SweetHeart
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3学期が始まり、一ヵ月ほど経った時のこと…。
その日の授業が終わると、舞美はいそいそと帰り支度をして、校門に向かおうとした。
「舞美」
「あ、螢子」
「今日帰りに本屋に寄ってかないって、みんなが…」
「あ、ごめん。今日も待ち合わせしていて…」
その時、螢子が舞美を誘うが、舞美はバツが悪そうな顔をして断った。
「それって…蔵馬さんと?」
「うん」
本名を聞かれるのはまずいので、ここの部分だけ、小声で会話した。
「あーー、はいはい。行ってきなさいな。まったく、お熱いんだから」
「何言ってんのよ。螢子だって、幽助とラブラブじゃない」
「違うっての!!」
螢子が舞美をからかうと、舞美も同じように螢子をからかった。
幽助の名前を出されると、螢子は大きな声で反論し、顔も赤かった。
「はいはい。そういうことにしといてあげるわよ。それじゃあね」
顔を赤くして大きな声で反論すること自体が、すでにそうだと認めているようなものだが、舞美は軽く受け流して、教室から出ていった。
「まったくもう…」
舞美を見送る螢子の顔は、未だに赤く、それでもまんざらでもなさそうな顔をしていた。
「螢子」
「どうだった?」
そこへ、螢子と仲の良い二人の友人がやって来て、舞美のことを聞いた。
「あーー、ダメダメ。あの子、今日も彼氏と約束してるみたいだから」
「そう……」
「やっぱりね」
二人の友人も、予想はしていたようだが、それでもダメだったとわかると、残念そうな顔になる。
「でも、それはそうとして、舞美の彼氏って、すっごいかっこいいよね。目つきが優しいし、物腰やわらかいし」
「そうよね~。確か高校生だったけ?盟王高校の。いいな~。私もあんなにかっこいい彼氏ほしいわ」
「でもさ、彼氏いるのはいいけど、もうちょっと自重してほしいわね。だってあの二人、いわゆる「バカップル」だもの。ラブラブになるのはいいけど、あんまり人前でやられるとね…」
「たまにキツいものがあるわね」
蔵馬は校門の前までだが、すでに何度か来ており、舞美と一緒に歩いているところも何度か見られているので、二人の友人はうらやましそうにしていた。
舞美と蔵馬の仲は、もうすでに、皿屋敷中学校でも公認となっていた。
うらやましがってるのは、この二人の友人だけではなく、学校のほぼ全員の女子生徒だった。
物腰がやわらかく、おだやかな顔つきと、舞美を大事にしている優しい目をしており、何よりも、ほぼすべての女性を魅了すると言っても過言ではないくらいの美貌の持ち主なので、女子生徒達は、かなりうらやましそうにしていたのだ。
だが、うらやましがられる一方で、人目もはばからずベタベタしている、所謂バカップルでもあるので、一部の者にはあきれられていた。
SweetHeart
その頃、そのうらやましがられている蔵馬は、舞美と一緒に街を歩いていた。
「もうすぐバレンタインだね。秀一と付き合ってから、初めてのバレンタイン。私、チョコレート手作りするね」
「そいつは楽しみだな。舞美の作るお菓子は、どれも絶品だからね」
「本当?うれしい。がんばって作るわね」
自分の手作りのお菓子が、大好きな蔵馬に気に入ってもらえているので、舞美はうれしそうに笑った。
「それでさ、舞美」
「何?」
「今度のバレンタインって、土曜日だろ?」
「うん」
「だからさ、バレンタイン旅行ってことで、泊まりがけのデートしない?」
蔵馬に提案されると、舞美は目をキラキラと輝かせた。
「本当!?」
「うん。どこに行きたい?」
「え……。私が決めていいの?」
「もちろん」
