ストロベリータイム
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夏休みのある日、セレナは、京子、ハル、クロームと一緒に、四人で海に遊びに来ていた。
「うわ~~~海だぁ~~~」
夏休みに入る前に、京子達と海に行く約束をしていたセレナは、約束をしたその日から、今日この時をずっと楽しみにしていたので、とても喜んでいた。
「ね、早く泳ごうよ」
セレナはきらきらと目を輝かせて、後ろにいる京子、ハル、クロームに声をかけた。
「待って、セレナ…」
「そんなに焦らなくても、海は逃げたりしませんよ」
「まあ、気持ちはわかるけどね」
三人はそんなセレナを、微笑ましそうに見て笑っていた。
「ねえねえ、彼女達ぃーー」
そこへ、四人に声をかける者がいた。
ふり向いてみると、そこには、大学生くらいの男が三人立っていた。
「君達、かわいいねー。どう?オレ達と一緒に泳がない?」
それは、いわゆるナンパというものだった。
「え?あ…あの……私達……」
その中で、セレナだけが顔を赤くしてあわてていた。
「ね、お互いちょうど三人だし」
「なんかおごるよ」
「クルーザーに乗せてあげるからさ」
けど、男達はセレナを無視して……というよりまったく眼中に入っておらず、京子、ハル、クロームの前に歩いていった。
そう……彼らがナンパしていたのは、セレナ以外の三人だったのだ。
一人で勝手にあわてていたセレナは、いろいろな意味ではずかしくなり、顔を更に赤くして、そこにぽつんと立っていた。
その後、京子とハルとクロームが丁重に断り、四人は予定通り一緒に遊ぶことになったが、セレナはどこかうかない顔をしていた。
それは、京子、ハル、クロームの三人はナンパされたというのに、自分はナンパされなかったからだ。
声をかけてもらえないどころか、眼中にすら入っていなかったので、むなしさを感じていたセレナは、楽しみにしていたこの日を、あまり楽しむことができなかった。
ストロベリータイム
次の日。
セレナはツナの家に来ており、ツナ、獄寺、山本といういつものメンバーと一緒に、夏休みの宿題をやっていた。
「ねえー、ツナ、獄寺、山本」
「んだよ?」
「何?セレナちゃん」
「どうかしたのか?」
夏休みの課題とにらめっこしていたが、突然セレナに声をかけられたので、ツナ達は顔をあげて、セレナに目を向ける。
「私って、魅力ないのかなぁー…」
「「「は?」」」
あまりにも唐突すぎるので、三人は同時にすっとんきょうな声をあげた。
「なんで、いきなりそんなこと聞くんだ?」
「実はね……」
山本に理由を問われると、セレナは昨日あったことを話した。
「それでね……やっぱ私って、かわいくないのかなって思ってね…。
そりゃあさ、京子とハルとクロームはすごい魅力的だよ。女の私から見てもかわいいって思うし、それは私も認めてる。
でもね……さすがに、あそこまで完全に無視されると、なんかむなしくなってさ…」
「そ……そんなことないよ。セレナちゃんはかわいいよ」
「え……。ほんとに?ツナ」
悩みをうちあけると、ツナはそれを否定した。
そのことで、セレナは明るくなり、ツナに笑顔を向けた。
「うん。京子ちゃんの次くらいに」
けど、次に出た言葉で暗い顔に戻ってしまう。
「微妙すぎるほめ言葉をありがとう、ツナ」
「え?あ……ごめん。そういう意味じゃ…」
「いいの。考えてみたら、ツナが京子が一番なのはあたり前だもんね」
いいのと言いつつも、セレナはどこか暗く、いじけていた。
「でも、ツナじゃないけど、セレナはかわいいぜ」
「え…。ほんとに?」
「ああ」
けど、今度は山本がほめてくれたので、セレナは再び明るさをとり戻す。
「ありがとう!山本」
山本はウソをつくような人物ではないので、本当だろうと確信したセレナは、笑ってお礼を言った。
「ケッ!くだらねぇ…」
「なっ!くだらなくなんかないもん!私にしてみたら、すごく真剣なの!獄寺みたいに、顔だけはいい人間にはわからないよ!」
「顔だけってなんだよ?だけって」
「だけじゃない!」
「ま…まあまあ、二人とも」
悪態をついてくる獄寺に、売り言葉に買い言葉で言い返すと、当然のごとくケンカになってしまったので、そこへツナが間に入り、二人をなだめた。
「だけど、セレナちゃんは本当にかわいいよ。オレにとっての一番が違うってだけでさ。
でも……」
「でも?」
「セレナちゃんて、髪の毛が黒くて、肌も他の人よりかなり白いじゃない。それが悪いってわけじゃないんだけど…。
でも、セレナちゃんてパッと見た感じ、よく言えば清楚だけど、悪く言えばガードが固くて近寄りがたい雰囲気があるからさ。
たぶん、それが原因なんじゃないかな?
