#4 入部
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花道と赤木の勝負から数日後。
魅真だけでなく、花道もバスケ部に入部して、いよいよ部活初日がやって来た。
だが、実は花道は、最初は赤木に拒絶されていた。
バスケ部に入りたい花道。しかし、勝負の時のことを根にもっているのか、赤木は花道の入部を認めなかった。
何故、キャプテンが、入部を認めないのかはなはだ疑問ではあったが、それでも花道はめげずに、部室や体育館の掃除、ボール磨きなど、地道なことをやって、ついに入部が認められたのだった。
その日の授業が終わると、魅真は部室に行き、練習着に着替えた。
半そでシャツに短パンをはき、いつもはハーフアップにしている髪の毛を、後ろで1つのみつあみに結っていた。
「よしっ。行くか!」
とうとうバスケ部のマネージャーとして活動できるので、魅真ははりきって体育館に行った。
#4 入部
体育館には、バスケ部が集まっていた。
今日から部活が始まるということで、魅真と花道以外にも、たくさんの1年生がおり、1年生の一部の男子生徒はざわついていた。
「あの子確か……1年10組の……」
「真田魅真さん…」
「かわいいよなぁ…」
彼らは魅真の容姿に見惚れ、顔を赤くしていたが、当の魅真はまったく反応せず、無関心・無表情で、流川の隣に立っていた。
「よーーし。新入部員は一列に並べ!!」
「「「「「はいっ」」」」」
部活の時間が始まり、赤木が集合をかけた。
赤木に言われた通り、魅真をふくむ1年生達は、赤木の前に一列に並ぶ。
「ふむ」
「ふむ」
けど、その中で唯一花道だけは1年側に並んでおらず、赤木の隣に立ち、同じようにうで組みをして立っていた。
「オマエもだ!!」
「…………!!」
1年なのに2・3年側の、しかもキャプテンである赤木の隣に立っていたので、赤木は怒鳴って、花道を1年側に行かせた。
「うん、まあオレも一応新入部員ではあるな。キャプテンに勝った男とはいえ。一理ある」
花道が赤木の隣にいたのは、この前の勝負で赤木に勝ったからだった。
怒鳴られはしたが、花道は大して気にする様子もなく、1年側に歩いていく。
「例の桜木だよ…」
「度胸あるなあ…」
今のやりとりに、同じ新入部員の1年生の2人が小声で話していたが、花道は聞こえていないのか、特につっかかったりしなかった。
「(ルカワ…!!)」
だが、歩いていった先に流川がいたので、それだけで花道は敵対心を燃やす。
「(にゃろう!!ガンたれてやがる。…上等じゃねーか!!)」
「?」
別に流川は、花道に対してガンたれてなどおらず、花道が勝手にそう思いこんでるだけだが、花道はズボンに両手をいれ、ケンカを売るような姿勢で流川の前まで歩いていき、顔をななめに傾けて、下から見上げるように流川を睨みつけ、顔を流川の顔のギリギリのところまで近づける。
「(大人になれ、花道!!オレは、赤木主将(キャプテン)に勝った男だ!!いいかえれば、次期主将(キャプテン)の座を、約束された男!!ルカワなどとは、すでに次元のちがう所にいるのだ!!大人になれ、桜木花道……!!)」
けど、途中で自分に都合のいい解釈をして、流川から顔をそらした。
「おい、あれが富中の流川楓だ」
「…………」
「ウチの中学なんて、アイツ一人に負けたんだよな…」
「ウチも」
「サインもらっとこうかな…」
「(フッ…!!レベルが低いよ、キミタチ。ここに、次期キャプテンがいるというのに…) なんせ、オレはキャプテンに勝った…」
「さっさと並ばんか!」
いつまで経っても1年の列に並ばない花道に、業を煮やした赤木は、花道がしゃべっている途中で、花道の頭にゲンコツをくらわせた。
2・3年生がいるところに並んだり、流川にケンカを売ったり、妙なことを口走ったりと、入部初日から、いきなりいろいろとやらかしている花道に、魅真は呆れ、軽くため息をつく。
「ワッハッハッ。いきなりなぐられてるぞ!!」
「こりゃダメだ!!」
「(あいつら!!ヒヤカシにきやがったな…)」
今のシーンを、すぐ近くの、壁の下に設置された窓から洋平達が見て笑っていたので、花道はぎょっとした。
「!! ハルコさん!!」
だがその時、洋平と野間の間に晴子が現れ、手をふっていたので、急に目の色が変わった。
「こらァ。1年は一列にならべ!!はみだしてるぞ、キサマ!!」
