Z=16 新しい科学クラフト
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司をコールドスリープさせると、千空は、科学王国と司軍の人間を、村のキャンプがある、崖の裏に全員呼び出した。
千空とゲンが崖の上に立ち、他の者は全員下にいるが、隙間がないほどにたくさんの人がそこにはいた。
「全員…集合??」
「少なくとも、司ん時はなかったね」
「ウウェーイ。やばくね、人数!?原始人連中まで増えてっからさ」
「こんなにたくさんのヒト、初めて見たんだよ……!!」
「あ゙ー。3700年前に、いきなり!降って湧いた、謎すぎる、人類全員石化光線だが――」
「そうだ。そもそもアレはなんだったんだー!?」
「俺なんか立ちションしてる時だぜ、固まったのよ!」
「え…」
「警官でしょ、君…」
3700年前に、陽がすごい状態で石化したというので、魅真と羽京はひいていた。
「もし何者かの攻撃だったなら、もう一度使われたら、今度こそ人類はお終いだね」
続けて、羽京は真剣な顔をして、現実的な問題をあげると、近くにいる司軍の人間はびびった。
「ククク。だからその前に、謎つきとめてゲットする。むしろ逆用してやんだよ。司の治療に。石化光線の新科学で――。俺らは旧文明を超える!!目指すは、光の発生源。地球の裏側だ!!!」
「地球の」
「裏……!?」
「ムハハハハ。何寝ぼけてやがる千空。裏側だったら、ソッコー落ちて死ぬじゃねえか。んなことも分かんねえのか、科学使いはよ!?」
地球の裏のことを知らない村の人間は驚き、マグマに至っては、千空の頬を軽くたたき、涙を流しながら、爆笑してバカにしていた。
すると、ニッキーや他の司軍がひいてる中、今度は陽が顔を下に向けて、笑いをこらえて体を震わせた。
「いや、ダメだよな。未開の人のそーゆーの笑っちゃ。って、ちょ待…ダメだ。悪り。裏側…落ちてて!!もうドヤ顔すぎてツボって…」
「(笑いすぎだろ、陽君…)」
マグマの発言にドツボにはまった陽は、ひざを地面につけて笑いをこらえており、それを見ているマグマ本人は腹をたて、司軍の人間はひいていた。
そして案の定、マグマと陽は殴り合いに発展した。
「や・め・んか!!」
バカバカしいことでケンカに発展したので、コクヨウが2人のもとに走ってきて、2人の顔や頭を何発か殴って止めると、説教を始めた。
「(そりゃまあ、当然、こういう無理(リームー)出てくるよね~。敵だった二大組織、いきなり合体させようってんだから) ちょ~~っとだけお仕事かな。メンタリストの…」
その様子を見ていたゲンは、何か企む顔をして、周りに聞こえないような、小さな声でつぶやいた。
「地球の裏か!さすがに徒歩では行けなかろう?」
「たりめーだ。海渡るっきゃねえ」
一方で、コハクは千空に、地球の裏側に行く方法について質問をし、千空がコハクの質問に答えると、千空は杠に、後ろから海賊帽をかぶせられた。
「なんだこりゃ」
「いや、なんかせっかくだし、作ってみました。雰囲気?」
海を渡るというので、杠は、科学王国の旗に描かれているロケットが刺繍された、海賊帽を作った。
「そう、俺らはこれから全員で、船を造る!!!」
「おぉおおおおおお」
「船!?」
「オホー!珍しく、石神村の全員が詳しいモノ、登場しちゃったぞい!!ホレ、いっつも千空の作るモノって、そもそも何だかも分からんから」
船と聞くと、村の全員が過剰に反応を示し、顔つきが変わった。
「ああ。石神村は水に生きる民だからな!千空、テメ…科学使いより、役に立つのは、水の民の!船乗りの!経験だぜ…?違うか??」
その中でも、マグマは一番はりきっており、ドヤ顔を決めて、すごいキラキラとしていた。
「なんか、マグマがキラキラしてるんだよ…??」
「明・ら・かに、なんか裏があんだろ!」
「ククク。まぁ、言ってることは一理あるがな。しょせんこっちは船大工じゃねえ。ただの科学屋だ」
