Z=11 追跡と救出
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「千空!ゲン!アンタたちのさ、歌姫で司軍を寝返らせろ大作戦、悪くないよ。悪くないけどね!肝心の偽物リリアンのソックリ度は―55点!」
「ヒーー。採点厳しい~」
「ガチファンのご意見は、大事にしねえとな」
取引が成立した後、ニッキーは千空とゲンに、先程のモノマネのダメ出しをしていた。
良くも悪くもない、厳しい点数に、モノマネをしていたゲン本人は、顔が青ざめ、冷や汗をかき、体が震えていた。
「任しときな。誰にも見破られないように、ブラッシュアップしてやっからさ!!」
「あ゙ー。それは超絶おありがてえ」
「ドイヒースパルタの悪寒…」
作戦のためというのもあるが、個人的にわくわくしているニッキーに対し、千空はありがたがっていたが、ゲンはどこか疲れている様子だった。
「アタシが味方になったからには、そこは大丈夫!ただ問題は―羽京だね」
話がひと段落すると、ニッキーは急に真剣な顔になる。
「歌なんかを何度も流してたら、絶対いつか、羽京に見つか―いや、耳づかっちまう。もし聞かれたら、奴の耳だけは、電話ごしでも騙せるか、怪しいもんだ」
聴力が優れている羽京は、この作戦の最大の壁となるので、ニッキーはそのことを危惧していた。
「む!そうか。歌を何度も流すのはダメか。なら、何度も流さなければいいじゃないかーー!!」
けど、大樹は単純かつ前向きな答えを出した。
「あっ、でもそうだね。一人ずつじゃなくて、羽京くんのスキ見て、みんな集めて…ならいけるかも!」
「そうね。全員一気に…じゃなくても、何人か連れてきて、何回かに分けてまとめてやるなら、なんとかなるかもしれないね!」
「大樹、アンタ、単純で前向きだね。いいよ、そういうの!!」
その答えに、3人もいい作戦だと思い、ニッキーは大樹を称賛するように、大樹の体を、拳でたたいた。
「羽京??」
「潜水艦のソナーマンだった人でさ。耳が超ゴイスーなのよ。だから司ちゃんが起こしたんだけど。今その羽京ちゃんを、クロムちゃんたちがくいとめてくれてる。なんとか無事でいてくれればいいけど…」
ゲン達は、見張りをしていた羽京に追いかけられ、音がする枝の茂みに誘いこまれ、ピンチに陥った。
しかし、ゲンだけはクロムの機転でなんとか村に帰れたが、クロムとマグマはまだ司帝国にいるので、ゲンはそのことを心配していた。
Z=11 追跡と救出
あまり長く話していると、他の司軍に、みつかったり疑われたりする可能性があるので、千空のニッキーに対する、「戦闘に関しては魅真の指示に従え」という言葉を最後に、今回の通信は終わった。
「魅真の指示に従えって…どういうことだい?」
「それは、千空くんが魅真ちゃんに、戦闘に関することを一任してるからだよ」
「魅真のミッションだからな」
「なるほどね」
千空の言葉に疑問を抱いたが、質問して返ってきた大樹と杠の答えに、ニッキーはあっさりと納得をした。
それは、魅真の旧時代でのことを聞いていたからというのが大きかった。
「で、どうすんだい?これから」
「作戦は、ニッキーのゲンへの指導が完了するまでは、やめた方がいいかも。今回のように、見破られる可能性もあるからね」
「それもそうね」
「じゃあ、誰に声をかけようか。もしも、南のように司ファンが他にもいたら、それだけで作戦は失敗しちまうよ」
「それに関しては問題ないよ。もう、不満を持ってる人とか、寝返らせることができそうな人のリストアップはすんでるから」
「それは本当かい?」
「うん」
「なら、誰なのか教えてくれないかい?」
「それも、作戦を開始する前の方がいいかもね。リストアップした人の名前を書いたものがあるんだけど、今ここにはないから、後日みんなに渡すよ」
