Z=6 舞い降りた羽
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「あとは、千空くんのお墓を作る場所だよね」
「そこも、すっごくいい場所があるの」
「え、どこどこ?」
箱根での別れ際、千空に、墓参りはかかすんじゃねぇぞと言われたので、そこも早く探さなければと思っていたら、その場所に関しても、魅真がすでにみつけていたので、杠は目を輝かせた。
洞穴から出た2人は、さっそく千空のお墓候補の場所へと歩いていく。
そこは、岩の柱に囲まれている、円状の平坦な場所だった。
「ほら、ここだよ」
「わあ!ここすごくいいね。平坦な場所だし、アジトの前だし!」
「それだけでなく、周りが岩で囲まれてるから、人に見られにくいし、上にのぼったとしても丸見え。入れるところは、他の岩場からも行き来できるみたいだけど、基本的には、私達が今入ってきたところのみ。その時がきたら、千空はここを、秘密の連絡場所にする気だろうから、私達がいれば隠すことができる」
「なるほど!さすが魅真ちゃん」
すでに、墓参りはかかすなという言葉の意味を、魅真は理解しているので、杠は称賛した。
「でも、そうなると、墓標とかほしいよね」
「そうだね。連絡の時もだけど、私達にも司軍にも、わかりやすくするために」
場所は決まったが、千空の墓のデザインをどうするかで悩んだ。
「私達は日本人だから、やっぱ墓石?いや…そんな技術ないわ。そもそも、ここに置いても、なんかの拍子に倒れるかもしれないし」
「固定できるものの方がいいよね」
「そうね」
けど、すぐには思いつかないので、2人はますます思い悩む。
「あ!じゃあ、十字架は?」
「え?」
「私達は日本人だけど、別に墓石にこだわる必要はないんじゃないかな?必要なのは目印だから。十字架なら、木とロープと、それを作る道具さえあればできるし」
「そっか。それならミッションのついでに用意することもできるね。ナイス杠!」
悩んでいると、杠が良いアイディアを出したので、魅真は目を輝かせて、杠を称賛した。
称賛されると、杠は照れくさそうに、少しだけ頬を赤くして笑う。
それから、2人はもう少し周りを見てまわってから、最初に4人で来た場所まで戻った。
数日後…。
大樹と司は、上に続く道を完成させたので、魅真と杠は驚いた。
普通ならありえないことだが、チート体力とチートパワーの持ち主である大樹と、チート武力の持ち主で、大樹に負けず劣らずのパワーと体力を持っている司なので、どこか納得してもいた。
「新しい家に続く道ができた。3人とも、好きな場所を選ぶといい」
「え…本当に?」
「いいの?司くん」
「全然かまわないよ」
魅真と杠が驚いていると、司が声をかけてきて、好きな場所に部屋を選んでもいいと言ったので、3人は喜んだ。
「やったあ!ねえ司、薬草室のために、もう一つ部屋もらってもいい?」
「薬草室?」
「うん。採集した薬草を、保管しておく部屋。あと、病気=ゲームオーバーのこのストーンワールドでは、薬草は必須だから、薬草の畑も作りたいんだけど」
「別にかまわないよ」
「やった!それじゃあ、最上階にするよ。見晴らしがいいし!高いところ好きだし!私達の部屋もその近くにしよう。大樹!杠!」
「え、3人一緒の部屋?」
「男女で別れた方がいいんじゃないのか?」
年頃の男女が一緒の部屋はおかしいので、大樹と杠は、何故魅真が3人一緒の部屋と言ったのか、疑問に思った。
「いずれ復活者が増えて、手狭になるかもしれないじゃない。それなら、まったく知らない人と一緒の部屋よりも、3人一緒の方がいいと思って。今なら選びたい放題だから」
「そう…かな?」
「そうなのか?」
「そうだよ。とりあえず、中見てみようよ」