「えっと……それじゃあ、ディズニーランドと…あと、ディズニーシーも行きたいな」
「いいよ」
蔵馬は、舞美の希望を快諾した。
蔵馬と約束をすると、二人は家に帰ることにして、舞美はいつものように、蔵馬に家の前まで送ってもらった。
その日の夜、舞美は誰が見ても喜んでるのだとわかるくらいに、にこにこと笑っていた。
「やけにうれしそうね。何?また蔵馬君と約束でもしてきたの?」
「うん。今度はお泊りデートするんだ」
「なにィ!?」
温子に問われると、うれしそうな顔と声で答えるが、その話の内容に、幽助は過剰に反応を示す。
「っかああ~~。中学生でお泊りデートかァ。やるわね、アンタ。大胆ね」
「そこは、お母さんの血が流れてるからだと思うわ」
14歳で幽助と舞美を生んだので、大胆なのは母親ゆずりだと主張した。
温子はそのことには何も反論せず、しかも中学生で外泊するというのに、止めることはいっさいしなかった。
「ねっ、行ってきてもいいでしょ?」
「別にいいわよ。行っといで行っといで」
しかも、とても中学生の娘に対する返事とは思えないくらい、軽い調子であっさりと許可を出した。
「なっ!!そんなのオレが許さねェぞっ!!」
しかし、幽助は大きな声で、叫ぶように反対する。
「楽しみだな~。どんな服着てこうかな」
だが、舞美はまったくの無視で、わくわくした口調で一人ごとを言った。
「あっ!!そうだ、幽助」
「…んだよ?」
けど、急に思い出したように、幽助の方に顔を向けて話しかけた。
無視したくせに、都合よく話しかけてきたこともだが、蔵馬と舞美が付き合っているのは周知の事実となっているのに、未だに嫌な幽助は、ムスッとして、いつもよりも低い声で返した。
「いっとくけど……この前のデートの時みたいに、あとつけてきたら、承知しないからね。そこんとこ、桑原君とぼたんと飛影さんに、よっっっく言っといてね」
「……おっ……おう……」
舞美は幽助の肩に手を置くと、瞳孔が開いた目で、脅迫という名の忠告をした。冷静で、怖い雰囲気の表情と目にびびった幽助は、小さくなって返事をする。
そして2月14日…。
舞美は蔵馬とともに、ディズニーランドに泊まりがけの旅行に行った。
電車で最寄りの舞浜駅まで行くと、改札口付近にあるウエルカムセンターで荷物を預け、パスポートを購入し、リゾートラインのチケットをもらうと、この日はディズニーランドに行くので、そのままウエルカムセンターとは反対方向に歩いていき、荷物検査をすると、エントランスまで行って入園した。
たくさんの人、ゲストと交流しているキャラクター達、すぐそばにある色とりどりの花が咲いている花壇、その先にある、たくさんの店が軒を連ねているワールドバザール、その光景を見ただけで、舞美はキラキラと目を輝かせ、楽しそうに笑った。
「楽しそうだね」
「うん。だって、初めて来たんだもの!ずっと来たいって思ってたけど、全然そんな機会なかったから。だから、来れてすごくうれしいの」
「そっか。なら……」
うれしそうにはしゃいでいる舞美を見ると、蔵馬はクスッと笑い、舞美の肩を抱きよせた。
「舞美の初めては、オレのものだね」
そして、舞美に顔を近づけて、かなり意味深な言い方をした。
「え……」
その意味深発言に、舞美は顔が真っ赤になり、固まってしまう。
「あ、もちろん、一緒にディズニーランドに行くのがね」
「………………」
もちろん、そんな意味で言ったのではないことはわかっていたが、それでも、蔵馬の艶っぽい表情で言われると、どうしてもドキドキしてしまった。
「さあ、行こうか」
「う…うん…」
蔵馬に手を差し出されると、舞美はその手をとって、先に進んだ。
「まずはどこに行く?」
「え…。私が決めていいの?」
「もちろん」