「準備がいいね、魅真」
「これもミッションの一つだからね」
そこまで読んで、用意していたとは思わず、ニッキーは感心していた。
「なら魅真、ミッションを本格的に開始するまで、俺たちは何をしてればいいんだ?」
「大樹と杠は、今は、いつも通りにしていて。ニッキーは、私についてきてほしい」
「アタシかい?」
突然指名されたので、ニッキーはふしぎに思った。
魅真は大樹と杠と別れた後、ニッキーと墓場に残り、ゲン達の足跡の追跡を始めると、墓とアジトを結ぶ道とは逆の方へ歩いていく。
「ここね」
足跡をたどってやって来たのは、岩壁で囲まれていて、その中には枝の茂みがある場所だった。
「魅真、こんなところに一体なんの用があるんだい?」
ニッキーは魅真達の仲間になったが、表向きは司軍の人間なので、監視としての役割を果たさなきゃいけないため、誰かにみつかった時のために、一定の距離を保った場所で、静かに魅真に問いかける。
「ゲンがついてるのに、携帯は土に埋めるだけなんて、雑な隠し方をしていた。しかも、携帯の上の地面には手形が、墓標の周りには足跡が残っていたの。そんなの、ここに何かありますって言ってるようなものだよ」
ニッキーに問われると、魅真は周りを見回しながら質問に答えた。
「けど、それは逆に言えば、雑な隠し方をするしかなかった。手形や足跡を消す時間や余裕がなかったということになる」
「まあ、確かにね。でもそれが、ここに来るのと、なんの関係があるってのさ?」
「足跡は三つ。一つはゲンのもの。うち二つは見慣れないものだったから、ゲン以外は、村の人ということになる。そして、さっき電話から聞こえてきた、千空とゲンの会話からすると、村の人は、まだ村に帰れてない可能性がある。人質にとられたらアウトだよ」
「なるほどね。そのための追跡かい」
「そう。だからニッキーは、表向きは私の監視だけど、誰か来ないか見張っててほしいの」
「了解」
ほんのわずかな手がかりで、そこまで読んでいるとは思わず、ニッキーは感心しながら、魅真に言われた通りにした。
「でも、よくここだってわかったね」
「足跡がこっちに続いてたし、夜中に墓場から音がした時、羽京がこの場所に向かっていくのを見たの」
「羽京を!?」
「だから、ここに何かあると思う」
「マズイんじゃないのかい?」
「うん。でも、羽京は音がしたのに、司達に何も知らせずにこの場所に向かった。何かある。それに…」
「それに?」
「私……羽京は、悪い人じゃない気がするの。カンだけど…」
「でも、現時点では敵だろ?」
「うん…」
ニッキーは周りを警戒しながら、魅真は周りを警戒しつつ、辺りを探索しながら会話をしていた。
「(あっ…。これって…)」
話していると、魅真は茂みの中に、袋がいくつか入った四角いカゴをみつけた。
「(これ…ひょっとして、ゲンか村の人の?)」
見たことのないものなので、もしかしてゲン達のものかと思った魅真は、中身を確認した。
「(中身は、飲食物が中心になってるし、この周辺に、ゲンと、墓場にあった他の足跡がある。これはゲン達のだね)」
アジトが目の前にあるのに、司軍の人間が、わざわざたくさんの飲食物を持っていくとは考えにくいので、魅真はそのように結論づける。
そして、少し離れた場所には別の荷物が一つあり、反対の場所には枝がこげているのもみつけたので、今度はそちらに歩いていった。
「(枝がこげてる…。火?でも、羽京に追われてたのに、この世界で火なんて起こす余裕があるとは……あっ!)」
こげている部分を、注意深く見ていると、今度はまた違う物を発見した。
「(何これ…。大きいけど……電池?)」
大きいのでわかりにくいが、形からして電池だろうと結論づけた。
