Z=26 宝島へ
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銀狼が船に乗ると、魅真、千空、羽京、龍水、クロム、コハク、大樹、ゲン、銀狼、陽、マグマ、コクヨウは、船室に入った。
「地球が石化光線くらって数千年。ククク、いつまでもやられっぱじゃねえぞ。いよいよ全人類70億人、全員を助け出す……!!!」
「「「なにぃいいいい」」」
「それ、何億リットルいるの、復活液…??」
「どうするのだ。源泉である奇跡の洞窟も、既に潰されてしまったのだぞ!」
「あ゙ー。んな自然の奇跡様には、もう頼らねえ」
「そもそも奇跡の洞窟の石化復活液は、何日かで一人分しか溜まらなかったしな。もともと、とてもじゃないが全人類には足りん!」
「70億人分っていうと、全員復活するのに、何千万年も待たなきゃだしね」
「ククク。その復活液が、∞にジャブジャブ湧くっつう、神アイテムがあんだよ。宝島の宝箱にな……!!」
「宝箱!!?」
「ナニ?ドコニ?」
「はっはーーー!いいぞ。俄然冒険らしくなってきたな…!!!」
宝箱と聞くと、ゲンは疑問に思っていたが、クロムと龍水は目を輝かせた。
Z=26 宝島へ
それは、今から3700年前…。人類石化から、数年後のことだった。
宇宙にいたことで、石化から逃れ、一か八かで宇宙から地球に戻り、無人島にたどり着いた、百夜と宇宙飛行士の仲間たち。
ある日百夜は、家の中で、ダイヤモンドの指輪を手にしてみつめていた。
それは、宇宙飛行士の仲間の、ダリヤとヤコフの結婚指輪で、2人は遺せるものなら遺した方がいいと言って、百夜に渡したのだった。
そして、そのダイヤの指輪をふくむ貴重な鉱石を、百夜は瓶につめて、宝箱にしまった。
その在処を、未来の科学者のもとへ知らせるために、百物語の詩に乗せて、3700年の間、代々村に語り継がれてきた。
そして、人類が石化してから3700年の月日が経った時、未来の科学者…千空は、出航の前に、村でルリに、百物語の話を聞いた。鉱石の話を…。
ルリが話した鉱石の話の内容。それは、金とダイヤとプラチナが、宝箱に眠るというものだった。
「―白金(プラチナ)。金より珍しい、ウルトラレア鉱石だがな。ほんの一欠片でもいい!ゲットできりゃ、触媒にして、硝酸作り放題。つまり――石化復活液∞生産マシンの、爆誕だ……!!!」
「なにぃいいいい。一欠片で!?ホントに神アイテムじゃないか、プラチナー!!」
「クロム自慢の、鉱石コレクションには無かったのか!?」
「おぅ、クッソ。んなヤベーウルトラレア鉱石が、都合良ーく一欠片でも入ってりゃあな!とっとと復活液作れたのによ!!」
「いや、もともと復活液は、ウンコからでも作れたんだよ。アホほど時間かけて、ちーーっとずつだがな」
「では、なぜ今まで、少しずつでも作らなかったのだ??」
「ダンバー数ってのがあってね~」
コハクが千空に疑問を投げかけると、千空ではなくゲンが口を開く。
「人間の脳が、群れで『お互いに覚えられる人数』は、150人。グループが機能できる上限人数ね、これ。軍隊の構成単位なんかにも使われてるんだけど――。さ~~て、ここでクイズだよ~~♪今の俺ら、科学王国は、総勢何人でしょ~?」
「ん?もともと司帝国が100人ちょいだろ?」
「石神村からは、40人ほどだな」
「てことは、足してだいたい…」
「150人!!」
「ピィンポォ~ン♪」
ゲンがダンバー数について説明をした後クイズを出すと、陽、コクヨウ、銀狼で答えを出した。
「言ったのよ、千空ちゃんにも。今、これ以上人増やすとバイヤーよ。バラバラになるよって」
「その辺は、すっごい現実的だね。さすがメンタリスト…」
「ありがと~。お褒めにあずかり。でも何にも出ない♪『復活液作ります!』、『助けられる人はホンのちょっとずつだけ!!』。でもって、国民はバラバラです♪じゃ、誰助けるかで、一悶着もう見えてるし。司ちゃん氷月ちゃん事変の二の舞じゃない」
「だがな、白金(プラチナ)さえありゃ――もう、復活の人数制限もクソもねえ。人類丸ごと、石化から救い出せる……!!!」
「おぅ、でもその、宝箱ってどこだよ?」
「千空のお父さんたちが、鉱石類をとっておいてくれたにしても、無人島に、何千年も保存する箱なんて…」
