Z=15 終わり…そして始まり
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千空が、未来に復活液をかけると、全身にヒビが入り、ヒビから光が発した。
「すごぉおぉお!!石像がピシピシ割れて、どんどんホンモノの人に――」
その光景を見た村の者達は、びっくりしていた。
「そっか。村のみんなは、見んの初めてね、コレ」
「こっからだ、問題は!」
「石化が解ける時に、千空くんの首が治ったみたく、未来ちゃんの全身を、中身まで治してくれたら…」
「ククク。そもそも復活液っつうのはよ、何千年も意識ねえ、100億%脳死みてえな状態から叩き起こす薬じゃねえか!だったら、同じ脳の一つや二つ!!修復できねえ道理はねえだろよ………!!!」
そして、何秒か光ると、完全に石化が解け、未来が目覚めた。
目が覚めた時に、手を伸ばした未来の手を、司はそっとにぎった。
「………ここ、どこ?私―――」
「未来…………!!!」
復活して、目を開き、言葉をしゃべったので、司は目を大きく見開く。
「…兄さん……?」
未来の前にいる司は、脳死になる前、最後に見た小学生の頃とは違う。
けど、成長していても、髪の毛の長さが違っても、未来には、目の前にいる男性が、兄の司だとわかった。
「…いしし。よ~老けてもたね。でも、シュッとしてるわー。私…何年寝とったんかな……?」
未来が蘇ると、再会したことに、司は目を潤ませた。
「6年。いや、数千年だよ、未来……」
司は再会を喜び、未来を抱きしめ、未来もまた、司を抱きしめ返した。
「決して治ることなどない。そう知りながら、足掻き続けた。何年も、何年も。待っていたのだな、司…君は。ずっと、ずっとこの瞬間(とき)を――」
司と未来の再会に、コハクはちょっと前まで、姉のルリの病気を治すために、必死になって温泉水を運んでいた自分を思い出した。
Z=15 終わり…そして始まり
未来が復活して、完全に辺りが明るくなると、司と氷月以外は、全員採掘場近くにあるテントに戻った。
「さあ、荷物を片し、みなの待つキャンプへ向けて出発だ!!」
「「おおおおお!」」
これで目的は果たしたので、コクヨウが指揮をとると、クロムとコハクは気合の入った返事をした。
未来はテントの前の切り株にすわっており、その光景を見ていると、後ろから氷月がやって来た。
「未来クン、石片がまだ沢山ついている。美女が台無しです。顔を洗ってくると良いですよ。そちらの川で」
氷月に促されると、未来は氷月とともに川へ向かった。
一方、魅真達は撤収するために片づけをしていた。
「千空」
作業をしていると、あることに気づいたクロムが、千空に背を向けたまま千空に声をかける。
「ダイナマイトの、残り本数が合わねえ」
それは、ダイナマイトの数が足りないことで、クロムは冷や汗をかいていた。
「ええぇ。いっぱい使ってんだから、ちょっとはズレるでしょぉ。そんなの…」
「おぅ、これでも素材王だ!ブツのことだけは間違えねえよ」
「……誰かが盗ったなら、僕の耳に聞こえたはずだ。それをかいくぐるような隠密行動ができるのは、僕の知る限り、一人しかいない―――」
聴力が優れている羽京でも気づかなかったので、ふしぎに思った魅真は、ダイナマイトが置いてある場所へ歩いていき、ダイナマイトが入っている箱の前でしゃがむ。
「これは………ほむらの足跡……!!」
足音は聞こえないように行動できても、行動するかぎり足跡はついてしまうので、魅真はダイナマイトの前にある足跡が、すぐにほむらのものだとわかった。
「なんでわかるのぉ?そんなの」
「見たことがあるから」