「(村には妖術使いを名乗る子がいて、その子は千空に科学を教わってるって、ゲンが言ってたわね、前に。てことは、この電池はその子が?…一応回収しておこう)」
もしかしたら、何かの役にたつかもしれないし、誰かにみつかったらヤバイので、回収しておいた。
電池を回収すると、次は、こげてる茂みの周りを探索する。
「(かなり薄いけど、これは、墓場にあった足跡だ。矢も刺さってるし、羽京の足跡もある。やっぱり羽京がいたんだ)」
こげてるところの周りを探索すると、今度は、羽京と、墓場にもあった村の住人の足跡もみつけ、そこから足跡をたどっていった。
「(ここからは、村の人の足跡と、羽京の足跡が、一定の距離を保って、アジトの方に向かっている…)」
足跡はアジトの方に向かっており、魅真は嫌な予感がした。
嫌な予感を抱きながら、しばらく歩いていくと、開けた場所にたどりつく。
「(やっぱり、足跡がアジトの方に続いてる。てことは、やっぱり誰かつかまった?でも、もうこれ以上は、追跡はやめた方がいいかも。司軍にみつかって、責め問いされたら、さすがに言い訳も思いつかない)」
足跡がアジトに向かっているのは確かだし、これ以上ここにいて、もしみつかったら、怪しまれる可能性があるので、魅真は断念した。
「(となれば、別の角度!)」
けど、あきらめたわけではなく、別のルートから探ってみようとしただけだった。
なので魅真は、一度茂みの方へ戻っていった。
「もういいのかい?」
「うん。これ以上は危険だと思うから。違う場所から攻めてみる」
「そうかい」
茂みに戻ると、荷物が置いてある場所へ行き、素早く中身を出して確認した。
「何してるんだい?」
「何か使えるものがないかと思って…。荷物ごと持っていくと、羽京に疑われるかもしれないから、使えそうなものだけ回収するわ」
荷物を確認しているのは、千空が作った、役にたちそうな科学グッズがないかどうかを見るためだった。
確認は数分で終わり、めぼしい物を袋にまとめると、カゴや側に置いてある大きな袋はそのままにして立ち上がる。
「じゃあ私、この荷物をなんとかするから」
アジトに持っていって、もし袋の中身を司帝国の人間に確認されたらアウトなので、このまま持って行くということはしなかった。
「なんとかって…どうするんだい?」
「秘密の場所があるから、そこに隠してくるよ。こっからそんなに遠くないし、ちょっと行ってくるね。少しだけ、ここで待ってて」
「え?ちょ…」
言うや否や、ニッキーの返答を待たずに森の中に走っていき、あっという間に見えなくなった。
それから何十分と経たないうちに、魅真はニッキーのもとに戻ってきた。
「おまたせ。じゃあ行こうか」
「う…うん」
魅真が戻ってくると、魅真が先頭を切って歩き出し、ニッキーはまた、一定の距離を保って、魅真の後ろを歩いた。
「で、これからどうするのさ?」
「アジトに戻る」
「えっ!?」
「足跡がアジトに続いていた。たぶん、司に会ったんだと思う」
「司に!?」
「そう。だから、一つ調べてほしいことがあるんだ」
「?」
魅真とニッキーは、一度アジトに戻り、魅真はアジトに戻ると、一旦ニッキーと分かれて、薬草室まで行った。
薬草室に行くと、魅真はそこに置いてある畑仕事に使う道具を持って、アジトの下に戻ってきた。
魅真は下まで来ると坂道を下っていき、下で待機していたニッキーは、また魅真のあとについて歩いていき、ついたのは川だった。
川につくと、魅真は川の前まで歩いていき、ニッキーは魅真の4メートル後ろにある木に隠れ、監視をしているように顔をのぞかせる。
「それで、どうだった?」
魅真はその場にしゃがみ、川で水をくみながら、後ろの木の影にいるニッキーに声をかける。