「えーと……それじゃあ、メリーゴーランドがあるって聞いたから、それに乗りたいな」
「メリーゴーランド?えっと……」
舞美がリクエストすると、蔵馬はウエルカムセンターでもらったマップを広げた。
「……………ああ…あったあった。この、『ゴールデンカルーセル』ってやつだね」
「あ、そうそう。それそれ」
「じゃあ行こうか」
「うん」
場所を確認すると、二人はゴールデンカルーセルまで行った。
ゴールデンカルーセルは、ワールドバザールを抜けると、まっすぐ進むだけなので、迷うことなく行くことができた。
「うわあ。ステキ…」
一体ずつ違うデザインの白馬に、舞美はみとれた。
「早くのろう」
「うん。そうだね」
けど、それは一瞬のことで、すぐにエントランスに並んだ。
順番は15分ほどでやって来て、舞美は外側のバラをつけた馬に、蔵馬はその後ろの馬にのり、楽しんだ。
けど、ほんの数分で終わってしまい、少し残念に思っていたが、それでも楽しさの方が勝(マサ)っていたので、舞美は笑顔で、蔵馬もつられて笑顔だった。
「楽しかったね」
「そうだね」
「それより、私が乗った馬見た?あの馬、バラがついてたじゃない」
「うん?」
「なんか秀一みたいだよね。とってもステキだった」
あの馬を選んだのは、自分のことを連想したからで、蔵馬は少し顔が赤くなった。
「あ、ねえ。次は、あの向かい側にあるアトラクションに入ろうよ」
そう言って舞美が指をさした先にあるのは、ホーンテッドマンションだった。
蔵馬は特に乗りたいと思っているアトラクションがないのもあるが、舞美の要望を叶えてあげたいということで、また了承した。
ホーンテッドマンションは、いわゆるお化け屋敷なのだが、普段から本物の妖怪や霊を見ている舞美と蔵馬には、どうってことはなかった。
けど、雰囲気はよかったので、そういった意味では楽しめるものだった。
ホーンテッドマンションから出ると、次は隣にあるスプラッシュマウンテンのファストパスをとり、ファストパスの機械の隣にある、グランマサラというレストランで、ちょっと早めの昼食をとった。
昼食をとると、まだファストパスに書いてある指定の時間まで時間があるので、二人は少し奥まったところにあるカヌーに乗り、乗り終えるとちょうど時間になったので、今度はスプラッシュマウンテンに乗った。
スプラッシュマウンテンでは落ちる瞬間に写真撮影があり、その写真の販売が出口付近であったので、記念に購入した。
「次はどれ乗りたい?」
外のカウンターで写真を受け取ると、蔵馬は舞美に、次に乗りたいアトラクションを聞いてきた。
「え……。私ばかり選んでるけどいいの?」
入園した時から、ずっと舞美の乗りたいものに乗ってるので、舞美は罪悪感のようなものを感じていた。
「オレは舞美が楽しんでるなら、それでいいんだよ。それがオレの楽しみだからね」
けど、蔵馬はまったく気にしておらず、さらっとはずかしいことを口にする。
そのことを聞くと、舞美は顔を赤くした。
「じ…じゃあ、次はこれかな」
そう言って舞美はマップを取り出し、乗りたいアトラクションを指さした。
それは、ディズニーランドの目玉ともいえる、ビッググサンダーマウンテンで、今いる場所から近いので、目的の場所に向けて歩きだした。
クリッターカントリーから隣のウエスタンランドへ行くが、待ち時間が長かったので、ファストパスをとり、時間が来るまでの間、隣のエリアのアドベンチャーランドにある、ジャングルクルーズとウエスタンリバー鉄道に乗り、昼のパレードを見た後、ちょうどいい時間になったので、ビッグサンダーマウンテンに乗った。
「ね、次はこれ」