まだ納得していない大樹と杠を見ると、魅真は2人の手をひっぱって、岩場の道を上がっていき、中に入った。
「中は洞窟みたいだな」
「だね。なんだか、秘密のダンジョンって感じですな」
初めて中に入ったそこは、迷路のようになっていて、右も左もわからないこの場所を、3人は迷いながらも歩いていき、数十分後に、なんとか上にたどりついた。
「わあ!本当に絶景だ。しかも、一番上は2つしかないからラッキーだね」
一番上にたどりつくと、部屋のような空洞が2つあり、そこの1つの、海側を3人の部屋に、もう1つの陸側の部屋を、薬草室にした。
「ところで魅真ちゃん、なんで3人一緒の部屋に?」
「なにか理由があるんだろう?」
魅真が、個人のワガママで勝手に決めるとは考えにくいので、もしかしたら、また戦闘に関する指示かもしれないと思った大樹と杠は、司から離れたので、魅真に理由を聞いてみた。
「これから、どんどん復活者が増える。つまり、敵が多くなる。確かに、敵と一緒の部屋の方が、情報も得やすいかもしれない。けど、こっそりと何かをしたり、すぐに情報共有をすることは難しくなる。千空の墓ですればいいかもしれないけど、誰かに見られる可能性が高い。けど、ここは最上階で、今いる部屋と、もう1つの部屋の2つだけ。下と違ってせまいから、もし誰かが来たらすぐにわかるし、何よりも、こっそりと何かをするには最適だからね。それに、いずれ千空が連絡をとりにやって来るだろうから、ここからなら、遠いところまで見渡せるし」
「そういうことか」
「ミッションのためね」
理由を聞いてみると、大樹と杠は納得をした。
「そういうこと。私も、年頃の男女が一緒っていうのは抵抗あるけど、でもこれも、私達の勝利のためだから、その時のために、ガマンしてもらってもいいかな?」
「もちろんだよ!」
「俺もだ!」
「ありがと。じゃあ、一旦戻ろうか」
部屋も確認したし、理由も話したので、一度司のいる場所に戻ることにした。
けど、戻ってみると、そこには司はいなかった。
何も書き置きなどもなかったが、恐らくは、奇跡の洞窟にいるか、石像を破壊しに行ったか、ツリーハウスに、復活液を製作するための道具を取りに行ったかの、どれかだろうと思った。
「じゃあ、私達は次の行動に移ろうか」
「「次の行動?」」
「千空のお墓作りよ」
けど、特に気にもとめず、魅真達は魅真達で、やるべきことをやることにした。
「おお、そうか」
「そうだね。やろうか」
「今すぐに何かあるわけはないけど、早め早めに行動して、習慣にしておいた方が、疑われないだろうしね」
「うむ。だが、どこに千空の墓を作る?」
「それなんだけど、この前魅真ちゃんと、お墓候補の場所に行ってきたの」
「そうなのか。行動が早いな、2人とも」
「いや、私はただ、魅真ちゃんがみつけた場所に案内してもらっただけで…」
「でも、墓標のデザインの案を出してくれたのは杠じゃない」
「なら、その墓を作るのは、俺がやるぞ!」
魅真が墓の場所を探し、杠が墓標の案を出したなら、今度は自分の番と言うように、大樹ははりきった。
「そうだね。大樹がやった方が早いね」
「お願いできるかな、大樹くん」
「まかせろ!まずなにを用意すればいいんだ?」
「木で作るから、まずは木を切るための道具と、木をけずるための道具。あとはロープかな」
「なら、3人で行くぞ!」
道具は、すでにここにそろっていたので、大樹が道具を持つと、3人は森の中に歩いて行った。
森の中に生えている、あまり太すぎず細すぎない、適当な木を切ると、一度もとの場所に戻り、短いものと長いものを1本ずつ切って、長い方の片方を、けずってとがらせると、短い方を横に、長い方を縦にして組み合わせ、その合わさった部分をロープでしばり、墓標の十字架を完成させた。
「よおし。この十字架をさしに行くぞ!魅真、案内してくれ!」
