よ?」
「そっちに、ラボと天文台があんだろ?」
「うん」
「そこに、薬草の畑を作っとけ。あと、治療に必要な道具もな。こっちも必要だが、そっちでも必要になるかもしんねえ」
「まあ暇だし、確かにいつ必要になるかわかんないし、手持ちも少ないからやっとくよ。じゃあ」
「あ゙ぁ」
魅真は千空の要件を了承すると、あっさりと電話を切った。
そして、電話を切ると、天文台に置いておいた荷物を持って、外に出た。
「千空は、なんの用事だって?」
「その大荷物は一体どうしたのだ?」
魅真が外に出ると、クロムとコハクが、魅真に電話の内容を聞いてきた。
「私に、薬草畑と、治療に必要な道具を作っとけだってさ。いつ必要になるかわからないから」
「だが、もうあるのではないのか?司帝国から持ってきたのだろう?」
「まあね。けど、いつどれだけ必要になるかわからないし、あと暇だし、やることはやっとかないと。それでクロム、コハク、悪いんだけど、のこぎりとか、木を切る道具があったら貸してくれるかな?」
「ん?おお、確かカセキのジーさんが持ってたな」
頼まれると、クロムは居住区に行き、数分すると、のこぎりを持って帰ってきた。
「ありがとう。じゃあ、そういわけで、ちょっと行ってくるよ」
魅真はのこぎりを受け取ると、村の周辺の探索に行くために歩き出そうとした。
「ならば、私も行くぞ」
「俺もだぜ」
「僕も」
魅真が歩き出そうとすると、コハク、クロム、羽京が、手伝いを申し出た。
「いいよ。私のミッションだし。三人とも、長旅で疲れてるでしょ?ゆっくり休んでて」
「それは魅真も同じじゃないか」
「第一、この辺に何があるか知らねえだろ」
「ああ。魅真一人に働かせて、何もしないわけにはいくまい」
けど、魅真は三人の申し出をやんわりと断ったが、三人は引き下がらなかった。
「大丈夫よ。そんなに遠くには行かないから。まずは、畑を作る道具をそろえるだけだし。村で待ってて」
「そういうわけにもいかないだろう」
「それに、すげえ大変そうじゃねえか。なおのこと手伝うぜ」
「初めての場所で、一人でいるのは危険だ。余計に一人では行かせられないよ」
魅真は再度断るが、三人はそれでも引き下がることはなかった。
「…わかった。じゃあ、お願いしていいかな?」
「おぅよ。探索王にまかせとけ!!」
「僕もがんばるよ」
「何から始めればいいのだ?」
断っても全然引き下がらないので、魅真は根負けして、手伝いを受け入れた。
「まずは畑を作らなきゃいけないから、場所の確保と、道具をそろえること。肥料と、肥料を入れる袋と、肥料を巻くための道具、水をまく道具をそろえることかな。薬草があっても、畑がないとどうしようもないし」
「道具なら、わざわざ作らなくても、いいかもしれないぞ」
「おぅ。ちょっととってくるぜ」
最初に必要なものを説明すると、コハクとクロムは、居住区に行った。
そして、数分すると、道具を入れたカゴを背負って戻ってきた。
「よくわからないから、とりあえず全部持ってきたぜ」
「これでできるのか?」
カゴの中には、様々な道具が入っていたが、ここでの食糧調達は狩猟なので、コハクとクロムにはよくわからなかった。
「そうだね…。これと…これと……あとは…これかな」
目の前にあるカゴの中から選んだのは、魅真の半身より少し大きな鍬と、片手で持てる小さな鍬と、スコップ2つだった。
「それだけでよいのか?」
「うん。そんなに大きいものは作らないし、これで十分だよ」
魅真が道具を選ぶと、まずは畑を作る場所を選んだ。
場所はラボと反対側にある広い所で、魅真は鍬の持ち手で線を引いて、大体の広さを決めると、雑草をぬいて、スコップで土を掘り起こした。
次に、コハクが大きな鍬で土を耕して、細かい土を作った。
「次はどうすんだよ?」
「次は、肥料を作るために、貝殻をとりに行くわよ」
「貝殻?じゃあ、海に行くの?」
「うん」
土の準備ができると、今度は肥料の材料の、貝殻を取りに海に行った。
四人でカゴいっぱいになるまでいれると、ラボがある場所に戻り、粉々に砕いた。
これで準備が整ったので、あとは薬草を探して植えるだけだが、もうそろそろ日が暮れるので、今日はやめにして、夕飯をとるために、居住区に行った。
居住区にある中の家の一つに入ると、そこには、今いる村人が全員いた。
「さあさ。今日は、魅真ちゃんと羽京さんの歓迎会だから、ご馳走作ったのよ」
「「ありがとうございます」」