はっきりと断言しきったので、疑問に思った銀狼が、魅真に問いかけると、魅真からは雑な答えが返ってきた。
「でもなんで?ほむらは今、石神村のキャンプ地にとらえられて…」
去年、氷月達が村を襲撃した時から、ほむらはずっと村を見張っており、千空が作戦を開始して、ゲン達が携帯を司帝国にはこんでいる時に追跡したが、途中で千空達にとらえられ、そのまま司帝国の村のキャンプ地まではこばれ、捕まっていた。それは魅真も聞いたが、とらえられ、見張りもついてるのに、何故ほむらがここに来れたのか、ふしぎでならなかった。
その時、遠く離れた場所で爆発が起こり、今魅真達がいる場所からも、煙が見え、爆音が聞こえた。
「ひぃいい。何!?」
爆発が起こると、全員がそちらに注目する。
「事故ったのか!?」
「いや、違う。この感じは……」
「どこだ、場所は!?」
「奇跡の洞窟……!!!」
爆発したのは、奇跡の洞窟がある方向なので、まさかと思った千空は、冷や汗をかいた。
「司と未来ちゃんが危ない!!」
ダイナマイトの数が合わず、それを盗っていったのがほむらとわかり、先程未来が氷月に連れていかれたので、魅真は顔が青ざめた。
そして、周りに声をかける前に、すぐ様走りだした。
「待て、魅真!!」
「俺も行くぜ!!」
「私もだ!!」
魅真がそこから走りだすと、千空、クロム、コハク、羽京、金狼、銀狼、コクヨウもあとに続いて走りだす。
その頃、キャンプ地の近くにある川には、司、未来、氷月がいた。
未来が川で顔を洗っていると、爆発が起こり、叫び声が響いていた。
「いー。爆発!?なんでなん…??」
「うん。ちょっと見てくるよ」
何故爆発が起こったのかわからず、未来が困惑していると、司が未来に合わせてしゃがみ、離れることを告げると、そこから上の方へ歩き出した。
氷月は、司が上に歩いていくのを確認すると、未来の方に顔を向けた。
そこへ、キャンプ地から走ってきた、魅真たちがやって来た。
「そこから離れろ!!未来!司……!!」
千空は、近くまで来ると、司と未来に注意を促した。
その時、氷月の目が鋭く光り、管槍を回転させた。
槍は未来に向かっていき、その光景を目にした司は、目を大きく見開く。
「背後から忍ぼうが、寝込みを襲おうが、霊長類最強の高校生、獅子王司を消す事は、不可能でした。司クン、君に、護る者さえ居なければね」
氷月はマスクをとった。
マスクの下の氷月の口は、濃い笑みを浮かべていた。
そして、先程未来を貫こうとした槍には、刃にも、持ち手にも、たくさんの血がつき、したたり落ちていた。
「待っていたのは私です。ずっと、ずっとこの瞬間(とき)を――」
血は、持ち手から槍についた竹の近くまでつたい、川の水を赤くそめるほどに、大量に流れていた。
その血は司のもの。
司は未来をかばい、氷月の槍に貫かれたのだった。
後ろへふり向き、その光景を見た未来と、司達のもとへ走ってきた魅真達は驚愕した。
そして、氷月が司の体から槍を引き抜くと、司は川へ、背中から落ちていく。
そこへ千空が走ってきて、司の手をつかみ、なんとか落ちないように支えた。
「千空……」
司は、胸を貫かれ、川へ落ちるというのに、うれしそうに笑っていた。
氷月は、魅真達が近くまで来ると、千空を槍で殴りとばし、川に落とした。
「兄さん……!!」
「千空!!司!!」
「司!」
「千空ーー!!」
千空と司が川に落ちたので、魅真達はあわてた。
その直後、今度は氷月が、自ら川にとびこんだ。
魅真達は、ようやく川の前まで来たが、すでに遅かった。
その光景を見たコハクは、あとを追うために、川にとびこもうとした。
「待てコハク!!流れが早すぎる!!」
だが、後ろからコクヨウに、はがいじめにして止められた。
