君がいるだけで
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君がいるだけで
魔性使いチーム戦が終わった後、魅真は蔵馬と一緒に、ホテルから離れた原っぱにいた。
というのも、幽助は螢子と、桑原は雪菜と一緒に、それぞれ別の場所に移動して、雪菜は桑原の治療をするために行ったので、蔵馬もケガをしていたため、蔵馬の治療をするなら魅真だろうと周りに勝手に決められ、強制的に蔵馬と二人っきりにさせられたのだった。
だが、強制的に…と言っても、蔵馬に片想い中なので、嫌ではなかった。
けど、片想い中なので、二人っきりというこの状況は、緊張感が半端ないので、魅真は顔を真っ赤にして、ガチガチに固まっていた。
「どうしたの?魅真」
「へっ!?」
そこへ、ここに来てから一言もしゃべらない魅真をふしぎに思った蔵馬が、魅真に話しかけてきた。
「い、いや……なんでもないよ」
「そう?」
明らかに様子がおかしいのだが、蔵馬はそれ以上は追及しなかった。
「まあ、それはともかくさ、早く手当てしてくれる?腕をあげっぱなしにしてるの、結構きついんだ」
「え?あ、そうだね。ごめん…」
蔵馬に言われると、魅真は慌てて、自分の隣に置いておいた救急箱を手に取り、箱のふたをあけると、中から消毒液を取り出した。
魅真は綿をピンセットでつまみ、そこに消毒液を含ませると、蔵馬のケガをしている部分にそっと触れ、消毒を始めた。
「…っ……」
腕には、凍矢との戦いで自ら植えつけたシマネキ草はなく、治療しやすくなっていた。
けど、シマネキ草そのものはなくても、シマネキ草が生えていた痛々しい痕はあり、それを見ると、魅真は沈んだ顔になり、消毒していた手が止まる。
「どうしたの?」
「え?あ、いや……なんでも…」
あの時……魔性使いチームの画魔、凍矢、爆拳との連戦で深手を負った時、蔵馬が傷ついていく様を、ただ見ていることしかできなかったことが、悔しくてたまらなかった。
自分は何もできず、見ているだけしかできないというのが、とても歯痒かった。
魔性使いチームだけでなく、この前の戦いも。そしてきっと、これからの戦いでも…。
戦いに関して自分に何かできるはずがないが、それでもやっぱり悔しい。
そんな思いを抱え、シマネキ草が発芽した痕を見ると、悲しそうな目になった。
「「なんでも」って顔じゃないよ。オレでよかったら、話してみて」
魅真は適当に誤魔化したが、蔵馬は受け流したりはせず、何があったのか聞きだしてきた。
「でも……」
大好きな蔵馬に、少しでも気にかけてもらえるのはうれしいが、それでも、このことを言おうかどうか迷っていた。
「オレは……魅真の力になりたい…」
けど、その言葉と、蔵馬の真剣な目にドキっとした魅真は、迷っていたが、自分の思いを話そうと口を開いた。
「…私……悔しいの…」
「悔しい?」
「うん。蔵馬が戦って傷ついているのに、私は見ていることしかできないのが…」
「…………」
「この前の試合も、見ていてとても歯痒かったし、傷ついてる蔵馬を見るのが辛かった。特に今日の試合は、本当に蔵馬が死んじゃうんじゃないかと思って、すごく怖かったの。きっと、これからの戦いも、そうなると思う…。そりゃあ、私が蔵馬にできることなんて何もないだろうけど、でも……」
ずっと下を向いて話していたが、急に蔵馬と目を合わせた。
「私も…蔵馬の力になりたい」
それは、相手を思いやる、とても強い眼差しだった。
そのまっすぐな瞳に、蔵馬は目を見張る。
「私……幽助や桑原くんや飛影さんがうらやましい…。だって、蔵馬と一緒に戦えるから、蔵馬の力になれるし…。できれば私も、三人みたいに戦う力がほしかった。
