Z=14 科学の力
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科学王国の人間は、司と氷月を食い止めようととび出して行ったが、魅真だけ洞窟の前に残っていた。
「(そうだ…。ぼーっとしてる場合じゃない!!)」
魅真は時間とともに落ちつきを取り戻すと、羽京を仰向けにした。
その後に、背中に背負っている刀と、腰に差している木刀をはずすと、ポーチを腰からはずし、ポーチの中から石器のナイフを取り出す。
そして次に、服が開かないように、首元でしばられたリボンから、首から胸のあたりまで靴ひものようにしばっている部分を、一気に縦に切り裂いた。
リボンを切ると服をぬぎ、その服を適当な大きさに折りたたむと、羽京のケガをしている部分に、強めに押し当てた。
「(死なせない…。死なせない!!絶対!!)」
魅真は、羽京を助けようと必死だった。
服をぬいで下着姿となるが、まったくのお構いなしで、服を布代わりに押し当てると、今度はポーチから包帯を取り出した。
包帯を取り出すと、羽京の体を起こし、服を押し当てた部分に、何回か巻いて固定し、その後羽京を地面に寝かせた。
「(とりあえずは、これでいいかな)」
応急処置はすんだので、少しだけほっとして、科学王国と司軍が闘っている方に顔を向ける。
「(でも、こうしてはいられない)」
けど、すぐに羽京に顔を戻すと、羽京の上半身を起こして、背中にまわって脇の下に手をいれると、傷にさわらないように、下半身をひきずって、洞窟の出入口の前に移動させた。
「ごめんね、羽京。本当は、今すぐにでも手当てしてあげたいけど、今は、そういうわけにはいかないの…」
移動させると、大樹達がいる方に顔を向けながら、未だ意識のない羽京に、静かに声をかける。
「絶対……あとで手当てするから…」
声をかけた後、ゆっくりと羽京に顔を向けると、優しい目でみつめた。
そして、服をぬいでゆるんだ帯を、少しきつめにしばり直すと、もといた場所に戻り、刀を背負い、木刀をにぎりしめた。
「いってきます!」
準備が整うと、また羽京に顔を向けて、満面の笑顔で声をかけた。
けど、すぐにまた、大樹達の方に顔を向けると、真剣な目に変わり、大樹達がいる方へ走り出した。
Z=14 科学の力
魅真が羽京の手当てをしてる間に、闘いは進んでいた。
科学王国の者は、司と氷月を包囲して戦おうとしたが、司が跳ぶと、氷月が槍を前に構え、回転すると、一瞬にして全員蹴散らされ、ニッキーは大樹の音爆弾で司を倒そうと銅板を構えたが、司が投げた剣で破壊されてしまったために、銅板を持っていたニッキー、ニッキーの後ろにいたマグマとマントルは、後ろにふっとんだ。
司が地面に着地すると、金狼が司を槍でつくが、あっさりと手ではらわれる。しかし、金狼の後ろから、銀狼が槍でつこうととび出してきて、更には、司の後ろから、マグマが斧をふりおろすが、司は素早い動きで移動しながら、全員殴り倒した。
魅真が走り出したのはその時で、ほとんどの者が倒れている中、魅真は走りながら、司と氷月、どちらの方に行くべきかを見極めていた。
「(司の方は、村の人達が大勢闘っている。となれば、私が行くべきは……氷月!!)」
司は、すでに金狼と銀狼とマグマをはじめとする村人が闘っているが、氷月はコハク一人だけなので、氷月の方へ行くことを決めた。
コハクがどれほどの強さなのかはまだわからないが、氷月が相手となると、一筋縄ではいかないだろうと判断したためである。
氷月と闘っているコハクは、氷月の槍を何度か刀ではじいていたが、回転する氷月の槍が背負っている盾にあたると、仰向けに倒れてしまったので、氷月はその隙を逃さず、コハクを貫こうとした。
だがその時、氷月の後ろから走って来た魅真が、跳躍して、氷月を木刀で攻撃しようとしたが、魅真の攻撃を察知した氷月は、顔を横にずらしてよけた。