キメ顔で輝いているマグマに、クロムとスイカはひいており、何か企んでいることを見抜くが、千空はマグマが言ったことを肯定した。
「ならさならさ~♪みんなでアイデア出し合って、持ち寄るってど~~う??」
そこへ、ゲンがすかさず、一部の人間がのってきそうなことを提案した。
「ムハハハ!船は俺らの十八番だ。任しとけ……!!」
案の定、マグマはのりにのってきた。
Z=16 新しい科学クラフト
その日の夜、魅真は司帝国のアジトの自分の部屋にいたが、途中で抜け出して、一番下の段にある穴の出入口の部分に腰をかけた。
「魅真」
「羽京…」
そこへ羽京がやって来て、魅真の隣にすわる。
「羽京、どうしたの?こんな時間に」
「いや…。それは、僕のセリフでもあるんだけど…」
魅真は羽京が外にいる理由を聞くが、魅真も人のことは言えないので、あっさりとつっこまれた。
「僕は、軽くアジトの周りを見回ってきたんだ」
「え!!もう闘いは終わったのに?」
「うん。でも、危険な猛獣もいるからね。いつ来るかわからないから」
「そっか。羽京はやっぱり、すごく優しいんだね」
「そんなことないよ。ただ、僕がやりたいからやってるんだ」
それが優しいということなのだが、それを持っている羽京は、魅真が言ったことがわからなかった。
「私は…最初は部屋にいたんだけどね…。でも、抜けてきちゃった」
「…また、嫌な夢でも見たの?」
「夢じゃないんだけど…」
「?」
「……羽京は、大樹と杠の関係って…知ってる?」
「え?うん。まあ…」
「司帝国に、スパイとして潜入していた時は、2人となるべく固まっといた方がいいって思って、一緒にいたんだけど…。闘いは終わったからさ。だから、なるべく2人っきりにしてあげたくて…。でも、こんな時間に、ニッキーのもとを訪ねるのは迷惑だろうし、千空は今頃、船のアイデアの設計図を書いてる頃だから、邪魔したくないし。そもそも、石神村のキャンプ地にいるし…」
「だからここに来たの?」
「うん。一人身って…辛い!」
魅真がここにいる理由を話すと、羽京はなんと声をかけていいかわからず、苦笑いをした。
「だから、この場所空いてるから、ここで星でも眺めてようと思って。そしたら、偶然にも羽京が来たわけ」
「そうなんだ」
魅真がここにいる理由がわかると、羽京は今度は口もとに笑顔を浮かべ、一度立ち上がり、中に入ると、ふとんを持ってきて、魅真の肩にかけた。
「羽京!?」
「ここにいるなら、ふとんは必要でしょ?女の子が体を冷したらダメだよ。春とはいえ、まだまだ夜は冷えるんだから」
「羽京の分は?」
「それ一枚しかなかったから。でも大丈夫だよ、僕は」
羽京は再び魅真の隣にすわると、笑いながら返すが、魅真は眉間にしわをよせると、肩にかけられたふとんをとって、羽京にかける。
「え…。魅真?」
「羽京の気持ちはすごくうれしい。でもね、一枚しかないのに、私が独占するわけにはいかないっていうか…」
「僕は男だから平気だよ」
「ありがとう。けど私は、女だから優遇されてあたり前とか、男だから我慢してあたり前とか、そういうのは、あまり好きじゃないっていうか…。どちらかが我慢すると、不満が生まれて、関係が成り立たなくなるし…。ごめん。羽京の厚意を踏みにじるとかじゃなくてね。うまく言えないけど、とにかく私は、私だけがふとんを一人占めして、羽京がないのを見るのが嫌なの」
理由はあれど、羽京の厚意を突き返す行動をとってしまったので、魅真はあわてて説明すると、羽京は微笑みを浮かべる。
「大丈夫だよ、気にしてないから。それに、魅真が優しい子だっていうのも分かってるしね」
羽京はちゃんと分かってくれていたので、魅真はほっとした。
「でも、それはそれとして、いつまでここにいるの?さすがに夜中までは…」
「空いてるところはいくつかあるわけだし、適当な場所で寝ようかと…。だけど、今は眠くないから、もうちょっとここにいるよ」
「なら、僕も付き合うよ」
「え?い、いいよ。さすがにそんな…悪いよ!」
