Z=24 完成!ペルセウス号
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鉱山ができると、発掘された鉄鉱石は、山道をトロッコで、陸路は車で運ぶこととなった。
発掘はパワーチームが行い、山道は千空とクロムが、陸路は魅真、羽京、ゲンが運んでいた。
「陸路は、くくく、車で…って!!」
「やっぱ、山道だから、すごいガタついてるね」
「ここまで積荷が重いと、さすがに悪路がキツくない?」
手で運ぶよりは早いが、山道なのですごい揺れていた。
すると、三人の目の前で黒い砂がまかれたので、ゲンは車をストップさせる。
それは、パワーチームが、アスファルトを作って、道を整備していたからだった。
「ほ…舗装道路来ちゃった………!!」
「なんだか違和感感じる…」
「あはは。原始時代のストーンワールドが、一気に街づくりって感じになってきたね」
「あ゙ぁ、石油ゲットすると、世界が激変する!つっても、アスファルト舗装の原料なんざ、9割ただの砂利だがな」
「ジーマーで!?」
「なんかこう…ドロッとしたの流しこんで、全部石油とかで作ってるイメージだったぞ!」
「私も」
「わかりみ」
「んな無駄づかいすっかよ、雑頭」
「廃液+砂利だっけ?コスパ最強だよね」
「石油を煮詰めた絞りカス。これがアスファルトだ。砂利とセットで地面に撒いて…」
パワーチームは、アスファルトを地面に撒き終えると、次は大きな木槌でアスファルトを叩き始めた。
「ブッ叩きゃ完成だ!!」
「おおお。みるみる道が延びてく。科学的なのか原始的なのか…」
「重機いらずだね、パワーチームいれば」
「重機いらないほどのパワーって、すごいね…」
パワーチームがアスファルトを叩くと、あっという間に道路を完成させた。
「全部埋めようなんつう、壮大なプロジェクトじゃねえよ。川まで最短ルートの、悪路キツいとこだけな」
「や~~、十分でしょこれ。ゴイス~~~!!」
これだけでも、先程の山道にくらべると走りやすいので、車はガタつくことなく川に向かっていった。
「川まで運んできてくれたら、あとは、水の民の僕らに任せなよぅ…!」
「ほとんど漕いでないだろうが、銀狼貴様は!」
川まで行くと、そこには船が待機していて、船には銀狼、金狼、コクヨウ、ジャスパーが乗っており、何故か銀狼がドヤ顔をしていた。
「大荷物は、陸で運ぶより、水上の方がずっと効率的だもんね」
「フゥン。昔からそうだ、日本の物流は。細長い島国の強みだな!海運王七海財閥は、もともと江戸時代の廻船問屋だぞ!!」
「それで大富豪になったのね。龍水ちゃんちのご先祖様」
車で運んできた鉱石を船に乗せていると、突然車に乗せていた電話がかかってきた。
「ははは。水路は、大船に乗ったつもりで、石神村組に任せるといい!」
「小舟だけどね」
「このようなボートや海釣り用の小さな帆船ならば、大昔から乗りつけているからな!」
「カセキじいちゃんが作ってくれるしねぇ」
「そのカセキから電話だぞ、千空」
銀狼とコクヨウがコントのようなやりとりをしていると、電話に出たクロムが千空を呼んだ。
「そうなのよ。小っちゃい船ならね~。トホホ。だから大っきい船もがんばれば、いけるかなって思っちゃったんだけども…」
電話に出ると、カセキは何やら不穏なことを口にしたので、全員造船所に向かった。
「届かないし!ズレてるし!ハミ出てるし!どんっどん船体が歪んできちゃってるの。ちくいち調整してたんだけど、あっちが立てばこっちが立たずで、もーボロボロ。ごめんちゃい」
船は龍水が復活してから、作業がまったく進んでいなかった。
それは、上手いことできていないからで、カセキは涙を流した。
「カセキが悪いんじゃないよ」
「優しいね。惚れちゃうよ、ワシ」
「いや、それはアレだけど。大型の造船なんて、現代でも、すごい高度で専門的な技術だから」
「なら、船大工みてーな奴、復活させりゃいーじゃんよ」