けど、それは想定内であったため、魅真は驚きもせず、コハクと氷月の間に立ち、氷月と向かい合った。
「魅真!!」
「満を持して、ようやくご登場ですか、魅真クン」
魅真の登場に、コハクは驚いていたが、氷月は表情一つ変えず、淡々と魅真に話しかけた。
「しかも、この期に及んで木刀とは……。甘い…甘すぎます!!」
魅真が、刀ではなく木刀で殴りかかったので、氷月はあきれていた。
しかし、魅真は表情を崩すことなく、氷月を鋭い目で睨んでいた。
「いつもと雰囲気が違いますね。いつもはヘラヘラ笑っているだけだというのに…。ああ~、羽京クンの敵討ちですか」
「羽京は死んでない。まだ生きてる。だから、あなた達を倒して、絶対に助ける!!」
「なぜ、羽京クンを助けようとするのですか?羽京クンは、つい先日まで、あなたの敵だったのですよ?」
魅真が自分の方に来たのは、羽京をやったからだと思った氷月だが、その考えが信じられず、魅真に問う。
「関係ない。今は味方だし。それに私は、目の前の誰にも、傷ついたり、死んだりしてほしくないだけ…。だから死なせない!!誰一人……絶対に!!」
「君は甘いですね。脳の溶けた有象無象や、敵だった者など、放っておけばいい。私には、まったく理解できません」
魅真から答えは返ってきたが、やはり、氷月には信じがたいものだった。
「……わからないわよ…」
氷月の心を聞くと、魅真は静かに、やや低い声で、つぶやくように返す。
「わからない?君はちゃんとした人間だと思っていたのですが、買いかぶりでしたか」
自分の心なのに、理解していないので、氷月は魅真を、脳の溶けた人間かと思った。
「違う…」
「ん?」
しかし、魅真は氷月の言ったことを否定する。
「簡単に人を殺せるあなたには、絶対にわからないって言ってるの!!」
わからないというのは、自分自身のことではなく、氷月のことで、魅真は怒気まじりの勢いのある声で、叫ぶように答えた。
「なるほど。価値観の違いですか…」
「ええ…」
「ですが、どんなに強がったところで、実力の差はうまりませんよ」
「強がってはいない。絶望もしてない。氷月……あなたがなんと言おうと、私はあなたと闘う…!」
魅真は当然、氷月の方が、圧倒的に上なのは理解していた。
けど、だからといって、絶望もしなければ、闘いの手を休めようとも思わなかった。
「私は…武力カードだから…。千空の……科学王国の武力カードだから…。今ここですべきは、あなた達を食い止めること」
そして、しゃべりながら木刀を腰にさすと、背中に背負っていた刀を鞘から抜く。
「私は…私のやるべきことをやるだけよ!!」
刀を抜くと、氷月と闘うために、刀を構えた。
「…なるほど。ちゃんとしている。いいでしょう。うけてたちますよ、魅真クン。ただし…」
魅真が刀を構えると、氷月も槍を構える。
「死んでも知りませんがね!!」
槍を構えた氷月は、躊躇なく槍を突き出した。
そして、竹筒を支点にして、回転させようとしたが、その前に魅真が、氷月の槍の、刃と持ち手の棒を固定している紐を、持ち手にそって縦に切り、更には、刃をさしこむために縦に切った部分を切り落とした。
「「!!!」」
それは一瞬の出来事で、氷月だけでなく、見ていたコハクも、驚いて、目と口を大きく開いた。
その隙に、魅真は木刀を抜き、氷月の全身を殴った。
何度も何度も素早く木刀をふって、全て体の急所にたたきこんだので、刃でないにせよ、氷月はダメージを受けた。
「くっ……」
氷月は、特に集中的にたたかれた腹の部分を、槍を持っていない左手でおさえ、膝をまげて、崩れ落ちるのをなんとかこらえていた。
「(すごい…!!なんという動体視力だ。一瞬にして、氷月の槍の、刃と持ち手を結ぶ紐の部分を見極めて切り落とすとは…。しかも、氷月が紐で再度結べないように、接続面も破壊した。それだけでなく、片手で木刀をふりまわし、なおかつすべて急所にあてるとは!!
