Z=10 リリアン大作戦
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「よぅ、デカブツ。ククク。あれからざっくり、一年ぶりってとこか――」
一年ぶりに聞いた大樹の声に、千空は笑いながら話しかけた。
そして、話すと同時に、一年前、箱根で別れる時に、大樹がにぎり拳を高くあげた後、千空も旗をあげて応えた時のことを思い出す。
「千空!俺は、俺は…」
大樹もまた笑顔で、目に涙を浮かべて、鼻水まで出ていた。
「俺は、千空……!!」
何か話そうとしても、感動して、うまく言葉が出てこなかった。
「俺は千空ーーー!!!」
「お前は千空じゃねえ。千空は俺だ。何言ってんだ、テメーはさっきから」
ついには、目に浮かんだ涙が滝のように流れ、片方の穴からしか出ていなかった鼻水が両方の穴から出て、妙なことを叫んだので、千空は冷静に返した。
「うぅ、すまん。感極まりすぎてな…!!」
「一年で、ケータイまでホントに作っちゃったんだね、千空くん。あはは。もう、すごすぎだよ。知ってたけど…!」
「まさか、ここまで文明を進めるなんてね。やっぱりすごいよ、千空は」
大樹が話すと、今度は杠と魅真が、こっそりと話した。
「(なんか、今日ずっとお墓で叫んでるな。一年?命日かなんか??)」
いつもはただ祈るだけなのに、今日はずっと叫んでいるので、ニッキーはますますふしぎに思った。
Z=10 リリアン大作戦
「ついに繋がった、ケータイの感動にうち震えながら、100億時間ほど思い出話に花咲かせてえとこだがな!そう堂々とくっちゃべってもいらんねえだろ?要件だけ伝える。まずは一人!!司軍の奴を切り離して。理由なんざなんでもいい。ケータイの前に引っ張ってこい」
「「「!!?」」」
「詳細はそん時話す!」
「オホー。そんなぶっつけ本番でいいの?」
「というか、そうせざるを得ないのだ。おそらく監視がついてる以上」
「むしろ大樹、テメーはなんも知らねえほうがいい。妙な話が出ても、アホみたく信じてろ!」
「テキトーすぎるでしょ。怒るよぅ、その大樹くんって人…」
携帯で電話が繋がってすぐに、千空は本題に入り、作戦を始めようとした。
「……千空!一つだけ確認するぞ」
わりと適当だったが、大樹は考え事をした後、千空に話しかける。
「それが一番、血が流れないんだな?」
「ああ。それが一番、血が流れねえ」
「よしわかった。千空、お前がそう考えるのならば、説明などいらん!!」
大樹の口から出たのは、本当にただの確認で、2人はいつも通りのやりとりをした。
「…一年離れていようとも、みじんも揺らがないのだな、信頼が。千空と大樹たちが、司相手に生き残れた理由が、わかった気がする」
今のやりとりで、コハクは、千空と大樹の間にある、強い信頼関係がわかった。
「司軍総攻撃のタイムリミットまで、もうあんま時間がねえ。明日あたりゲンが戻ってくっから、ソッコーでミッション始めんぞ!ゲンたちから、なんかメッセージついてたか?」
「いや?何も無いな。ものすごく土深くに、受話器が埋まってただけだぞ」
予想外の答えに、千空は目を大きく見開く。
「…フム?それじゃ、下手したら、見つけられんかったじゃないの。ゲンらしくないの…」
「なにかあったんだよ……!?」
「……」
ゲンが隠したにしては、あまりにもぞんざいな隠し方なので、カセキは妙に思い、スイカは心配して、千空もけわしい顔をした。
しかし、気にしているだけでは、ミッションは進まないので、ミッションを行うための準備にとりかかった。
「オホー。できちゃったぞい。なんか、銅板のグルグル!」
カセキが作ったのは、銅板で作ったぜんまいだった。
「「おおおお!!」」
「レコードがすっごいスムーズに、ぐるぐる回ってるんだよ…!!」
それは、千空のもとにあるレコードを、スムーズに再生するためのものだった。
「手回しじゃ、再生スピードブレて歌が崩れっからな (……レコード再生が完璧でも、肝心のゲンがいなきゃ、意味がねえ)」
しかし、今回の作戦の肝であるゲンが、まだ戻ってきてないので、そのことを危惧した。
「(もうすぐ、魅真と杠と大樹が、ケータイんとこに、ターゲット連れてくる!それまでにゲンが戻らねえと、ゲームオーバー―)」
その時、ゲンのことを考えていると、千空の後ろに、誰かがやって来た。
「で?千空ちゃん。俺が口説く、一人目の娘(こ)は、誰……??」