「どこにいるのよ、そんな人。現代日本に」
陽が簡単に言うが、南も心当たりはないし、何よりまず復活液がないので、それは無理だった。
「まぁ、欠片も問題ねえ。何度も作って、覚えていきゃいい。科学王国は、全部トライ&エラーだろが」
「何年かかんだよ、完成まで」
「ホワイマンの動向が気になってくるね…」
「あ゙ぁ、そこだけだ。誤算はよ。ホワイマン相手に、無限にチンタラ作り直してるヒマはねえ。計画変更だ。大型船は捨てて、定員数人の小型ヨットに切り替える」
「定員数人!?ほぼ全員あぶれんじゃねえか」
「よー、俺は乗んぞ、船!」
「オホホ~。諦めるっきゃないのね。ワシのカワイイ船ちゃん」
「諦める?欲しいモノを。美しい、大型機帆船を――――」
龍水は、目の前の千空やカセキ達のやりとりを見て、昔のことを思い出した。
小学生の頃叔父に、龍水の欲しがりには愛想が尽きた、諦めることを学べと言われ、小遣いが100万となった時、トレードで金を膨らましたり、それで服をたくさん買ったり、厳しいトレーニングをつんでドッジボール大会で優勝し、トロフィーと賞金をかっぱらったり、ゲームをたくさん買って友人と楽しんだり、VRが13歳以上と言われた時にはレース場を作ったり、海で豪遊したりした。
そんな龍水を、一族は自堕落だ、七海財閥の面汚しだと言っていたが、意見を求められたフランソワは、龍水は自堕落などではないと、はっきりと言い切った。
そして夜に、小屋に籠って作業をしている龍水に夜食を持っていくと、龍水は帆船の模型を作っていた。
実物の船を手に入れたのに、模型を作っている龍水に尋ねると、龍水は、人の欲にゴールはない、俺は世界一の欲張りだ、今作っていた48分の1スケールの大型の機帆船を、一緒に実際のブツにしてくれる、信頼できる、タッグを組むに値する男が欲しいと叫んだ。
「俺が模型で、大型船を作る!!」
そのことを思い出していた龍水は、自分がなんとかすると、科学王国全員の前で申し出た。
「「「「「!!?」」」」」
「それを正確に拡大して、この船を、カセキの努力の結晶を補正していく。できるだろう、千空。貴様なら。違うか…!?」
「あ゙ぁ、できる」
問われると、千空はあっさりイエスと答えた。
「48分の1スケールで、100億%正確に作れるような、模型船の超絶マニアがいればだがな………!!」
「誰にものを言っている?元より、遥かに唆る船を作ってやろう…!!」
千空が不敵な笑みを浮かべて、挑発的に言い放つと、龍水もまた、不敵な笑みを浮かべて答えた。
「大丈夫、龍水ちゃん??また、技術料100憶ドラゴ~とか…」
そこだけが心配なゲンは、千空の隣に来て、小さな声で問う。
「はっはー!そんなものはいらん。欲しいものを諦めるくらいならな」
しかし、龍水は無償で引き受け、指を鳴らした。
「なんでか、安心なんだよ。千空と龍水がタッグなだけで、なんでもできちゃいそうな気がするんだよ…!!」
こうして、龍水が48分1スケールを作ってからの、大型の機帆船作りがスタートした。
「何一つ諦めはしない。欲しい=正義だ!!」
千空はカセキとともに、模型を拡大コピーするための道具を、龍水は模型を作った。
Z=24 完成!ペルセウス号
「原始時代に、地球の裏まで大冒険!!その船の完成までの一部始終を、千空が作ってくれたカメラで、記者の私が記録します!科学王国写真日記!!」
千空達は機帆船作りに手をかけると、南は記録するために、カメラで写真を撮った。
何日かかけて龍水は模型を完成させると、灯台の下の作業台に置いて見せた。
「オホー!カッコイイじゃないの!!」
「すごい!本物そっくり」
「すさまじい細かさだな…!」
「貨物ハッチはもちろん!!マストの真下に移したぞ」
「あ゙ー、なるほどな!」
「そうか。マストの帆桁に、滑車とかひっかけて、貨物の昇降ができると楽なんだ!」
「さっすが帆船王龍水ちゃん。現場の意見だね~♪」
「その結果、空いたスペースにはもちろん!!船上カジノを設置―」
