Z=6 舞い降りた羽
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千空と別れた、魅真、大樹、杠は、もといたツリーハウスを目指して歩いており、その道中杠から、千空から伝えられたミッションの内容を説明された。
「なるほどな!じゃあ俺は、基本的には今までと変わらず、それ以外は杠の護衛と魅真のフォローだな」
「うん、そういうこと。それで魅真ちゃんは…」
「司のアドバンテージが武力である以上、武力による戦いがあるだろうから、その準備ってことね」
「そういうことみたい。あとは、薬草集めと、私の手伝いと護衛。戦いに関しては、魅真ちゃんに従えって。それ以外は、特に何も言われてないんだけど…」
「何も言われてないって、それじゃあ魅真が、具体的に何をやったらいいのか分からないじゃないか!!」
「大丈夫よ。それだけで充分だから」
「え??」
「なにー!?」
闘いの準備だけじゃ、何をどうすればいいのかわからないのに、その簡潔な指示だけで、すでに魅真はわかってるというので、大樹と杠は驚いた。
「一言で言えば私のミッションは、司帝国の情報収集。戦いに備えて、いろんな情報を集めまくれってことよ」
「やはり、魅真が武力カードだからか?」
「もちろん。2人は非戦闘員だからね。でも、2人にも、司や、これから増える復活者の情報を教えてもらうこともあるだろうから、その時はよろしくね」
「おう!まかせろ!!」
「わかった」
基本的には魅真がやることだが、1人では、これから増える人数によっては限度があるだろうし、常に3人一緒に行動するわけではないし、それぞれ1人になった時に得られる情報もあるだろうから、大樹と杠にお願いをすると、2人は快く引き受けた。
「じゃあ杠」
「なに?」
「さっそく教えてほしいことがあるんだけど」
「え?」
まだ司のもとへ戻ってないのに、いきなり教えろと言うので、杠は目を丸くした。
Z=6 舞い降りた羽
「教えてほしいことって…なに?」
何がなんだかわからないので、杠はその疑問を魅真にぶつけた。
「杠が人質として捕えられた時のこと。千空と対峙していた時、司がどんなことを言ったのか、どんな行動をとったのか…。どんな小さなことでもいい。なるべく、一字一句詳しく教えてくれる?」
「うん。わかった」
何故そんなことを聞くのか、答えを聞いてもさっぱりわからなかったが、きっと魅真には、何か考えがあるのだろうと思った杠は、覚えてるかぎりのことを、魅真に伝えた。
「…なるほどね」
杠から聞くと、魅真は1人納得したような顔になる。
「なるほどって、どういうこと?魅真ちゃん」
「まるでわからんぞ!詳しく説明してくれ!」
けど大樹と杠は、なんで魅真が納得したのかわからず、答えを求めた。
「今ので、少しだけ司のことがわかったってこと」
「今の、杠の説明だけでか?」
「うん」
「俺にはさっぱりわからんぞ」
「わかった。順を追って説明するよ」
考えるのが苦手な大樹のために、魅真は一から説明をすることにした。
「まず、千空と対峙した時の、力で統べることも厭わないというのは、本当は、力で統べるのはやりたくないってことね。やりたくないけど、自分の理想のためには、そうすることもやむを得ないってとことかしら。すごく無理をしてるのかな?復活液のレシピを知ると、千空を殺す前に、人質にしていた杠を突き飛ばして開放したのも、千空に君を殺さなくてすむと言ったのも、できれば殺したくないといったのも、恐らくそういう理由があるからだと思う。だって、言ってることとやってることが矛盾してるもの。けど、実際に千空を殺してしまったから、自分の心を貫く強さや、自己犠牲の精神や、強い覚悟があるんじゃないかしら。やってることは悪いことだけど、司は司なりに、人類のことを思ってるんじゃないかな?
