#27 王者海南の力
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数日後、決勝リーグ初日…。
湘北高校控室…。
試合がもうすぐ始まろうとする頃、選手達は、一ヵ所に集まって円になっていた。
「………海南は、雲の上の存在と思うか?手を伸ばしても、とび上がっても、オレたちには届かない存在だと思ってるか?」
「…………」
赤木が静かに口を開き、全員に問うが、誰も何も答えなかった。
「実績でいえば確かにそうだ。過去の実績からいえば、海南とうちは、天と地ほどもちがう。だがオレは…オレはいつも、寝る前に、この日を想像していた…」
「…………」
赤木が話をしている最中、魅真と彩子と安西が、控室の中に入ってきた。
「湘北が…神奈川の王者、海南大附属と、IH出場をかけて戦うところを、毎晩思い描いていた。一年のときからずっとだ」
「ゴリ…」
それは、赤木の個人的な話だったが、全員が真剣な目をしていた。
「絶対勝つ!!」
「「「「おお!!!」」」」
そして、赤木の最後の気合の入った言葉で、全員が気合の入った声で返事をした。
#27 王者海南の力
時間となり、湘北・海南両校の選手達は、コートの中に入ってきた。
両校が入ってくると、観客席からは大歓声が起こった。
「かっかっかっ。今年の海南は、史上最強だぜ!!なぜかは分かってるな!!」
声援が飛び交う中入場してくると、清田は、いきなり大きなことを、大きな声で叫んだ。
「ぬ?」
いきなり偉そうにする清田に、湘北も観客も、全員注目する。
「それはこの、NO.1ルーキー、清田信長が入ったからだ!!かーーっかっかっ」
センターラインに立ち、鼻高々で笑っていると、後ろから花道が、穴があくようにじーっと見ていた。
「ん?」
その視線に気づいた清田は、後ろへふり向き、花道を目を合わせると、目が鋭くなる。
「よう、桜木花道…!!」
「なんだてめー、えらそーに」
初対面なのに、いきなりタメ口で偉そうな態度で接する清田に、花道は強気な態度で返した。
すると、清田は花道が持つボールをじっと見ると、素早くボールをはじいた。
「ぬっ!?」
「ヘイ」
「!!」
清田はそのボールを、素早く移動してとった。
その様子に気づいた三井と宮城は、花道と清田に注目する。
「おのれ…」
これだけで、花道は腹が立ち、青筋が浮かんだ。
この騒動に、安西も、海南の監督の高頭も気づき、花道と清田を見た。
「よう…。一つだけ言っとくぜ、桜木」
清田はドリブルをしながら話した後、急に自分の体の周りで、素早く両手でドリブルを始めた。
「ぬ……」
このボールさばきに、観客は称賛する。
「あっ」
しかし、突然清田の後ろからころがってきたボールに、自分のボールがはじきとばされてしまう。
2人がボールがころがってきた方を見ると、そこには流川が立っていた。
「流川…!!」
流川も加わったことで、館内は更にざわついた。
「いいか桜木…。一つだけ言っとくぞ…。NO.1ルーキーは流川(コイツ)じゃねえ!!」
清田は流川の前まで歩いていくと、花道に顔を向け、流川を親指でさして宣言した。
「あたりめーだ」
「え?」
思っていたのと違う反応だったので、清田は目が点になる。
花道は清田と流川の方へ歩いていくと、清田からボールをぶんどった。
「フンフンフンフンフンフンフン」
ボールを奪うと、清田に負けじと、お腹回りでボールハンドリングを始めた。
「おお……」
すごい早さに、清田も口をあけて驚いた。
「フフフンフフフンフフフンフフフン」
更には、足の周りを8の字を描くように、ボールハンドリングをした。
このボールハンドリングにも観客は注目し、称賛した。
「NO.1はルカワじゃねえ!!」
ある程度やると手を止めて、肩で息をしながら清田に宣言する。
「ほほう!その通り!!」
花道が宣言すると、清田も笑いながら同意した。
「「てめーにゃ負けねーぞ!!」」
そして、二人同時に、流川を指さして宣戦布告をする。
二人が宣戦布告をしたその時、突然二人の頭にげんこつがおとされた。
そのことで流川はぎょっとし、館内はざわついた。
「ぐお…」
「ぐう…」
このことには、館内にいる全員が注目した。
頭を殴ったのは、赤木と、海南の主将の牧伸一だった。
「すまん。失礼をした」
「いや…こっちこそ」
清田は牧に頭をおさえられ、花道は赤木に、左の耳をつままれた。