「OK!」
あっという間に完成した十字架を大樹が担ぐと、案内をするために、魅真が先頭を切って歩きだした。
今いた場所から千空の墓の候補の場所まではそう遠くなかったので、そんなに時間はかかることなくたどりついた。
「おお!ここか。本当にいい場所だな!でかしたぞ、魅真!」
墓の場所を見ると、大樹も杠のように魅真を称賛したので、魅真は照れくさそうに、少し頬を赤くした。
「どの辺にさすか。やっぱ真ん中あたりか?」
「真ん中よりもやや奥かな。復活者に、入口からこっそり見られても、何かを隠したり、会話を聞かれにくくするために」
「わかった。じゃあさすぞ」
「私もやるよ」
「じゃあ、私も」
十字架を固定する位置を決めると、大樹は縦の棒に、魅真は横の棒の右側に、杠は左側に手をかけると、全員で同時に力をこめて、地面に押しこんだ。
魅真と杠だけだと時間はかかっただろうが、大樹がいるので、十字架は簡単に地面にささった。
「よし!これで千空の墓はできたな!」
「あとは、それぞれがやることをやるだけだね」
これで千空の墓が完成したので、3人はもといた場所に戻った。
次の日…。
それぞれが、それぞれのミッションのために動いた。
食事の時以外は、ほとんどが別々の場所にいた。
魅真は薬草の採集、鍛錬、畑作りを行い、その傍ら、畑の製作に必要な、土を耕すための鍬やスコップ、水を巻くために使う器をツリーハウスから持ってきて、千空に教えてもらった貝殻の肥料と、肥料をいれるための袋と肥料をまくためのスコップ、薬草を採集のための肩かけタイプの袋、包帯を切ったり薬草を採集する時に使う小さなナイフ、薬草を入れる壺、薬草を煎じて飲む時用の茶器、薬草を乾燥させるために必要なザル、薬草をぬる際のさじのようなもの、壺を置いておくための木の棚の制作を行い、ペンは、千空が使っていたものが、ツリーハウスの隣の研究室にあったのでそれを使い、薬草の名前を書くための皮を集め、同時に、探索の時に麻をみつけたので、包帯やガーゼなどを作るために採集と、これからも作り続けられように栽培も行い、杠が帰ってきたら、布作りのための道具と布の作り方の指導を杠にしてもらいながら作り、何よりも、一番重要な司の情報収集を。
大樹は食料の調達と、火をおこすのに必要な木材の収集を行い、それ以外は杠の護衛とフォローを。
杠は、大樹とともに石像の破片の収集と、衣服の材料の調達と衣装作りを。
司は、石像の破壊と復活液の制作、優先的に復活させる人間の石像集め、奇跡の洞窟の様子を見に行ったりしていた。
大樹と杠が、復活者の衣服と自分達の新しい衣服を作るために、材料をとってきたので、杠は、それぞれの新しい服を制作した。
大樹と司と杠の服は杠の判断だが、魅真の服は、魅真自身が、杠にこっそりとオーダーした。いずれ来る闘いのために、動きやすい服装の方がいいので、そのためだった。
できたのは、少し薄めの赤色のリボンが首元についた、パンツスタイルの、白いチャイナ服だった。
服は長そでのもので、服の真ん中を胸のあたりまで切った部分を、ボタンの代わりにリボンで靴紐のように結んで、首元でリボン結びにしたもので、下は少し緩めのパンツで、靴は大樹よりも長いタイプのもので、関節近くまである、ロングブーツのようなものだった。
他にも、普段薬草を持ち歩くための、大きめのウエストポーチもオーダーした。整理しやすいために、4つの間仕切りがある、ちょっとこだわったもので、魅真は少し遠慮がちに頼んだが、杠は快く引き受け、あっという間にできた。
このウエストポーチは帯がついているので、帯を腰に結び、ポーチの本体を後ろにやり、服をしばっている帯に木刀をさし、魅真の、司帝国での衣装は完成した。
次の日も…また次の日も、全員同じことの繰り返しだった。