それはゲンで、かなり荒い息をして、全身が汚れているが、特にケガはしていなかった。
「ゲン!!」
「無事だったんだよー!!」
ゲンが無事に村に帰ってきたので、千空もコハクもスイカも、ほっとしたり喜んだりした。
場所は戻り、司帝国の千空の墓場では…。
「(仲間に誘う一人目は、もう決まってる)」
魅真と大樹と杠が、出入口の方まで歩いてきていた。
「聞いて欲しい話がある!!」
「…?」
「(監視の人さえ味方につければ、あとは根気で一人ずつ。司帝国のみんなを、仲間にできるはず…!!!)」
3人が出入口まで来たのは、ターゲットをニッキーにしたためだった。
「ニッキーさんと言ったか!話があるんだ。聞いてく…」
「聞かないよ!!」
「「「!!?」」」
しかしニッキーは、大樹がすべてを言う前に、即行で断った。
「アタシの仕事は、アンタらの監視だ。誰かと密会しないか?妙な動きはないか?バラすなって司は言うだろうけど、構やしないさ。もう分かってんだろうからね。だから、魅真!大樹!杠!アンタたちと、馴れ合う気はないよ。回れ右しな!!アタシが聞くのは、ハイの2文字かイエスの3文字だけ!4文字目喋ったらブン殴るよ」
「それでも―」
取り付く島もないニッキーだが、それでも大樹は口を開く。
「「!!!」」
すると、ニッキーは大樹の顔を殴りとばした。
いきなりのことと、本当に4文字目で殴ったので、魅真と杠はびっくりしていた。
結構強い力で殴られたが、大樹はびくともしていなかった。
「!? (まるで効いてない!!いや、違うね。耐えてる……!?)」
「構わん!」
殴られて血が出たというのに、それでも大樹はしゃべったので、再びニッキーに殴られる。
「4文字ごとに、俺を殴り続けて構わん!そのかわり聞いてくれ!俺の友達の大切な話を……!!」
「………!!!」
その後も、大樹はニッキーに殴られ続けたが、大樹は殴られても、恨んだり憎んだりせず、殴り返すこともしないので、異様なものを感じとったニッキーは、顔が青ざめ、冷や汗をかいた。
そして、異様なものを感じたからか、根負けしたかはわからないが、ニッキーは、魅真と大樹と杠とともに、墓標の前まで行った。
墓標の前まで来ると、杠が、地面から受話器を取り出して、千空に電話をかけた。
村では電話が鳴り、電話はゲンがとった。
「…まさか、電話かい。これ??こんな世界でどうやって…!?」
電話は当然知っているが、このストーンワールドではありえないので、ニッキーは驚愕する。
「Hi!I’m LillianWeinberg!!」
「「「「!!!!」」」」
ゲンが受話器をとると、いきなり女性の声が聞こえてきた。
しかも相手は、旧時代では、歌唱力トップクラスで、歌姫とまで呼ばれたリリアン・ワインバーグなので、全員が驚いた。
しかしこのリリアンは、ゲンが声帯模写で、モノマネをしているだけだった。
「詳しくない俺でも分かるぞ!歌う人だ、アメリカの。知ってるのか、ニッキー!?」
「バカにするんじゃないよ。知ってるに決まってる!!」
そう答えたニッキーの声は、どこか沈んでいて、様子がおかしかった。
「あ゙ー。私は通訳のセバスチャンです」
「(セバスチャン??千空じゃないか。いや、妙な話が出ても、口出すなって言ってたからな!)」
どう聞いても千空の声なのに、セバスチャンと名乗ったので、大樹はつっこみたい気持ちを我慢した。
「(千空がセバスチャンて…。ということは、リリアンはひょっとしてゲン!?)」
ゲンが声帯模写をできることを思い出した魅真は、電話の向こうにいるのは、本物のリリアンではなく、ゲンだということを見抜いた。
「(でも…無事だったんだ。よかった…)」
ゲンがいたにしては、あまりに雑な隠し方だったのと、千空との会話で、もしかしたら何かあったかもしれないと思ったので、電話越しで、リリアンの声だが、無事だという事実に魅真はほっとしていた。
「Hello?I'm calling from USA(この電話はアメリカからです) People of Japan,,, Are you listening?(聞いてください、日本の皆さん!) アメリカ合衆国は復興していま…」
「なにーー。聞いたか、3人とも。助かったぞ、俺らはー!!」
「(ワァアオ。そういうこと。なんか、話見えてきた気がする。とりあえず、千空くんが、騙そうとしてるってことだけは…)」