「アンタの予測通りさ。村から来たっていう男子を、一人捕まえたらしいね」
「やっぱり。崖下からアジトに続く道の前に、羽京と村の人の足跡があったからね。でもマズイね。足跡は三つで、もう一人の村の人の足跡は、ゲンの足跡と同じ方に続いていた。ってことは、もう一人は村に帰った。当然千空にも知れる。そしたら、千空が近いうちに来てしまう。そうなると、まずするのは、その子の奪還。方法はわからないけど、どちらにしろ、こちらが圧倒的不利なのは間違いない」
「どんなに司軍を寝返らせても、情勢が一気に変わっちまうね」
「そういうことね。それなら、私がすべきことは、もう一つしかない」
「やるべきこと?…って、まさか…!!」
魅真の真意が読み取れたニッキーは、顔が青ざめるが、魅真は笑うだけだった。
次の日の朝、恒例の墓参りに行くと、魅真は土の中から受話器を取り出して、電話をかけた。
「は~い、シモシモ~」
電話をかけると、出たのはゲンだった。
「ゲン?」
「魅真ちゃん?」
てっきり千空が出ると思ったら、出たのはゲンだったので、魅真は少しばかり驚く。
「千空いる?」
「千空ちゃんは、今ちょっと…。なに?なんか用事?」
「千空に用事があるの。かわれる?」
「今ここにいないから、リームーかな」
千空に用事があるのに、今近くにはいないというので、魅真は小さくため息をついた。
「えっ、なんでため息?」
「いや、急いで話したいことがあったけど、いないみたいだから」
「そう…。俺じゃダメなの?代わりに聞くよ」
「千空がいい」
「あぁ、そう…」
「とりあえず、私が電話をしたことだけ伝えといて。また明日、今ぐらいの時間にかけるから。絶対に出るように言ってね」
「わかった。それじゃあ「待ちなよ」
魅真の用事は終わったようなので、ゲンは電話を切ろうとしたが、最後まで言う前に、ニッキーが声をかけた。
「アンタは私と特訓だろ?」
「ひぇえええ~…」
ニッキーがゲンに声をかけたのは、ゲンのモノマネの特訓のためで、ニッキーの声色で、すでに嫌な予感がしたゲンは、悲鳴をあげた。
ニッキーがゲンの特訓を始めると、大樹と杠は戻り、魅真は見張りのために残った。
あまり長いこといられないので、30分ほどで切り上げると、魅真とニッキーは移動を始める。
そして、いつもやっている畑の仕事をした後は、いつもの場所で布を織り、それを二時間ほど続けると昼食をとって、少し休憩すると、いよいよ行動を開始した。
「(こっち側が牢屋だから…。あそこね、村の人が捕らえられてるだろう場所は…)」
今魅真は、アジト内にある牢屋を、外から木の影に隠れて見張っていた。
今ニッキーはこの場におらず、大樹と杠についているため、魅真一人で牢を見ていた。
「(あの子か…。ハチマキをつけてるって言ってたから、間違いないでしょうね。竹の柵が、あそこにだけついてるし)」
牢を見張り始めると、簡単に、人質になってる村人…クロムをみつけた。
「(予測通り、警備が増えている。厳重警戒だわ。もしみつかったりしたら……アウトね。でも、かなり危険だけど、やるしかない!!人質一つで情勢が変わる。千空のためにも、あの子のためにも、科学王国の勝利のためにも、このままにはしておけない。まずは、増えるであろう警備員の人数、人物、シフトを調べる。時間はかかるけど、やるしかない。でも、あまり悠長にもしてられない)」
千空の生存が司軍に知れ渡った時点で、警備が厳重になり、魅真や大樹や杠を監視する周りの目は厳しくなり、専門の監視までついた。
専門の監視役のニッキーは仲間になったが、他の司帝国の人間は、魅真達を厳重警戒しており、監視をする目は厳しい。クロムが人質になった時点で、それらは更に厳しくなったが、それでも、クロムを助ける以外の選択肢はなかった。
