Z=4 箱根の旅路
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
四人は司がいなくなると、ツリーハウスに入った。
そして入るなり、千空は中にある土器を次々に割りはじめた。
「ひー。もったいない!」
「何をしてるんだ、千空??」
「俺らは司にビビって、大慌てで食料だけ持って逃げましたっつう演出な」
「なるほど」
「火薬さえ完成させちまえば、俺らの勝ち!その前に司にバレたら、俺らの負け!これは、そういうレースなんだよ…!!」
土器を割ると、四人は大急ぎで準備をして、箱根へと旅立った。
Z=4 箱根の旅路
ツリーハウスを出ると、四人は崖の上を歩いていた。
大樹は、シートを二つと少し大きめの袋をいくつかぶらさげ、キャンプに使うくらいの大きなリュックサックのような袋と槍を三本背負い、魅真は大樹よりも少し小さめのリュックサックのような袋とシートを一つと、肩かけカバンのような袋を左右の肩に一つずつ、千空はいつも腰にさげている袋に加えて、その袋よりも少し大きめの袋を三つとシートを一つ、杠は三人よりも小さい袋を二つ背中に背負い、腰の前の部分に、更に小さな袋を二つさげていた。
「火薬の原料をゲットしに行く!!ゴールは箱根。なァ~~に、ほんの80kmちょいの大冒険だ」
「ああ!どうせ詳しく聞いても分からんが、ともかく箱根に行けば、火薬がゲットできるんだなー!?」
すでにキツい道を歩いているが、魅真と大樹だけは元気で、大樹はとてもはりきっていた。
「80kmって、フルマラソン2週か。5時間もあれば着くか?」
「それは体力バカのテメーだけだ」
「いやいや、5時間もあれば余裕でしょ」
「もう一人いやがった…。それはテメーが、チート運動能力をもってるからだ」
体力に自信のある大樹と、運動能力に自信のある魅真ははりきっていて、80kmという距離をものともしていなかったが、常人にはキツいことをあっさりと言ってのける二人に杠は苦笑いをし、千空はどこかひいているようだった。
千空は、大樹と魅真にそれぞれつっこむと、小さな重りのようなものがついた紐がくっつけられている、分度器と定規を合わせたようなものを取り出す。
「なんだ千空、それは?」
「六分儀」
それは、六分儀という、天体の高度を測ることで、緯度や経度を算出するための道具だった。
「今、日の出から、3万5970秒――」
「今、なんかすごいことサラッと言った?」
「千空は石化中、1000億秒とか数えてたんだぞ。このくらい朝飯前だー!」
「六分儀で、時刻から現在地が測れんだがな。精度がゴミすぎて話にならねぇ。つっても、このゴミしかナビはねえんだ。いま鎌倉あたりか?正確な緯度経度が知りてえ…!!」
六分儀といっても、性能がいいものではないので、千空はため息をつく。
「むう…。目印になる建物とかないのか!」
「鉄筋が腐ってんだぞ。残っちゃいねえよ」
「周りは森と山だらけだからね」
「鎌倉の目印って言えば―」
現在地がどこかわからず、頭を悩ませていると、杠が口にした言葉で、全員がハッとなり、ある方向へ走り出した。
「あのへんだけなぜか、木とか全然生えてない……!」
少し走ると、四人は森を抜けた。
「ククク、分かったぞ。現在地は、北緯35度19分東経139度32分だ……!!」
森を抜け、目の前にあるものを見ると、千空は今いる場所がわかった。
そこにあったのは、鎌倉で有名な大仏。顔や右腕の部分が壊れてしまっているが、ほとんどが残っていて、なんとか形を保っていた。
鎌倉の大仏を目にした杠は、まだ幼い頃に、家族でこの場所に遊びに来た時のことを思い出し、涙を流した。
「!! どうしたー、杠。誰だ、泣かせたのは。俺かー!??」
「! 違う。泣いてない!いや、泣いてなくはないんだけど!違うんだよ、大樹くん!」
杠の涙を見た大樹は、顔が真っ青になったり冷や汗をかいたり泣いたりで、表情が忙しくなり、大樹が叫んだので、杠は顔を赤くして伏せた。