「いいんだよ。僕がそうしたいからやっているだけなんだ。女の子を、一人置いていくっていうのはね…。元自衛官としても、放っておけないし」
羽京が付き合う義理はないはずなのに、付き合ってくれるというので、理由を聞いた魅真は、目を丸くして、頬を赤くして羽京を凝視した後、うれしそうに微笑んだ。
「羽京って、やっぱり素敵な人だよね」
「へ?」
「人を思いやる心や、人に死んでほしくないっていう気持ちが強いし、すごく優しいし、倫理観もしっかりしてるもの」
「(それは、魅真も同じなんだけどね…)」
「それに、今の羽京の顔、今まで見てきたどの表情よりも、ずっと明るくて、いきいきしてるよ。憑き物がとれたっていうか…。私は、今の羽京の方が好きだな」
「え!?」
「人として、すごく尊敬できるから」
「あ、ああ…。 (そういうことか)」
いきなり好きと言ってきたので、恋愛の方かと思ってびっくりしたが、異性ではなく、人としてという意味だったので、羽京は納得した。
「羽京と、こうして、落ちついて話ができるようになるなんて、思ってもみなかったよ。去年、夢見の悪さでここに来た時は、まだ敵同士だったから、すごい緊張してたけど…。今は闘いは終わってるから、羽京のことも、羽京と一緒に見ている、目の前に広がる星も、全然違って見える」
「そうだね。僕もあの頃は、全然余裕がなかったから、どうにかなってよかった。千空や、杠や、魅真のおかげでもあるんだ」
「え…私?」
「うん…。実は、杠のミッションを見る前に、魅真が石像を運ぶのを見たんだよ。それがキッカケなんだ。僕のもとに、最初に一筋の希望の光を運んできたのは、魅真なんだ」
「そ、そう?羽京の役にたてたならよかったよ」
千空は復活液を作ったし、杠は石像を直す技術があるのでわかるのだが、なんで自分なのかと思っていたら、結構はずかしいことを言われたので、魅真は顔を真っ赤にする。
確かに、復活液の研究の手伝いをしていたし、復活液の作り方を千空に教えてもらったので、復活液を作ることができるし、たまに杠の手伝いで、石像を直してもいたが、復活液を作ったのは千空だし、石像を直すのも中心となってやっていたわけではないので、照れくさかったが、感謝されて悪い気はしなかった。
「でも、闘いはもう終わった…。今度は、石化光線の謎をつきとめに行くために、船を造る。そして、石化光線の謎が分かったら、いよいよ人類が復活するのかな…」
「そうだね。そうなるといいね」
「うん。そのために、今千空が設計図を書いてるし。明日からかな?船造り始めるの」
「なんか、もう千空が勝つのが、決まってるような言い方だね。他の人だって、アイデアを持ち寄ってくるかもしれないのに…」
「確かに現代人なら、現代技術のつまった船は知ってるだろうけど…。でも、そうだとしても、千空が絶対に勝つよ」
「すごい自信だね」
「うん。科学では、千空は誰にも負けないもの!みんなで船を造って、石化光線の謎をつきとめて、人類70億人復活させて、文明を復興させて…。そして、千空や、大樹や、杠や、みんなが幸せになってくれたら、私はすごくうれしい」
千空のことを、心から信頼しているだけでなく、友達の千空や大樹や杠、それだけでなく、他の者達の幸せを願っている魅真を見て、羽京はやわらかく微笑んだ。
そして、先程自分の肩にかけられたふとんを、すわったまま、再び魅真にかける。
ふとんをかけられると、魅真は羽京がいる方へ顔を向けた。
羽京が、すわったまま魅真にふとんをかけたことで、魅真と羽京の顔が近くなったので、魅真は顔を赤くする。
恋愛感情ではなく、単に男性免疫がないのと、前は敵だったが、今はもう味方なので、羽京に対しての感情や、羽京の見え方が違うというのがあった。
「え……羽京?」
顔が近くなったのと、再びふとんをかけられたのとで、魅真は顔を赤くしながらびっくりした。
「いつまでここにいるかはわからないけど、部屋に戻らないんだったら、やっぱりふとんは必要でしょ」
「え……。あの…それはうれしいんだけど……。それだと羽京は……」