乗り終わると、次はマップにある、スペースマウンテンを指さした。二人はトゥモローランドまで行くと、ファストパスをとり、時間が来るまで、ちょっと早めの夕飯をとることにした。
夕飯の後はニューファンタジーランドで遊び、遊んでいる間に時間になったので、スペースマウンテンに乗り、次はトゥーンタウンに行って遊び、夜のパレードを観賞した。
そして、夜のパレードが終わると、花火の時間となったので、シンデレラ城の前で花火を楽しみ、その後はスターツアーズに乗り、ワールドバザールでおみやげを見た後は、時間となったので、ホテルへ戻った。
ホテルは、ディズニー系ホテルのひとつ、ミラコスタだった。
ミラコスタに行くと、チェックインをするのではなく、ベッラヴィスタというラウンジに行った。
未成年なのでアルコールは飲まなかったが、メニューにあるノンアルコールカクテルを飲みながら、話と、そこから見える景色を楽しんだ。
目の前の景色は、ベッラヴィスタの名の通り、とても美しかった。
窓の向こうにあるパークは、たくさんある街灯のひとつひとつがとても綺麗で、とても幻想的な世界を作り出していた。
本当は、ずっとこの景色を見ていたいと思っていたが、時間も遅くなっていたので、早々に切り上げた。
ラウンジから出てチェックインすると、部屋まで案内された。
「うわあ、すごい綺麗な部屋」
ラウンジやロビーもすごかったが、部屋の中もまた、凝った装飾や絵があり、まさに感嘆の声をあげた。
蔵馬は風呂に入るために、浴槽にお湯をはり、ベッドがある場所に戻ると、まだ舞美がはしゃいでいたので、蔵馬はそんな舞美のことも、かわいいと思ってしまうぐらいに重症だった。
けど、舞美はすぐに蔵馬の存在に気づき、テレビの隣に置いてあるソファにすわり、蔵馬と談笑した。
しばらくすると、蔵馬は浴室に行き、お湯の具合を見に行き、すぐに戻ってきた。
「舞美、お風呂にお湯が入ったから、先に入ってきなよ」
蔵馬が見に行った時、ちょうどいい感じにお湯がはっていたので、蔵馬は舞美に、先に風呂に入るように進めた。
「え、いいよ。蔵馬先に入って」
けど、舞美は遠慮がちで、蔵馬に先に入るように言う。
「いいから。オレはあとで入るからさ」
「でも……」
しかし、蔵馬は蔵馬で譲らず、舞美はどうしたものかと悩んだ。
「………それじゃあ…」
しきりに遠慮する舞美を見ると、蔵馬はイタズラっぽい顔をして、舞美と距離をつめ、そのまま抱きしめた。
「一緒に入る?」
そして、艶めいた顔と声で、舞美に提案した。
「えっ!!」
突然の提案に、内容が内容だけに、舞美は心臓がはねあがった。
「そ、そそっ……それは……ちょっと……。いくら………なんでも……」
付き合ってはいるが、まだ中学生だし、蔵馬も世間一般的には高校生なので、いくらなんでも早いだろうと、舞美は顔を真っ赤にして、しどろもどろになりながら断る。
「そ。じゃあ、舞美先に入ってきなよ」
対して蔵馬はというと、舞美と違い、笑顔で、まったく微塵も動揺しておらず、冷静なまま、にっこりと笑って、再度風呂に入るように進めた。
「わかった…」
これ以上やっても、蔵馬は絶対に譲らないだろうし、今以上に色っぽい仕草でせまってくるだろうから、そうなったら、まず自分がもたないだろうということで、結局は舞美が折れて、先に入る形となった。
舞美はテレビ台の下の引き出しからパジャマを取り出し、カバンの中から下着と洗顔フォームを取り出すと、浴室へ行き、脱衣所の扉を閉めて、風呂に入る準備をした。
そして、着ているものをすべてぬぐと浴室に足を踏み入れ、先に体や頭を洗うと、浴槽に入った。
「(それにしても……。さっき言ったこと、本気だったのかな?でも、本気にしても冗談にしても、蔵馬って大胆!!)」
浴槽に入ってる時、先程の蔵馬とのやりとりを思い出し、ドキドキしっぱなしだった。