あと、頭がすごい切れる人ね。あっという間に、私達の居場所を特定した上に、杠を石像のまま埋めなかっただけで、駆け引きは無駄だと言ったんだから。これで、千空の性格を見抜かれてしまったんだもの。やっぱり、霊長類最強の高校生というだけあって、戦いのカンも鋭いわね」
「「…………」」
「結果を言うと、司は、本当は情に厚く、殺しなんかしたくない平和主義者。もう、レシピを聞きだしたからといえばそこまでだけど…。人質にしていた杠を解放したのも、千空に殺さなくてすむと言ったのも、もしかしたら、むやみに人を殺したくない、関係のない杠を巻きこみたくないという思いがあったのかも…。本当は千空を殺したくなかったのかもしれない。だけど、理想のために、私情をおさえてできてしまう、良く言えば、一貫した信念を持ってるけど、悪く言えば、目的のためなら悪事に手をそめることのできる、恐ろしい人物。
私も、司とは数日しか一緒にいなかったから、司のことはほとんどわからないけど、大樹の司に対する第一印象の通り、司はすごく善い人よ。でも、善い人であるが故に、正義感が強くて、悪いこととか許せない。過去に嫌なことがあったみたいだから、余計に汚い大人が許せないんでしょうね。
まあ…今のは、実際に見聞きしたわけじゃなくて、杠から聞いた情報だから、あくまでも、私個人の意見や想像って部分が大きいんだけどね」
「今の私の話で、そこまで?」
「すごいな…」
魅真の説明を聞くと、大樹と杠は感心した。
「人の言葉や行動は、相手の人となりを知る鍵よ。実際司も、それで千空の性格を見抜いたわけだし」
「確かにそうかもね…」
「でも、まだ全然情報は足りないけどね」
「俺には、もう十分すぎるんじゃないかと思うのだが」
「まだまだ全然よ。せめて最低でも、相手の能力と、攻撃方法と、弱点を知っておかないと。それ以外にも、知らなきゃいけないことたくさんあるし」
「それを…魅真ちゃんに全部まかせたってこと?」
「そういうことね。私も試合しかしたことないけど、それでも戦いの経験があるのは、この中で私だけだから」
司だけでも大変そうなのに、これから増える復活者のことも、今のように調べなくてはいけないと考えると、大樹と杠は、魅真のミッションはかなり大変そうだと思った。
「これから司は、復活液を完成させて、どんどん若者を復活させるでしょうね。それこそ、武力の王国を作れるほどの…。だけど、司が純粋な若者だけと言っても、復活者全員が、本当に純粋とはかぎらないし、もしかしたら、反抗されるかもしれない。司信者じゃない人もきっといる。けど、それでも復活者達は、司についていくでしょうね。それほどまでに、司は強いから…」
そこまで話すと、魅真は近くにある岩にすわった。
「魅真ちゃん?」
「どうしたんだ?」
「体の調子でも悪いの?」
突然岩にすわったので、大樹と杠は、魅真は体調が悪くなったのかと心配になり、声をかけた。
「明日までここで休むわよ。戦いに関する最初の指示」
「指示?」
「休むのがか?」
けど、そうではなく、ただの戦いに関する指示だった。
明日まで休むのが、何故戦いに関する指示なのか、大樹と杠はわからず、疑問を抱いた。
「司よりも、少し遅れてツリーハウスに戻るわよ。奇跡の洞窟を制圧するために、そんなに悠長にはしてないだろうけど、確実に遅れるためにここで休む」
「なぜ、そんなことをするんだ?」
「奇跡の洞窟は、司に明け渡す。もともと、それが理由で、司は私達を追ってきたんだから。私達が先に着いていたら、絶対に警戒される。少しでも、疑念や警戒心を抱かせないためにね。でないと、司のところに置いてもらうのも難しくなるかもしれない。なるべく早く制圧するために、司は急いで戻ってるだろうけど、司が今どこにいるのかはわからないから、わざと遅れる。そのために休むのよ」
「なるほどな!」
「魅真ちゃんがそう言うなら、少しのんびりしていこうか」