しかも魅真は、ここに来る前に言っていたことが事実なら、真剣で闘うのは初めてだ。使いなれない武器は危険だし、何よりも、実践で使えるようになるには、鍛錬が必要だ。それなのに、あっさりと使ってしまうとは…。なんという身体能力。これが、千空の武力カードの魅真か!!)」
闘いを見ていたコハクは、魅真の技術力や身体能力の高さに目を見張り、感嘆していた。
「思ったよりはやりますね。ですが、なんとも解せません」
「?」
「真剣でやれば、私は更に、確実にダメージを負いました。倒せたかもしれません。しかし、木刀ではいずれ回復します。やはり甘い…。甘すぎますね」
「人を殺すのが、かしこく正しいやり方なら、私はそんなものいらない」
「は?」
「!」
「それなら一生バカのままでいい。誰になんと言われようと、私は私の信念を貫く。ただ…それだけよ!!」
氷月は魅真の甘さを指摘するが、魅真は意に介しておらず、己の胸の内を叫んだ。
「そして、千空も信念を貫く。信念の塊みたいな男だからね。だから必ず作ってくれる。科学の武器を!!」
科学薬品は先程すべて失ったので、端から見れば、科学武器を作るなど不可能だった。
「だって私は…千空を…信じているから!」
けど、千空はできないことをできると言わない男だというのはわかっているし、何よりも、心から千空を信じているので、千空が科学武器を作るということを、微塵も疑っていなかった。
「うおおおおお。行かせーん!千空のところにだけは…」
一方司がいるところでは、大樹が盾を前に構えて、司に向かって突進していった。
その時、視界の端に、何か動くものをとらえた司は、大樹がいる前ではなく、空を仰ぎ見た。
司が空を見ると、周りで闘ってる者も、全員つられるように空を見上げると、そこには紙飛行機が飛んでいた。
「ククク。司、勝つのは力か科学かじゃねえ。力も科学なんだよ」
奇跡の洞窟の出入口には、千空がいて、手を下に構えていた。
空を飛んでいる紙飛行機を飛ばしたのは、千空だった。
「『力』を、ギリシャ語でなんて言うか知ってっか?」
宙を飛んだ紙飛行機は、その先にある木の枝に先端があたる。
「DYNAMITEだ」
そして、紙飛行機の先端が木の枝にあたった瞬間、ものすごい爆音をたてて爆発した。
「ななな、なに??これぇ……!?」
「あんなものに巻きこまれたら、ヒトなど跡形も残らんぞ」
ダイナマイトの威力を見た金狼と銀狼は、恐怖心を抱いた。ダイナマイトすら知らないが、その威力を見れば、ただではすまないというのは理解できたからだ。
「ダイナマイト…。すごい…!!」
「ヒトの『力』など一笑に付す。科学の『力』だ……!!!」
全員が爆発した方へ注目していると、千空、クロム、ゲンは、洞窟の出入口の前に立って、ニトログリセリンが先端にしみこんだ飛行機を構えていた。
「ククク。ギリッギリ間に合ったな。バトルチーム、テメーらがもちこたえてくれたおかげでよ…!!!」
科学武器が完成したのは、バトルチームが司と氷月を食い止めていたからなので、千空が感謝の意を示すと、魅真、コハク、金狼、銀狼、マグマ、大樹は、その顔に笑顔を浮かべた。
「たった今!科学王国は、ダイナマイト完成させちゃったよ~~♪その威力はおよそ、100億メガトンジュール!!」
「ククク。な~にが100億メガトンだ、ぶっこきやがって」
「しー!いいの数字なんか。千空ちゃん雑なんだもん、交渉。本質しか言わないんだから、ジーマーで…」
本当はそこまでないが、噓を言うゲンに、千空があきれ顔でつっこむと、ゲンは小さな声で制止した。
「か…紙飛行機なんか、そうそう当たんねえだろ」
「あぁ、一か八か…」
ダイナマイトの威力を見たのに、司軍の兵達は、強がって闘おうとする。
「あはは。紙飛行機よりは、ちょっとだけ正確な、ダイナマイト矢(アロー)もあるよ…?」
その時、意識を取り戻した羽京が、ニトログリセリンがしみこんだ紙を巻いた矢を構えて立っていた。
「羽京…!!」
「羽京!!」
顔色が悪いし、口から血も吐いているが、無事だったので、魅真、クロム、千空の顔は明るくなった。