「いた」
晴子が来たので、急にはりきりだした花道は、魅真と流川以外の者にダメ出しをして、一部の生徒には、チョップまでかましていた。
「1年整列しました。赤木キャプテン!!さあ、お話を!!」
「わかったわかった」
ダメ出しを終えると、花道は流川と魅真の間に立った。
魅真はマネージャーなので、選手の花道を、同じく選手である流川の隣に並ぶように、間をあけていたからだった。
急に態度が変わったので、赤木はどこか気がぬけたように返事をする。
「オレがキャプテンの赤木だ。はじめに1年の役割をいっておこう。練習前にボールみがき。それと、練習の前後にコートのそうじ。このふたつは、絶対欠かさないこと」
赤木は軽く自己紹介をすると、1年生の役割を説明した。
「きのう、たった一人でこれをやってくれた感心な男がいる。見習うよーに」
「!」
誰とは言っていないが、自分のことだとわかった花道は、過剰に反応を示す。
「んん!ほ~~~。感心な奴がいるもんですね。誰かなー。ん!なかなかできないよな、そこまでは!うん。立派だなーー」
「(ワザとらしい……)」
せきをしながら、ワザとらしく流川達の方を見ながら話す花道だが、その言動で、明らかに自分自身のことを言ってるのがわかった、流川をはじめとする他の1年達は、冷やかな目で花道を見ており、魅真は心の中でつっこんでいた。
対照的に晴子は、くすっと笑って花道を応援していた。
「(ハルコさん…………!!見ててくれてますか。このバスケットマン桜木の勇姿………!!)」
立ち姿からしてすでにはりきっているが、晴子の目線は、花道ではなく隣にいる流川にいっており、先程まで花道の応援をしていたというのに、顔を赤くし、黄色い声をあげて流川の名前を呼んでいた。
当然そのことに、隣にいた松井は、ダレの応援だとつっこむ。
そして部活が始まり、練習の前に、まずは自己紹介ということで、赤木からむかって右端から順に、出身校、名前、身長、体重、ポジションを言っていた。
「二中出身桑田です。162cm、50kg。中学時代はフォワードでした。ヨロシクお願いします!!」
「うむ。高校では、ポジションはガードになると思う。ドリブルやパスの練習をしっかりやっていかんと、生き残れんぞ。ガンバレよ」
「ハイ!!」
「よし、次」
桑田という男子が自己紹介を終え、赤木が隣の生徒に自己紹介するように言うと、それだけでざわついた。
「富ヶ丘中出身、流川楓。187cm、75kg。ポジションは別に決まってなかったです」
それは、次は流川が自己紹介をする番だったからだ。
「ポジションは一人で全部やってたぜ、アイツは…」
「うん」
「そんな感じだったよな」
1年生達は、中学時代の流川の活躍を思い出し、更にざわつく。
「おい流川、シュミとかはあるのか?」
「シュミ…。寝ることかな…」
「無趣味!寝ることだって!!この、3年寝太郎!」
周りの者は特に何も言っていないが、花道だけが、流川の趣味をいじり、口もとをおさえて笑いだした。
「…………」
「シュミは寝ること!なんてつまらない男でしょう!そのうえいつも無表情!」
見るからにバカにした顔をしており、自分の趣味を聞いた途端にふき出したので、流川は腹を立てた。
「次」
「そーか!寝すぎて、顔が固まっちゃったんだな、きっと」
「次!!」
「ハッ!!私(わたくし)ですね」
笑っている途中で、自分の自己紹介の番が来たので、急にマジメな顔になる。
「桜木花道!!和光中出身!!188cm、83kg!!」
「よし次!」
流川には聞いたのに、自分には趣味とか何も聞かなかったので、花道は落ちこんでいた。
「同じく、和光中出身の真田魅真です。マネージャーです。夢と目標は、この湘北高校バスケ部が、全国制覇するためのお手伝いをすることです」
「ほう」
「…………」
「ぜ…全国!?」
マネージャーだというのに、全国制覇という言葉が出てきたので、赤木は興味を示し、流川も何も言わないが、興味を示して魅真を見たが、花道と流川以外の他の1年達はざわついた。
「そいつはたのもしいな。ところで真田、おまえ、バスケの経験はあるか?」
「小学校と中学校の頃に…」
「ポジションは?」
「シューティングガードを多くやっていましたけど、特には決まってませんでした」
「ますますたのもしいな。じゃあ、バスケのルールとかは当然わかるな?」