名前を呼ばれただけだが、羽京は魅真が言おうとしていることがわかり、顔を離すと、ふとんをかけた理由を答えた。
付き合ってくれると言うので、自分も羽京もいつまでここにいるかわからないが、羽京だけ何もなしというのは気がひけた。
「大丈夫だよ」
申し訳なさそうにするが、羽京は立ち上がると、右隣の穴からふとんを持ってきて、再び魅真の隣にすわると、同じようにふとんを羽織る。
「ほら、これで僕もふとんがあるから。だから大丈夫だよ」
羽京がふとんを持ってきて羽織ったのは、魅真が気にしないようにするためで、それがわかった魅真は、羽京の優しさに微笑んだ。
「ありがとう、羽京…」
「え…。なんで魅真がお礼を言うの?」
羽京は自然と今の行動をとったので、何故魅真にお礼を言われるのかわからなかった。
「え?言いたかったから」
「何それ?」
意味のわからないセリフに、今度は羽京が笑う。
そんな羽京を、魅真はジッとみつめた。
「ど、どうしたの?」
いきなりみつめられたので、羽京は何故魅真がみつめるのかわからず、魅真に聞いてみた。
「いや……初めて会った時も思ったんだけど……。羽京って、なんか…どこかで見たことがあるんだよね」
「え!?」
聞いてみると、魅真の口から、口説き文句のようなセリフが出てきたので、羽京はびっくりした。
「(それに……なんだか…。でも…私は…)」
けど、そのことに気づいていない魅真は、羽京のことをジッとみつめ続けた。
「あはは…。なんだか今のセリフって、口説き文句みたいだね」
みつめていると、羽京がつっこんだので、言われたことに、魅真は顔を真っ赤にした。
「やっ…。ちがっ……ちがう!!ちがうの!!そんな、変な意味じゃなくてね。本当に、どこかで見たことがある気がしたからで…」
そして、めずらしくテンパってしまい、あわてて説明をした。
そんな魅真を見ると、羽京は思わず吹き出してしまい、おもしろそうに笑う。
「えっ…??」
いきなり笑ったので、魅真はますます顔を赤くする。
「ごめんごめん。今までは、冷静な魅真しか見たことがなかったから、ちょっとめずらしいなって思っただけなんだ」
そう言って羽京が微笑むと、魅真は、違う意味で顔を赤くした。
それから魅真と羽京は、2時間ほどそこで話した。
次の日、全員が集まったのは、司軍のアジトが建つ崖の下だった。
「はいは~~い。みんなの船、アイデア対決会議~~!!」
全員が集まると、ゲンはテレビ番組の司会者のごとく、テンションを高くして仕切り始めた。
アイデアを持ち寄ったのは、千空、マグマ、陽の三人だった。
会議が始まると、岩の柱の前に立ったマグマのもとに、丸められた設計図を、マントルが持っていった。
「よー。俺の発表は、後でいーや」
すると、近くに王様がすわるような椅子にすわり、小さなツボをグラスがわりに持っていた陽が声をかけた。
「なんせ、俺の船は、もー既に、"完成"してっからよー…!?」
「「「「おおおおおお」」」」
「ブツの説得力っつーの?とりまとっとと、実物作ってみせたもん勝ちじゃね?」
陽の頭の中には、大きなイカダを数人がかりで漕ぎ、その中心に、今陽がすわっている椅子が置かれ、その椅子に、リーダーのようにすわっている陽自身がいた。
陽が後でいいと言うので、最初の発表はマグマとなり、マグマはマントルから受け取った設計図を、さっそく岩の柱にはりつけた。
「原始人どもだけじゃせーぜー…。いや、ダメだな。未開の人の笑っちゃ!」
きっとマグマのアイデアは、藁で編まれた小型の船だろうと思った陽は、バカにして笑っていた。
だが、マグマが発表したアイデアは、大きめの船と小さめの細長い船の上に、板で作られた床があり、その上に小さな家と帆があり、床の四つの角に、釣った魚を入れるであろう、小さな生け簀のような丸い籠がついているという、結構しっかりしたものだったので、陽はぎょっとして、目がとび出るくらいに驚いた。
「オホホー!!」
「か…カッコいいぃいいい!!」