司は復活液の製作、魅真達は基本は自分のことをして、手があいたらそれぞれの手伝い、毎朝の墓参りを…。
それがずっと続いた。
そして、司が復活液の製作に着手してから、約二か月が経つと、とうとう復活液が完成した。
その復活液で復活させた、記念すべき最初の復活者は、あさぎりゲンという男性。
彼は、マジシャンで、メンタリストでもある芸能人だった。
司にメンタリストとしての腕をみこまれ、心理を読み、追跡し、千空を捜し出してほしいという理由から起こされたのである。
ゲンは頼み事をされると服をもらい、それを着て、司とともにアジトまで行った。
アジトには玉座があり、そこから3つ右隣にある穴の出入口の部分には魅真がいて、魅真は小さく折りたたんだ布団の上にすわり、ガーゼや包帯を作るために、布を織っていた。
「!!」
足音がしたので、魅真は顔をあげてみると、目の前にいた司とゲンの姿に驚愕した。
それは、自分と大樹と杠と司以外の人間がいたからだ。
司が復活液を作ってる以上は、遅かれ早かれ、復活者が出てくることはわかっていた。
けど、司は復活液に関しては、一切魅真達に知らせていなかったので、復活液が完成したことを魅真は知らず、いきなり知らない男性が、司の隣にいたことに驚いたのだった。
「魅真、今日からここで暮らすことになった、あさぎりゲンだ」
「魅真よ。よろしく」
「いや~、かわいい子だね~。ヨロ~」
司がゲンを紹介すると、魅真とゲンは、互いにあいさつをした。
「魅真、大樹と杠は?」
「今はいつも通り、狩猟と服の材料調達よ」
「そうか。なら、ゲンにアジトを案内してやってくれないかい?」
「わかった」
魅真に頼み事をすると、司は踵を返してどこかへ行ってしまった。
司がどこかへ行くと、魅真は織り機を穴に置き、隣に置いていた木刀を持って立ち上がると、木刀を腰にさす。
「こっちよ」
木刀をさすと、先頭を切って歩き出し、アジトの下に続く道へ行った。
魅真が歩き出すと、ゲンは、魅真の腰にさしてある木刀を数秒見た後、魅真のあとを追って歩き出す。
「魅真ちゃんてさ、剣道やってんの?」
「石化前にね。今はもうやってない。この木刀も癖で持ってる。護身術状態よ。森は危険だからね」
追いついて、魅真の隣を歩きはじめたゲンは、いきなり魅真に質問をしたが、魅真はあたりさわりのない程度に答えた。
「ゲンは、メンタリストなんだよね?」
「まあね。マジシャンでもあるけどね。ていうか、俺のこと知ってるの?」
「一応ね。テレビで見たことあるし、マジック心理学とかいう本を、クラスメイトが持ってたから」
「そいつはうれしいね~~。君みたいにかわいい子が知ってるとさ、俺もテンションあがっちゃうよ」
今度は魅真がゲンに質問をして、ゲンが答えると、かわいいとほめられたが、魅真は無表情だった。
「(どうにもウソくさい。言葉に重みがない)」
ヘラヘラと笑い、軽い口調で話すゲンを、魅真は警戒した。
「(けど、メンタリストというくらいだから、心理学には長けている。誘導尋問とかもあるかもしれない。慎重に答えないと)」
警戒したのは、ゲンが司側の復活者というのもあるが、メンタリストというのが大きかった。
「(大樹が今いなくてよかった。余計なことを口走りそうだから)」
同時に、大樹がこの場所にいなくてよかったと、心の底から思った。
「じゃあ、まずはアジトの下を軽く案内するね」
ゲンと一緒にいることで、緊張感を抱くが、今は案内役として、アジトの案内に専念することにした。
魅真がゲンを連れていったのは、自分が育てている薬草の畑だった。
「へぇ~。これ、魅真ちゃんが育ててるの」
「そう、趣味でね。小さなケガが命とりになるから。特に、このストーンワールドではね。司に許可ももらってるし」
「そっか~。すごいね、薬草育てられるなんて」