「(がんばる。だけど、無理はしない。無理しすぎたら、その時点でアウト。みんなに迷惑がかかる。それだけは絶対にダメ!!)」
今までの、司軍の人間の情報収集とはわけが違うので、魅真はかなり緊張していた。
あまり長居してもみつかる可能性があるのと、周りに疑われる可能性があるため、ほんの20~30分程度で切り上げ、またいつもの仕事に戻った。
そして、次の日の朝。
魅真達はお参りをすませると、魅真は受話器を地面から取り出して、電話をかけた。
「おう、なんだ?魅真。俺に用事ってのは」
3秒ほどで千空が受話器をとり、用件を聞いた。
「千空んとこにいる村の子が、司軍につかまったんだけど…知ってる?」
「あ゙ー、知ってる知ってる。今は、そいつを救出するための準備中だ」
「準備?何やってんの?」
「自動車を作ってる」
「自動車…。またすごいもん作るね」
「そっちに行くのに必要だかんな」
「そう。で、話それたから戻すけど、その人質の子なんだけど、その子は私が助けるから」
「あ゙?」
本題に入ると、千空は驚きの声をあげる。
「人質いたら不利でしょ。だから助ける。今すぐには動き出せないけど、必ずなんとかするから。話はそれだけよ。じゃあ」
けど、魅真は千空の声には反応せずに、自分の要件を伝えると、さっさと切ってしまった。
電話を強制的に切られると、千空は特に気にすることなく外に出る。
「魅真ちゃん、なんだって?」
「クロムは自分が助けるんだとよ」
「えぇっ!?」
外に出ると、家の下にいたゲンが内容を聞いたので、千空が話すと、内容を聞いたゲンはびっくりしていた。
「でも、たぶん…ていうか絶対に、警備も監視も、バイヤーになってるんじゃないの?大丈夫なの?」
「まあ、危険には変わりねえが、魅真がやるっつったからやるんだろ。任せるわ」
「信頼度ゴイスーね、相変わらず」
ゲンに対して、千空は冷静で、危険なミッションを簡単に任せると言ったので、ゲンはいろいろ感心した。
それから一か月以上が経過すると、自動車を完成させた千空とゲンと村人達は、自動車に科学道具を乗せて、司帝国まで移動をしていた。
その道中、けたたましい音をたてて電話が鳴ったので、車の運転をしていたゲンは一度自動車を止めて、電話に出た。
「シモシモ~」
「千空は?」
電話に出るなり、魅真はゲンの言葉を聞かずに、千空を呼びつけた。
「千空ちゃん、魅真ちゃんからよ」
「おう」
魅真からの電話を告げると、千空は車の上にあがり、受話器を受け取る。
「今日はなんだ?」
「村の子が捕まってる場所がわかったし、牢周辺の警備とかもだいぶ把握してきたから、数日以内に実行に移すわ。そっちは今どんな状況?」
「こっちは今、自動車で司帝国に進軍中だ」
「あとどのくらいでつくの?できるだけ、正確な時間が知りたい」
「メンタリスト、あとどんくらいで司帝国につく?」
魅真に問われると、今どの位置にいて、あとどのくらいでつくかわからないため、受話器を口から離すと、一番詳しいゲンに聞いた。
「そうねえ、あと3時間くらいかな」
今までは徒歩だったので、大体の予想だが、ゲンは質問に答えた。
「あと3時間くらいだそうだ」
「そう…。作戦開始する前に、何か準備する?」
「おう」
「じゃあ、リミットは、今日を含めて大体3~5日くらいね」
「あんま無理すんじゃねえぞ」
「わかってる。でもがんばるから」
「そうか。じゃあ切るわ」
「あ、ちょっと待って!」
「あ゙?」
「こっちに向かってるってことは、陣を敷くのよね?」
「たりめーだろ」
「なら、アジトが正面に見える場所に、岩壁のような崖があるんだけど、そこに来て。場所はゲンが知ってるから」
「おう」
「あともう一つ。陣を敷いたら、いよいよ司軍を寝返らせろ作戦を始めるのよね?」