あ、オレはセレナちゃんのことをよく知ってるから、そうじゃないけど…。
でもそれって、友達って意味で、男としてナンパ目的で声をかけるかっていうと、ちょっとかけにくいっていうかさ…」
「そっ…か…」
「つーか、なんでむなしくなんだよ。別に本命じゃないならいいじゃねえかよ」
セレナが考えていることがよくわからない獄寺は、ふしぎそうに問いかける。
「もちろん!ナンパされたいからに決まってんじゃない!自分が魅力的っていう証でもあるしね!」
「なんだよそれ……」
その返答に、獄寺はますますわけがわからないといった感じだった。
「ナンパされたいって……セレナちゃん、そんなにもてたいの?」
すると、今度はツナがセレナに思ったことを問う。
「そりゃあ、もてないよりもてた方が、いいに決まってるでしょ」
「ケッ。くっだらねぇ」
「何よー!こんな悩み、学校中の女の子からもてる獄寺にはわからないわよ!」
再び獄寺に悪態をつかれると、セレナはムキになり、獄寺に食ってかかった。
それから数日後。
セレナはまた、京子、ハル、クロームと会って遊んでいた。
そしてふいに、三人に、自分に魅力があるかという、この前ツナ達にしたのと同じ質問をしてみた。
聞いた時、この三人に質問すると、どんな返答でもむなしくなりそうなので、しまったと思ったが、もうすでに遅かった。
三人に聞くと、京子は「セレナちゃんは、とても魅力的な子だよ」と言い、クロームは「セレナはすごくかわいい…」と言い、ハルには「セレナちゃんは、とーーってもエネルギッシュでワンダフルで、エクセレントでビューティフルです!」という、ハル独特の、どこか妙でずれてることを言われたが、自分がかわいくて魅力的だと認めてる相手に言われても、やはりむなしくなった。
三人は故意に他人を傷つけるような子でも、ウソをつくような子でもないので、そういった意味でも余計に落ちこみ、非常に後悔していた。
後悔しながら、とぼとぼと、家までの道を歩いていた。
その時、頭上から小鳥の鳴き声がしたので、何気なく上の方を見てみた。
「ミードリータナービクーナーミーモーリーノー」
そこには、自分が通う最強の風紀委員長・雲雀恭弥が連れて(飼って?)いるヒバードが、並中の校歌を歌いながら自分のもとへ飛んできたのだ。
「ダーイナークーショウーナクーナーミガーイイー」
そして、歌いながらセレナの肩にとまる。
「うわぁーー。かわいいー!」
自分の肩にちょこんととまるヒバードの愛らしさに、セレナは思わず声をあげた。
少々大きめの甲高い声なので、普通動物ならこれで逃げそうなものだが、ヒバードは逃げずにセレナの肩にとまっていた。
「キミ、確か雲雀さんが飼ってる子だよね?今日は一人?」
そして、次にヒバードに話しかける。
その光景は、端から見ると非常に怪しいものだが、セレナはヒバードが口をきけるのを知ってるというのもあり、普通に話しかけていた。
しかし、ヒバードは人語を話すと言っても、人間のように会話をするわけではないので、返事はこなかった。
「ん?」
その時、視界に人の影が映ったので、セレナはそちらの方へ目を向けた。
「ひっ、雲雀さ…」
「やあ」
そこにいたのは、ヒバードの飼い主の雲雀だった。
若干雲雀が苦手なセレナは、緊張した顔で雲雀を見た。
雲雀が現れると、ヒバードは雲雀のところへ飛んでいく。
「あの……それじゃ、私はこれで…」
ヒバードが自分の肩からいなくなるのは寂しくはあるが、苦手な雲雀から離れたいセレナは、早くそこから去ろうとした。
「待ちなよ」
けど、一歩歩きだした時、雲雀に肩をつかまれてそれ以上進めなかった。
セレナは少しひきつった顔で、雲雀がいる方に振り向く。
「…なんですか?」
「せっかくだから、お茶でも飲んでいきなよ」
「…へ?」
何が「せっかくだから」なのかわからないが、雲雀に言われるままに着いてきた場所は、何故か学校の応接室だった。
セレナがソファにすわってしばらくすると、ほうじ茶と一緒にいちごのタルトが出てきた。
もちろんそれらを全て用意したのは、雲雀ではなく、副委員長の草壁である。
お茶を出してくれた草壁にお礼を言うと、今度はお茶とタルトを見たまま固まっていた。
「どうしたの?そんなに身を固くしちゃって」
一方で雲雀は、セレナの向かい側にすわって、優雅にお茶を飲んでいた。
そんな雲雀に、「身を固くしているのは、雲雀さんがいるからです!」とは言えないセレナだった。
「それより、早く飲まないとお茶が冷めるよ。タルトだって、君のために用意したんだしね」
「は、はあ……それじゃ……」
雲雀に促されると、セレナはタルトを一口大にフォークで切り、口の中にはこんだ。
「おいしい!」
タルトを食べると、固かった身はほぐれ、顔には笑顔が浮かんだ。
そしてまた、そんなセレナを見ている雲雀の顔にも、笑みが浮かぶ。
それは、いつもの不敵な笑みではなく、普段は見せない優しいものだった。
「すっごいおいしいです、雲雀さん」