これは、銀狼とカセキには好評だったが、陽は冷や汗をかいた。
「こうなると、陽の船も、期待しちゃうのー!!」
「なんか、実物がどうとか言ってたじゃないか。ものっ凄いドヤ顔でさ」
「おぅ、そうだ。早く見せやがれ」
次は陽の番となり、ニッキー、カセキ、マグマは催促するが、陽は冷や汗をかき、みんなに背を向けた。
「え?言ってねーし、そんなん。あれ、言ったか??やっべ!置き忘れて来ちゃってよ~」
本当は持ってきてるが、まさかの展開に、陽は顔色が悪くなり、ウソをついた。
「あれ?なんか、小っちゃいイカダみたいのがあるんだよ?」
「ウウェエエエイ!!!」
すると、陽のもとへ走っていった、スイカの友達の犬のチョークが、陽の隣に置いた物にかぶせてある布を、口でくわえてとると、中からは、細い丸太が、縄でギリギリ繋げられており、十字に組まれた細い棒には布がしばってあり、その後ろには、Yoと書かれた三角の旗がついている、1人しか乗れない上にすぐに沈むのではないかというくらいの、ボロボロのイカダらしき物が姿を現したので、陽は絶叫し、ますます顔色が悪くなったが、特に誰もつっこまなかった。
一方で千空は、マグマの設計図を凝視していた。
「この絵、帆は莚か?」
「あ?知らねえよ。そうなんじゃねえか?」
そして、隣にいるマグマに質問をしたが、マグマ本人は船作りに詳しくない上、設計図を書いたのは、村の絵描きのナマリであるため、曖昧な答えを返し、マグマの隣では、設計図を描いたナマリも、マグマに同意するように、首を何度か、無言で縦にふった。
「ククク。実におありがてえ。マグマ、テメーの言う通り、さすがだぜ、水の民。経験こそ、値千金だ。最悪莚の帆でも走れるっつう実証があんなら、この船も、造り始められる…!!」
「おお、千空案の船か」
今度は千空が、岩の柱に設計図をはった。
それは、現代でいうところの帆船だったので、かなり細かく書かれたゴツい船に、マグマも陽もぎょっとして、顔色が悪くなり、冷や汗をかいた。
「「「「それだー!!!!」」」」
けど、一部をのぞく、銀狼をはじめとした周りの者たちは、マグマの時以上に大興奮で、千空の設計図を指さした。
「キッショオオ。マジモンじゃねーか」
「思いっきり帆船だね」
「こんなもん作れんなら、これがイイに決まってんじゃねーかよ」
陽は千空の案にとびついたが、マグマはかなり自信があったようで、顔面蒼白で全身が震えていた。
「ヤベーほどカッコイイけどよ、何百年かかんだよ、完成までに?」
「途中でワシ、寿命で死んじゃうし!かわいそすぎる!!そりゃ、百人とか人手がいるなら…」
もうこの船を造る気満々なカセキだが、年齢が年齢なので、完成させることができるかどうか、不安を抱いていた。
しかし、そこまで言うと、あることに気がつく。
「あ…!!」
それは、すでに総勢で100人以上の人間が、この場所にいることだった。
こうして船は千空の案に決まり、全員が歓声をあげた。
それから、千空は船の細かい設計図を描き、村のキャンプ地がある崖の裏で、船を造り始めた。
「…あの会議、どうして?」
「勝ちは千空に決まっていたじゃあないか。なぜわざわざ―」
そんな中、材料を運びながら、コハクと羽京が、ゲンに会議を開いた理由を聞いた。
「手品で、フォーシングって分かる?好きなカード引いて~」
すると、かついでいた丸太を置いたゲンは、トランプのカードの束を出して、コハクにひかせた。
「選ばせるカードは決まってる。でもね、自分たちで選ばせる。少なくとも、そう思わせる。大事なのよ、そこジーマーで。強いリーダーの押しつけじゃあ、人って団結できないの」
「…ゲン、君が、司や氷月じゃなくて、千空についてくれて本当に良かったよ」
今のゲンの説明で、羽京はもしものことを考えて、恐怖心を抱いた。
「千空ちゃんはね―――頼ってくれんのよ、人に。魅真、大樹、杠っていう、丸っきり違うタイプと、ずっと友達してたからだろうね~。よ~~く知ってんの。人=力だって…!!」
「…そうだね」