「それはいらねえ」
模型が完成すると、今度は、千空とカセキが作ったパンタグラフ拡大器で、人力の拡大コピーをするために分解した。
「龍水の模型船をいったん分解して、パーツごとに拡大コピーする」
「はっはー。千空、貴様なら、コピー機くらい朝飯前だろう!!」
「ククク。人力コピー機だがな」
「不思議なんだよ。この道具!絵をなぞると、向こうの先っぽで、すっごい大きくなって描けちゃうんだよ…!!」
「おう、たしかに2倍くらいにはなってっけどよ。実物の船に使えるほどじゃねえぞ」
「本番じゃ、48倍のパンタグラフ拡大器を使う。アホほどパワーがいんぞ……!!」
「パワー?え~~と、絵ってパワーとかいる??」
最初に作ったのは、本番用ではない小さなもので、スイカが千空の絵を描いて試していた。
本番にはパワーがいるというので、絵とパワーが結びつかないゲンは、疑問に思った。
「でか!!!」
「50kgくらいか、このペン?全く問題ないぞー!!」
「はい。いりました、パワー」
「ナスカの地上絵とかも、実はこんな風にして描いてたりしてね」
「原寸大まで拡大した設計図で、船のパーツごとに調整してく。昔ながらの造船法だな」
だが本番で、スイカが使っていたものの、何倍もの大きさのパンタグラフ拡大器を大樹が使って、スイカの描いた絵をなぞって地面に描いてるのを見て、ゲンは絵にパワーがいることに納得した。
「おおおお。船完成のロードマップ。もう、半分以上のマスクリアしてんじゃねえか!!」
「完成が見えてきたな。あとは何がいるのだ…!?」
「時間がいる。船体もだが、クソデカ鋼鉄エンジンが、アホほど地道なデスロードだ」
「冬でペース落ちるしね」
「ひいい。何か月かかんのぉ…」
「フゥン。気長にやるだけだ。皆でウィンタースポーツにでも興じながらな」
「大作の記録になりそう…!!」
船体と鋼鉄エンジンを作るのに時間がかかるというので、羽京や銀狼はげんなりとしていたが、千空と龍水はまったく気にしておらず、南は燃えていた。
「ホントに興じちゃった。ウィンタースポーツ!」
「どーせ今、雪で働けねーし」
「仕事も遊びも、全てを手に入れる!!」
「カーボンあっからな。スキースノボなんざ作り放題だ!」
「あ~、商品なのねこれ!ドラゴガッポリ♪大事かもね、イベントごと」
「スノボ初めてだけど、結構スイスイすべれるものね」
「やー。これは、楽しすぎるぞ」
「スッゴい運動神経!あ、速すぎて、もうオバケみたく伸びてる光がコハクちゃんね」
冬になり、雪が降ると、仕事ができなくなったので、スキーやスノボで遊んで楽しんだ。
「――バレンタイン??」
「ほら、イベントごと大事よ。ドラゴ…じゃない。みんなの士気のために」
「チョコじゃん!!!」
「やべぇえ。うめぇえええ!!」
「僕のチョコは?」
「放電で作ったオゾンに、月桂樹ブチ込みゃ、力ずくでバニラエッセンスが採れっからな」
「おぞん…?力ずく…?チョコってそんな材料だっけ??」
「赤エンドウの粉末が、ちーとカカオ臭えのをいいことに、ナッツで渋みつけて、バニラエッセンス垂らしゃ、代用チョコの完成だ!!」
「それで、月桂樹大量に採ってこいって言ってたのね」
「僕のチョコは?」
それから数か月後、バレンタインがくると、代用チョコを作り、みんなにくばった。
「(チョコって、カカオなしでも作れるんだ。……あ!!せっかくだから羽京に!ソナーの勉強中は2人っきりになれるから、その時に!!)」
チョコが完成すると、魅真は羽京に渡すために、ラッピングをした。
そして、ソナーの勉強会が来ると、魅真と羽京はボートに乗り、海に出た。
「雪はとけたけど、まだやっぱり寒いね」
「そうだね。特に海だからね」
「こんな時にも付き合ってくれて、本当にありがとう」
「うぅん、いいよ。魅真の役に立てるなら、僕もうれしいし」
羽京は決して恋愛の意味で言ったのではないが、魅真はそれだけでうれしくなり、頬を赤くした。