千空に、戦いに関しては魅真の指示に従えと言われたのもあり、大樹も杠も納得して、同じように岩の上にすわった。
「それで、大樹、杠、二つ目の指示よ。司のところに行ったら、絶対にヘタなことはしないようにね。復活液には、絶対にさわらないように。アルコールや、それを作る道具にも。当然だけど、奇跡の洞窟に近づくなんて、もっての他よ。特に大樹は、千空に言われた通りに」
「おう!」
「そして、たとえ意にそわないことをされたり言われたりしても、絶対に反抗しないこと。何を思っても、上辺だけは従順にね。まあ、そこは2人の性格を考えると、そうはならないだろうけど、念のためにね」
「わかったわ」
「わかったぞ」
「千空からの連絡がくるまで、泳がせて時を待つ。司が千空を殺そうとしたのは、逆にいえば、千空を恐れているから。だから、科学武器さえ作ってしまえば、勝機はある。とにかく、それぞれが与えられたミッションを忠実にこなす。準備をして、時機を待つ。確実に勝てると確信できる、その時まで…」
「もちろんだー!!」
「うん。私も、ミッションはホントのホントに大変だけど、でもがんばるよ!」
「司の言ってることは、間違ってはいないだろうけど、でも、理想のために誰かを犠牲にするなんていうのは、絶対に間違ってる!!それに、年寄りだからって、人を食い物にするとはかぎらないし、若者だからって食い物にしないとは限らない。ただの偏見にすぎない。だから止めないといけない。これから、どんな復活者が増えるかわからない。だけど、敵の大将となる司は、特に重点的に調べなきゃ」
「もちろん俺も手伝うぞーー!!」
「私も!」
「2人とも…ありがとう…」
最初から全員でがんばるつもりだったが、2人が自分のミッションをがんばるだけでなく、魅真のミッションの手伝いをすると言うと、魅真はお礼を言った。
「私も、大樹と杠のこと、できるかぎり手伝う。千空が絶対に、科学王国を作ってくれる。みんなで勝とう!」
「おう!!」
「うん!」
魅真は1人でないことを改めて実感し、3人は拳を前に出して、軽くぶつけた。
それから、次の日の朝になると再出発をして、鎌倉まで行くと、余裕をもたせるために、もうあと2日休むことにした。
そうしてツリーハウスに戻ったのは、千空と別れてから4日後のことだった。
そこには、すでに司が戻っており、司は復活液の製作のためにブドウをつぶしていたが、3人の姿を見ると、当然驚いて目を丸くした。
「何をしに来たんだい?」
3人を警戒した司は、自分の隣に置いてある、武器である石器の剣を構えて、出方をうかがった。
「実は…千空が死んでね。それで、三人ではとても生活できないし、不安だから、司に守ってもらいたくて…」
司は戦闘態勢に入るが、魅真は構えもせずに立っているだけだった。
「……魅真がいるんじゃないのかい?」
「私では、猛獣は倒せないから。前みたいにライオンとか出たら、一発でアウトだし…。だから、ライオンを素手で倒せるくらいの、とっても強い司のそばにいれば、安心できそうだから戻ってきたの」
そうは言われても、司はどうにも信じがたかった。
石像を破壊したのを非難してきた魅真が…。自分を倒す火薬を作るために、箱根まで赴いた3人が…。火薬が爆発する前に、大樹が「さらばだ、司」と言ったのに、自分のところに来たのが…。
「…千空の遺体はどうしたんだい?」
「ずっと一緒だと辛いし、いずれ腐ってしまうから、持ってこずに埋葬してきたの」
「…………」
「お願い!何かしてほしいことがあったら手伝うし、奇跡の洞窟にも近づかない。復活液にもアルコールにも、それに関するものには、一切さわらないから!だから、ここに置いてほしいんだ」
すごい疑いの目を向けられているが、それでも魅真は必死に懇願した。
「……好きにするといい」
「ありがとう!」
司の魅真達に対する疑念は晴れていないが、許可してくれたので、魅真はお礼を言う。
「ありがとう、司!」