「はなせ父上!!」
「それでは、水中で探すのは不可能だ」
「水中なら不可能だけど、陸からなら可能だよ。大体のアタリはついてる」
けど、魅真が心あたりがあるように話すと、全員魅真に注目した。
「おぅ、どういうことだ?魅真」
「私は、司帝国での情報収集の時、アジト周辺の地理を把握すると同時に、水辺での闘いになり、水中に落ちた場合も想定して、どこに流れつくのかを確認したことがある。といっても、丸太を使ってだし、何度か試したけど、その時によって別の場所に行ってしまったから、絶対にこの場所にいるとは断定できないけど…」
「でも、目安にはなんじゃねえか。値千金だぜ!」
「ああ、何も手がかりがないよりはいいな」
「じゃあ、さっそく行こう」
「待って」
情報提供をしたのに、待ったをかけたので、全員また魅真に注目する。
「まずは、未来ちゃんの安全を確保しなきゃ。それに、相手は氷月だから、なるべく大人数で行った方がいい」
「それもそうだな。ならば私が…」
「だから、私が未来ちゃんをキャンプに送りがてら、動ける人を、全員連れて来る。村の人はもちろん、司軍の人も…。司がピンチだって言えば、きっと来てくれるから。行こう、未来ちゃん」
「うん。…わ!」
未来の足に合わせていると、時間がかかりそうなので、魅真は未来を抱きあげて、速攻でキャンプ地へ走っていった。
「すげえ速さだな、相変わらず」
「だね」
「すさまじい足だな」
女の子とはいえ、人一人を抱きあげて、すごいスピードで走っていったので、羽京達は感心していた。
あっという間にキャンプ地についた魅真は、そこに残っていた全員に事情を話し、杠と南に未来をあずけると、体力に自信のある大樹と、ニッキー、村人と司軍の戦闘員を連れて、川へ戻った。
集まったのは、大樹、マグマ、ニッキー、司軍と村の人間数名で、全員で下流を捜索することになった。
本当は、これだけの人数がいれば、手分けして探す方がいいかもしれないが、氷月と遭遇して、闘いになった場合、もしものことがあるかもしれないので、タイムロスは痛いが、全員で一緒に動いて捜索することにした。
魅真がアタリをつけているとはいえ、結構広い範囲なので、探しているうちに、あっという間に夜になった。
「聞こえた…」
「え?」
「もう少し下った方から、千空たちの声が!」
「本当に?羽京」
「ああ…。いそごう!!」
下流に向かって歩いていると、羽京が、千空と氷月の声を聞きとったので、羽京が先頭を走り、その後に全員続いた。
魅真達がいる場所から数百メートル離れたところでは、千空と司がタッグを組んで闘い、氷月を倒した。
千空が、携帯を改造して作った10万ボルトのスタンガンで氷月を倒すと、氷月の後ろから、ほむらが小さな剣を構えて走ってきて、千空と司を倒そうとしたが、ちょうどその時、魅真、羽京、コハク、金狼、銀狼、マグマが駆けつけ、コハクがほむらを押さえつけた。
「千空!!」
コハクがほむらを押さえると、魅真はあわてて千空のもとへ駆け寄った。
「大丈夫?ケガは?…あっ、指…」
千空の左手には包帯が巻かれているが、指先に、わずかに血がついているので、ケガをしてるのがわかった魅真は、手当てをするために、ポーチから道具を出そうとした。
「俺はあとでいい。それより、司の方が重傷だ」
「…わかった」
本当は、千空を先に手当てしたかったが、千空に頼まれると、魅真は了承して、包帯を20cmほど切ると、千空の指に巻きつけた。
「とりあえずこれで…」
包帯を切ったのは止血するためで、本格的な治療はあとにすることにした魅真は、千空の指に包帯を巻くと、司のもとへ行った。
「司!!」
「魅真…」