たぶん効果はないだろうが、一応は司に従順な人間だということをアピールしておいた。
「今度はこっち」
「あぁ!待って、魅真ちゃん」
畑に案内すると、いたのはほんの数十秒で、すぐにそこから移動する。
薬草に見入っている時に、突然声をかけられ、さっさと移動していたので、ゲンはあわてて魅真を追いかけた。
そして、今度はアジトを案内するために、もと来た道を戻り、アジトに続く道を歩いていった。
「それで、ここが私達が寝泊まりしているところ。今なら、私と友達2人と司以外はゲンしかいないから、私達の部屋にしている最上階以外なら、選びたい放題だよ」
岩壁を上がりきると、魅真はアジトの前まで来て、軽く中のことを説明した。
「それはラッキーだね。といっても、俺すぐに出かけなきゃなんだよね」
「出かける?」
復活していきなり出かけると言い出したので、魅真はなんのことかと思い、疑問をぶつけると、ゲンはニヤリと笑う。
「箱根だよ。千空とかいう男の追跡。それが、俺が起こされた理由」
「(やっぱりこの男、私の思惑に気づいてる?)」
ニヤリと意味深に笑った上に、魅真にわざわざ起こされた理由を話したので、魅真はますます警戒心を抱いた。
しかも、ゲンがなんのために起こされたのか、理由を聞きだそうとしていたところへこのセリフなので、余計にだった。
もちろん、聞く前から、ゲンが起こされた理由は予測していたが、予測通りだったので、ゲンに対して最大限に警戒した。
「準備出来次第の出発なんだ。それまでは、ここでのんびりしてるよ」
警戒心を抱く魅真に対し、ゲンは変わらずへらへらと笑っていた。
「そっか。起きて早々大変だね。まあ、ゆっくりしていなよ」
警戒心を抱いているが、魅真はそのことを悟られないように、にこっと笑って答えると、この場所から去ろうとした。
「あれ?もう案内終わり?」
「うん。アジトの中は、似たような穴があるから、そこ適当に使ってよ」
あまりにもあっさりとしすぎてるので、ゲンが問いかけると、魅真はにこにこと笑って答えながら、もと来た道を降りていった。
魅真が案内を終えたのは、もう案内をする場所がないから…というのもあるが、ゲンを警戒してのことと、あとは、一刻も早く、大樹と杠に知らせようと思ったからだった。
アジト周辺は森で、右も左もわからない場所だが、この二か月間、この周辺の地理を頭にたたきこんだのと、大樹と杠の行動パターンで、普段どこら辺にいるのか大体わかってるので、わりと簡単にみつけることができた。
魅真は大樹と杠をみつけると、さっそくゲンのことを話した。
布を作っているはずの魅真が、わざわざ森に探しに来たので、何かあったと2人は思ったら、案の定だったので、渋い顔をした。
「どうしよう…。千空くんのことがバレたら…」
「相手はメンタリストだからね。ウソついても、あっさりと見抜いちゃうかもしれない…。それに、最初にゲンを起こしたってことは、司は100%千空の生死を疑ってるってことだし、私達がツリーハウスに戻った時からすごい疑ってたし、何よりもゲン自身が、私に自分のミッションのことを言ってたから…」
「とにかく、知らぬ存ぜぬをつらぬき通すしかないね」
「うん。大樹も余計なことは言わないようにね。杠、悪いんだけど、もし大樹が何か言いそうになったら、フォローしてあげて!」
「わかった」
大樹と杠に早く知らせなきゃと思ったのは、復活者が現れたからというのもあるのだが、ゲンのミッションを知ったのと、大樹が余計なことを言うかもしれないからだった。
けど、この数日間は、拍子抜けするくらいに何事もなかった。
そして数日後…。ゲンは箱根へ1人旅立っていき、その様子を、魅真達3人は、ドキドキしながら見送った。
もしも、千空がみつかってしまったら…。それを考えると、気が気じゃなかった。