「ありがとう、司くん」
続いて、大樹と杠も、司にお礼を言った。
3人にお礼を言われると、司は3人に背を向けた。
「(俺自身が、千空が本当に死んでると、直接確認したわけじゃないし、この3人が、千空の遺体を埋葬しているのを見たわけじゃないから、千空が本当に死んだかどうかは疑わしいが、この3人は、人質として使える。確実に千空が死んだとわかるその時まで、とりあえずは、何もせずにそばに置いておこう…)」
司が許可をしたのは、当然親切心や同情などではなかった。
3人が自分のもとに来たことで、千空の死に対する疑念が高まったので、今すぐにでも真相を確かめたいと思っていたが、頭が切れて慎重なので、今すぐにどうするということはしなかった。3人の心はわからないが、何かしら役に立つだろうというのもあり、置いておくことにしたのだった。
「(ワインを作るためのブドウ…。ブドウの果汁を入れるための器と、かきまぜるための壺と棒…。司はすでに、復活液の製作に着手している。あたり前だけど…。すぐ目の前にあるのにさわれないのは、どうにももどかしいけど、今はまだダメ。これからも、疑われないことはないだろうけど、少しでも、疑われないようにふるまわなきゃ。いつ、復活液を完成させるかはわからないけど、いずれ、時間とともに、復活者が増える。復活者が増えれば増えるだけ、こちらが不利になる。けど、同時に不満に思う人も出てくるかもしれない。もしかしたら、科学王国側にひきこめるかもしれないから、そういう人達も探しておこう。でも、まだ復活者はいないから、別の準備をしなくちゃ)」
魅真は、司が自分達を疑っていることに気づいてはいるが、平静を保ち、今はどうするべきかということと、これからのことを考えた。
同時に、いざという時のために、司に不満をもってる者や、司信者ではない人物、寝返らせることができそうな人を、リストアップしておこうと思った。
けど、今はまだ復活者はいないので、それは復活者が出てからにして、違うことをしようとした。
「じゃあ私、これから薬草とってくるね」
「薬草?」
そして、その今すべきことをするために、魅真は持っていた荷物を地面に置くと、大樹達に声をかけた。
大樹と杠は、どういうことかわかっているので、口に出すことはしなかったが、まったく意味がわかっていない司は、どういう意味なのかと、魅真に聞き返した。
「うん。ほら、ツリーハウスの下にあるでしょ?薬草の畑」
「これは薬草だったのか?」
ツリーハウスの下には、畑というよりは小さな花壇に近いが、木とロープでできた柵の中には、いくつか植物が生えていたので、これのことかと思った司は、指をさして魅真に問う。
「そうだよ。病気=ゲームオーバーのこの世界では、必要不可欠だからね。小さなケガが命とりになる場合もあるから、ずっと集めてるの」
「そうか」
畑について説明されると、司は特に、なんの疑問も抱かずに納得をした。
「じゃあ俺は、食料の調達に行ってくるぞ!!」
「それじゃあ私は、この辺のこと全然知らないから、大樹くんと一緒に、探索がてら、大樹くんのお手伝いをしてくるね」
「ああ」
ツリーハウスに戻ってきたばかりだが、3人はさっそくミッションのために動いた。
魅真は薬草をとりに、大樹は食料の調達と杠の護衛に、杠は、表向きは大樹の手伝いと周辺の探索に、裏の仕事は、直した石像を置いておく場所をみつけるために、それぞれツリーハウスから離れ、洞窟とは逆方向に歩き出した。
大樹と杠と、逆の方向に歩き出した魅真は、少しずつ行動範囲を広げようとしていた。一つ目は、司にも言った通り、薬草を集めるため。二つ目は、周辺の地理を更に把握して、地の利を活かした戦いができるように考えるため。三つ目は、杠のフォローで、直した石像を置いておく場所を探すためと、壊れた石像を探すため、そして四つ目は、体を鍛えるためである。