「そ、よかった。おかわりもあるから、好きなだけ食べなよ」
「え…。それはさすがに申し訳な…」
「いいから。僕がいいって言ってるんだから食べなよ」
「(強制ですか…)」
どんな時でも、そのオレ様体質をくずさない雲雀に、少し引き気味になりながらも、なんだかんだと、今食べてるのの他に、いちごタルトを2つもおかわりしたセレナだった。
「あーー、おいしかった。ありがとうございます、雲雀さん」
大好きないちごのタルトを3つも食べることができたセレナは、ここに来た時とはうって変わり、とても上機嫌になっていた。
「別にいいよ。君、いちごのタルトが好物なんでしょ?」
「え…。なんで雲雀さんが、私の好物を知ってるんですか?」
特に雲雀とは接点がないのに、何故自分のことを知ってるのかと思ったセレナは、ふしぎそうに問いかけた。
「そんなの決まってるじゃないか。君のことなら、なんでも知ってるからだよ」
「なんか…その発言怖いんですけど…」
けど、ストーカーのような返答が返ってきたので、セレナは見るからに引いていた。
「2-A、真田セレナ。沢田綱吉達と同じクラス。身長156cm、体重51kg、得意な科目は国語、苦手な科目は英語、好きな食べ物はいちごのタルト、嫌いな食べ物はピーマン。同じクラスの笹川京子、緑女子中の三浦ハル、六道骸のところのとりまきの女と仲がよく、よく一緒に遊んでいる」
「だから怖いですって!なんでそんなに私のこと知ってるんですか?」
セレナは引いているが、雲雀はお構いなしに今すわっているところを立って、セレナの隣に移動する。
雲雀が隣に来たことで、セレナは再び身を固くした。
「君のことが…好きだから…」
「…へ?」
思いがけない告白に、セレナは一瞬反応が遅れた。
「だから、君のことはなんでも知ってるんだ。たとえば、この前君が、笹川京子達と四人で海に遊びに行ったこととか、君だけナンパされないで落ちこんでいたこととか、君が魅力がないのかと沢田綱吉達に聞いていたこととかね」
「ちょっ!それプライベート!」
京子達と海に行ったことはともかくとして、その後の個人的な感情や行動まで知っていることに、セレナは顔を赤くする。
「正直、そいつらは見る目がないと思うけど、群れてるような弱っちい奴が、君に対して、ナンパなんて軟弱な行為をするなんて虫唾が走るから、それはそれでよかったと思ってるよ」
「え…。なんでですか?」
「言ったろ。君が好きだって…。だから、君がもてるのは僕が嫌なんだ。君は他の男なんか見てないで、僕だけを見ていればいいんだ。
君が気にかける男は、僕一人でいい……」
雲雀はしゃべりながら、セレナの肩に自分の腕をまわして、同時に顔をぐっと近づける。
そのことでセレナは、頬を赤くして固まった。
「ねえ、教えて。どうしたら、君の特別になれるの?」
「え…?」
「ねえ…」
そして、雲雀は唇を近づけると、セレナの頬に自分の唇を押しつけた。
唇ではなかったが、生まれて初めてキスされたので、セレナはゆでだこのように顔を真っ赤にする。
「ひ、雲雀…さ…」
「僕は……君の特別になりたい」
両手でセレナの体をかきだいた雲雀は、セレナの唇に、己の唇を近づけていく。
雲雀をつきとばせるような力など、セレナにはなかった。
何よりも、いつもの鋭い目が、今はとても優しい目をしているので、その目に逆らえない…というのもあった。
セレナは覚悟して、目を強くつむった。
「ミードリータナービクーナーミーモーリーノー」
だが、あと1cmでお互いの唇がかさなるという時に、突然頭上から、ヒバードが歌う声が聞こえたので、雲雀は動きを止めた。
「ヒバリ!ヒバリ!」
二人の頭上を羽ばたいていたヒバードは、テーブルに降り立つと、雲雀の名前を呼ぶ。
「……うるさいよ。ジャマしないでくれる?」
せっかくいいところだったのに、いいムードだったのに、ヒバードの登場によってすっかり壊されてしまったので、雲雀は見るからに不機嫌な顔をして、ヒバードを鋭い目で睨みつける。
「うわっ」
その時、雲雀は衝撃を感じた。
ヒバードの登場で腕の力が緩んだ雲雀を、セレナが思いっきりつきとばしたのだ。
そして、雲雀をつきとばすと、セレナはそのまま応接室をとび出していった。
律儀にも、「お茶、ありがとうございました」というお礼も忘れずに…。
雲雀はというと、少しの間呆然とすると、ゆっくりとその場を立ちあがった。
「…おもしろいじゃないか」
立ち上がると、誰に言うでもなくぽつりと小さくこぼし、窓の方へ歩いて行くと、窓の外を見た。
「絶対に……逃がさないよ」
外には、昇降口から校門に向かって、必死になって走っているセレナの姿があった。
そんなセレナを、雲雀は不敵な笑みを浮かべ、優しい顔でみつめていた。
その後、セレナと雲雀は両想いになるのだが、それはもう少しだけ先の話だった。
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