「よかった…」
その中でも、魅真は一番ほっとしていた。
「形勢逆転!戦争終結!はい。おしまいおしまい~♪」
ゲンはいつもの軽い調子で、手をたたいて、強制的に闘いを終わらせようとした。
けど、今のは効いたようで、司軍の兵達は、全員武器を地面におろしたり、両手をあげたりして、降参の意を示した。
一方氷月は、未だに、ダイナマイトで爆発して燃えている木を見ていた。
「……なんて、素晴らしい――」
そして、マスクをはずし、目を輝かせて、千空が作ったダイナマイトを称賛する。
「うぉおお。勝ったぞー!」
「ついに決着だぜ…!!」
「(いや、決着とは違う。まだ兵が降参しただけ…)」
大樹とクロムは、諸手をあげて喜んでいたが、魅真は、兵が降参しただけで、司が降参したわけじゃないので、油断せずに武器を構えていた。
「(ん~~と、戦況的には勝ったかもだけど、決着したわけじゃないんだよね~~。有象無象は片づいたから、問題はこの先。司ちゃんも千空ちゃんも気付いてないわけない。こっからどうすんの、ジーマーで…??)」
そして、ゲンもそのことがわかっており、緊張して冷や汗をかいていた。
「受け止めても叩き落としても爆発する。広範囲の爆風はかわすのも無理だ。うん…。確かに不可避だね。ただ――必ず皆が巻きこまれて、大勢の死者が出る。千空、君は人を見捨てられない。自らを犠牲にもしない」
「おやおや、お互い動けやしねえなァ~~。決着じゃなくて膠着だ」
「その状況をわざわざ狙って作り出した。つまり千空、君の目的は―」
「あ゙ぁ。取引だ、司」
決着がついていなくても、特に気にした素振りを見せなかったのは、最初から、司を倒すことが目的ではないからだった。
「ゲン、テメーが司と会ったのは、テレビの特番だっつってたな」
「へ?あー、うん、そうだけど…」
「ち~~~と妙な話じゃねえか。この世界の全てを手に入れることもできんのに、汚れた既得権益者を浄化するとかなんとかよ。ご高潔なご理想にご邁進してる。それが――獅子王司っつう男だ。んな奴が!試合しまくり、テレビも出まくりで、ガッポガッポ稼ぎまくってた。霊長類最強の高校生とか呼び名つくほどな。ど~~うにもしっくりこねえ。それこそガラじゃねえだろよ」
「! たしかに…!!俺にとっちゃ、ガッポガッポ稼ぎたいなんて当たり前すぎて、考えなかったね~」
「大金を、なんの為に、誰の為に――。生きてんだろ、司。テメーの妹はよ」
千空に聞かれると、司は目を見開いて固まった。
司の妹…獅子王未来は、臨床的脳死になり、ずっと眠ったままで、医師には、この先意識が回復する可能性はないとまで言われた。
けど、司の家は決して裕福ではなく、親にも恵まれず、未来に繋がれている装置を外させないようにするための金は、現時点ではなかった。
それなら!と、司は己を鍛え、強くなり、闘って…闘って…金を作って、未来の命を守ってきたのだった。
「治るかもしんねえ。石化復活時の、周辺修復力ならな!!」
司が固まっていると、千空は紙飛行機をそっと地面に置き、腰にさげた袋から、石化した燕を地面に置いて、上から復活液をかけた。
すると、燕の石化は解けて、燕は空へと羽ばたいていった。
その様子を見た司は、目を見開き呆然とする。
「一か八かだが、ワンチャンあんのは間違いねえ」
「そうだぞ司!お前の折った、千空の首まで、復活液で治ったんだぞーーー!!」
あくまでも可能性だが、救えるかもしれないので、千空が説得すると、千空の前に大樹がやって来て、同じように説得する。
「さ~~て、その復活液だが、おっや~!?今や俺らがおさえてんじゃねえかー!!」
「(ゲスい)」
「(顔がゲスい)」
洞窟を一回たたきながら、顔だけ司に向けて、わざとらしく、いやらしい表情と声で話すと、コハクや銀狼をはじめとする村の者は、全員ひいていた。
「……取引内容は?」
「俺らがくれてやるカードは、『テメーの妹復活ワンチャン』。かわりに要求するカードは、『停戦』だ」
「その与太話を、信じるに値する根拠は?」