それか、雪菜ちゃんみたいに、治癒能力がほしかったな。そうすれば、蔵馬のこのケガを、あっという間に治せるんだもの」
「…何もできないことないよ」
「え?」
辛そうに、悲しそうに笑って話すと、突然蔵馬が、真剣な声色で返してきたので、魅真はびっくりした。
「魅真、なんでオレが、魅真と一緒に来たと思う?オレは植物使いで薬草を持ってるから、自分のケガは治せるのに……」
「あ……えっと……それは…」
言われてみればそうだと思い、答えがわからないでいると、蔵馬はそんな魅真を見てにこっと笑う。
「答えはこういうこと」
そして、そっと包みこむように、ぎゅっと抱きしめる。
「ケガを治してもらうなんて、ただの口実。ただ、少しでも一緒にいたかったんだ」
「え…」
「何もできないだなんて、気にやむことはないよ。オレは、魅真がそばにいてくれるだけで充分なんだ」
抱きしめられているのと、告白のようなセリフに、魅真は頬を赤くそめる。
「幽助や飛影や桑原くんみたいに、一緒に戦えなくていい。魅真はオレが守るから。雪菜ちゃんみたいに治癒能力がなくてもいい。オレは、魅真がこうしてそばにいてくれるだけで、力がわいてくるから」
「蔵馬……。あの……それって……」
魅真が問いかけると、それに答えるように、もう一度にこっと笑う蔵馬。
ずっと自分の片想いだと思っていた。
けど、この言葉の意味は…きっと…そういうことなのだろう…。
魅真は、期待をこめた眼差しで、蔵馬をみつめた。
「この意味の続き……知りたい?」
体を離して聞くと、魅真は顔を真っ赤にして、はずかしそうにしながらも、無言で首を縦にふる。
「それじゃあ……目ぇ…つむって…」
そっとささやくように、優しく言われると、魅真は言われた通りに目をつむった。
蔵馬は魅真の頬に手をそえると、ゆっくりと唇を近づけていく。
けど、あと3cmで重なるというところでピタリと止まり、後ろの林の方を見る。
「…いつまで、そこでそうやって見てるつもりですか?」
「へ?」
待っていた感触はいつまで経ってもくることなく、代わりに、自分にではない、別の誰かに向けられた言葉が、蔵馬の口から放たれた。
しかも、どこか不機嫌そうな声色である。
「ちっ…ばれてたか」
「もう少しだったのによ」
そこから現れたのは、幽助と桑原。
二人の後ろからは、螢子、雪菜、静流、温子、ぼたん、コエンマまでも姿を現した。
幽助、桑原は残念そうな顔をしながらも、ニヤニヤと笑っており、二人の後ろでは、螢子、静流、温子、ぼたん、コエンマまでもニヤニヤと笑っていた。
唯一雪菜だけは笑っておらず、きょとんとした顔をしていたが、桑原の後に
「魅真さんに蔵馬さん、お二人とも何をしていたんですか?」
と問われると、魅真はある意味でからかわれるよりもはずかしくなってしまい、ますます顔が赤くなる。(蔵馬は冷静)
雪菜の言葉を聞いた周りの者達は、それでますます笑いだした。
「まったく…。デリカシーがないというか、空気が読めないというか、野次馬というか…」
そう言った蔵馬は、呆れつつも、そこまで怒ってはいなかった。
「あ、私……さ、先に…ホテルに……」
はずかしさに耐えられなくなった魅真は、顔を真っ赤にしながら立ちあがり、そこから去ろうとした。
「待って、魅真」
けど、そこを蔵馬に、腕をつかまれて止められる。
そして、顔を耳に近づけると
「今の続きは、また後で、ホテルでね…」
と、周りに聞かれないようにささやいた。
一瞬固まったが、どういう意味なのかわかった魅真は、更に顔を赤くし、ぱくぱくと、金魚のように口を動かした。
そして、とうとう耐えられなくなり、走ってホテルに戻っていく。
そんな姿すらも、蔵馬は愛しそうな目で見送った。
END
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