情報が優れていても、自分自身の力が落ちていては、なんの意味もない。しかし、司の目が届くところでやっては、目をつけられてしまう。確かに、目覚めてからずっと習慣にしていたし、司が復活して一緒に暮らしていた時でもやっていたが、司に敵として認識されてしまった今は目立ってしまう。
習慣にしていたものを突然やらなくなるのも目立つが、現時点では、表立ってやるのも目立ってしまうので、生活のための仕事と称して、薬草を探しつつ、体を鍛え、情報収集という方法でいくことにしたのだった。
もちろん、体を鍛えているのをみつかった時や、鍛えていないのをつっこまれた時の言い訳も考えているので、その辺は問題なかった。
「(今日は、もうちょっと遠くまで行ってみよう…)」
今まで、千空と大樹と3人で暮らしていた頃は、右も左もわからないような森の中というのもあり、そこまで行動範囲が広くなかったが、薬草の採集と、杠のフォローと自分のミッションのために、行動範囲を広げることにした。
未知の領域なので、危険がひそんでるかもしれないが、もしかしたら、何かミッションのヒントとかがあるかもしれないので、そのことは承知の上で、今まで行ったことのない場所へと足を進めた。
そうして、歩いていくこと一時間弱。魅真は信じられないものを目にした。
「すっ…ごい…」
それは、正面から見ると三角の形で、その中にひし形の窓のようなものがいくつもあるものが、大きな崖の上に立っていた。
「こんなの、自然にできるものなんだ」
まるで秘密のアジトのようなものに、魅真は感嘆した。
「(もう少し周りを見てみよう)」
そして、この場所の周辺はどうなっているのか、何があるのかを確かめるために、まわってみることにした。
そうして歩いていると、先程見つけた建物のようなものからほど近い場所に、洞穴をみつけた。
「あ!」
洞穴をみつけると、魅真は目を輝かせて走っていき、洞穴の中まで入っていった。
「(奇跡の洞窟よりも広めの場所。地面におうとつがないし、岩もないし、ちょうどいいかもしれない!)」
そこは、直した石像を置く場所にぴったりで、さっそく準備の一つが整いそうなので、魅真はますます目を輝かせる。
洞穴を確認すると、魅真はついでにそこの前で体を鍛えた。
一時間ほど鍛えると、近くに置いた荷物を持って、もう少し回ってみた。
初めて来た場所なので、何かめぼしいものがないかどうか、辺りを見回しながら歩いた。
「!」
その時、魅真は森の中にあるものをみつけ、そちらの方へ走っていった。
走っていき、止まった場所…魅真の目の前には、石像が一つあった。
このストーンワールドでは、めずらしくもなんともない石像。
魅真はその石像を見ると、すぐに踵を返し、もといた場所まで戻り、周辺の探索に戻った。
それから30分ほど周辺の探索をすると、ツリーハウスに戻った。
「おお、ずいぶん遅かったな。心配したぞ」
「お帰り、魅真ちゃん」
戻ると、大樹も杠も戻ってきており、杠はご飯の仕度をしていた。
大樹と司はすでに食べており、司は無反応だったが、大樹と杠は、魅真が帰ってくると手を止めて、魅真とあいさつをした。
「ちょうどご飯できたとこだよ」
「わあ!ありがとう!」
ご飯がもうできていると知ると、魅真はうれしそうな顔をして、焚き火の前にある丸太にすわり、自分の隣に荷物を置いた。
「はい、どうぞ」
「いい匂い!ちょうどお腹すいてたの。いただきます」
杠に器を渡されると、魅真はご飯を食べ始めた。
魅真にご飯を渡すと、杠も自分の分をよそって、魅真の隣にすわって食べ始める。
作っていた全体の量も、よそってもらった量もそう多くないので、数分後にはあっという間に食べ終わり、杠が食事の支度をしたからと、魅真は後片づけの役を買って出た。
「そうそう、司」
片づけを終えると、魅真は司に声をかけ、声をかけられた司は、無言で魅真の方へふり向いた。
「なんだい?」
「ちょっと話があるんだけど…」
「話?」