そして、ドキドキしたまま浴槽から出ると、体をふいて下着を身につけ、パジャマを着て、脱衣所から出て、ベッドがある方へ行った。
「蔵馬、出たよ」
「そっか。じゃあ、オレも入ろうかな」
蔵馬に声をかけると、先程とは違い、蔵馬はあっさりと風呂に入りに行った。
蔵馬が風呂に入ると、舞美はその間に、肌の手入れをしようと道具を出した。
「(私がお風呂に入る前はからんできたのに、自分が入る時は、なんかあっさりね。さっきのはからかってたのかしら)」
道具を出すと、考えごとをしながら、手入れの時に使うヘアバンドをつけると、パックに化粧水をしみこませる。
「(いやいやいや!!でも、私達は、世間一般的に言う恋人同士というやつだし、蔵馬も、興味なさそうに見えるけど男の人だし、本当の本当はそういう意味だったりして…)」
そして、パックを顔にはりつけながら、舞美は更に胸をドキドキさせる。
「(じゃあ、この後は、ひょっとしてひょっとしちゃう!?朝まで寝かせないとか、なんかそんなの?いや、でも私は中学生で、蔵馬は1000年以上も生きてる妖怪とはいえ、人間界では高校生なんだし、それはありえないわ。でも…まったくそんな気もないのに、あんなこと言うわけないわよね…。も、もしもその時が来たら…どうしよう……)」
舞美と蔵馬は、付き合っていると言っても、まだキス止まりで、それ以上のことはしたことはなかった。
けど、付き合うというのは、つまりはそういうのもありということだし、蔵馬も男なので、そういうこともあるかもしれないと、舞美はいろいろと妄想をしていた。
若さゆえにいろんな考えが浮かんできて、考えるごとに、表情をくるくると変えているので、ハタから見れば、かなり怪しかった。
「(で、でも……ダメよね、いくら付き合ってると言っても、そんな非道徳なこと…。せめて、私が高校を卒業してからでないと…)」
本音を言うと、ちょっとだけ期待しているのだが、まだ学生で未成年なので、なんとか理性で抑えようとしていた。
そして数分後、パックをとると、乳液やクリームで顔を整えるが、肌の手入れが終わっても、まだ先程のことを考えて、ぼーっとしていた。
更に数分後。風呂を入り終えた蔵馬が、浴室から出てきた。
「あがったよ、舞美」
浴室から出てきた蔵馬は、ベッドルームにいる舞美に声をかけた。
舞美は、先程のことをずっと考えこんでぼーっとしていたのと、いきなり蔵馬がやってきたのとで、心臓がはねあがるくらいにびっくりしていた。
「どうしたの?」
声をかけると、大きく肩がはねあがったので、蔵馬もびっくりして、舞美に問う。
「えっ…な、何が…?」
まさか、蔵馬とのことで、思春期特有の悩みを考えていたとは、言えない舞美だった。
「なんか、様子がおかしい気がするんだけど」
「な、なんでもないよ…………あっ!!」
「!! どうかしたの?舞美」
しゃべっている途中で、いきなり大きな声をあげたので、今度は蔵馬が驚いた。
質問されるも、舞美は何も答えず、テレビの隣に置いておいた自分のカバンをあけた。
そして中から、15cmほどの大きさの、正四角形で、水色の紙と黄色いリボンでラッピングされた箱を取り出して、蔵馬のもとまで歩いていく。
「あの、蔵馬……。これ…」
「これは?」
「チョコレート。今日、バレンタインだから」
その箱はバレンタインのチョコレートだった。
チョコレートを渡されると、蔵馬は目を丸くしたが、それは一瞬のことで、すぐに口角をあげる。
「ありがとう。大事に食べるよ」
そして、満面の笑顔でお礼を言い、お礼を言われると、舞美もうれしそうに微笑んだ。
蔵馬はお礼を言うと、もらったチョコレートをカバンの中にしまう。