「あ゙ぁ、そうだ」
「そう…。その時になったら教えて。話はそれだけ。それじゃあ」
魅真は、クロムに関する報告と、陣を敷く場所と、ミッションのことを確認すると、一方的に切ってしまった。
「またしても、一方的に切っちゃったね。魅真ちゃん」
「まあ、しゃあねえだろ。いつ司軍の奴が来るかわかんねえんだ。俺もその方が、てっとり早くていい。それよりメンタリスト、アジトが正面に見える場所にある、岩壁のような崖っての知ってっか?」
「うん。前に、魅真ちゃんと情報共有してた時に教えてもらったけど……ひょっとしてそこに?」
「あ゙ぁ、そこに陣を敷く」
魅真との電話が終わり、千空とゲンの会話が終わると、千空は下に降り、ゲンは再び自動車を動かして、魅真に言われた場所に向かった。
その頃、千空の墓場では…。
「千空くん、そろそろ来るって?」
「うん。もうあと3時間くらいだって」
「そうか!!」
魅真は大樹達に、今、電話で千空と話したことを、簡潔に説明した。
「こちらに到着したら、いよいよ作戦を開始するみたいね」
「おお、いよいよか」
「うん。だから、これを渡しておくわ。前言っていた、寝返らせることができそうな人間を、リストアップしたものよ」
そう言いながら、ポーチから皮を3枚出すと、一人一枚ずつ渡した。
「まだ作戦開始の合図は出てないけど、とりあえず、その皮に書いてある人の名前を覚えといて。すぐに行動できるように。あと、私は他のこともやらなきゃいけないから、あまり一緒にはいられないけど、いつ千空に呼ばれるかわからないから、通信を聞かせる時は、一声かけてほしいの。大体、このアジトの周辺にいるから。三人はなるべく一緒にいて」
もう情報はかなり集まったし、今はクロム奪還作戦に集中しなくてはいけないので、三人にお願いをすると、墓から去っていった。
墓から去ると、魅真はいつも通りに、畑仕事と布織りをすませた後、牢の正面の木の影まで行き、見張りはじめた。
「ヤベーーー。ヒマすぎんだろ。こんな、ほら穴と、竹の牢に、閉じこめやがってぇー!!」
何分かすると、急にクロムが、竹の柵にしがみつき、わざとらしく叫んだ。
「(何いきなり?しかもわざとらしい叫び。なんの意味が………あっ……。まさか、どこかに仲間が?)」
わざとらしい叫びには、何か意味があるのだと思った魅真は、周りを見回すと、魅真から数メートル離れた場所から、何やら果物の殻のようなものが、転がって、魅真が指定した崖に向かっていった。
魅真は、その果物の殻を見た時はぎょっとしたが、崖に向かっていく姿を見ると、段々けわしい顔になる。
まだ数分しか見ていないが、途中で中断して、魅真はニッキーを探した。
そしてニッキーをみつけると、ニッキーを連れ立って、再び墓まで行く。
その頃、千空はゲンや村の者達と、紙を作っていた。
すると、携帯が鳴ったので、一番近くにいた千空がとった。
「おぉ、誰「千空いる!?」
千空が全部話し終える前に、魅真の怒号のような声が聞こえた。
それは、周りにいるゲンや村の者達にも聞こえていたので、全員がぎょっとした。
「魅真!声が大きいよ。みつかっちまうじゃないか!」
「あ、ごめん…」
大きな声を出したので、出入口に立っているニッキーが注意をすると、魅真は軽く謝った。
「んだ?テメーいきなり」
「村の中に、なんかこう、果物の殻みたいのかぶってる子供っている?」
「あ゙ぁ?スイカのことか」
「名前は知らないけど、とにかくいるのね?」
「おぉ」
「子供を偵察に送るなんて、何考えてんの?さっきその子が、人質の偵察に来てたわ。危ないでしょ!!」
魅真が朝の連絡の時間でもないのに電話をかけたのは、先程見た果物の殻の中から、見慣れない服を着た人物が見えたので、千空のいる村の人間ではないかと思ったからだった。