赤木と牧は、とても高校生とは思えない風貌と態度で、お互いに謝罪をする。
「バカモンが」
「ぐっ」
「バカヤロウ」
「湘北の恥」
「あんた、試合前から何やってんのよ」
湘北のベンチに連れていかれると、花道はもう一度頭を殴られ、魅真、三井、宮城は、花道を非難した。
「まったく、何考えてんだ、お前は」
「く…」
海南側のベンチでは、清田が牧に、頭を強く押されてふらついていた。
「桜木君。君、バスケはいつから?」
「ぬ?」
花道と清田がそれぞれのベンチに行くと、急に、海南の監督の高頭は、花道に声をかけた。
「なんだジジイ。高校からだよ。なめんじゃねーよ」
花道は、高頭の前まで歩いていくと、相変わらず不躾な態度で、まるでケンカを売るように、高頭にせまっていく。
「(高校から…)」
「バカタレ!!」
「!!」
初対面で、相手チームの監督で、目上の人間なのに、かなり不躾な態度だったので、赤木はまた、花道の頭を殴る。
「(まだ三か月足らずか…)」
先程のボールハンドリング。そしてこの前の翔陽戦。始めてから三ヵ月も経っていないのに、すでにあれだけの動きができているので、高頭は驚いていた。
花道が高頭の質問に答えた後に、試合前の練習が始まった。
選手達が練習をしている間、魅真は彩子と、試合前の準備をしていた。
「こんにちは」
そこへ、声をかける者が現れたので、魅真と彩子は顔を上げて、その声の主を見た。
「あっ……。あなたは……」
声の主を見ると、魅真は目を丸くする。
「海南大附属高校バスケットボール部。2年生6番の、神宗一郎です」
声をかけたのは、神だった。
「はい。存じてます」
「本当に?うれしいなあ」
彩子も近くにいるが、神が魅真の方に顔を向けているので、きっと自分に話しかけているのだろうと思った魅真は、神に返した。
魅真が知っていると言うと、神はうれしそうに、にこにこと笑う。
「ええ。第二回戦の時に、観客がさわいでましたから」
「そうなんだ。ところで、頭のケガはもう大丈夫?」
「アタマ?」
「第三回戦の時に、試合会場に来た時、頭に包帯を巻いていたから…」
「ああ……。高畑高校の時の……」
「はい」
「あ…。お気遣いありがとうございます。もう大丈夫です。すっかり良くなりましたから」
「そっか。よかった。女の子だから、傷が残ったら大変だしね」
「へっ…」
神は笑顔のまま、魅真の身を案じた。
今まで、あまり女扱いされたことがなかったのと、初対面の人間相手に女扱いされたのとで、魅真はドキッとして、頬を赤くした。
すると、神は突然、魅真の両手を、自分の両手で包みこむようににぎりしめて、上にもってきた。
「こんなこと……対戦相手側の人間に言うのも、おかしいけど…」
それは、誰がどう見ても口説いているので、魅真は呆然とした。
「オレ…絶対に活躍するから!!だから、オレのプレイを見ていてほしいんだっ!!」
今までも、告白されたことは何度かあったが、こんな風にしてきた人間はいなかったからだ。
「え?あ……はい……」
魅真は呆然としたまま返事をした。
返事をされると、神はまたうれしそうな顔で微笑む。
「おい神、何やってるんだ!」
「あ、はい。今行きます」
練習もせずに、相手チームのベンチで、相手チームのマネージャーと話しているので、牧は神に声をかけ、神は魅真の手をにぎったまま、牧に顔を向けて返事をした。
「絶対だよ!約束だから!」
神は再び魅真に顔を向け、もう一度にこっと笑うと、魅真の手を放した。
「じゃあね、真田魅真さん」
神は終始笑顔で、手をふりながらあいさつをすると、練習をするために、海南側のゴールに歩いていった。
「ちょっとお~~。アンタ、相変わらずモテるのね。他校の生徒にまで口説かれるなんて、なかなかやるじゃないの!」
神が遠ざかると、彩子はニヤニヤと笑いながら魅真に近づいてきて、魅真の体をひじでつついてからかった。
「そんなんじゃないですよ」
「まったまたぁ~。何もないのに、手をふったり、いきなり手をにぎったり、オレのプレイを見ていてほしいなんて、言うわけないじゃないの。もぉーー、照れなくていいって」
「照れてません。大体、なんで、初めて会った他校の生徒に、あんな風にされるのか、私も全然わからな……あれ…?」
「どうしたの?」
魅真は彩子と話している途中で、あることに気づく。
「なんであの人……私の名前を知ってるんだろう?」