ゲンが会議を開いた理由を話すと、魅真がゲンの言うことに同意したので、羽京もゲンもコハクも、魅真に顔を向けた。
「私は小さい頃から、バカみたいに剣道をやって来て、それ以外取り柄がないけど…。年上に絡まれやすい千空のボディーガードをしたり、他にもいろいろと頼ってもらったり…。旧時代でもそうだったし、この世界でもそうだった。もちろん、千空が友達だからってのもあるけどね」
魅真は同意すると、心にある思いを語った。
「それにしても、さすがゲンだね」
「え?」
「さっきの会議!昨日の集まりで、なんかすごくワルイ顔をしてたから、なんとかしてくれるんじゃないかと思ったけど」
「ワルイ顔って…それがなんで、信頼につながるの?」
褒めているような褒めていないような、微妙な言い方なので、羽京は疑問に思ったことを聞いた。
「司帝国にスパイとして潜入してた頃は、偽物だけど、恋人関係だったからね。千空達をのぞけば、一番付き合いが深くて長いから」
「ウワァアオ。愛の力だね~」
「それは絶対にない!!」
「そんな、力いっぱい否定しなくても…」
ゲンはからかうように話すが、今の言葉を本気で受け取った魅真は、思いっきり否定した。
「しかし、よくそれで、恋人を演じていられたな」
ゲンはナチュラルにウソをつくので、よく言えば、演技がうまい。だが、魅真は千空のように直球で、本質しか言わない。もちろん、本当のことであれば自然と言えるが、基本的にウソをつけないので、演技はヘタ。
ゲン以上に、魅真との付き合いが短いが、今のやりとりで、そのことを感じとったコハクは、思ったことをつっこんだ。
「だませていたかどうかは分からないけどね…。あの時は、それが最善だと思ったし、やるしかなかったから。私と、千空と、大樹と、杠の勝利のために」
「やっぱり信頼度ゴイスーね」
「うん…。千空が、必ず科学王国を創ってくれるって信じていたから。だから、私もがんばるしかないって思ったの。そして、そのがんばりがようやく報われた。私はこれからも、千空と、大樹と、杠と一緒にやっていく。ずっと、この先も…」
魅真はコハクの疑問に答えると、今度はこれからのことを話した。
そうして、船造りをしてしばらくすると、いつの間にか席を外していた千空が、大樹とマグマと南とニッキーを連れて戻ってきた。
「おぅコハク。仕事だ、行くぞ」
「行くって、どこにだ?」
「ここからちぃーと離れた場所にな。神腕船長を起こしに行く」
千空がコハクを指名したのは、船を動かすための船長が必要で、そのために石像発掘をしなきゃいけないので、パワーのあるコハクの腕が必要だったからだ。
ヨットのような小型の船を使い、千空、大樹、コハク、ニッキー、マグマ、南が出かけると、魅真、羽京、ゲンは、それぞれ作業に戻った。
それから数時間後、千空達は戻ってきた。
「千空!大樹!みんなお帰りなさい」
「おぅ」
船が岸につき、魅真が声をかけると、千空はぶっきらぼうに返事をしながら、地面に降り立った。
「あっ!この人が、南が選定した、神腕の船長?」
「ま…まぁね…」
船長の格好をした見知らぬ男性が、船に一緒に乗っていたので、南に聞いてみると、南からは歯切れの悪い返事が返ってきた。
「ほぅ…。ここにも美女がいたのか」
「びっ、びびび!美女!?」
その男性…七海龍水は、魅真と顔を合わせると、いきなり美女と言ってきたので、魅真はびっくりして、顔を赤くした。
「えっと……それって……もしかして、私のこと?」
魅真は自分のことを、美女などと思っていなかった。
けど、龍水は間違いなく魅真と顔を合わせていたので、まさかと思った魅真は、おそるおそる聞いてみた。
「何を言っている?そうに決まっているだろう。女たちは皆美女だ。だから俺は、貴様が欲しい!!」
「えぇええええええ!!?」
肯定した上に、情熱的に魅真を求めてきたので、魅真は更に顔を真っ赤にした。
「あ、あの…そんな…急に…そんなこと言われても…」
男性に対する免疫が一切ない魅真は、突然の展開にパニックになった。