「あ゙ー、んなもん決まってんだろ。ガッチガチの防御力!科学の結晶で、大気圏突入の高温にすら耐えまくる、最強無敵の箱があんじゃねえか!!」
「……!!」
千空にそこまで言われると、羽京の頭には、宇宙船ソユーズが思い浮かんだ。
「鉱石の宝箱は、宇宙船ソユーズだ……!!!」
「!! ってことは、宇宙船の宝箱を探し出せば、人類全員救えるんじゃないかー!?」
「うん。全部、今俺が言ったやつな、それな」
「場所とか分かるの?」
「ハ!人海戦術で探せばよかろう」
「そもそも、数千年も経ってんだ。島が今どうなってんのかも、実際行ってみるしかねえ」
「おぅよ。宝島で宝探し編、スタートだぜ……!!」
千空たちが盛り上がっている中、船室の後ろの扉の方にいた剃髪の男性は、ずっと黙って千空たちの会話を聞いていたが、何かを決したように、ゲンを呼び出し、話をした。
「千空ちゃん千空ちゃん」
彼とゲンは、扉の向こう側の通路で話をしており、話が終わると、ゲンは千空の名前を呼びながら、千空を手招きした。
「パワーチームの一人がね、さっきの俺らの話聞いて、大事な話しなくちゃいけないって…」
「!!! テメーは……」
彼を見ると、千空は目を見張った。
「誰だ…???なんでだ、マジで名前出てこねぇ」
しかし、顔は分かっても名前は分からなかった。
「浮かばなくて当然だ。彼に名は無い」
けど、思い浮かばないのではなくて、最初から名前がないだけだった。
「船員リスト作る時も困ったぞ。ひとまず名無しと書いたがな!」
「あ…ああ、好きに呼んで構わない。オ…オレはホントは、石神村の人間じゃない」
「「「「「!!??」」」」」
「幼いころに、一人生きて浜辺に流れ着いたのを、不憫におもった村人、つまりオレの里親が、自分の子と嘘をついて育てたんだ。本当の名は、石神村では浮きすぎるから、ずっと名無しで生きてきた。オレの本当の名は、『ソユーズ』」
真実を語り、本当の名前を名乗った彼の背には、星とロケットを組み合わせたような絵が描かれている、上部が丸くなっている縦長の形の盾を背負っていた。
「あ…案内できるかもしれない。オレの故郷、宝箱ソユーズの在処に……!!」
「おぉおおおおお!!」
「ククク、実におありがてえ。さらに、良くも悪くも、確実度100億%の情報一つゲットしたな!!宝島は今、無人島じゃあねえ……!!!」
「私たちの他にも、生き残りの人類が、その宝島にいるということか…!?」
「あ゙ぁ、こいつのおありがてえ情報でな。人間が住んでんのが確定した!」
「無人島なら楽だったけどね。勝手に探検し放題だし」
「そうだね。時間はかかるかもだけど、安全にみつけられるしね」
「相変わらず、運の引きだけはドイヒーね、千空ちゃん」
「?? おぅ、ちょっ、待て待て待て。話が見えねえ。その宝島の連中っつうのは何者だ。人類全員石化したんじゃねえのかよ??」
魅真、羽京、ゲンが納得している横で、クロムは頭がこんがらがっていた。
「私たち石神村の、遠縁の方々ということですね…?」
「仮説だがな。100億%間違いねえだろ」
「人類が石化した時、宇宙にいて難を逃れた、千空のお父様。そして、宇宙飛行士の皆様。その子孫が、宝島に代々生きる民となったわけですが―。百物語に遺された、創始者様のご意志は、"いつの日か、日本を目指せ"」
「フゥン。あるいは、数千年の間に、何人も挑戦しては、海に散ったのかもしれんな」
「たーだ、どっかで勝負かけて、根性で日本まで渡り切った猛者がいたわけだ!」
「それが俺ら、石神村のご先祖か!!」
「もちろん、全員総出で、バンザイ特攻するバカはいねえ。当~~然、島に残った連中もいたはずだ」
「そ…そっか。残った方の子孫が、今の宝島の住民、オレの故郷……!!」
「友好的だといいけどね~」
「んじゃなきゃメンタリスト、テメーの出番だ」
「丸投げドイヒ~」
「あ?逆らうなら、とっととブッ殺しゃいいじゃねえか。こんだけいんだぞ、戦士」
「前にも言ったが、人に攻撃するのは悪いことだ、マグマ!」
「マグマは大樹とコンビで動いてもらったほうが良さそうだね…」
「ホワイマンなんじゃねえのか?その宝島の連中が」
「「「!!!」」」
宝島に人がいることについて、本土の灯台にいるルリも交えて話し合っていると、突然クロムが導き出した答えに、ゲン、コクヨウ、ソユーズは過剰に反応を示す。