「うん。実はね、さっき薬草の採集がてら、足をのばして、今まで行ったことのなかった場所に探索に行ったんだけど、住む場所に最適な、すっごくいい場所をみつけたの」
魅真が声をかけたのは、先程の探索の時にみつけた、あの建物のような自然物のことを話すためだった。
「いい場所?」
「そう!ひし形の窓のようなものがいくつもついてる、三角錐のような形の大きな岩場をみつけたんだけど。復活液が完成したら、これから人も増えるじゃない?だから、思いきって、ここからその場所に引っ越さない?さすがに、このツリーハウスに4人は手狭だしさ」
「そうか。悪くないかもしれないね。案内してくれるかい?」
その岩場を、新たなアジトにしようと提案をすると、司は、意外にもあっさりと承諾した。
魅真達は、さっそくその場所に赴いた。
「ワォ」
「すごいな」
魅真がみつけたというその場所を見ると、大樹と杠は感嘆の声をあげる。
「どうかな?岩場なら、そう簡単に壊れることもないだろうし、ちょうどいいと思うんだけど」
「うん、そうだね。悪くない。よし、ここを新たな住居にしようか」
この場所は、司も気に入ったようで、あっさりとここが新たな住居となった。
「ただ、ここの周りをまわってみたけど、上に行ける道がないんだよね」
ただ、唯一の欠点は、上に行くための道がないことだった。
「うん。そんなのは、まったく問題ないね」
「え?」
しかし、司はその欠点を一蹴した。
「ないのなら、作ればいいんだよ」
「そうだぞ。数日あればきっとできる!!」
なければ作ればいいと言っても、土ではなく岩なので、重機もなしでは無理難題と言ってよかったが、司と大樹はまったく問題視していなかった。
何故なら、大樹は鍬のような形の石器を使って、司は持っている剣を使って、岩場を削って、道を作り始めたからだった。
「ウワァアオ!!」
「すごい壮観…」
道具を使っても、まず自分達では無理なので、魅真と杠は、大樹と司が道を作ってる姿を見て感心していた。
「私達は私達で、他のことをしていようか」
「そうだね」
ここで、ずっと道を作ってるのを眺めているわけにもいかないので、魅真と杠は、それぞれミッションを行うことにした。
2人で行動を始めた魅真と杠は、それぞれのミッションを、一緒に、同時に行うことにして、新しいアジトの近くを歩いていた。
「あのね、杠。杠のミッションのために、ちょうどいい場所をみつけたの」
あの場所では、もしかしたら司に聞こえるかもしれないからと、魅真はある程度離れたところで、杠に、アジト近くでみつけた洞穴のことを話した。
「本当?」
「うん。アジトからそこまで離れてないけど、そんなには近くない場所なんだけどね。もちろん杠のミッションのことだから、最終的には、杠がどうするか決めて」
「わかった。案内してもらっていい?」
「わかった。こっちよ」
魅真は、午前中にみつけた石像の置き場所候補の洞穴まで、杠を案内した。
洞穴に着くと、魅真と杠は中に入った。
「ここだよ」
「さっきいたところからそんなに遠くないし、あの場所とは木で隠れてるし、平坦な場所だし、ちょうどいいかも」
中に入ると、条件として悪くないので、杠もこの場所を気に入ったようだった。
「私も自分のミッションがあるから、頻繁には手伝えないだろうけど、私が破壊された石像をここまで持ってきて、それで、杠が組み立てる。あんまり2人同時にいなくなると、司に怪しまれそうだから、組み立て作業は難しいかもしれないし、できてもたまにだろうけど」
「大丈夫だよ。私力がないから、はこんでくれるだけでも助かっちゃう。本当にありがとう、魅真ちゃん」
「全然いいよ。私も、杠に自分のミッションのことお願いしちゃってるし。これは、私達3人…うぅん、4人の闘いなんだから」
「うん。そうだね」
少し話すと、魅真と杠は洞穴から出た。
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