「その辺でやめとけ。そいつは、恋愛経験ゼロの、汗くさ女だぞ。それ以上言うとブッ壊れる。それよりこっちだ」
そこへ千空が止めに入り、龍水を連れて、造っている船の前まで行った。
「やるな、貴様ら。欲しいぜ、これは…!!」
「オホホ。ワクワクしちゃうでしょ、帆船!!」
「この船で行けっか?地球の真裏まで」
造ってる途中だが、船を見ると、龍水は目を輝かせ、千空は質問をした。
「いや~。いっくらなんでも無理(リームー)だよね~。高級な船に慣れた、現代人の航海術じゃ、こ~んな腕で左右される、原始的な船は…!!」
「その質問に答える前に、まずは撤収して船を守りな。当たるぜ、船乗りのカンは?」
龍水の隣にいるゲンは、龍水をかなり煽るが、龍水は動じなかった。
「急に気温が上がった。今14℃」
「…?キオン…?」
「ククク。合ってやがる。ジャスト14℃だ」
「!!!」
気温という概念がないカセキは、なんのことかわからなかったが、千空は温度計を取り出し、見てみると、龍水の言う通りだったので笑っており、ゲンは驚いていた。
「湿度も90%にアップして、南南西の風――。おそらく、長江気団で影響を受けて、シベリア気団を押し上げてる」
更に専門的なことを言い出したので、村の人間には、何が何やらさっぱりだった。
「多毛雲が、時速60kmほどで接近中。つまり、間もなく春の嵐、メイストームが来るぜ……!!」
気温や湿度、風や雲の動きなどで天気を読んだ龍水は、今言ったことが現実になると、自信満々の顔で指を鳴らした。
龍水が天気を言いあててから、わりとすぐに、大雨が降り出した。
外での作業のため、全員、一時撤収することになった。
横殴りの激しい雨が降ったが、龍水が天気を言い当ててからすぐに撤収したため、ぬれた者はいなかった。
「すごい雨…」
魅真は今、いつもいる大樹と杠と一緒の部屋ではなく、別の部屋に、羽京とニッキーと一緒にいた。
「ほんとだね。これじゃあ、しばらく作業は中止だね」
「でもすごいね、あの龍水って奴。天気を言い当てるなんてさ」
「そうね…。まあ、性格も結構強烈だったけど。美女なんて言われたの初めてだし。それに、情熱的に口説いてくるから、ちょっとドキドキしちゃった」
「なんだい。ひょっとして、あの龍水って奴に、恋でもしたのかい?」
「それはないよ。ただ、恋愛経験ゼロな女だから、ちょっとしたことでも照れちゃうだけ」
「意外だね。結構モテてるように見えるんだけど」
「ないない。そういうニッキーはどうなの?」
「私はさ、こんなゴツい見た目だからね…」
「えぇ?そうなの?かわいいのに!」
「そんなことないって!魅真、アンタ、こういう言い方するのもなんだけど、目は大丈夫かい?」
「視力はいい方だよ。それに、ニッキーは本当にかわいいし、強くてサバサバしてて頼りになるし、面倒見いいし。私、リリアンで司軍を寝返らせろ作戦の時に、ニッキーが一番最初に仲間になってくれて、本当によかったって思ってるもの。ニッキーがいたからこそ、ゲンのモノマネレベルがアップして、仲間が増えて、勝つことができたんだから。本当に感謝してるんだよ」
「アンタ…かなり褒めるね」
「ほめる?」
龍水の話から、恋バナに発展し、流れでニッキーのことを称賛したので、ニッキーは頬を赤くするが、魅真は褒めてるつもりはまったくなかった。
「でも、さっきも言ったけど、アンタこそモテそうなもんだろ。かわいいし、何度も大会で優勝したんだろ?それこそ、ファンがいてもおかしくないじゃないか」
「確かに、応援はしてもらってたけど…。九割くらいは女の子だったよ」
「じゃあ、あとの一割は男ってことじゃないか」
「うん。でも告白とかは…。優勝した後に、『憧れてます』って言われて、プレゼント渡されたことは、何度かあったけど…」
「なんて答えたんだい?」
「え?『がんばってください』って」
「え…??」
何故そこで、がんばってという返事をしたのかニッキーはわからず、すっとんきょうな声を出し、恋バナに発展したので、輪に入れずに傍観していた羽京も、びっくりして目を丸くして、思わず魅真を見た。