「もちろんです」
「そうか。なら、一から教えなくても大丈夫だな。よし!1年は以上だな!!」
魅真の番が終わったので、1年の自己紹介はこれで終わった。
「それじゃ、ぼくらも…。2年の安田です」
「同じく潮崎」
「角田です」
「あと、今一人入院してるんで、2年は全部で4人」
1年の自己紹介が終わると、今度は2年生が軽く自己紹介をした。
「3年の木暮だ!」
「3年、主将(キャプテン)の赤木剛憲だ。ヨロシクな!!」
そして今度は、3年の赤木と木暮が自己紹介をして、上級生の自己紹介はこれで終わった。
「(あれ?今日は、三井さんお休みなのかな?でも、休みなら、さっきの今入院してるっていう2年の人みたいに言うと思うんだけどな…)」
目当ての三井寿がそこにいないのは、遅れてるだけと思っていたが、来ないどころか休みとも言われなかったので、魅真は疑問に思ったが、今聞けるような状況ではないので、聞きたいという気持ちをガマンしていた。
「ほう。今年は、ほとんどがバスケ経験者だな!」
「ほんとだ。そりゃあ助かるな。ウチは人数少ないから」
「うんせ」
「「ん?」」
その時、出入り口の扉が開くと、1人の女性が入ってきた。
「どーもスイマセンおくれちゃって!!あっ、新入生入ったんすかーーー!!」
「おう、おせーぞ。彩子」
いきなり入ってきた女性を見ると、花道は顔を赤くしていた。
「アタシ、マネージャーの彩子!2年です。ヨロシクーー!!ヨロシクねーーっ!!」
彩子と名乗ったこの女性は、1年生達に元気よくあいさつをする。
「ん」
だが、花道同様に顔を赤くした1年生達は、自分の体をさわってもじもじとしているだけで、何も言わなかった。
「オラオラ、ヨロシクっていってんでしょ!!アンタ達もヨロシクくらいいえないのォ!?」
「よ、よろしくお願いします!!」
「そうそう。よしよし」
それが気にいらなかったのか、彩子は1年生全員の前を歩きながら、あいさつを強要した。
彼らは彩子の勢いに負けて、顔を赤くしながらもあいさつを返す。
「おっ、流川ーーーー!!入ったかあー!!」
「チワス」
「まーーた背のびたんじゃない!?」
最初から距離の近い彩子だったが、流川には更に近かった。
「あっ。流川君、アタシと同じ、富ヶ丘中なんすよ」
「知ってるよ」
距離が近いのは、もとからの性格だけでなく、同中だからで、流川があいさつをしたのも、同中の先輩後輩という関係だからだった。
「あんたには、赤木先輩たちも、即戦力として大いに期待してるからね!!頑張ってね!!」
「彩子!!余計なこというんじゃねえよ」
「あっ…スイマセン…!!」
赤木に止められると、彩子は顔を赤くして、後ろにいる赤木に顔を向け、謝罪する。
「今のウソ!図にのらないよーにな!!」
「のってねーよ」
赤木に止められると、彩子はあわてて流川の肩をたたくが、流川はまったく気にしておらず、冷静に淡々と返す。
その2人の様子を花道がじっと見ていると、彩子は流川の隣にいる花道に気づいた。
「あーーーっ。桜木花道!!」
「な、なぜオレの…」
彩子は花道に気づくと、花道を指さしながら名前を呼んだ。
初対面のはずなのに、何故か自分の名前を知っていたので、花道は彩子に聞こうとする。
「プーーーッ。くくく…」
「!!」
けど、名前を呼んだと思ったら、急に顔をそらして笑い出したので、花道はぎょっとした。
「あっはっはっ。あーー、おかしい。あんた有名人だからねー」
「(有名人…!?)」
彩子は、流川の時と同様に、花道の肩をたたいた。
「(こ…これは、ヨロコんでいいのかな…?) へっへっ」
心あたりはまったくないが、一応はほめられてるっぽいので、花道は笑う。
「みてたわよ、この前の勝負!!あんたっておもしろいヤツーーーー!!」
彩子の言う有名人というのは、この前の赤木との勝負のことを言っていた。
彩子はこの前の勝負で、赤木が花道に尻丸出しにされた時のことを思い出して、笑いをこらえていた。
一方、何故彩子が笑ったのかわかった赤木は、顔を赤くして、肩越しに彩子を、ジト目で睨むように見ていた。
「こりゃ、これから部活がますます楽しくなるわ。ヨロシクね!!」
「へっへっ。やーーーー、コチラコソ、ヨロシク」
ほめられて悪い気はしないので、花道は頭に手をあて、頬を赤くしながら笑っていた。