「私、まだ今日起きたばっかで、なんか全然――現実感ないっていうか。でも、この鎌倉の大仏…様見たら、ホントに日本だったんだなあって。ホントに、何千年もたっちゃったんだなあって。お母さんやお父さんや、みんなのこととか、急に…」
地球上の人類が全員石化したので、当然両親やクラスメイトも石化してしまっており、センチメンタルな気持ちになった杠は、また涙を流した。
そしてそれは、魅真や千空や大樹も同じだった。
「ククク、心配するこたあねえ。今から俺らで、司に勝って、全人類助けんだからな」
「そうだぞー、杠!」
「みんなでがんばろう!」
杠が感傷にひたっていると、全員がフォローするように声をかけた。
「大仏が、道を教えてくれたしな!何千年も腐らず無事だとは!さすが神様―。仏様か?ともかく!そういうのじゃないかー!!」
「いやまぁ、大仏は青銅だからな。化学的に腐んねえっつうだけだが」
更に、大樹が杠をフォローするように、何やらロマンチックなことを言うが、横から千空が、現実的なことをつっこんだので、大樹は固まる。
「見ろー!大仏の周りだけ、緑が全く生えてない。俺たちが見つけやすいようにしてくれてたみたいじゃないかー!!」
「いやまぁ、銅イオンがダダ漏れだからな。大抵の植物には毒だっつうだけだが」
それでも、大樹は再度ロマンチックなことを言うが、千空が再度現実的なツッコミをしたので、再び固まった。
「そうだ青銅!鏡に使えんじゃねえか。ゴミ六分儀の精度が上がるぞ!」
大樹と漫才のようなやりとりをしていると、急に思い立った千空は、左の手のひらに右の拳をうつという、少々古いリアクションをとる。
「ありがたくいただいてくか」
「よせー!バチ当たりな奴めー」
千空は石器を取り出すと、大仏を砕いて持っていこうとしたので、大樹はあわてて止めた。
鎌倉の大仏のもとを離れると、満開の桜の下を歩いていた。
「なんか、桜の感じ違うねー」
「俺らの知ってる桜ソメイヨシノは、自家受粉できねえで、ソッコー滅亡してっからな」
3700年前に見ていた桜と雰囲気が違うので、杠が疑問を口にすると、千空が簡潔に理由を説明する。
それからしばらく歩き、杠がつくしをみつけると、そこでお昼ご飯をとることになり、とったつくしで、魅真と杠が昼食を作ってみんなで食べた。
そこから更に夜まで歩くと、当然だが野宿となった。
「とっとと寝ろ。休むのも仕事のうちだ、デカブツ」
魅真、千空、杠は布団にくるまって寝ていたが、いつ司が来るかわからないので、大樹は槍を持って、あたりを警戒していた。
だが、こんなところで体力を消耗するわけにいかないので、千空が寝るように促した。
次の日。朝食をとると、四人は再び箱根に向かって歩き出し、しばらく歩いていくと川があったので、靴をぬいで川を渡った。
「ククク。その無駄な巨体が、珍しく火ィ噴いてんな」
「ギリギリセーフだー。高さがな!体力は全くギリギリじゃないぞ。安心しろー!」
川を渡ると、更に川があったが、あまりにも深いので、イカダを作り、大樹が川に入って、イカダに結んだ紐をひっぱり、千空が左側を、杠が右側を、魅真が後ろを、槍を使ってこいだ。
「?!」
その時、ふいに杠の方に目を向けた大樹は、驚きの顔をした。
「杠、それ。つま先が、石化のままじゃないか!」
「うん。邪魔っちゃ邪魔なんだけど、自分のことだし、まぁいいかな~!?って…」
「良くな…ガボホ!」
それは、杠の右足のつま先が、部分的に石化したままだったからだ。
杠は特に気にしていないようだったが、大樹の方が気にしており、川の中なので、しゃべってる途中で深いところに来たのか、顔が少し沈んでしまった。
休憩がてら岸に上がると、千空は復活液を、杠の石化している部分にかけた。
「冷た!なんか痛くなってたのまでひいてく…!」
「おおお。復活液には疲労回復効果もあるのかー!?」
「ねえよ、そんなもん」