「俺の言葉だけだ。科学に嘘はつかねえ。足りねえか」
「…いや、十分だ。十分だよ」
千空が科学にウソをつかないのは、司も知っていることなので、司は千空の言うことを信じた。
こうして、決着とは言えないものの、闘いはひとまず終わった。
「羽京!!」
闘いが終わると、魅真は木刀と刀を装備して、羽京のもとへ走っていった。
「魅真…」
「よかった。無事だった」
羽京の無事な姿を、改めて、近くで目にした魅真は、ほっとしてうれしそうな顔をした。
「これ…魅真が?」
羽京は、刺される前にはなかった、包帯で巻かれた服を指さした。
「うん。手持ちのガーゼじゃ、全然足りそうになかったから」
「ごめん…。女の子に、そんな格好させて…」
「羽京の止血をするのが先決だったから、全然気にしてないよ」
上半身が下着一枚という格好だが、魅真はまったく気にしておらず、明るい顔で笑う。
「おい魅真、行くぞ。一時撤退だ」
「うん、わかった」
魅真が羽京と話していると、千空が声をかけたので、魅真は千空に顔だけ向けて返事をした後、木刀と刀を大樹に預けると、羽京に背を向けて、その場にしゃがんだ。
「じゃあ羽京、のって」
「…え?」
しゃがむと、後ろに手をやって、おんぶをする時の体勢になったので、羽京はどういうことかと思った。
「まだ応急処置だけだから…。ちゃんとした手当てをしなきゃ」
「え、でも…」
いくらケガをしていると言っても、背負ってもらうのは申し訳ないので、羽京は遠慮していた。
「出血もかなりひどかったし、顔色も悪いし。前も言ったけど、傷を洗わないと破傷風になるし、何よりも、いくら元司軍の人間だからって、ここには置いていけないから」
けど、どう見ても羽京の顔色が悪いし、見るからにケガがひどいので説得をする。
そこまで言われると、羽京は魅真の背にのり、魅真の首に両手をからめた。
羽京が自分にしがみついたのを確認すると、魅真は立ち上がり、歩きだした。
「(成人している男を背負って、普通に歩けるのか?女の子が!でも…以前魅真は、石像を持っても、すごいスピードで走っていた)」
一般的な女子なら不可能なことを、あっさりとやってのけたので、羽京は驚いていたが、以前魅真が、石像の破片を持って、すごいスピードで走っていたことを思い出すと、納得していた。
「本当に…ごめん…。背中に血がつくかも…」
「だから気にしてないってば!羽京の体の方が大事なんだから」
血はだいぶ止まったが、ガーゼがわりにあてている魅真の服から血がにじんできて、魅真の体につくかもしれないので、羽京は申し訳なさそうにしたが、魅真は気にもとめずに笑っていた。
戦車は壊れてしまったので、全員森の中を歩いていき、何分か歩いていくと、村のキャンプがある崖についた。
崖につくと、千空達は、キャンプに残っていた者達と話していたが、魅真は羽京を背負ったまま、河原まで歩いていく。
そして羽京を、なるべくテントのある場所から見えにくい、木が生えた場所に連れていき、河原にある岩にすわらせると、一度キャンプの方へ戻り、土器の器と石鹸を持って、羽京のもとへ戻ってきた。
「じゃあ羽京、まず傷口を綺麗にするから、服をぬいでもらっていいかな?」
「わかった」
魅真に指示されると、羽京は包帯をほどいて、包帯と魅真の服をとり、服をぬぎ、上半身はだかとなった。
羽京が服をぬぐと、魅真は土器の器に川の水をくみ、ポーチから出したナイフで、ガーゼを適当な大きさに切って、水をしみこませ、軽くしぼると、羽京の傷口をふいた。
「痛くない?」
「大丈夫…」
「痛かったら、遠慮なく言ってね」
「うん」
こんなにも深い傷で、平気なわけがないが、羽京が我慢しているので、魅真は、なるべく優しく、かつ丁寧に、羽京の傷口をふいた。
傷口をふいて、ふいている布が赤く染まったら水でゆすぎ、また傷口をふく。それを何度かくり返した。
「本当は洗い流すのがいいみたいだけど、さすがにそれは無理だから…。申し訳ないんだけど、今はこれで我慢してもらっていいかな?」
「いや、これで十分すぎるくらいだよ。ありがとう」