「あ……そうだ…その…。勉強会の前に、羽京に渡したいものがあるの」
「え、何?」
「これ…。さっき作ったの。代用品だけど、チョコレート。今日はバレンタインだし、羽京には、いつもお世話になっているから」
「本当に?ありがとう。あとでいただくよ」
魅真は勉強会の前に、先程作ったチョコを羽京に渡すと、羽京はうれしそうに笑いながら受け取った。
羽京がチョコを受け取ってくれたので、魅真もうれしそうに笑う。
「………それで…ね…羽京……。私、羽京に聞いてほしいことがあるの…」
「何?」
「その……私……」
魅真は、勉強会で2人っきりになれるというこの場所で、チョコを渡して、羽京に告白をしようと決めていたので、好きだと言おうとした。
だが、好きという言葉を言おうとした時、以前火薬を作るために箱根に行って、温泉に入った時に、大樹が「だが今!この逃げ場もない、極限の石の世界(ストーンワールド)で、それを伝えるのは、男として、卑怯な気がしてならん」と、杠に言っていたのを思い出した。
「……ごめん…。なんでもない……」
その言葉を思い出すと、魅真は告白するのをやめた。
「え、でも…」
「ごめんね。言おうと思ってたこと、今になって忘れちゃったの」
「……そっか」
羽京が何か言おうとすると、魅真は必死にごまかした。
何を言おうとしたのかはわからないが、魅真が言いたくなさそうなので、羽京は魅真の気持ちをくんで、そこで話を終わらせ、勉強会を始めた。
勉強会は一時間ほどで終わり、科学王国に戻ると、2人は陸に上がった。
「じゃあ私、片づけをしたら作業に入るから。今日もありがとう!」
「うん。また…」
この後は、造船のための作業に入るので、魅真は勉強会に使った紙とペンを置きに行った。
「(本当は…告白しようと思ったけど、できなかった…。大樹が杠に言ったことを思い出したからってのもあるけど、一番はやっぱ、年齢なんだ。羽京からしてみたら、私なんて子供にすぎない。私は年齢は気にしないけど、羽京は違うかもしれない。年齢も好みのうちに入るけど、年齢で断られたら、一番ショックなんだ。年齢だけは、どんなに努力しても、どうにもならないから…。それに…このせまいコミュニティの中じゃ、どこにも逃げ場はない。結果がどちらにころんだとしても、今とはまるで違ってくる。大樹が杠に、5年も想いを告げなかった理由が、なんとなくわかる気がするな…)」
道具を置きに行く道中で、魅真は船の上で告白しようとした時のことを思い出すと、なんとなくだが、大樹の気持ちがわかったような気がした。
「(……うぅん、違う…。なんだかんだ理由をつけたけど、結局のところ、私に告白する勇気がないだけなんだ)」
けど、それも確かにあるが、告白をしなかったのは、自分に勇気がなかっただけだと理解する。
「(私、こんなに憶病だったっけ?)」
それがわかると、魅真は落ちこみ、ため息をついた。
「(こんなんじゃ、まだ告白できない)」
魅真は、今はまだ告白しないことを決めた。
それから一か月後の、3月14日。
その日も、魅真は羽京とソナーの勉強会をするために、ボートで海に出た。
「魅真、勉強会を始める前に、渡したいものがあるんだ」
「え、何?」
羽京は一か月前のバレンタインの時の魅真のように、ラッピングされた箱を渡した。
「これは?」
「バレンタインのお返し。フランソワに教わって、シュトーレンを作ってみたんだ。魅真、パン好きだって言ってたから…」
「私に?ありがとう!」
パンは好物だし、何よりも羽京にもらったので、魅真はうれしそうに顔をほころばせた。
「よかった」
「へ?」
「魅真、バレンタインの時以来、ちょっと元気なかったからさ。やっぱり魅真は、元気で明るく笑ってるのが一番だよ。そうしてくれれば、僕もすごくうれしいから」
羽京が、よかったと言った理由を笑顔で話すと、魅真は顔を真っ赤にする。
「…羽京って……なんでそういうかっこいいことを、すっごいナチュラルに言えるの?」