「それじゃあ寝ようか。明日も、朝からパークをまわるし」
「へ」
チョコレートをしまうと、蔵馬はベッドの中に入ろうとしたので、舞美は間の抜けた声を出した。
その声を聞いた蔵馬は、ニヤッと笑い、舞美の隣まで歩いてくると、舞美の肩を抱きよせる。
「ひょっとして……期待してた?」
「なっ!!」
肩を抱き寄せると、顔を舞美に近づけ、いじわるそうな笑みを浮かべ、自分と向かい合わせにして、腰に手をまわした。
「なんなら…舞美の期待に応えてもいいけど…ね…」
「えっ!?」
遠回しにだが、先程自分が妄想していたことを言われたので、舞美は声が裏返る。
すると、蔵馬は小さく吹き出し、その後に、声を出して笑い出した。
「な、何よ…」
自分の裏返った声を聞いたから笑ったというのがわかったので、舞美は顔を赤くした。
「いや…そんなに期待してたのかなって思ってね」
「なっ!!し…してないわよ!!」
今度は舌を噛んだ上に、声がうわずったので、まったく説得力がなかった。
そんな舞美を見ると、蔵馬はクスッと笑う。
「冗談だよ」
そして、笑いながら舞美から離れた。
そう言われると、舞美は鳩が豆でっぽうをくらったような顔になる。
「なっ…」
けど、からかわれたのだとわかると、みるみるうちに、顔が真っ赤になった。
「ごめんごめん。舞美がかわいいから、ついからかいたくなってね」
「つ…ついって…」
蔵馬はからかったことを謝るが、舞美は怒っていないものの、顔を真っ赤にしたままだった。
「でもね、舞美」
「な、何?」
のらりくらりとしていたが、蔵馬は急に真剣な顔と声色になり、舞美が返事をすると、再び腰を抱きよせた。
「君を……独り占めしたいっていう気持ちは、本当だよ」
そして、舞美の目をまっすぐにみつめた。
その、真剣な蔵馬の瞳に、舞美は時が止まったようになる。
「けど、自分を抑える自身がないからね。だから、舞美が大人になるまでは、ガマンするつもりだよ」
「え……」
「オレは、人間界では高校生で、君はまだ中学生だ。世間からしたら、いい印象がないし、それはダメだ。だから、君が大人になるまで待つよ。無理強いはしたくないし、それに、君の人生を壊したくないからね」
確かに女性の場合は、人生が狂うこともある。まさか、そこまで自分のことを考えていてくれたとは思わず、舞美は違う意味で顔を赤くし、感動していた。
蔵馬は、自分をぼんやりとした表情でみつめる舞美を見てクスッと笑うと、舞美の額にキスをした。
「それじゃあ、今度こそ本当に寝ようか。おやすみ」
「お…おやすみなさい」
二人はあいさつをすると、今度こそ眠りについた。
そして次の日…。二人は少し早めに起きると、二階にある、オチェーアノという地中海レストランで朝食をとった。
その後はチェックアウトをして、荷物をあずけると、ディズニーシーに入園した。
「すごい、大きい地球儀。しかも、水が流れてる。綺麗…」
写真では見たことがあったが、本物は初めて見るので、舞美は感激していた。
「舞美、周りを見ると、月があるよ」
「月?」
「地球の周りだよ」
「本当だ!!月齢になってるんだ。すごい細かい演出だね」
目の前にある月と、その両隣にある月を見てみると、白い部分と紺色の部分の大きさが違うことに気づいて、月齢を表しているのだとわかると、舞美は更にはしゃいだ。
「それにミラコスタ!!外から見るとこんな風なんだ」
「うん。まるで街みたいだね」
昨日は、モノレールを降りて、橋を使ってそのままミラコスタに直行していたので、違う角度からミラコスタを見た舞美は、しばらく興奮した。
「舞美、そこで楽しむのもいいけど、あまりそこにいると、パークで楽しめないよ」
「あ、そうだね。早く行こうか」