足の石化はとけ、更には痛みまでひいていってるので、大樹はそのように解釈するが、千空はあっさりと否定した。
「石化が戻る時、細けえ破損は、繋がるっつうだけの話だ。俺らもちょい顔割れても生きてんじゃねえか」
「まあね」
「たしかに!」
魅真の場合は両腕だが、千空の話を聞くと、魅真も大樹も納得した。
「疲労回復液に早くつかりたきゃ、とっととゴール行くぞ!」
「もしかして、箱根のゴールって――」
「「!!」」
全てを言わないが、答えがわかった魅真、杠、大樹は、顔が明るくなり、森の中を歩き出した。
それから数時間後…。
「着いたぞ、ゴールに。温泉だー!!」
四人はようやくゴールにたどり着いた。
箱根と言えば温泉で、崖をのぼりきって天然の温泉をみつけると、魅真、大樹、杠は喜んでいたが、体力のない千空は、一番後ろで、疲れで息を切らしているので、それどころではなかった。
温泉をみつけると、さっそく入るために、大樹が木の棒と紐で簡易的な壁を作り、男湯と女湯という看板を温泉の前に置き、男と女で別れて温泉に入った。
「あぢー」
「うむ。ちょうどいい~」
「あつ…」
「きもち~」
温泉に入ると、千空は顔が真っ赤になって、お湯の熱さに震えていたが、魅真、大樹、杠は、気持ちよさそうにしていた。
「効きますなあ~。疲労回復液!」
「本当。これだけでも、来たかいがあったよ」
「3700年ぶりの、まともな風呂だからなー!」
「ククク。テメーら、湯治に来たわけじゃねえんだぞ」
魅真と大樹と杠は、久しぶりに入るお風呂に感激していたが、千空はそうでもなかった。
「日本はおありがてえことに、火山大国でな。温泉地まで来さえすりゃ――火薬の原料硫黄が、採り放題のバーゲンセール!」
千空は、温泉にまで石器を持ってきており、温泉の岩場を、石器でたたいて砕いた。
「ククク。いよいよ、VS司の究極兵器、黒色火薬の誕生だ…!!!」
硫黄を手にした千空は、うれしそうな顔をした。
硫黄が採りたくて仕方ない千空は、早々に上がると、温泉のすぐ側で、ニヤけた顔で硫黄を採っていた。
魅真はもう少し温泉につかりたかったが、大樹と杠を、少しでも二人っきりにしてあげようと思い、早々に上がり、千空と一緒に硫黄を採っていた。
「杠に、石化中のできごとを話しておかなくてはな!」
魅真と千空が上がると、大樹は柵に背中を向け、柵の向こうにいる杠に声をかけた。
「3700年前、俺が杠を、クスノキに呼び出したあの時から―」
「……!」
そう言われると、杠は顔が赤くなり、あの時、光を浴びる前に大樹が言っていた、「聞いてくれ杠!俺は5年間ずっと……」という言葉を思い出す。
「あの時大樹くん、何言おうとしたの?」
あの時の言葉を思い出すと、杠は、静かに大樹に聞いてみた。
聞かれると、大樹は口を閉じて強く結び、夜空に目を向け、杠は大樹の返事を待った。
「杠、石化してる間、俺は!ずっと続きを話そうと思っていた。何百年も、何千年も。だが今!この逃げ場もない、極限の石の世界(ストーンワールド)で、それを伝えるのは、男として、卑怯な気がしてならん」
3700年間、石化してる間も、ずっと杠を想い、気持ちを伝えようと思っていた大樹だが、復活した人間が、司を含めて5人という状況なので、大樹は結局、続きを話さなかった。
大樹からの返事を聞いた杠は、口をあけて夜空を見上げると、すぐに下を向き、どこか残念そうにして、口を固く結んだ。
「う!すまん。内容を知らん杠には、何を言ってるのかサッパリ分からんかもしれんが…」
「ううん。わかるよ」
今まで真剣な顔で話していたが、大樹は急に顔を赤くして、柵の方に顔を向けて、補足するように話すと、杠も柵に顔を向けて答えた。
「俺たちは、文明を取り戻す!人類をみな助ける!!その時こそ!3700年ごしで、俺の話の続きを聞いてくれないか、杠!」
「うん、わかった。戻せるよ、世界。絶対……!!」
大樹は再び真剣な顔で杠に話すと、杠はそれを受け入れて、どこか憂いを帯びた目で夜空を見上げた。