「え!?僕、なんかすごいこと言ったかな?」
「……もうほんと、そういうところね」
「??」
魅真が言ったことを、羽京はまったく理解しておらず、そこが余計に、魅真の羽京への好感度を高めた。
そして、ホワイトデーから数日後…。
「科学学園?学校を開くの?」
「そうなんだ。村の…おもに子供達を相手にね。ほら、村には百物語で知識を伝承してるけど、文字を書いたりとか、現代の勉強はないから、学術の伝承をするために開くんだって。それで千空が、僕に講師になれって…」
学校を開設することになり、羽京は講師として選ばれたことを、魅真に話した。
「え…。私にソナーを教える傍ら、子供達にも勉強を?ちなみに何を教えるの?」
「今のところは、国語と算数かな」
「そっか。じゃあ、私が算数を引き受けるよ!」
「え??」
講師に選ばれたのは羽京だが、魅真も講師を買って出た。
「だって、羽京は私にソナーを教えてるんだもの。学校がそんなに長くなかったとしても大変じゃない!だから、その負担を減らすために、私も講師になるわ。小学生レベルならなんとかなるし!」
「なるほど、悪くねえな」
「「千空!」」
魅真と羽京は2人で話していたが、偶然通りかかった千空が、急に2人の間に割って入ってきたので、魅真と羽京はびっくりして千空を見た。
「よし!じゃあ、羽京は魅真にソナーと、科学学園で国語を、魅真は科学学園で算数と体育と武術を教えろ」
「え…。なんか増えてる」
「体育はテメーの得意分野だろ」
「まあね…。でも、体育はわかるけど、なんで武術?それなら村にだって」
「村の奴らのは我流だ。現代文明が受け継がれてねえからな。それよりも、現代文明の磨かれた武術を習った魅真の方が、最適だと思ったんだよ。あと、村の奴らの中に、まともに教えられる奴がいるとも思えねえ」
「ああ…。まあ…確かに……」
武術には詳しくない千空だが、文明が受け継がれていない村なので、予想をたてて理由を話すと、魅真は納得をした。
「まあ、村の人達の役にたつのならやるけどね」
けど、教える科目が増えたことに異論があるわけではないので、魅真はすべて引き受けた。
こうして、魅真と羽京の2人が講師となって、科学学園が開校となった。
と言っても青空学校なので、科学学園と書かれた札をつけた小さなボードの前に、机をいくつか並べただけの簡易的なものだった。
最初は国語の授業で、羽京はまずはひらがなを教え、その様子を魅真が後ろで見て、教え方を学んでいた。
羽京の授業時間は一時間ほどで終わり、15分休憩したのちに、魅真が算数を教えることになった。
「あ、魅真姉ちゃんだ!」
「魅真姉ちゃん!」
すでに村の子供達に人気なので、魅真が登壇しただけで、子供がさわいだ。
子供達がさわぐ中授業が始まり、魅真はまず、小1で習う、1ケタの足し算から教えた。
その後は体育で、準備運動をしたり、前転や後転といった、簡単なマット運動をした。
体育が終わると、今度は武術を教えることとなり、子供達は木刀を持つと、魅真と同じように素振りをして、ある程度行うと、模範として、バトルチームの闘いが行われた。
特に好評だったのは、魅真とコハクの闘いで、2人の、息もつかせないほどの連続技や素早い動きに、子供達は夢中になっていた。
「おー、やってんな」
そこへ、千空とゲンが様子を見にやって来た。
「魅真ちゃんとコハクちゃんのバトルは、やっぱゴイスーね」
「そうだね。僕も何度か見たことあるけど、やっぱすごいよ」
「村最強のコハクちゃんと、大会で連続優勝してる魅真ちゃんだからね。そりゃあ、盛り上がるだろうね」
「あ゙ー、まあな。ただ、あいつの場合は、大会で連続優勝してるのもあるが、優勝しかしてねえとも言うな」
「ジーマーで!?」
魅真が大会で連続優勝したという実績は知っていたが、本当の実績を知ると、ゲンは更に驚く。
「剣道の大会は、団体と個人があるらしい。んで、個人では当然のように優勝をかっぱらってるが、団体でも一人で優勝してる」