舞美と蔵馬はその場をあとにして、先に進んでいき、ミラコスタの下をくぐり、メディテレーニアンハーバーまでやって来た。
「うわぁーー!!すごい。本当に海みたい」
メディテレーニアンハーバーを目にすると、またすごい興奮しだしたので、先に進めるのはいつになることやら…と、蔵馬は思った。
「パーク側から見たミラコスタって、こんな感じなのね。また雰囲気が違うわ」
「うん。昨日は反対側の部屋だったからね」
「あっ。左の奥の方に、教会が見える」
「ミラコスタは、結婚式やパーティーができる会場があるみたいだよ」
「へェ~」
「いつか…あそこであげようか」
「へっ」
ただ何気なくみつけたものから、そんな魅力的な話になるとは思わず、ふいをつかれた舞美は少しばかり声が裏返ったので、蔵馬は小さく笑う。
「将来ね…。舞美が大人になって、安定したらさ」
今度はやわらかい笑みを浮かべ、手を差し出すと、少しの間みとれていたが、舞美は蔵馬の手に、自分の手を重ねた。
「そ…そうだね。その時は、よろしくお願いします」
「うん」
思いがけない蔵馬の言葉に、舞美は顔を赤くして、蔵馬をみつめており、蔵馬もまた、優しい顔で舞美をみつめていた。
二人は少しの間みつめていたが、1分もしないうちに動きだした。
ここに来た目的は、もちろん遊びになので、まずは、ディズニーシーの中で一番新しいアトラクションの、ソアリンに乗りに行った。
「すごかったね、ソアリン!!本当に空を飛んでるみたいだった」
ソアリンは、昔の飛行機に乗り、次々と代わる目の前の画面にあわせて飛ぶというシンプルなものだったが、舞美は目を輝かせていた。
「そうだね。途中で草のニオイもしたしね」
「よくできてたね」
「あ~…。どうせならもう一回乗りたい…」
「それは無理かな。もう、ファストパスも全部なくなっちゃったし、スタンバイは3時間待ちだし」
「ソアリン、おそるべしだわ…」
感激のあまり、もう一度乗りたいと思ったが、二人が乗っている間に、ファストパスはもうなくなった上に、スタンバイも3時間待ちという、難しい状況になっていた。
「まあ、ソアリンはあきらめて、他の乗り物に乗りにいこう。きっと楽しいよ」
「うん」
乗りたいのはやまやまだが、スタンバイで並ぶと、乗り終わった頃にはお昼すぎになってしまうので、舞美は泣く泣くあきらめて、プロメテウス火山がある方へ向かった。
火山は、それ自体がアトラクションになっており、そこのアトラクションのファストパスをとると、そのままそこから、マーメイドラグーンに行った。
そこは、基本子供向けのアトラクションしかなかったが、大人も楽しめるいるし、待ち時間もそんなには長くないので、しばらく遊んだ。
そしてその後で、火山がある方へ行き、先程とったファストパスのアトラクション…センター・オブ・ジ・アースからほど近い、ヴォルケイニアレストランという、中華料理のレストランで昼食をとり、少し休憩した後に、センター・オブ・ジ・アースに乗った。
「すごかったね。火山の中があんな風になってるなんて…。それに、最後のあの怪獣、なんかすごい不気味だったね」
「いつも、あれと同じような本物を見てるじゃないか」
乗り物から降りると、舞美は、また興奮しだした。
舞美は戦闘員ではないが、それでも霊感が強いので、霊や妖怪はよく見てるし、兄は霊界探偵だし、何よりも目の前にいる自分の彼氏は妖怪だしで、いつもはびびっていないのだが、何故か作り物の怪獣を不気味だと言ったので、蔵馬はつっこんだ。
「なんでだろう?でも、私が見ているのは人型が多いし、いい人ばかりだから。蔵…秀一だってそうだし」
「まあね…」
「それにしても、最初からずっとゆっくりだったのに、あの怪獣が現れたと思ったら、いきなり早くなるなんてびっくりだよね。その後、山から放り出されるように外に出るし。本当に噴火してるみたいだった」