「しゃべらないで。手当てするから」
「…………」
魅真は司のもとへ行くと、司の横にしゃがんで、手当ての準備を始めた。
いろいろと思うところはあったが、しゃべらないように言われたので、司は黙っていることにした。
「大丈夫か、千空!」
「あ゙ー。こっちは100億%健康無傷だ」
今度は、金狼が千空を心配して、千空のもとへ駆け寄ると、千空の服の下に、携帯に使った電池が巻かれているのを目にした。
「ククク。槍喰らうの初めてじゃ、ちーとヤバかったがな。金狼、テメーとの、"受ける"特訓が活きた」
「……」
「あ~~~~!あの金狼が、ルールはルールだとか言って、千空のこと実戦と同じに突いてたやつ…!!」
戦車に使う紙を作った時、紙の盾も作った。その時にテストとして、金狼が、千空が持ってる紙の盾に向けて、本気で槍をついた。
先程、司とともに氷月と戦っていた時、氷月が千空の体を槍で刺したが、電池の防具を体に巻いていたのと、金狼と特訓したおかげで、こうして無事だったのである。
近くでは、羽京が氷月を、ニッキーがほむらを縄でしばり、捕獲していた。
「ムハハハ。んじゃ、とっととブッ殺すか。氷月とかいう奴は!」
「なんですぐそうなるの…」
「いや、マグマ!人を殺すのは悪いことだ!!」
決着はついたので、マグマは怖いことを、楽しそうに口にするが、マグマの後ろから大樹が、マグマの肩をつかんで止める。
「んでも、いつまでとっ捕まえとくんだよ?」
「世界に、文明を作るその日までだ。科学文明が完成しちまえば、氷月が最強もクソもねえんだ。裁判でもなんでも、好きに開きゃいい。そこは興味もねぇわ。科学屋だからな」
千空が話していると、魅真は司の手当てを終えて、司軍の人間が、担架で司を運んでいった。
「……魅真クン」
そして、ニッキーがほむらを、羽京が氷月を連れて歩き出した時、氷月は魅真に声をかけた。
「今回の作戦、君がいたら、成し遂げることができたかもしれません…」
「ほむら以外は、誰のことも信用していないのに?」
「信頼関係など、どうでもいいことです。君は、21世紀では、剣道の世界で名をはせた人物。事実、私の槍を砕いた。その上、木刀ですべての急所を殴った。それほどの素晴らしい技術力があるのなら、他の者にも負けないでしょう。とても優秀な捨て駒として、私の役に立ったでしょうに…。実に惜しい…」
氷月は、以前村の襲撃から帰って来た時、魅真に自分につかないかと誘ったことを言っていた。
「私は…人を捨て駒にするような人間には、絶対につかない。私の力は、私を信頼してくれる人のため、私が好きな人のために使う。あなたのために使うことは、絶対にない」
「……そうですか」
「あなたと私では、根本的に違いすぎた」
そう言うと、魅真は千空のもとへ行き、千空の手当てをして、みんなと一緒に、上流へと歩き出す。
「……終わったのだな。ようやく、全てが―」
「ククク。な~~~に寝ぼけてやがる。逆だ。よ~うやく始まんだろが!全員の力で、今度こそ、一から作り上げる!!この石の世界(ストーンワールド)に科学王国をよ……!!!」
千空の言う通り、司帝国との決着がつき、科学王国が出発する時がやって来たのだった。
次の日、アジトの穴の中に司が寝ており、周りには魅真と大樹と羽京とカセキがいて、今は、魅真が司の手当てをしていた。
「はい、もういいよ」
「ああ、ありがとう。しかし魅真…」
「ん?」
「気になっていたんだが……昨日といい今日といい、どうして、俺の手当てをしてくれたんだい?」
「なんでって……なんでそんなこと聞くの?」
司は、魅真が敵のボスの自分を手当てをしたことをふしぎに思い、質問をするが、魅真は、以前羽京にしたように、質問に質問で返したので、司は目を丸くする。