「(ストーンワールドで想いを伝えるのは、男として卑怯…か…。大樹らしい)」
一方、近くで二人の会話を聞いていた魅真は、温泉に背中を向け、硫黄を採りながら、微笑ましそうにクスッと笑った。
「(だけど…石化してから、3700年間も、ずっと杠を想い続けていたなんてすごいな。それが、大樹がずっと意識を保っていた原動力…。一途な想い…。それほどまでに、強く深い愛情…。いつか私も、そのくらい好きになる人が、現れるのかな…)」
高校生になっても、未だ恋愛経験ゼロなので、想像すらできないが、これから、男性を恋愛の意味で好きになるという可能性は、まったくないことはないので、魅真は手を止めて、夜空を見上げた。
次の日…。
「で!石化中のあらすじだ、杠!!」
「はい!」
太陽が昇ると、さっそく全員で素材集めの作業に入り、大樹は杠に、作業をしながら、杠が目覚める前のことを話し始めた。
「人類がみんな石化して――数千年後、俺と千空と魅真だけが復活したんだ」
「えぇぇぇ。その、なんにもないとこから、復活の水作ったの?」
「千空がな!俺は何もしてないぞーー!!」
話をしながら作業をしていたが、三人が自力復活したことに、杠は驚きで手を止めた。
「その水で復活させたのが、『霊長類最強の高校生』獅子王司。だが司は!石化した人たちを、壊して殺している。俺たちが戦って、止めなくてはいかん!!」
「ククク。そのために、ここまで来たんじゃねえか。火薬の素材3つは揃った!あとは混ぜるだけ。さ~~~ぁ、楽しい火薬クッキングの時間だ……!!」
大樹と杠が話している間に、素材が全てそろい、準備が整ったので、いよいよ火薬を作ることになった。
「火薬の素材①!この温泉で採り放題の硫黄。その②!木炭。こんなもん、木ィ燃やしゃいくらでも手に入る」
まず、大きめの空の袋に、杠が硫黄を入れると、次に千空が、木炭を入れた。
「その③!最後にして最大の難関が、硝酸カリ。これ作んのは、クソほど時間かかんので―。ククク。今日はあらかじめ、ここにその、硝酸カリが用意してあんぞ!」
「「「おおおお?!」」」
「……ん?ナントカ酸ってどっかで聞いたこと―。ショー酸。奇跡の水!例の洞穴から採ったのかー!!」
「雑アタマが、珍しく正解じゃねえか。100億万点やるよ」
知識には疎い大樹が、硝酸カリのことをあてたので、千空は褒めながら、硝酸カリを、硫黄と木炭が入っている袋に入れた。
「硝酸カリ75%、硫黄10%、木炭15%――。ここはまぁ適当でいい。隠し味で、砂糖とかをちょちょっと足すと、パワーが上がる」
そして、入れたものを木の棒でかきまぜながら、ブドウ糖を少しだけ入れて、更にかきまぜ、すべてがまざると、袋の口を紐でしばった。
「仕上げに、ブッ叩いて、固める!」
その袋を、地面に横に寝かせると、小さめの丸太を両手で持って、叩くために、頭の上にふりあげた。
「ぶっ叩くんだなー!?体力作業は、俺にまかせろー!!」
「「「ワーォ!!!」」」
そこへ、大樹が自分の上半身くらいはありそうな岩を、頭の上に持ち上げたので、三人は焦った。
「ささ、さすがにマズくない??大樹くんのパワーでそれぶつけたら、火花でドカーンて!火打ち石的な…」
「いやまあ、石同士ぶつけても、火花は出ねえがな」
「え、そうなの?」
「じゃあ、大丈夫なんだ」
「おお、本当だ!」
石同士なら、ぶつけても問題ないと言うので、魅真と杠はほっとして、大樹は、岩を袋にぶつけはじめた。
「火打ち石っつうのは、石だけじゃねえんだよ。鉄が混じってなきゃ、火花は…」
千空は火打ち石について説明するが、途中まで言うと、温泉・火山・黄鉄鉱という単語が、頭に浮かんだ。
「待…」
その、黄鉄鉱という単語の中には、鉄という文字が入っており、そこに、更に大樹のインチキパワーが加わっているので、千空は顔が青ざめ、冷や汗をかき、大樹を止めようとした。
しかし、一足遅く、千空が止めるよりも、大樹が岩をふりおろして、袋にぶつける方が早かった。