「みたいじゃなくて、そうなんだよ」
「えっ!!そうなの!?」
「うん。オレ達が外に出た時、ちょうど火山が噴火していたんだ。気づかなかった?」
「全然…」
「そっか。でも、すごいね。本当に音が鳴ってるし、本当に火が出てるし。こってるよね」
「え~~。見たかった」
乗り物が外に出た瞬間、このアトラクションの火山が、本当に噴火していたのを蔵馬は気づいていたが、舞美は気づいていなかったので、悔しそうにしていた。
「でも、もう噴火してないかもね。音も鳴ってないし」
「そっか…」
耳が常人よりも優れている蔵馬が言うのなら、間違いないのだろうと、舞美は残念そうにしていた。
それでも次を楽しむために割り切り、今度はアラビアンコーストに行って、アトラクションやショップを楽しんだ。
その後は、レイジングスピリッツがすいていたのでそれに乗り、乗り終わると、目の前の道からポートディスカバリーに行き、ニモ&フレンズ・シーライダーやアクアトピアに乗った。
そして乗り終わると、上にあるエレクトリックレールウェイに乗って、アメリカンウォーターフロントへ行き、タワー・オブ・テラーのファストパスをとった後、ウォーターフロントパークにある噴水で、舞美がはしゃいていた。
はしゃぐと言っても、噴水の水にかかったりするのではなく、指先や手の平で、地面から噴き出した水にさわったり、水が出なくなった時に水が出てくる穴をくつでふさいだり、真ん中に立って、すべての穴から水が出てくるのを待ったり、水がすべての穴からいっせいに出てきたところで、間を縫うようにして歩いてたりしているだけだった。
けど、それでもあまり中学生がやらなさそうなものだが、それでも舞美は楽しそうで、そんな舞美を、蔵馬は噴水の外で、微笑ましそう見ていた。
それから、噴水で何分か遊ぶと、ファストパスの時間まではまだ時間があるので、メディテレーニアンハーバーに戻り、ミラコスタの下にある店で、ジェラートを買って休憩をとった。
ジェラートを食べた後は、ジェラートの店の周りにあるおみやげ屋を見てひまをつぶし、時間がきたら、タワー・オブ・テラーに乗り、その後は、ポルトフィーノカフェで夕飯をとると、まだ見ていないおみやげ屋や、周辺を歩いたりして時間をつぶし、8時30分になると、リドアイルで花火を見た。
「花火綺麗だね」
「そうだね」
色とりどりの花火が打ち上がるのを見て、舞美は目を輝かせていた。
そんな舞美を見た蔵馬は、愛しさがあふれ出して、舞美の肩をそっと抱き寄せた。
それから数分後、花火も終わり、舞美と蔵馬は家に帰ることにした。
1泊2日という短い時間だったが、それでもとても充実した日となった。
次の日……。
「秀一、おまたせ!!」
授業が終わると、舞美は校門で待ってる蔵馬のもとへ行った。
そして、校門で蔵馬をみつけると、とてもうれしそうな顔で、蔵馬に声をかける。
「やあ、舞美」
「今日はどこに行く?」
「じゃあ、写真屋にでも行こうか。昨日撮ったのを現像しにね」
「いいわね。じゃあ、その後でアイス食べに行ってもいい?」
「もちろん」
「やったあ」
舞美と蔵馬は、昨日のことで盛り上がり、二人だけの世界をつくっていた。
「秀一、大好き」
「オレも大好きだよ」
そして、相も変わらず、人目もはばからずに想いを伝えあい、舞美は蔵馬の腕に抱きついた。
このシーンは、多くの生徒が目撃しており、これ以降舞美と蔵馬は、更にラブラブになり、皿屋敷中学校の者に、更に呆れられるようになったという…。
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