「どういう…こと?」
団体なのに一人で優勝というので、疑問に思った羽京は、千空に尋ねた。
「あいつは団体では、いつも大将の位地にいた。先鋒から副将まではボロ負け。ところが、あいつは相手側の先鋒から大将まで、全員を一発で倒した」
「それって、各校の猛者を相手にして…でしょ?」
「あ゙ぁ。だから、実質あいつ一人で優勝したようなもんだ。あいつ一人の力で、学校は強豪と言われた」
「すごいね、魅真。だから、剣道界のスーパースターとか言われてたんだね」
「相手が嫉妬しなくなるほど、実力あるってことね」
「そういうこった。あいつは、一日のほとんどを鍛錬にあててるっていうからな」
「ああ…だから千空ちゃん、魅真ちゃんを武術の講師に抜擢したのね」
「まあな」
バトルチームの模範戦は30分ほどで終わり、この日の授業はこれで終わりとなり、次は魅真が羽京にソナーを教わった。
魅真と羽京の一日は、ほとんどが教えたり教えられたりで、造船にはあまり関わっていなかったが、できるかぎりのことはした。
数日後…。灯台の隣に建てられた、写真を現像する小屋では、南、クロム、金狼、フランソワがいた。
「遊んでる写真ばっかじゃねえか!」
「船作りとは無関係だろう、この辺は…」
「遊びも仕事のうちでございます」
「そういう日常も撮りたいの!記者的にはね。……だってそれに、もしかしたらこの一年が、最後の――」
「「?」」
「……」
彼らは南が撮った写真について話していたが、話している途中で南が暗くなったので、クロムと金狼はどうしたのかと思ったが、フランソワは何かを察したようだった。
「ううん。ごめん。いい、ごめん。なんでもない!ともかく撮っとくから私。全部全部………!!」
けど、南はごまかして、その後も写真を撮り続けた。
「みんなの書き込みも歓迎だよ~。王国のアルバムだもん」
南に言われると、魅真、杠、ゲン、ニッキー、陽は写真小屋に集まり、書き込みをした。
「あー、あるね~。女子のプリクラとかでそういうの」
「この可愛い字は未来ちゃん?」
「アタシだね」
「あ゙!!??」
今ニッキーが書いたのは、科学学園の入学の写真で、ころころしたかわいらしい字で祝入学と書かれており、字の周りには花やハートが書かれていて、乙女全開なので、杠は未来が書いたものかと思ったが、書いたのはニッキーだったので、あまりにも意外すぎるというように、陽は驚きの声をあげたが、その瞬間、ニッキーに急所を蹴られた。
「ウェエェエエエィ!!」
今のは相当効いたようで、陽は悲鳴をあげる。
「写真に書き込みか。悪くねえ」
そして、それを見た千空も、めずらしいことを言って、自ら書き込みをした。
「そういうことじゃなくない。プリクラの書き込みって!?」
「ムズカシーけど、ともかくこれすれば、レベル1のザコ鉄が、超~~丈夫な鋼鉄っちゅうのに変身しちゃうわけね!?」
「じゃねえと、クソデカエンジンが吹っ飛ぶからな!」
書き込みをしたのは、巨大な炉で鋼鉄を精製している写真で、ニッキーのように一言書くのではなく、どういった手順で何を作っているのかという説明を書き込んでいた。
「工作する機械のほうも、レベル上げしねえとな」
「グルグル回して削る奴か!」
「せんばん…だっけ?その旋盤で何作っちゃうの??」
「レベル2旋盤を作る!!」
「そのレベル2旋盤で何を…」
「レベル3旋盤を作る!!」
「お…おぅ、読めてきたぜ、大体!」
「ここばっかりは、地道に昇るっきゃねえ。工業の階段だ」
南は更に、鋼鉄やレベル1からレベル3の旋盤を作っている写真を撮り、そうしているうちに、月日は流れ、夏になった。
「そんな千空たちが、地道に汗を流している中、俺たちは、虫捕りなどに興じていていいのか!?」
「ウェーーイ。クワガタ!!」
「クワガタじゃない。クワゴってのを探すんだよ!蚕の原種らしいね」
「海に出る以上、水中作業も出てくるからな。水着が欲しい!!!」