「なんでそういう返事になるんだい?」
「え?だって…大会で優勝した直後に言われたから、その人も優勝狙ってたのかと思って。だから、優勝するには鍛錬あるのみだから、今度は優勝できるようにって意味で…」
その返事をした意味を聞いてみたら、またぶっとんだ答えが返ってきたので、ニッキーは左手で顔をおさえた。
「……アンタ、結構ニブいね」
「にぶい?動きは機敏な方だと思うけど」
「そういう意味じゃないよ」
「?」
ニッキーが言っている意味が魅真はわからず、ニッキーは、名前も顔も知らない、魅真にプレゼントを渡したという男子達に同情した。
同時に、なんで魅真が、恋愛経験値がゼロなのかわかった気がした。
「でも、恋愛経験ゼロでも、好みのタイプとかはあるんだろ?」
「まあね…」
「どんな人が好みなんだい?」
「そうだなぁ…。人にも自然にも優しくて…命に対してすごく誠実な人…かな…」
「そんな聖人君子みたいな人間いないだろ」
「いるかもしれないじゃない。それに、命に対して誠実なのは、絶対譲れないし!」
「…これじゃあ、初恋なんてのは、夢の先のそのまた先かもね」
「そんなことないよ。わ、私だって……初恋の一つや二つ…」
「初恋は一つだけだろ。でも、それこそ意外だね。相手はどんな人なんだい?」
「……9歳の頃に出会ったの。その人は、すごく優しくて、笑顔が素敵で…思わず見惚れちゃった…」
「へえ…。その人は今はどうしてるんだい?」
「…わからない。すぐに別れちゃったし、名前を聞いたんだけど、もう忘れちゃったから…」
「じゃあ、どこで何をしてる人なんだい?出会ったキッカケは?」
ニッキーが質問をすると、魅真は一瞬固まった。
「……さあ…。忘れちゃった…」
その後にごまかしたので、ニッキーは、それ以上は何も聞かなかった。
「おぅ、ここにいたのか。探したぜ」
話がひと段落すると、クロムがやって来た。
「「「クロム!!」」」
「魅真、羽京、力を貸してくんねえか?」
「「力?」」
要点を言わずに、いきなり頼み事をしてきたので、魅真と羽京はなんのことかと思った。
「船を動かすためによ、石油ってのがいるんだとよ!」
「「石油!?」」
「だから、魅真と羽京の力が必要なんだよ」
「羽京はわかるんだけど…なんで私?」
羽京は優れた聴力があるので納得できるが、魅真は五感が優れてるわけではないし、剣道以外に取り柄がないと思ってるので、ふしぎそうにした。
「千空に聞いたぜ。魅真は、すっげえヤベー、超絶チート運動能力の持ち主だってよ。それに、司帝国との闘いのために、ヤベーほど細かい情報を集めたり、俺らが携帯を運んだ時に、足跡を追跡したって言ってたじゃねえか。薬草の知識も豊富らしいしから、治療係として必要だし、パワーも結構あるし、体力もすげえから、その運動神経と観察力と注意力と治療能力と体力が、うってつけなんだとよ」
「情報は、全部私一人で集めてたわけじゃないし、情報収集と追跡は、全て、確実に相手がいるってわかってるのが前提なんだけどね」
クロムが石油探しに誘った理由が、かなりこじつけがすごいので、魅真は冷静につっこんだ。
「けどまあ、リーダー様のご指名なら、喜んで行くけどね」
けど、千空の意図がわかった魅真は、クロムの頼みを引き受け、その場を立ち上がった。
魅真が立ちあがると羽京も立ち上がり、いつの間にか雨がやんでいた外に出た。
外に出ると、クロムはコハクにも声をかけに行った。
その間に、魅真と羽京は仕度をして、クロムとコハクの仕度も整うと、石油探しに出発することになった。
「おぅ、任せろ!新生クロム発掘隊によ!!最強の探検チームで、その石油とかいう資源の王様、バッチリゲットしてきてやるぜ…!!」
クロムが千空達に宣言すると、新生クロム発掘隊は、東京から静岡に出発した。
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