「おい、彩子。そいつの隣にいるのが、新しいマネージャーだ。いろいろ教えてやってくれ」
「はーい」
気を取り直して、赤木が彩子に指示すると、彩子は元気よく返事をする。
「あんたが、新しいマネージャーね。話は聞いてるわ。えっと……」
「魅真です。真田魅真。これからよろしくお願いします」
「うんうん。ヨロシク!」
魅真が名乗ると、彩子はそのままのテンションであいさつをした。
「よーーし。練習をはじめる前に…まず最初にはっきり言っとくことがある。
今年の目標は、全国制覇だ!!厳しい練習になることは覚悟しとけ!!いいな!!」
「当然でしょう!!」
赤木が目標をかかげると、花道ははりきっており、魅真と流川も何も言わないが、当然だというようにうなずき、彩子は笑顔でブイサインをしていた。
「ぜ…全国…!?」
けど、他の1年生達は、魅真達と違ってざわついていた。
「湘北ーーーーーファイ」
「「「「「オオーーッ!!」」」」」
赤木が目標をかかげると、円になって気合をいれた。
そして始まった練習。
まずは準備運動で、体育館を走っていた。
本来、先頭を走るのは、キャプテンである赤木なのだが、はりきってる花道は、赤木の前を走っていた。
それはもう、誰が見ても、はりきっているのがわかるほどであった。
「ハリキってんなーーーー、桜木花道!!うんうん」
「今まで赤木先輩に拒否されていたのに、ようやく入部を許可してもらいましたからね」
「あら。ずいぶんくわしいのね」
「ええ、友達なんです。花道とは」
「へー、そうなの。そういえば、魅真はバスケ部のマネージャーの経験はあるの?」
「いえ、マネージャーは…」
「じゃあ、バスケの経験は?」
「それなら、小中学校の頃に」
「へぇ~。ポジションは?」
「特に決まってませんでした。シューティングガードを多くやってましたけど、その時々でいろんなところをやってました」
「女版流川ってところか。たのもしいわね。それじゃあ、ルールは教えなくてもいいわね。マネージャーは審判をすることもあるから、ヨロシク!」
「わかりました」
彩子から、マネージャーの仕事について少しだけ説明されると、魅真はにこっと笑いながら返事をした。
「あら!晴子ちゃん、きてたの!」
「彩子さん、こんにちは」
魅真と話していると、彩子は出入口の前にいる晴子に気づき、声をかけた。
「なになに~?流川見に?」
「もうっ彩子さん!!ちがうわよう……!!」
本当はちがわないが、流川に聞かれたくない晴子は、頬を赤くし、周りを見回しながら、あわてて彩子の口をおさえる。
「あっ……」
「こんにちは」
彩子の口をおさえていると、晴子は魅真の存在に気づいた。
晴子が顔を向けると、魅真はにこっと笑ってあいさつをする。
「新しいマネージャーの真田魅真といいます。よろしくお願いします」
「あ…私、キャプテンの赤木憲剛の妹で、赤木晴子といいます」
「ええ、知ってます。一度会ったことありますから」
「えっ…そうなんですか?ゴメンなさい、覚えてなくて…」
「会ったといっても、たまたまその場に居合わせただけでしたから…。大丈夫ですよ」
会ったことがあり、魅真は覚えているのに晴子は覚えていなかったので、晴子はあわてて謝るが、魅真は気にしていなかった。
「あ、そうそう!魅真、あなたに渡すものがあるから、こっち来て。マネージャーの役割も説明するわ」
「わかりました。それじゃあ」
「はい、また…」
彩子は体育館のすみっこの、自分が持ってきた荷物がある方に、魅真に声をかけながら歩きだし、呼ばれた魅真は晴子に断ると、彩子が歩いていった方へ歩いていった。
「んーーー…」
「どうしたの?晴子」
その魅真の後ろ姿を見て、晴子が何やらうなったので、晴子の左隣にいる藤井は、何をうなっているのか問いだした。
「いや……あの子…なんか、どこかで見たことある気が…」
晴子がうなったのは、魅真をどこかで見たことある気がするからだった。
「どこかって…どこで?いつ?」
「どこかは覚えてないけど……でも、確かにどこかで……」
しかし、どんなに考えても、まったく思い出せなかった。
「あの子ってさ、確か入学式の時に、新入生代表であいさつした子でしょ?」
すると、今度は松井が魅真のことを話しだす。
「え…そうなの?」
「まったく…。晴子は本当にぼーっとしてるんだから」
「あ……それは、私も覚えてない…」
松井があきれていると、藤井もおずおずと口にする。