それから更に数日後、今度は北東西南という女性が復活した。
彼女は記者で、復活者の選定役として選ばれたようだ。
司は、南が復活してからは、硝酸がたまる度に、南からの情報を得て、何人か復活させていた。
「(最初はゲン。非戦闘員。そして次も、非戦闘員の女性記者。そのあとに、腕に覚えがありそうな、脳筋男が数名。女性記者が選定役で、ゲンが千空を警戒してのことなら、あの脳筋達は、ある程度武力で固めたいっていうのもあるかもしれないけど、恐らくは、千空の武力カードである、私を警戒してのことね。確かに、弱くはなさそうだけど、そこまで強くなさそうね。司とは天と地ほどの差があるし、私の相手にもならない。一種の牽制かな…。まあ、まったく問題じゃないけど…)」
復活液の素となる硝酸は、数日でたまるので、復活液が完成した今、復活者は時間とともに増えていくのはわかっているので、魅真はそこまで問題視していないし、今現在復活している人物は、ゲン以外は特に問題視していなかった。
けど、それは戦闘力の意味でなので、たとえ非戦闘員や弱そうな人間でも、情報収集と警戒は怠らないようにしようと心に誓った。
そして、ゲンが復活してから、半月ほど経った頃…。
その日も司は、復活させた男性を連れていき、南が選んだ石像を、周りが岩場ばかりの場所に置き、復活液をかけた。
復活液をかけられた石像は、ヒビが入り、顔から石片がはがれ落ちると、目を開いた。
その男性は、白い髪に、緑色の目をした、中性的な顔の人物…。
「やあ。君が、西園寺羽京だね。なんでも、すごい聴力と、優れた弓術の持ち主なんだとか…」
後ろから声が聞こえると、彼…西園寺羽京は、声がした方に、顔だけを向けた。
「君は…確か、獅子王司?」
羽京も司のことを知っていたので、見覚えのある顔を見ると、自分を見下ろしている司に、確かめるように名前を聞いた。
「そうだ。君の聴力と弓術を見込んで、君を起こした。俺の力になってもらおう」
「………」
なってほしいというお願いではなく、もう決定しているかのような物言いに、羽京は何も言えなかった。
起きたばかりだが、なんとなくだが、今の状況がつかめたからだ。
司の後ろに控えていた男性が、持っていた服を羽京に渡すと、羽京は渡された服を着た。
そして、羽京が服を着ると、服を渡した男性は、弓矢も渡してきたので、羽京はそれも受け取る。
「着いてきてくれ。道すがら、この世界のことと、君の役割を話そう」
司が踵を返して歩き出すと、後ろに控えていた男性も歩き出し、その後に続いて、羽京も歩き出した。
「ここは、俺たちがあの謎の光を浴び、石化してから、3700年後の世界。世界が自然に還った石の世界…ストーンワールド。まだなんの汚れもない楽園だ。俺は、このまま誰のものでもない、自然と共に生きていこうと決めた。人類を浄化するチャンスだ。だから俺は、金と権力の欲望にまみれた、心の汚れた年寄りではなく、純粋な若者だけを復活させて、若者たちだけで、新しい世界を築くべきだと思い、若者だけを復活させている。汚れた人類を浄化して、新世界へと踏み出すんだ」
司は歩きながら、この世界のことと、自分が今何をしているのか、何を目指しているのかを話した。
「……だから、僕を起こしたと?」
「そうだ。千空という男がいてね。俺が知ってる中で、もっとも切れる男だ。彼は、超人的な科学の力で、全人類を蘇らせようとしていた、危険な男だ。だから俺が、この手で殺めた!!」
「!!」
最初に話されたことについてはそうでもなかったが、次に話されたことには、強い衝撃を受けた。
「君には、おもに見張りを担当してもらいたい。その優れた聴力で、何か異常があったら教えてほしい」
「…わかった」
けど、それを表には出さず、少し低い声で返事をした。