「確かに、人がいるなら、辻褄は合うけど…」
「名無し改めソユーズ!なぜ、こんな重要な情報を黙っていたのだ。貴様が、石神村の本当の仲間ではないという…」
クロムが出した答えを聞いたコクヨウは、ソユーズの肩をつかみ、すごい剣幕で詰め寄る。
コクヨウが長になったぐらいの頃に村に来て、ずっと村人に黙って生きてきたのだから…。
「!! …いや…よくぞ今、告白してくれた」
しかし、ソユーズが気まずそうな顔をして、唇をかみしめて、黙ってうつむくと、責めるのをやめ、両手ではさみこむように、頭をたたく。
石神村で生まれたわけではないが、元の先祖をたどれば同じだし、遠縁ではあるし、何よりも、騙していようと、確かにソユーズは、20年間石神村で共に暮らしてきた者だからだ。
そんな複雑な思いを抱えたコクヨウの背中を、コハクはそっとたたき、ゲンは横目でジッと見ていた。
「う~ん。狭い島の資源で、飽和する電波が撃てるほど、文明発展できるかなあ…」
「はっはー!そんな科学力があったら、孤島にひきこもったままのはずがないだろう!水平線の彼方に何があるのか――。世界の全てを見たい!全てを知りたい!!その欲望に、人類は決して逆らえない………!!」
「オ…オレもずっと、知りたかった。オレだけ皆の仲間じゃないなら、オレの仲間って?かすかな景色の記憶を頼りに船を出しては、嵐で引き返したり。知ってどうするんだ。分かってるさ。今さらなんの意味もない。でも…オレはただ、知りたかったんだ――」
「あ゙ぁ、その、ただ知りてえってのが、科学全部の原動力だ」
「じゃあ、もうと~っくに、科学王国の仲間じゃない。ソユーズちゃんも♪」
自分だけが石神村の本当の仲間じゃないので、ずっと気にしていたソユーズの思いを、千空とゲンが肯定すると、ソユーズは目尻に涙を浮かべ、後ろではコクヨウが、同じように目尻に涙を浮かべてうなずいていた。
「オ…オレじゃ、何日漕いでも島なんか見えなくて、でも、この科学の船ならきっと――」
「相当速かろう!あと何日ほどで着くのだ、宝島に?」
「もう数時間で着くぞ」
「「速!!!!」」
あと何日もかかると思ったら、今日のうちに着くというので、ゲンとコハクは驚いた。
「ハ!先祖たちが、決死の覚悟で旅したであろうこの海を、一瞬で……」
「ヤベーーー、ペルセウス!!」
全員再び外に出て、コハクとクロムは前の方に行くと、海を見て、改めて感激した。
「千空たち科学チームの、努力の結晶だなーー!!」
「ですな!見てみたいかも。どうやって作ってあるのかとか」
大樹と杠も称賛し、杠が興味を示すと、千空、龍水、カセキは強く反応した。
「杠、今の発言は、そこの男共の、飛んで火にいるなんとやらだ」
「知らないよ。どうなっても」
「?」
コハクとニッキーが、杠の発言につっこむが、杠にはなんのことやらさっぱりだった。
「え!?見たい見たい?ワシらの作った船!?」
「フゥン。どうしてもと言うならな」
「アホほどあんぞ。科学の仕込みが!!」
「ウキウキでチューンナップしたマシンのこだわりを、見て欲しくてしょうがないんだよ。こういう手合いは」
「逃れられんぞ。終わるまで」
コハクとニッキーがつっこんだのは、こういう事態を想定してのことで、興味を示した杠に、千空、龍水、カセキは、大興奮で詰め寄った。
「大丈夫!しょっちゅうだったから。千空くんの、ロケット5時間解説とか」
「「まさかの大ベテラン!!」」
けど、杠は石化前から千空の長い解説を聞いてきたので、苦とも思っていなかった。
「はっはー!案内しよう。これが、科学船ペルセウスの全貌だ……!!!」
フランソワが柱の扉を開けると、龍水はキラキラした顔で、中の階段を降りて案内をし、杠はその後に着いていった。
船の中には、通信室、寝室、温室、エンジンルームなどがあり、他にも、車の荷台式のラボがあったり、アンテナやレーダー、GPS、サーチライトもあり、各々船の中で思い思いに過ごした。
それから数十分後…。
「オボェエエェエ」
急に、不穏な声が聞こえてきた。
「酔うってこんなん。船で…」
「きぼちわるぃいいぃ」
それは、銀狼が吐く声で、銀狼と陽をはじめとした一部の者は、船の上で吐いて、ぐったりして倒れていた。