千空、クロム、カセキが、鋼鉄や旋盤を作っている時に、金狼、銀狼、陽、スイカ、龍水は、水着を作るために、クワゴという虫を探しており、龍水の水着という言葉に、銀狼は強く反応した。
「これがシルクの水着。素晴らしい触り心地ですね…!」
「え?ホント?触り心地?触ってみてもいい?」
「…………」
水着が完成すると、今まで皮の服しか着たことのないルリは感動しており、銀狼はスケベ心丸出しになり、金狼は銀郎の発言にドン引きしていた。
「やー。これ、泳ぐのにも捗るというものだ…!!」
「あ、速すぎて、もうオバケみたく伸びてる光が(略)」
「この時代のカメラだと、全部心霊写真になるのね、コハクちゃんは」
ルリは浜辺におり、クロムはスイカ割りをしていたが、コハクはものすごい速さで海を泳いでいた。
「海で泳ぐの久しぶり!」
「そうだね。僕も、海にもぐるのは潜水艦だったから、水着で泳ぐのはすごく久しぶりだよ」
ちなみに科学学園は、今日は野外授業ということで、いつもの授業は行わずに海に遊びに来ていた。
「魅真、水着似合うね」
「えっ!!!??あ、ありがとう…。羽京も…すごく似合ってるよ」
「ありがとう」
「(海水浴ばんざい!!)」
魅真は、羽京に水着を褒められた上に、羽京の水着姿という新鮮な姿も見れたので、心の中でものすごく喜び、ガッツポーズをした。
その後、魅真は羽京と泳いだり、浜辺で談笑したりした。
それからも、千空、龍水、カセキ、クロムが中心となり、船作りは進んでいき、海で泳いでから、約一か月後…。
「ククク、完成まで一年か。意外と早かったな」
「わはは。そのセリフ、大昔にも聞いた気がするな!」
「初めて復活液が完成した時ね」
「ホワイマンも攻めてこないでくれてるしね」
「こっちが動き出すの待ってんじゃねえか?」
「フゥン。なら、俺たちから探しに出向いてやろう。この機帆船で、世界にな…!!」
「……だよね。もう行っちゃうんだよね。行く人は」
造船を始めてから約一年で完成し、感動している中、南はどこかセンチメンタルになっていた。
「ホラ、集まって!ついに完成したんだから。船とみんなで全員集合写真!」
「どんだけ写真撮りまくってんだ、記者テメーは」
「だって!!これでお別れなんだよ。残る組と船出組で。この一年が、みんなで過ごせる最後の時間だったから。もう、二度と会えないかもなんだから。せめて写真でって――」
「! (そっか。復活者の選定係してたんだから、南ちゃんだけは、もともと全員と顔見知りだったのね…)」
もうすぐ全員がお別れになるのがわかっているので、涙を流す南を見ると、ゲンは南が写真を撮りたがっていたわけがわかった。
「……何ほざいてやがる。最後じゃねえよ。100億%石化の謎突き止めて、100億%地球の裏から戻ってくんだからな」
けど、千空は最後にするつもりはないので、千空が言ったことに、南は泣きながらも、少しだけ口角をあげて笑った。
「ともかく!みんなで一枚だけでも撮らせてよ。あはは。シャッター切る私は、一人だけ写れないんだけど…」
「そのような流れもあろうかと!」
すると、フランソワが手袋をつけながら、声をあげた。
「カメラのタイマー作成を、ご依頼申し上げておきました」
「そういう使い道だったのね、この工作」
「高すぎんだろ、先読み力!」
フランソワの隣には、いつの間にかししおどしのついたゴツい機械があったので、南はギョッとした。
「ししおどしでカポーンかよ。ひでえ原始的タイマーだな」
「使えりゃいいんだよ!」
「押すなバカ」
「はい、撮ります。笑ってー!!!」
なんだかんだで全員船の前に行き、一部の者は押し合いへし合いでごちゃついていたが、南はうれしそうに笑っていた。
その数秒後、シャッターが切られ、南も含めた全員で集合した写真が撮れたのだった。
こうして、西暦5741年9月10日、機帆船ペルセウス号は竣工した。
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