「でもあの子、もとだけど、バスケ部でどのポジションもやってたってことは、運動神経はいいってことだよね?」
「晴子とは大違いね」
「ウ…ウルサイわね」
晴子も、中学時代はバスケ部だったが、何もないところでころぶこともあり、ジャンプ力もなく、3点シュートは届かず、ドリブルはすぐにとられてしまい、相手にパスしてしまうこともあった。自分でもそのことはわかってるが、松井に指摘されてはずかしくなったので、顔を赤くした。
「それにあの子、結構モテるみたいよ。入学して間もないけど、すでに今年入った新入生の中で、一番かわいいって言われてるもの。顔よくて、頭よくて、おまけに運動神経もいいとか、弱点なしじゃない」
そう言った松井の前には、マネージャーの役割の説明を受けている魅真がいた。
「それで、以上がマネージャーの役割なんだけど…。質問とかある?」
「いえ、特にないです。大丈夫です」
「そう。じゃあ、細かいところは、新しい仕事をやるごとに説明していくわね」
「はい」
彩子が説明を終えると、魅真は明るい声で返事をした。
魅真が返事をすると、彩子は持ってきた荷物の中から、ストップウォッチとホイッスルを取り出して、魅真に渡した。
「それで、これはあなたのよ。試合の時に使うから、なくさないようにね」
「はい。ありがとうございます」
ストップウォッチとホイッスルを受け取ると、魅真は短パンのポケットにしまう。
「ところで彩子先輩…」
「なに?」
「このバスケ部って、3年生は、赤木先輩と木暮先輩だけなんですか?」
「? そうよ」
「本当に?2年の人みたいに、入院中とか、休みとかじゃなくてですか?」
「そうだけど…」
魅真は、バスケ部に三井寿が本当にいないかどうか、本人の名前は出さずに聞いてみたが、いないと言われたので落ちこんだ。
一方で、選手達は走るのが終わると、今度は準備運動に入った。
その中でも花道は、ぐるんぐるんと上半身をまわしており、ここでもかなりはりきっていた。
「おーーし。スクエアパス!!」
「「「「おう!!」」」」
準備運動が終わると、赤木の指示でバスケの練習が始まった。
「なんかわからんけど、おっしゃ!!」
ここでも花道ははりきっており、自分も練習にまざろうとするが、そこを赤木に、首ねっこをつかまれて止められる。
「ぬ…!?」
「彩子ーー!!真田ーー!!」
花道の首ねっこをつかむと、赤木は魅真と彩子を呼んだ。
「はい」
「はァい!!」
「おまえ達、桜木(コイツ)をたのむ」
「?」
「初心者だから、基礎からみっちり!ヨロシクな。真田、おまえもバスケ経験者なら、面倒を見てやってくれ」
「………?」
「はい!!」
「わかりました」
そして、スクエアパスの練習が始まった。
しかし、そこに花道の姿はなかった。
花道はというと、先程とは打って変わって、かなりイライラした様子で、それが顔に表れていた。
そんな花道を、洋平達四人は、ニヤニヤと笑いながら見ていた。
「まだよー。あと1分」
「…………」
何故なら、みんなと一緒に練習できるかと思いきや、すみっこの方で、魅真と彩子の指導で、ドリブルの基礎練習をさせられていたからだ。
「(くっそ~~っ。何でオレだけ、スミッコでこんな…)」
目の前では、自分以外の選手は全員練習に打ちこんでいるのに、一人だけすみに追いやられたので、花道は、怒りで体がプルプルと震えていた。
「ほーら、腰が上がってきたぞ、桜木花道!!腰をおとして!!基本姿勢!!」
「(醜態だ…。ハルコさんが見ているというのに…)」
もっといえば、花道は晴子にいいとこを見せたいのに、それができずにいたからだ。
それなのに、すみっこの方でドリブルの基礎をやらされている上に、基本姿勢ではなくなってきたため、彩子にハリセンで背中をたたかれているので、花道は苛つくやらはずかしいやら、いろんな感情を心に抱えていたのだった。
「(桜木君、基本は大切よ。ガンバッテ!!)」
けど、当の晴子はまったく気にとめておらず、むしろエールを送っていた。
その日の夜、花道はドリブルの音が耳から離れなくて、なかなか眠れず、魅真は三井がいなかったのでショックだったのと、何故いないのかという疑問で頭がいっぱいで、なかなか眠れなかった。
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