「人が傷ついてたら手当てするでしょ。そこに理由なんて必要ないよ」
「…そうか」
「確かに私は、科学王国の勝利を望んでいた。そのために闘ってきた。だけど私は……司に死んでほしかったわけじゃない…!!」
「!」
「人が死ぬのは嫌だよ…。悲しいよ、そんなの…」
「魅真……」
千空だけでなく、魅真にも、もう二度と危険って奴は訪れないと約束をしたのにも関わらず、その約束を破ったのに、そして、理想のために魅真とは敵対したのに、それでも身を案じてくれてるので、司は、儚く…憂いを帯びた目をした。
「ありがとう。だけど、肺に穴があいてるんだ。致命傷だよ。だから、どうしても、伝えたかったことを伝えよう」
「伝えたかったこと?」
「破壊した石像の場所だ」
「「「!!」」」
「そのために羽京、君を呼んだんだ」
「僕を?」
「ああ。紙とペンは持ってきてもらった。だから、これから話す、石像を破壊した場所をメモしてほしい…」
「…わかった」
羽京が紙とペンを大樹から受け取ると、司は石像を破壊した場所を話し始めた。
もう、何十…何百と破壊したかわからないが、それでも司は、全ての石像を破壊した場所を話していた。
羽京は、司が話している、破壊された石像がある場所をメモしていた。
「オホー!喋っちゃいかんよ、司。少しでも安静に…」
「最期にどうしても、伝えておかなくちゃならない。決着はついた。君ら科学王国が勝った今、俺がこの手にかけた石像たちは、無意義な犠牲者になってしまう―」
「任せろ司ー!!地道な力仕事なら、誰にも負けん。壊した場所さえ分かれば、俺が、一片残らず集めてやる…!!」
言うや否や、大樹は穴をとび出していき、カゴを背負って、マグマとともに、石像の回収に向かった。
「司、まさか君は、今まで自分が砕いた石像を、全部覚えてたのか――」
「もちろん。ただの一度も、忘れたことなんてないよ」
司は司なりに、石像を破壊したことに対して、罪悪感を感じていた。
ただの、石像を殺すだけの悪党ではなかったので、羽京と魅真は、すごく複雑そうな顔をした。
司が、石像を破壊した場所をすべて話し終えると、魅真と羽京はそこから出ていった。
「羽京は、傷は大丈夫?包帯変えなくて平気?」
「うん。もうだいぶよくなったよ」
「そっか。よかった」
「ありがとう。魅真のおかげだよ」
「え…そう?そう言われると、なんか照れちゃうな」
治療しただけで、ここまで感謝されるとは思わなかったので、魅真は顔を赤くして答えた。
「じゃあ羽京、さっき書いた紙、何枚かちょうだい」
「え?」
「前も言ったけど、立ち止まってるのは性に合わないから。石像を助けに行ってくる」
魅真は、大樹とマグマと同じく、石像をひろい集めるために、羽京が情報を書いた紙をもらおうとした。
そのことを聞くと、羽京は口もとに笑顔を浮かべた。
「じゃあ、僕も一緒に行くよ。石像を助けに」
そして、自分も一緒にひろいに行くことを申し出た。
今まで、司の石像破壊を許容して、見て見ぬふりをしてきたので、罪滅ぼしというわけではないが、それでも羽京は、後悔をぬりかえられるくらいの未来を創ろうとしていた。
次の日…。科学王国は、新しいものを作り始めた。
前日、千空、杠、カセキは、司の手術をしたが、手術はただの時間稼ぎにすぎなかった。
なので、司を一旦石化しようとした。石化解除の周辺修復効果を逆手に取って、治療するためだった。
しかし、現時点では石化の方法がわからず、これから調べなきゃいけないため、司が死ぬ前にコールドスリープさせるために、冷凍庫を作ろうとしていたのだった。
「オホー!壊れちゃったと思ってた、可愛い可愛いスチームゴリラ号が…」