羽京がお礼を言うと、魅真はポーチの中からすりばちとすりこぎと薬草を取り出して、薬草をすりつぶす。
「魅真は優しいんだね」
「え?」
突然羽京の口から出てきた言葉に、魅真はすっとんきょうな声を出し、手を止めて羽京を見た。
「僕が司軍の人間だった時も、僕だけでなく、他の人の手当てもしていた。たとえ罵倒されても、気にすることなく、平等に接していた。それに、前の狼のことも…」
「そんな…私は…。羽京の方こそ優しいじゃない。司が石像を破壊したことに心を痛めて、誰にも死んでほしくないって思ってたんでしょ?優しい心がなきゃ、そんな風に思わないよ」
魅真に優しいと言われると、羽京は沈んだ顔になる。
「……ありがとう。でも、たとえ魅真が優しいと言ってくれても、周りが許してくれても、僕がやってきたことは、なかったことにはならないんだ…」
それは、司の石像破壊を許容したことを言っており、それがわかった魅真も、沈んだ顔になった。
「石像が破壊された時も、『なぜ』、『どうして』とは思っても、それを口にすることはしなかったし、できなかった。どうなるかわからなかったからね。そう思いながら、司の石像破壊を許容して、痛む胸を隠して過ごしていたら、杠のミッションを見て、もしかしたら!って思って、機をうかがった。そしたら、君達の電話を聞いて、君達に手をかした。結局僕は、誰かがやることに便乗していただけで、自分1人の力でどうにかできなかったし、やろうと行動すらしなかった。石像が直っても、僕が卑怯者だということに、かわりはないよ」
羽京はずっと思っていたことを告白しながら、感極まって涙があふれ出した。
羽京の話を聞き、羽京が目じりに涙を浮かべているのを見ると、魅真は更に沈んだ顔になる。
「…私、羽京の気持ち…わかるよ」
「え?」
「ずっと平然としていたけど、本当は、司が石像破壊しているのを、やめて!って叫びたかった。だけど、できなかった。そこで声をあげたら、確実に司に疑われる。最悪消されるから…。みんなに迷惑がかかるし、科学王国の勝利のために、私がヘタをうつわけにはいかなかった。それに、私は杠のミッションを知っていたし、千空は絶対に、できないことをできるとは言わないし、できなくてもなんとかしちゃうから、2人に頼って、安心していた。私は、千空と杠に甘えていただけだし、司にずっと何も言わずにいた自分が、すごく卑怯な気がしたし、なさけなくも感じた」
「魅真…」
「あっ……ごめんね。羽京の心は、羽京だけのものなのに、軽々しく、わかるなんて言っちゃいけなかったね」
知りあってそんなに長くないし、今日仲間になったばかりだし、何より自分以外の人間の心なので、失言だったと思った魅真は、あわてて謝った。
「それに、羽京の言う通り……なかったことにはできない。過去は変えられない。だから人は後悔する。それなら、その後悔をぬり替えられるくらい、未来を変えていけばいいよ。ずっと自分の思いを、貫いていけばいい」
その後に、前向きな発言をすると、羽京は目を見張ったが、すぐに口もとがゆるんだ。
「魅真は前向きなんだね…」
「そんなことないよ。ただ、立ち止まってるのが苦手なだけ…。私も、後悔することも、悩むことも、不安になることもある。だけど、止まるのは性に合わないから、とにかくもがいてる。それだけだよ」
「そっか…。じゃあ、僕ももがこうかな。今までの後悔を、ぬりかえられるくらいの、未来を創るために…」
魅真は羽京が言うことに謙遜するが、羽京が、魅真が言った言葉で前を向くことができたので、魅真は笑顔になった。
羽京が笑顔になると、魅真も笑顔になり、止めていた手を再び動かし、手当てを再開した。
出血はひどかったが、傷はそこまで大きくないので、ポーチに常備していたガーゼだけで足りたので、包帯をその上から巻いて手当てを終えた。
「助かったよ。相変わらず、手際いいね」
手当てをしてもらった羽京が、いつものようにお礼を言うが、魅真からの返事はなかった。
「魅真?」
いつもなら、何かしら反応があるのに、今回は何もないので、羽京はふしぎに思った。