わざわざ歓迎会を開いてくれたので、魅真と羽京はお礼を言った。
「うっひょおー!!今日は豪華じゃねえか!!」
この日の夕飯のメニューは、魚料理と鹿の肉と果物だった。
「いただきます」
クロムがご馳走を目の前にして喜ぶ中、魅真は手をあわせて、感謝の言葉を述べた。
「いただきます」
それを見ていた羽京も、口もとをゆるめると、魅真に倣って、同じように感謝の言葉を述べる。
2人の言葉を皮切りに、全員食事を始めた。
「魅真、一緒に食べよう」
「僕も!」
「私も!」
「うん、いいよ」
その時、子供達が魅真の周りに集まってきたので、魅真は子供達のことを受け入れ、一緒に食事をとった。
夕飯をとり、順番にお風呂に入ると、その日は早めに就寝した。
次の日は、朝食をとった後、魅真達は全員で薬草を探しに行った。
そして、いくつか採集すると、昼食に合わせて戻り、昼食をとると、採ってきた薬草を植えて、その後に肥料と水をまいた。
「これでよいのか?」
「そうだね。あとは、お世話をしつつ、探索の範囲を広げて、時間をかけて増やしていくだけだよ」
これで作業は終わり、作業が終わると、全員好きに過ごしていた。
といっても、誰も居住区には行かず、ラボのある場所で過ごしていたが、そこへ、突然子供達がやって来た。
そして、子供達のうち一人の、「魅真とコハクはどっちが強いの?」という何気ない一言で、魅真とコハクは試合をすることとなった。
魅真達は、子供達も一緒に、居住区に行った。
途中、たくさん家があるところで、家の中から、コハクが練習用の剣を二人分持ってきて、一番奥の、高い場所に一つだけ家が建っていて、周りに細い木が刺さっている、武舞台のような開けた崖の上に、全員集まった。
「本当によいのか?」
魅真とコハクは、武器や盾をはずして離れたところに置くと、練習用の剣を持って真ん中に立ち、お互いに向かい合い、それ以外の者達は、二人から離れた場所に立っていた。
そして準備が整うと、闘う前に、コハクが魅真に確認をとった。
「私はいいよ。むしろ大歓迎!これからも、闘いが起こらないとは絶対に言えないから、私も戦闘力をレベルアップさせたいし。奇跡の洞窟の闘いで、ちょっと見ただけだけど、私の目に狂いがなければ、村人の中で一番強かったのはコハクだから」
「うむ…。そうか…」
魅真は特に気にしていないし、流れで褒められたので、コハクは悪い気はしていなかった。
「では、そういうことなら、遠慮なくいくぞ」
確認をとると、コハクは構えをとり、さっそく闘おうとした。
「うん。よろしくお願いします」
だが魅真は、構えをとらず、右手で剣を持ち、頭をさげて、試合前のあいさつをした。
「え?あ…うむ。よ…よろしく」
丁寧にあいさつをされたので、そういった習慣がないコハクは一瞬戸惑ったが、魅真に倣い、少々ぶっきらぼうな感じだが、あいさつを返した。
「じゃあ、僕が審判をやるよ」
二人があいさつをすると、羽京は立ち上がり、審判の役を買って出た。
「それじゃあ行くよ。用意……始め!!」
羽京が合図を出すと、魅真とコハクは、同時にとび出した。
距離をつめると、二人同時に剣をふりかざし、コハクの方が少しだけ早く、剣をふりおろして魅真に切りかかったが、魅真はあっさりと剣を盾にして防御をした。
防御をされると、コハクは後ろに回転しながらの蹴りをくらわすが、魅真は体を少しだけ横にずらしてかわし、コハクがまだ地面に足をつけていない隙に、剣をふりおろした。
しかし、コハクは剣で防御をして、そのままはじきとばすと、中段蹴りをするが、魅真はコハクの蹴りを足で止めて、そのまま地面に足をおろしたので、コハクはバランスを崩してしまう。
更には、コハクがバランスを崩した隙に、魅真は剣で薙ぐと攻撃はあたり、その勢いで、コハクは何メートルか後ろに下がった。
けど、息つくひまもなくとび出して、魅真を剣で殴りとばすと、今度は魅真が後退する。
コハクはその隙を狙ってとび出して剣で薙ぐが、魅真は剣で防御した。
今の攻撃を皮切りに、魅真とコハクは、連続で斬り合った。
お互い互角で、とてつもなく早いスピードで攻撃をくり返し、武器がぶつかる音がしばらく響くが、魅真が一瞬の隙をついて、コハクの体に一撃を入れると、氷月と戦った時のように、すべての急所に剣で打ちこんだ。
「うわ!!」
その攻撃で、コハクは地面に倒れた。
いかにコハクが強くても、すべての急所に打ちこまれては、かなりのダメージを負うのは必然だった。