その段階で必要な、あの時壊れた戦車を見たカセキは、興奮して肉がふくらみ、上半身の服が破けた。
「オッホホーイ!!スッッゴイのに生まれ変わっちゃうんだホーーー!!」
「欲しいのは、エンジンに使ってたピストン2本だ」
「おぅ。ケータイも、いったん分解すっぞ。金の糸が、ヤベーほどいるんだとよ」
戦車は千空とカセキが、携帯の方は、魅真とクロムとスイカが分解していた。
「ウェエエエ。マジか、原始人…」
「何言ってんだい。アタシらのが、今やよっぽど原始人じゃないか!」
「すごいね…。何作ってるの、これは?」
その様子を、羽京、ニッキー、陽は、どこか遠い目をして見ていた。
「あ゙ぁ、冷蔵庫」
「冷 蔵 庫…??」
「つか、冷凍庫な」
「この石の世界(ストーンワールド)に…?」
「あー、なるなる。そう、現代人は!俺もおんなじ事言った。もう笑っちゃうしかないけど今は。あはははは」
この世界では、ありえない物を作ろうとしているので、羽京、ニッキー、陽はギョッとした。
部品がそろうと、千空達は、滝の下にある、崖の横穴に移動した。
「ポンプ2本でシュッポシュポ。金の糸ブチ込んだとこ通って、空気行ったり来たりさせっとだ、熱が移動して――凍る!!」
「お…おぅ!なんでそうなんのかはイマイチ分かんねーがヤベー!!」
「そんな簡単な仕組みでできんの、冷凍庫って!?」
「現代の奴はもうちょいややこいがな」
「凍らせると腐らんのは知っている。食糧問題も、大幅に解決するな…!」
「あ゙ー、食糧に関しちゃな。もっと100億%!完璧な保存法もゲットできっかもしんねえぞ。石化光線」
それは、石化光線を魚にあてて、石化させるという方法だった。
「「「!!!」」」
「ククク。復活液一滴で、いつでも新鮮な刺身食べ放題だ。修復効果で、病原菌の心配もねえときた!」
「人類を滅ぼした災厄を、そんな生活便利雑貨に…」
「でも、人間と燕以外は、石化しないはずだけど…」
千空の案に、コハク、ゲン、コクヨウは驚き、銀狼は想像してよだれをたらしていたが、羽京はどこかひいており、魅真はマジにつっこんでいた。
その会話を、組み立ててる途中の冷凍庫の向こう側で、司が横になって聞いていた。
そして、先日千空と共闘した時に、千空が言っていた、「70億人が支えきれねえなら、70億人支える手を、70億人で探しまくる。それが科学のやり口だ……!!!」という言葉を思い出し、口もとに笑みを浮かべていた。
それから、冷凍庫が完成すると、千空と司を残して、魅真、羽京、ゲン、クロム、コクヨウは、そこから去っていった。
「ほれほれ、ワシらは撤収じゃい」
「ええぇ、なんでぇ急に…」
まだコハクと銀狼が残っていたが、カセキが銀狼の背中を押して、強制的に外に出そうとしていた。
「友達にトドメを刺さなきゃならんとしたら、主はそこ見られたいと思う人?」
「……」
「あの2人は長同士だ。誰か居ては、最期に話もしづらかろう」
カセキが強制的に出そうとしていたのは、これから千空が、司をコールドスリープしなきゃいけないからというのが理由だった。
ロープを使って上に登ると、魅真はその先にある岩に腰をかけて、崖の先にある、眼前に広がる景色を眺めた。
景色を見ていると、魅真は、一年前に司と過ごした数日を思い出し、次第に涙があふれ出てきた。
「司……」
あふれ出した涙は、止まることなく流れ続け、しばらくの間、そこにすわっていた。
そして、横穴の中では、千空が冷凍保存の準備をしていた。
「冷凍保存(コールドスリープ)か。SFの宇宙船でしか、聞いたことがないな」
準備をしていると、司が口を開くが、先程よりも、更に顔色が悪くなっていた。