「(なるほど。そういうことね。もう、千空とゲンの通信が、ツッコミどころしかないんだけど!)」
魅真と杠は、千空の計画に気づいたが、だまっといた方がいいのはわかっているので、何も言わなかったが、大樹は本気で喜んでいた。
「(本当…。千空が大樹に、妙な話が出ても口出すなって言ってよかった。釘ささないと、もっと余計なこと言いそうだし)」
同時に魅真は、千空が大樹に釘さしといてよかったとも思った。
杠なら察してだまっててくれるが、大樹は良くも悪くも正直で、すぐに余計なことを言いそうなので、それを見越して大樹に言ったのだろうから、さすがだとも思っていた。
「待ちなよ。その前に、リリアンなら、宇宙に居たはずだよ?」
「そう。地球に戻ったらすぐ石化しちゃって♪起こしてもらったの最近なんだ~」
「(よくそんな嘘を、すぐに、しかも平然として並べたてられるなぁ…)」
ニッキーの疑問にも、それっぽいことを、間をあけずにしゃべっているので、魅真は感心する。
「リリアン。アタシは…いや、これ通訳しないで。アタシはさ…!アタシがどれだけ。こんなゴツいアタシの学生生活がさ、どれだけリリアンの歌に救われたか!!」
ニッキーは目に涙を浮かべながら、ずっと胸にしまっておいた思いを打ち明ける。
「アタシは、アンタになら、いくらでも手を貸すよ。だけど、もし誰かがリリアン・ワインバーグを語ってんなら、絶対に許さない…!!」
けど、電話の向こうにいるリリアンが、本物だという証拠がないため、次の瞬間には、目が血走り、声には怒気が含まれていた。
「(あ…うん。バイヤーだね)」
「(ガチなやつだ、これ。ガチファン来ちゃったわ、いきなり)」
最初に来たのが、リリアンのガチファンなので、これはだませるかどうか怪しいので、千空とゲンは顔が青ざめた。
「前から思ってたけど、千空ちゃんって、悪い意味で引き強いよね。最初に起こしたの司ちゃんだったり、準備前に、いきなり雷来たり…」
「どうしても!声が違う気がするんだよ。本物だったら本当にすまない。でも、本人なら分かるはずさ」
ゲンが、魅真達に聞こえないように、千空に小声で話していると、ニッキーが話しかけてきた。
「これまでのCDの、総売上枚数は??」
しかも、ファンや関係者でなければわからないような質問をしてきたので、ゲンは冷や汗をかく。
「(どうするの…。千空くんゲンくん、分かるわけない。そんなの)」
「(これはもう、詰みかな…)」
なので、ゲンだけでなく、魅真も杠も冷や汗をかいた。
「三択だよね~。①ごまかす。②カン。③キレる」
「④当てる」
ゲンが、どう答えるか相談すると、千空はどの選択肢もとらなかった。
「即興のフェルミ推定(論理的な概算)だ。宇宙船ソユーズの席が5000万$=50億円。リリアンの財布はその倍100億円以上として、この手の歌手は、ツアーでざっくり10倍稼ぐことから、印税を逆算――」
そして、自分がもっているわずかな情報から、計算を始めた。
「6千万枚以上だ。それより上は分からねえ」
「(オッケ~十分。あとは俺の仕事だよ) だいぶ前に、5千万枚突破の記念パーティーはやったけど、今、CDはもう主力じゃないから、覚えてないの。ゴメンね。マネージャー起こそっか…?」
「いや。 (合ってる…)」
千空の計算で、ゲンは答えになってるようななってないような、それっぽいことを言うが、実は合っていた。
「じゃあ、最後にもう一つだけ。この数字まで言えたら信じるよ」
「行けるでしょ、これ!千空ちゃん。お堅い数字クイズなら、その計算ドン!のフェルミなんとかで…」
はっきりと正解とは言われなかったが、雰囲気からして合っていたようなので、千空もゲンも希望をもった。
「3サイズは??」
しかし、次に聞かれたのは、数字に関係することといえばそうなのだが、すごい内容だったので、千空とゲンは再び顔が真っ青になり、冷や汗をかき、口の中のものを吐きだした。
「近い数字!すこしならズレてても、体型変わったでごまかすから」
それでも、やらないわけにはいかないので、また千空に計算してもらうよう、ゲンは頼んだ。
千空は冷や汗をかきながらも、石化前、父親の百夜から送られてきた、リリアンと一緒に写っている百夜の写真を思い出した。
「(記憶で比較しろ。百夜の身長、周囲の備品のサイズ) 88・65・85―――」
その写真の記憶を頼りに、なんとか計算して、数字をたたきだした。