魅真は、千空がスイカを偵察に送り出したか、スイカが何も言わずに、勝手に偵察に来たかと思い、子供にそんなことをさせる千空に怒ったのだった。
「っつってもだな、気づいたら、すでにいなくなってたんだよ」
「子供の面倒くらい、ちゃんと見ときなさいよ。村長でしょ!」
けど、魅真が怒っても、千空は平然としているので、魅真は更に怒る。
「けど、おかげで人質の居場所がわかったんだし、まあいいんじゃない?」
「よくないわよ!!」
すると、千空の隣にいたゲンが、割って入ってきて、魅真をなだめたが、それはかえって火に油をそそぐ形となった。
「大体そんなの、結果オーライなだけでしょ!!」
「でもねえ、スイカちゃんの行動を称賛してる人もいたし、無事だったんだしね。よかったじゃない」
「称賛?誰よ、そんなことしたの?」
「先代の村長だ」
「先代村長ぁ!?それって大人でしょ?しかも、ちょっと前まで村人をまとめる立場にあった人じゃない。それなのに、子供の愚行を叱責しないなんて、どうかしてるわよ!!」
会ったことないのに言いたい放題なので、先代村長ことコクヨウをはじめ、村人は全員放心していた。
「それに、無事だからよかった?全然よくないわよ!!ふざけないでよ!!こっちがどんな状況で、人質を救出しようとしてるか、わかってるの??」
「「!!」」
そのことを指摘されると、千空とゲンはハッとなり、真剣な顔になった。
「千空が生きてるって知られた時、司軍の警備も、警戒も、厳重になった。そして、村の子が人質になって、更に厳重になり、警戒されている。一度みつかったりしたら、それこそアウトなのよ!!私も…大樹も…杠も…ニッキーも…千空やゲン…村の人達まで、殺されちゃうかもしれないんだからね!!人一人の軽率な行動で、全てを台無しにする気?そんなのダメでしょ、絶対!!人質救出なんて危険なこと、戦えない大樹や杠にさせるわけにはいかないし、大人数だとみつかる可能性が高い。だから、私が一人で、何日もかけて情報を集めて、いよいよ人質を救出する準備にとりかかろうっていう時に来たのよ。大体子供なんて、一番人質として使える、格好の餌食じゃないの。人質が増えれば増えるだけ、こっちが不利になるんだから!それに、一歩間違ってたら、まずその子が殺されてたかもしれないのよ!!」
指摘され、今の状況や、怒ってる理由を話されると、千空とゲンは、今度は沈んだ顔になる。
「あ゙ぁ、わかった。ちゃんと言っとくよ、そいつにな」
「頼んだわよ。あと、その子を称賛したっていう、先代村長とやらにも、ちゃんと言っといてね。二度と子供の危険行動を称賛するなって」
「わかったわかった。言っとく」
「よかった。私はまた、人質救出のために動くから。もう二度と、こっちには、誰も来させないでね。それじゃあ」
用件が終わると、千空が返事をする前に、魅真は電話を切った。
「またしても一方的だったな」
魅真からの電話は、大体用件を言って、相手の返事を待たずに終わりなので、コハクがそのことをつっこんだ。
「スイカ、魅真って子に嫌われちゃったんだよ?」
話の中心となっていたスイカは、千空の前まで来ると、体を震わせながら、おずおずと千空に話しかけた。
「あ゙ーー…。別に、そんなに気にしなくていいぞ」
「え?」
「ありゃあ、スイカのことを憎くて言ったんじゃねえ。むしろ逆だ」
「逆?」
「魅真ちゃんは、スイカちゃんの身を案じていたのよ」
「え…。でも、すっごい怒ってたんだよ」
「そうだ。すっげぇ偉そうだったじゃねえか、その魅真とかいう奴はよぉ」
千空とゲンとスイカが話していると、そこへマグマが割って入ってきた。
一方的に怒鳴っていたので、マグマの魅真に対する印象は、あまりよくないようだ。