「なんだい、だらしないね!」
「水の民に任せろだの、ドヤッていた割にはな…」
「しょうがないよ。遠洋は初めてだろうし」
「あ゙ーー。してこなかったな、船酔い対策。まあ問題ねえ。その為のラボだ。酔い止めなら、ソコポラミンとか、そのへんで自律神経に抑制かけんのがてっとり早ぇ。チョウセンアサガオ使って――」
「おお、これがスゴい薬の花なのか?」
「いや、スゲー毒の花」
「なにー!!」
酔い止めのために取り出した花が、薬かと思いきや、実は毒の花だったので、大樹は驚愕する。
「油に溶けるもんと水に溶けるもんに分けて、薬効成分だけ抽出すんだよ」
そして、千空はラボに行くと、器具を使って、チョウセンアサガオで薬を作った。
「超微量なら薬になる。適当に扱ったら、マジ死ぬ花だからな。触んじゃねえぞ!」
出来上がると、スプーンに薬を乗せて、銀狼たちに飲ませた。
「………あ」
すると、一瞬にして症状が良くなった。
「ウェエエイ。治ってきたーー!!」
「寝てろ。跳ねるほど治ったなら、とっとと働け!」
症状が良くなると、銀狼も陽も、調子にのって跳びはねた。
「すごいね。石の世界(ストーンワールド)に、科学の医務室つきだ」
「こ…この船なら、嵐が来たって行けるかもしれない」
ラボを前にして、羽京とソユーズは感心していた。
「嵐?水の民が、そんなもの恐れると思う?」
「治った瞬間、またドヤり始めた!」
「んな調子こいてっと、マジで来んぞ、嵐」
そして、体の調子が良くなった銀狼は、すごいドヤ顔になる。
「海の天気は悪女のように、一瞬で表情を変えるからな…!」
龍水が天気について語った途端、急に前方の空が黒くなり、嵐がやって来た。
大雨が降り、雷が鳴り、風と波は大荒れになった。
「ひぃいいいいぃい!!」
「こんなにも急変するものなのか…」
「陸地と違って、遮蔽物が無いからね」
船は大きく傾き、海の水が船を流れる中、銀狼はヘリにつかまって叫んでいた。
「!!!」
その時、船室にいる龍水は、大きく目を見開いた。
「!? 何かあったのか、龍水!?」
「おぅ、ヤベーのか、この状況…!!?」
驚愕していたので、もしかしたら何か良くないことが起こったのかと、コハクとクロムは思った。
「日本茶をヤギミルクでラテにしたのか、フランソワ!悪くないぞ」
「「超余裕!!!!」」
けど、ただのティータイムだったので、今度はコハクとクロムが驚く。
「フゥン。嵐など、数え切れないほど乗り越えてきた。俺が船を指揮る以上、ピンチのうちにも入らん。あわてるな……!!」
余裕なのは経験を積んできたからで、コハクとクロムを落ちつかせていると、今度は千空が、龍水とは逆に、かなりあわてて走って入ってきた。
「「大あわて!!!!」」
千空の様子を見て、コハクとクロムはまた驚いた。
「違う。あわてろ。急げテメーらも。『ピンチ』でも、『ピンチに入らん』でもねえ!!」
けど、千空があわてていたのは、ピンチになったからではなかった。
「チャンスなんだよ。敵か味方か分かんねえ島の連中相手に、嵐の中、上手いこといきゃ、気付かれねえまま、こっちは一方的に科学の眼で見て、接近できんじゃねえか…!!」
それは、島が近づいてきたのと、島の人間がどういう者なのかもわからないため、こっそりと島に船をつけるチャンスだからで、千空の言葉に、龍水は目を輝かせた。
「総員、持ち場につけ!!!」
龍水が指揮をとると、全員持ち場へと走っていく。
望遠鏡はコハク、レーダーは羽京、帆船を操作するのは魅真をはじめとするパワーチーム。全員で力を合わせて、船を動かした。
そうやって、何分か船を動かしていると、全員が目を見張った。
「忘れるもんか。間違いないよ。オレの生まれた、故郷の風景だ!!」
特にソユーズは、目の前の風景に、鼻を赤くして、涙を流した。
「ククク。辿り着いたぞ百夜。宝島だ。鬼が出るか、蛇が出るか」
目の前に見えたもの…。それはかつて、千空の父の百夜と、宇宙飛行士の仲間がたどり着いた無人島…。そして、科学王国が求める、プラチナが眠る宝箱がある宝島だった。
「唆るぜ、これは……!!!」
島で何が起こるかわからない。けど、千空は楽しそうに笑っていた。
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