「プロフィールでは、もっとずっと細いよ」
しかし、それをニッキーに伝えると、本質しか言わないのがアダとなり、ニッキーにつっこまれてしまう。
「(知・ら・ね・え・よ。んなこと!そりゃ、ファンにはサバ読んでんだろ、プロだから)」
「んっとね、今のはリアルな数字!」
ニッキーの答えに千空は頭を抱え、ゲンはあわててフォローした。
「そう、ファンにはリアルな数字を言わないさ。リリアンなら!こんな世界でだって、プロだから!!ファンのために、ファンタジーを投げ捨てないよ」
すごい質問だったが、その質問には、そういった意図があったのだった。
「アンタは、リリアン・ワインバーグじゃない」
しかも、今の答えで偽物だとバレてしまい、ニッキーは怖い顔をしていた。
偽物とバレてしまったので、ゲンは冷や汗をかき、これからどうするかを考える。
「ズイマーすぎるね――。一か八か、歌流す??いやでも、ガチファンが、俺の声と本物続けて聞いたら、それこそ違いがバレちゃうし、このままトークでごまかす?それとも…」
「レコード行くぞ!」
ゲンはいろいろと悩んでいたが、千空はあっさりと歌を流すことを決めた。
「ぜんまいで音質も上がってんだ。ハッタリより、科学に賭ける」
そう言って、針をレコードにあてた。
「音」
「楽…??」
突然リリアンの歌が流れたので、この世界で音楽が流れたことに、魅真も大樹も杠も驚いた。
もっと驚いたのはニッキーで、歌を聞いたニッキーの脳裏には、石化前に行った、コンサートで歌っているリリアンが蘇り、大きく開いた目を輝かせた。
「(これって…歌?CDなの?でも、どうして…。どこでこんな…)」
「(すごい。どうやって―)」
石化前のものは、すべて消えてなくなっているはずなのに、どこからどうやって用意したのかと、魅真と杠はふしぎに思った。
「ああ、本物だよ。この歌だけは (聞き間違えるはずがない。マネなんかできっこない。私が、どれだけ私が、何十万回聞いてきたと思ってんだい…!!)」
ゲンのものまねは偽物だと見抜いたが、ガチファンだからこそ、この歌だけは本物だとわかった。
「リリアンは、もうこの世にいない。そうなんだね」
けど、今ので全てがわかってしまい、リリアンがいない真実に、悲しい顔をして、涙を流した。
「ああ、そうだ」
「でも、アンタが復活させてくれた、この歌の中だけでは、ずっと生きてる」
けど、歌が本物だったという真実には、涙を流しながらも笑っていた。
「これは科学の質問だよ。アンタの力なら、他のリリアンの曲も、復活させられるのかい…!??」
涙がおさまると、まだ少しだけ目に涙を浮かべながら、マイクに顔を近づけて、千空に質問をした。
「!! イエス!千空ちゃん、そこはイエス…!!」
「いや!無理だな。ボロい録音媒体どもなんざ、100億%チリに還ってるわ」
「………」
ニッキーの質問に、ゲンはチャンスとばかりに、千空にウソをつくように促すが、千空は本当のことしか言わなかった。
さすがの千空も、死者の声や、石化前に出たCDを復活させられないので、そのように答えたが、あっさりと本質を言った千空に、ゲンはショックで涙を流す。
「テメーに約束してやれんのは一つだけだ。この最期の歌だけは、俺が必ず護ってやる。科学の力で…!!」
千空の答えに、ニッキーは再び涙を流しながら笑った。
「アンタも不器用だね。すぐに分かるよ。科学にだけはウソをつかない。信じるものがあんだね―。フフフ。ちょっと惚れそうだよ」
「それはまじでやめろ」
今のやりとりで、少しだけ千空を気に入ったニッキーは笑顔になるが、ニッキーの答えに、千空は冷や汗ものだった。
「こっから司軍の連中騙して仲間にしまくるには、俺らは死んでもこのレコードがいる。てめーは死んでも歌を守りてえ。ククク。利害は一致してんだろ??」
「い~~だろう。取引成立だ。アンタらの作戦に乗ろうじゃないか!」
千空が問いかけると、ニッキーは着ていたコートをぬいで、とても明るい顔で答えた。
「やったあ。ありがとう、ニッキー!」
「ありがとう、ニッキーさん…!!」
「おぉおおおおお!!」
ニッキーの答えに、魅真、大樹、杠は喜んだ。
こうして、監視役のニッキーが仲間になり、司軍で、初めて仲間ができたのだった。
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