それは、初対面のはずの神が、去り際に、自分の名前を呼んでいたことだった。
何故、神が自分の名前を知っているのか、魅真は疑問に思った。
その近くには三井と宮城がいて、今のやりとりを見ていた。
「三井サン、気になるスか?」
「別に…」
魅真の気持ちを知ってる宮城は、からかうように、試すように三井に問うが、魅真に対して特別な感情をもっていない三井は、冷めた返事を返した。
一方、海南の練習場所では…。
「何やってたんだ?神」
「すみません、牧さん。ちょっと…」
「相手チームのところまで行って、そこのマネージャーと話していたようだが、知り合いなのか?」
「知り合いというわけでは…」
「じゃあ、なんで話しかけたんだ?」
知り合いでもなんでもないのに、魅真に親しげに話しかけていたので、牧は疑問に思った。
「そうなんスよ、牧さん。神さん、予選の二回戦を見に行った時から、ずっとこうなんです。ずっとあの、みつあみの方のマネージャーに、手をふってて…」
そこへ、清田が割りこんできて、牧に第二試合からこの前の翔陽戦の時までの、神の様子を話した。
「めずらしいな。おまえが女性に興味をもつとは」
「嫌だな。オレだって、恋くらいしますよ」
「「恋!?」」
「はい」
らしくない言葉に、清田と牧は驚き、同時に同じことを言う。
「初恋の相手なんです」
驚きの表情を見せる二人とは対照的に、神は冷静で、口もとに笑みを浮かべて、包みかくさずに公言した。
それから、数分経つと練習の時間は終わり、スタメンとして試合に出る、花道、三井、宮城、流川、赤木は、試合の準備をしていた。
「さあ、始まるわよ!!」
「気合入れていきましょう!!」
「ほっほっ」
「さあ、行こーぜ!!」
「「「「おお!!」」」」
いよいよ海南との試合が始まることとなり、全員気合の入った顔と声で返事をした。
湘北がコートに歩き出すと、海南のスタメンの、牧、清田、神、高砂、武藤も、コートへと歩き出した。
「始めます!!」
両チームがセンターサークルの前まで来ると、審判は笛を鳴らし、合図を出す。
合図が出ると、両キャプテンの赤木と牧はセンターラインまで歩いてきて、まず赤木が牧のにぎり拳の上に自分のにぎり拳をのせ、次に牧が自分のにぎり拳を赤木のにぎり拳の上にのせて、あいさつをした。
あいさつをすると、牧はセンターサークルの周りに行くが、赤木はそこにそのまま残り、海南のセンターの高砂は、センターラインまでやって来て、他の選手はセンターサークルの周りに、それぞれ移動をする。
「見てたぜ、翔陽戦。ダンク決める気分ってのはどんなだ?」
ジャンプボールをする前、清田が花道の後ろに来て、花道の背中をひじでつついて、この前の翔陽戦のことを話した。
「(フッ…。さすが有名人…)」
聞かれると、花道はニヤリと笑う。
「おめーにはわかるまい」
そして、調子にのって、大きなことを得意げな顔で言った。
その後、審判の手からボールが宙に投げられ、試合が始まった。
ジャンプボールは赤木が勝ち、宮城がいる方へとんでいった。
宮城の手にボールが渡ろうとするタイミングで、流川は我先にと走り出し、ボールをとった宮城は、流川に向けてボールを投げた。
ボールは高砂の脇の下をぬうようにして通っていき、ボールは流川がとり、流川はそのままジャンプをしてダンクを決めようとしたが、いつの間にかゴール前まで走ってきていた牧に、ジャンプをして止められた。
なんとかボールをとられることは免れたものの、いきなり、しかもあっさりと止められたので、流川は舌打ちをした。
そして、これ以上はダメだと判断し、着地する寸前に、前を見ながら、後ろにいる三井にパスを出す。
三井はそのボールをとろうとするが、その寸前で、走ってきた神にカットされてしまった。
神はそのままドリブルしていき、三井もあとを追いかける。
我先にと走っていってる清田が、神に声をかけると、神は清田の方へ顔を向け、清田にパスを出した。
その後を花道が、清田をサル呼ばわりしながら追いかける。
更に、野猿とまで呼んだ花道に頭にきた清田は、花道を赤毛ザル呼びして、なんとも幼稚なやりとりをした。
その時、赤木に名前を呼ばれると、花道はジャンプをして、ボールをとろうとした。その高さに、誰もがびっくりしていた。
花道は空中でボールをとると、3歩歩いてしまい、清田が歩いたと叫ぶと、その直後、花道がボールを投げようと構えたところで、笛が鳴った。