そんな司の言葉を聞くと、千空は、どこか沈んだ顔をする。
「宇宙船――ソユーズなら3人乗りだがな。今いる連中から選べんなら、宇宙旅行に誰連れてくよ??」
「…そうだな…」
準備をしながら話をしていたが、司は答えかけたところで、口を止めた。
「最期に…有能な人材の、リストアップをしておいて欲しいってことかい?」
「あ゙??何言ってやがる。ただ聞いただけだ」
「? なぜそんな、最期に、無意味な話を―――」
司はとりとめのない話をする千空をふしぎに思い、聞いてみると、千空は一瞬黙った。
「無意味な話は、ダメなのか」
千空は、別に科学の話をしているのではなく、他愛のない話をしていただけだった。
まるで、本当に友達のようで、その言葉を聞いた司は、うれしそうに笑う。
「うん。大樹と魅真…千空、君だと、惑星探査には、体力が心許ないね。乗せるならクロムかな」
「あ゙ー。俺も、そこに俺はいらねえなァ~。頭に貝の女いんじゃねえか。あれは――」
「彼女は記者だよ。復活者選定の、貴重な情報源だ」
「ククク。テメーの趣味かと思ったわ。霊長類最強は、マリリンモンローみてえなのがご贔屓かとよ」
そして、司は先程の千空の質問に答えると、その後も、時間の許すかぎり、千空と司は話し続けた。
「―つまりだ。マリオはキノコ食って、本人デカくなった気になってるだけなんだよ。100億%幻覚だ、幻覚。そうなると、俄然!あのキノコは、ベニテングタケっつう説が有力だ。そもそも似てるしな。イボテン酸が、量食うと、幻覚見るっつうのもそれっぽいわ」
けど、その時間はそんなに長くはなく、千空は滝に顔を向けて話していたが、段々顔を上に向け、潤んできた目に手をもってきた。
それはもう、司の息はすでになく、目は閉じられていたからだ。
「だろ。そう思うだろ…」
司の息がなくなるのがわかると、千空は手で目を覆い、涙が見えないようにした。
「なあ、司――」
そして、司の名前を呼ぶと、司を冷凍庫の中に入れて、両手を胸の前でクロスさせる。
少しすると、魅真、コハク、未来が穴の中に来て、未来が、貝殻で作った腕輪のお守りを、司の右手にかけた。
そのお守りを手にかけたのを最後に、冷凍庫のフタは閉じられた。
「兄さんが、私のこと、守ってくれてたんやから、何年も、何年も。今度は私が、ずっと守るわ。毎日毎日全部見張って、絶対壊れんように――」
未来は冷凍庫にすがりつき、涙をこぼす。
そんな未来の肩に、コハクは笑って手を置いていた。
「さァ~て、そうなりゃ、出発準備だ。とっとと始めんぞ。科学クラフト!」
もうここには用はないので、千空は縄を登り、続いて魅真、コハク、未来も登った。
「クラフトって、何作るの?」
「百夜たちが、数千年かけて残してくれた、値千金の情報だ。石化光線の発生源は、地球の裏側にある―――!!」
「えええぇ。裏側って…」
「どうやったら行けるんだよ………??」
「なァ~に、問題ねえ。ネアンデルタール人ですら、ユーラシア大陸渡り切ったんだ」
「いや、それ何万年もかけてでしょ。しかも旧人類の、多分ゴイスーにパワフルな脚で」
「おぅ。なら俺らは、頭とハートで!渡ってやろうじゃねぇか。地球の端から端までよ!!」
「あ゙ぁ。世界に飛び出て、全部の謎を解き明かす。ストーンワールド、大航海時代のスタートだ…!!!」
こうして、科学王国と司帝国の闘いは、司の命という、大きな犠牲をはらって終結した。
しかし、まだ復活できる可能性があるので、それをみつけるため、石化光線の謎をつきとめるために、科学王国は、次のステップに進むのだった。
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