「どうし……」
魅真は、目を潤ませて羽京を凝視していた。
様子がおかしいので、羽京はどうしたのかと思い、声をかけると、急に魅真の目から涙があふれ出したので、びっくりして、途中で口を開くのをやめた。
「よかった…」
「え?」
「私でも…助けることができた」
魅真が涙を流したのは、羽京の手当てを終えると、奇跡の洞窟での闘いの時に、羽京が氷月にやられて意識を失っていた時のことを思い出し、感極まったからだった。
「羽京が生きていてくれて…誰一人かけることなく闘いが終わって、本当によかった」
「魅真…。なんで、そんなに僕のことを…」
元は敵で、今日科学王国側についたばかりなのに、気にかけて、しかも涙まで流したので、羽京は更にふしぎに思った。
「誰かが死ぬのは……嫌だから…」
「!!」
「羽京は、犠牲者ゼロを条件に、私達に協力してくれたんでしょ?でもそれって、羽京が死んだら、なんの意味もないよ。羽京だって、あの中にいた、命の一つなんだから」
「魅真…」
「だから、意識を取り戻したのを見た時、すごくほっとした。奇跡の洞窟から、羽京を背負っている時、羽京の体温を、心臓の音を、背中ごしに感じた時に、『自分は大切な命を背負っているんだ』って思ったら、なんだかすごくうれしくなった。そして今、手当てが終わって、羽京の元気な姿を見たら、もっとうれしくなったんだ」
ふしぎに思っていたが、魅真の思いを聞くと、羽京は次第に笑顔になる。
それから数日後、羽京のケガもだいぶ回復した頃、司の妹の未来を復活させるために、石像の採掘に向かった。
そのメンバーは、魅真、千空、大樹、杠、羽京、ゲン、司、氷月、コハク、クロム、金狼、銀狼、カセキ、コクヨウ、ニッキー、南、数人の司軍の兵と村人達。
魅真達が採掘のためにやって来たのは、海が見える場所だった。
「この辺りかな。病院があったのは」
そこは、未来が入院していた病院があった場所だった。
「相~当流されてるね、みんなこれ」
「全部ほじくり返しゃいいんだよ!ダイナマイトで、採掘する!!」
かなり流されているようだが、千空はまったく問題としておらず、ダイナマイトを取り出す。
「いや、ヤベーだろそれは!」
「石像巻きこんじゃうんじゃないの?」
「問題ねえ。クッソ硬え岩盤だけだ」
けど、手あたり次第に使うわけではないようだった。
「万が一石像ブチ壊したらしゃあねえ。全部ひっつけるだけだ!!」
「えーと。その地獄作業やるのは誰ですか、千空くん?こら!」
どう見ても、人を助けようとしている人間の顔には見えない、下衆な顔で笑う千空を、後ろから杠が、千空の背中を、拳でぐりぐりと押していた。
こうして、ダイナマイトと手作業での採掘がスタートした。
ダイナマイトで爆発を起こし、シャベルを使って穴を掘る。その作業を、みんなで手分けをして、いろんな場所で、何度も行った。
「ノーベルがダイナマイトを発明したのは、戦争用途だったのか、土木作業向けだったのか」
「どっちなの?」
「知ったこっちゃねえ。オッサンのキモチなんざどうでもいいわ、キモチ悪い。ただ、一つだけ言えんのは、破壊神ダイナマイトの稼ぎで作ったノーベル賞が、科学をどんだけ盛り上げまくったか。そして俺らも、そのダイナマイトの科学の力で――」
その作業をくり返し、夕方になった頃、司が採掘していると、シャベルの先が石像にあたった。
その石像を目にすると、司は目を見張る。
「未来――……!!」
その石像は、探していた、司の妹の未来だった。
未来をみつけると、司は口もとに、うれしそうな笑みを浮かべる。
「掘って掘って掘りまくって!救いまくる!!世界人類全員をだ……!!!」
未来をみつけると、司は上の方に連れていき、地面に寝かせた。
そして、杠が未来の服を作り、魅真、杠、コハク、ニッキーの女子4人で、未来に服を着せ、くつをはかせた。
準備が整うと、千空が持ってきた復活液をかけた。
すると、未来から光が発した。
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