「それで、ここには君のような復活者の他に、3人の人間がいる。千空側の人間だ」
「千空側?」
「ああ…。魅真、大樹、杠という名前の人間でね。彼らは、その千空の親友だ。俺が千空を殺めた時、俺のもとから去ったはずなのに、数日後、いきなり俺のもとに来たんだ。守ってもらうために来たと言っていたが、どうにも怪しいんでね。だから、魅真達のことも見張っていてほしいんだ」
「わかった」
「そして、3人の中で、もっとも警戒すべき人物…。それは…魅真だ!!」
「魅真?」
「魅真は、千空の武力カードだ。旧時代では、剣道の大会で何度も優勝した実力者で、段も持っている。純粋な剣だけの勝負なら、俺でも敵わないだろうね。普段から木刀を持ち歩いていて、彼女自身は自衛のためだと言っているが、どうにも怪しい。大樹や杠も見張りの対象だが、武力があるという点においては、3人の中では、魅真がもっとも危険で、もっとも警戒すべき、要注意人物なんだ」
「つまり、その3人が…特に魅真が何か怪しい行動をとったら、すぐに知らせろと…」
「そうだ。これからその3人に会わせよう」
司が羽京の石化を解くために、別の場所に移動をする前は、3人はアジトの前にいたので、アジトへ向かって歩いていった。
そこから数分歩くと、司達はアジトにつき、大樹と杠をみつけた。
「あ、司くん」
「おお、司。帰ったのか」
けど、そこにいたのは大樹と杠だけで、魅真の姿はなかった。
「ん?君達だけかい?魅真は?」
「魅真ちゃんは、今は畑のお世話をするために、席を外しているの」
「しばらくは帰ってこないと思うぞ」
司は、魅真がいない理由を2人に聞いた。
魅真がいないのは、単に薬草の畑を見に行っているからだった。
「そうか。ところで、新しい復活者を紹介しよう。西園寺羽京だ」
いないのは仕方ないので、とりあえず2人だけにでもと、司は羽京を紹介した。
「西園寺羽京です。よろしくお願いします」
「俺は大木大樹だ。ここでは、狩猟などの雑務を担当している。よろしく!」
「私は小川杠です。服飾を担当してます。よろしくお願いします」
羽京は、司に紹介されると大樹と杠にあいさつをし、羽京にあいさつされると、大樹と杠もあいさつをした。
「じゃあ羽京、魅真がいる畑に案内するよ」
「うん」
羽京と大樹と杠があいさつをすると、司はすぐに切り上げて、魅真を探しに行った。
畑は岩壁の前にあるので、数分歩くだけですぐについたが、そこには魅真の姿はなかった。
「どうやら、畑の世話をするために、どこか別の場所へ行ったようだね。仕方ないから、魅真の紹介はあとにするよ」
本当は、すぐにでも魅真を認識させたかったが、いない人間を紹介はできないので、この時はあきらめた。
「それまで自由にしているといい。アジトの中でも、その周辺でも…」
「わかった」
司に許可されると、羽京は森の中に歩いて行った。
森の中に入ったのは、これからここで生活をするためには、どうしても周辺の地理を知らなきゃいけないからだった。
周りは森しかないが、それでも徐々に行動範囲を広げようと思い、森の中を歩いた。
そうして、しばらく歩いていくと、川のせせらぎが聞こえてきた。
同時に、水の中に物を入れた際に響く水音もしたので、誰かいるのかと思った羽京は、そちらの方へ歩いていった。
「!」
そこには、黒くて長い髪の少女…魅真がいたので、羽京は驚いた。
同時に魅真も、森の中を歩く時に響く、草や枝の音がしたので、羽京が来ると同時に、後ろへふり返った。
「!!」
そこには見知らぬ人間がいたので、魅真は目を大きく見開き、瞬時に警戒をして、水を入れた桶を地面に置いて立ち上がると、羽京と向かい合った。
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