岩と袋がぶつかりあうと、火花が出て、更に岩をどかすと、袋の真ん中の部分が破けて、中身が見えており、その中身からは、火花が出たと思ったら、小さな火がついたので、四人はぎょっとし、大樹は杠を抱えて、魅真は千空を抱えて、あわててそこから離れた。
その直後、袋は大きな音をたてて爆発し、その勢いで四人は吹きとばされ、昨日作った柵と看板が砕け散り、黒い煙が上がった。
「ククク、問題ねえ。大成功じゃねえか、火薬クッキング!」
「こんなにすごいんだ、火薬って…!!」
「すさまじい威力だね」
なんとか成功したが、あまりの威力に、魅真と杠は顔が真っ青になった。
「あはは。勝手に、こんなイメージで思ってた」
「俺もだ!」
杠と大樹は、ギャグマンガである、髪がちりぢりで服も焼けこげている司をイメージしていたが、ふっとんでもなんともないので、笑いながら話していた。
「昔から、学生が実験とかでミスして、手足ふっとぶレベルの事故も、バンバン起きてっからな」
「ひ~~」
「その気になりゃ、確実に凶器だ」
「…これで司くんを、攻撃―――するの?」
火薬を作ったということは、これを使って司と戦うのかと思った杠は、冷や汗をかきながら、千空におそるおそる聞いてみた。
杠の言葉に、魅真と大樹はハッとなり、同じように冷や汗をかく。
「………いや、取引する」
けど、千空の答えは、杠の想像と違うものだった。
「司は話の通じねえ殺人鬼じゃあねえ。大樹、テメーとバトった時、言ってたじゃねえか」
それは、「なんの取引にもなってない」という、司の言葉だった。
「逆に言やあ、戦況次第で、取引の余地はあるってことだ。火薬武器さえありゃ、優位に立てる」
司を殺すわけじゃないと知ると、魅真、大樹、杠はほっとした。
「(…だが、もしも司と、取引が決裂したら、その時は司を―――殺すしかない)」
しかし、三人には言わないが、千空は、いざという時のことも考えていた。
「さ~あ、とっとと消すぞ。万が一、司が追ってきてたりしたら、100億%見つかるからな」
煙を出し続けるのは、司に居場所を知らせることになるので、四人は袋に温泉水を入れて、火を消しはじめた。
その時、温泉水をくんでいた杠は、ふと顔をあげると、目を丸くした。
「千空くん、大樹くん、魅真ちゃん。見て、あれ」
そして、三人の名前を呼んだ。
三人は、杠に背を向けて消火している状態だったので、名前を呼ばれると、杠の方に顔を向けた。
顔を向けると、三人は驚きで目を丸くした。
「狼煙―」
目の前には、白い一筋の煙があがっていたからだ。
この展開に、全員…特に千空は驚愕した。
「司くん??」
「いや、逆方向だ。大体、司がわざわざ、居場所を俺らに知らせるわけがねえ」
「じゃあなんだ!?山火事か??」
「タイミングが偶然すぎる。明らかに、俺らの噴煙に反応して上がった」
「じゃあ…」
「ああ。唆るぜ、これは。この石の世界(ストーンワールド)に、俺らの他に、誰かがいる……!!」
「誰かって……。私達以外の復活者!?」
驚愕したのは、方向とタイミングから考えて、魅真達と司以外にも、復活者がいるかもしれないからだ。
「(そいつらから見りゃ、今の爆発は『火山かも?』っつう話だ。立ち去られる前に、さらに燃やして合図しねえと!だが、もし司が追って来てたら、ご親切に、俺らの居場所を知らせるハメになる。…ククク。勘とかいう、非合理的なもんが告げてやがる。ここで点けたら、俺はきっと――)」
千空はかなり悩んでいた。もしかしたら、司が追って来ていて、この煙を見れるくらいの場所にせまってきている可能性もあるからだった。
「(どっちを取る。安全か――未来か――)」
「どうする千空!消すのか!?点けるのか…!?」
大樹もかなり焦っていた。
けど、考えるのは苦手なので、千空に声をかけた。
「点けるぞ!狼煙をあげろ!!!」
大樹に問われると、千空はすぐに決断し、火薬を燃やすことにした。
.