「そこまで!勝者、魅真!!」
今ので、魅真の勝ちだと判断した羽京は、魅真の勝利を宣言した。
魅真の勝利が宣言されると、自分が負けたことを実感したコハクは、呆然とした。
「コハクが……負けた!?」
コハクは村最強なので、コハクが負けたことにクロムは驚愕し、目を大きく見開く。
「すっげええ!!」
「コハクちゃんに勝っちゃった!」
「魅真、すっげえ強ぇ!!」
一方子供達は、魅真がコハクに勝ったことを称賛した。
「魅真……めっぽう強いんだな」
そこへ、起き上がったコハクが魅真の前に来て、魅真を称賛する。
「コハクもすごく強いよ。また暇があったら、こうして試合をしてくれるとうれしいんだけど…」
「無論だ!今度は負けんぞ!」
負けはしたが、コハクはあとにひきずっておらず、明るい顔で宣戦布告をした。
それから、千空からはなんの連絡もなく、魅真達は、薬草を集めたり、鍛錬をつんだり、村の手伝いをして、日々を過ごした。
魅真は、すっかり村の子供達に大人気になった。
そして、魅真達が石神村に来てから約三か月後、ようやく千空から電話がかかってきた。
「もしもし」
「おぅ、クロムか」
「千空か。久しぶりだな。そっちはどうだ?」
「それだがな、これからそっちに行くぞ」
「そうか。それじゃあ、地図のことはどうにかなったのか?」
「あ゙ぁ、そのために行くんだよ。気球に乗ってな」
「気球ってなんだよ」
「簡単に言やあ、空飛ぶマシンだ」
「なに!!!!!空飛びマシーン!!?」
電話をとったのはクロムで、クロムは千空から気球のことを聞くなり、荷物を持って、一人天文台からとび出していった。
「行っちゃったね…」
「行っちゃった」
「どうするのだ?」
「どうしようもないでしょ。こっちに来るみたいだし、それまで待とう」
「そうだね。そうするしかないね」
クロムはあっという間にいなくなってしまったし、千空もこちらに来るというので、魅真達は村で待つことにした。
そして数日後…。
起きた時は晴れていたが、急に大雨が降ってきた。
しかし、その雨はすぐにやみ、大きな虹を作った。
「すぐに晴れたな」
「通り雨だったみたいだね」
「うわぁ…虹だ!」
晴れると、魅真達は外に出て、魅真は空にかかった虹を見て、感動の声をあげた。
「千空からの情報では、もうそろそろつくみたいだけど……雨降ったし大丈夫かな…?」
「そうだね。何しろ気球だから、もろに影響を受けるだろうね」
「うん……」
けど、雨があがったのはいいが、気球に乗ってるというので、魅真と羽京は心配になった。
その時、空を見ていたコハクが、あるものに気づいた。
「千空、クロム、龍水」
それは、空にいる千空達の存在だった。
「翔んでいる。翔んでいるぞ、本当に……!」
「!!?」
千空達の姿と気球をとらえると、コハクは興奮して、気球が浮いてる方へ走りだした。
そして、気球に乗っている千空達は…。
「着いたぜ、無事、ゴールに!!おぅ、ずいぶん余裕だったな。龍水、テメーの腕ならよ」
「やるな、貴様らこそ!フゥン。俺たち冒険のプロが組めば、石油探しなど、造作もないぜ…!!」
クロムと龍水は、気球での移動中、龍水が冒険のプロと自称し、千空とクロムを素人扱いしたことで、クロムが腹を立て、対抗意識をもち、龍水と張り合って火花を散らしていた。
だが、途中積乱雲に遭遇し、しかもバードストライクで上部に穴があいてしまい、積乱雲の上昇気流に捕まってしまったので、千空と龍水が打開策を考えてると、クロムは積乱雲に全力で突っ込んでブチ抜こうとした。
更に千空が、燃料を燃やす釜に復活液を放り込んで一気に燃やし、急上昇させた。
その後に、龍水が帽子を空に投げて上昇気流を確かめ、全ての燃料を入れると、積乱雲の上空まで来て、なんとか助かったのだった。
そういった経緯があったので、張り合っていたクロムと龍水は、互いの力を認めて打ち解け、お互い健闘を称え合うようにタッチをした。
「あ゙ー、そういう河原でバトった男の友情的なの後にして、まずは俺を助けろ。そろそろ死ぬ」
ちなみに千空は、復活液を入れた後、爆発的な炎が起こったために外に放りだされたが、なんとかバスケットの持ち手の部分につかまったので無事だった。
だが、体力がないので、そろそろ限界だったため、2人に助けを求めたのである。
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