「まあ確かに、ブチギレのガチギレのマジギレだったけどねぇ。でも、そういうんじゃないのよ」
「あぁ?」
ゲンがフォローするが、マグマはよくわかっていないようだった。
「常に、生と死が隣り合わせの状況の中、クロムを救出するために、たった一人で、命をはって動いてくれている…。とても勇敢で、お優しい方なんですね、魅真さんという人は…」
そこへ、コハクの姉のルリが、魅真や千空やゲンの真意を理解し、フォローするように口を開いた。
「そういうことよ。…前にね、俺がここに戻った時、魅真ちゃんと情報共有をするために、偽物の恋人関係を結んだんだけどね。それが、魅真ちゃんは俺を本気で好きで、本当に、純粋に付き合ってると思ってるけど、俺は魅真ちゃんが好きじゃない。魅真ちゃんから千空ちゃんの情報を引き出すため、利用するために、騙して付き合ってるって設定だったのよ」
「最低だな、それは」
「そうなの。魅真ちゃんにも言われたよ」
ゲンが、魅真との偽物の恋人関係の設定を話すと、コハクはドン引きした。
「でもさ、魅真ちゃんはあっさりと受け入れた。その理由が、自分だけでなく、大樹ちゃんや杠ちゃんや千空ちゃん、まだ付き合いの浅い俺や、村の人たちの安全のためなんだよね」
「まだ会ったこともない、私たちの身を案じてくれていたのですか?」
「しかもそれ、千空がまだ、村に入ることすらできなかった頃だろう?」
けど、続きを話すと、コハクとルリは目を丸くして驚いた。
「そう。そのためなら、自分のプライドなんてどうでもいいって言ってさ。そういう子なのよ。いつも誰かの安全を考えてくれてんの」
「良い方なんですね」
「そういうこと」
「そういえば、先程もそんなことを言ってましたね」
「じゃあ、スイカが嫌いとかじゃないんだよ?」
「そうそう。スイカちゃんを思うがゆえの言葉よ。だから、あまり気にしなくていいのよ」
「ただスイカ、もう二度と、勝手なマネはすんじゃねえぞ。今回はたまたまうまくいったってだけだが、魅真も言ってた通り、テメーの行動は危険だし、軽率だってことには変わりねえし、次はテメーの身が危ねえかもしれねえからな」
「わかったんだよ。ごめんなんだよ」
千空は、魅真に言われた通り、スイカに注意をした。
千空に真剣な顔で言われると、スイカは自分の行動を謝罪する。
「私も、望遠鏡でスイカの姿をとらえたが、追いかけることはしなかった。すまない」
コハクは崖の上で、望遠鏡を使って、クロムの居場所を特定しようとしていた時に、スイカの姿を見たが、追いかけていったりはしなかった。
コハクは驚異的なスピードをもっているので、追いつこうと思えば追いつけたのに、それをしなかったので、コハクも自身の行動を反省した。
「作戦が終わるまで、ここに一緒にいましょうね、スイカ」
「わかったんだよ!」
そしてルリがスイカに声をかけると、スイカは笑顔で答えた。
「おぅ。つーわけでコクヨウ、テメーも二度と、子供の危険行動を称賛するな。特に、今回みたいな、生死をかけたミッションではな」
「う…む…」
魅真に怒鳴られ、千空にも注意されると、コクヨウはどこか小さくなり、気まずそうに返事をした。
「じゃあ、魅真からの電話も終わったことだし、さっさと続き始めんぞ!」
「「「「「「おおっ!!」」」」」」
千空たちは、今は紙の戦車の製作をしていた。
戦車を作るのに紙が必要だったので、紙を作ってたが、大量に作っていた途中で魅真から電話がかかってきたので、魅真の剣幕で全員が注目して手が止まっていたが、魅真の電話は終わったので、再び紙の製作にとりかかった。
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