「だーーー惜しいっ!!トラベリングだっ!!」
せっかくとったのに、初歩のミスをしてしまったので、湘北は悔しがった。
「かっかっかっ。てめーのボケのおかげで助かったぜ!!」
「野猿!!」
初歩のミスでチャンスを逃したので、清田がバカにすると、花道は腹を立て、顔を赤くする。
その後、赤木に後ろから尻をたたかれた。
顔は見えなくとも、こういうことをするのは赤木しかいないので、花道はギクッとなり、冷や汗をかきながら、おそるおそる後ろへふり返る。
「ナイスカットだ!!」
「――!!」
怒られるかと思ったが、おとがめはなかったので、花道はほっとして、顔が明るくなった。
そして、観客は今の両校のプレイに、海南がすごいのはもとより、湘北の攻防にも感心していた。
「ゴリ、気合入りまくってるな!」
「あたりまえだ。お前は入ってないのか」
「フッ…。この天才に愚問を…!!」
赤木は今日の試合では、いつもよりも気合が入っているが、気合が入ってるのは花道も同じで、赤木の問いにニヤッと笑う。
試合は海南から再開され、それぞれがそれぞれのマークする相手についた。
だが、牧をマークしている宮城は、184cmもある牧とは16cmも身長差があり、牧が高砂にパスをする時に簡単に上を通されてしまい、ボールは高砂の手に渡った。
高砂はそのままシュートをしようとするが、赤木にブロックされてしまい、海南が先取点をとることはできなかった。
ボールを奪った湘北は、宮城が速攻を出してボールを運び、スリーポイントラインの前で、三井にパスをした。
三井がその場所でシュート体勢に入ったので、3Pを打つのかと思い、神は跳んでブロックしようとするが、実は今のはフェイクで、三井は神がジャンプした隙に、神を抜き去った。
「うまいっ!!」
「よしっ。いけえ、三井先輩!!」
三井はそのままレイアップを決めようとした。
だが、あと少しでボールがネットをくぐるというところで、牧がカットしたために不発となった。
しかも三井は、今の牧のカットでふっとばされて、床に仰向けに倒れてしまう。
ボールは神の手に渡り、神が速攻を出すと、清田が神の隣を走る。
神と清田の前には花道と流川がおり、二人を迎え撃とうとしていた。
流川は花道に、清田につけと指示するも、誰かに指示されるのが嫌いな上に、よりによって流川に指示されたので、花道は腹を立てた。
「流川っ!!神の3ポイント気をつけろ!!打ってくるぞ!!」
花道は清田に、流川は神につき、神は流川の前まで来ると、ゴールを見ながらドリブルをした。
流川は神が3Pを打つかと思ったが、それはフェイクで、神はゴールを見ながら、片手で清田にパスをした。
そして、ボールをもらった清田はシュートをしようとジャンプするが、花道は赤木直伝のハエたたきでブロックしようとした。
しかし、清田は花道のハエたたきを空中でかわして、ダンクを決めた。そのプレイに、誰もが驚いた。
この清田のダンクがきっかけで、試合開始から3分30分が経過した頃、海南は合計で6点とるものの、湘北は未だに点がとれないでいた。
花道は腹を立てていた。ジャンプボールが始まる前、あたかも自分はダンクができないような言い方をしていたのに、実は清田もダンクができるからだった。
「この桜木をコケにしやがったな!!」
花道は怒りで、メラメラと闘魂を燃やしていた。
「マズいぞ。ここは、なんとしてもついていかないと…!!」
「とにかく、まず1本だ!!」
このまま無得点が続けば、ムードは更に落ちこんでいくので、まずはなんとか、1点だけでも得点をいれなければいけなかった。
ボールは三井に渡り、シュート体勢に入ったので、神はまた止めるためにジャンプするが、三井は今度は抜くのではなく、神の腕の下から、片手でパスを出した。
またしてもやられてしまったので、後ろを見てみると、神の後ろにいた赤木が三井のパスをとり、そのままダンクを決めようとした。
「アマーーい!!」
そこを、後ろから高砂が、前から清田が、赤木を止めようとした。
清田は、赤木の身長に対抗できるほどのジャンプ力をもっており、誰もが驚いたが、それでも赤木はダンクを決めた。
赤木がダンクを決めると、清田は赤木の力強いパワープレイに押されてしまい、背中から倒れてしまった。
「ゴリ!!」
赤木がダンクを決めたので、花道はうれしそうに笑う。
「どっちがだ?」
「くっ…」
甘いのはお前だと言うように、赤木は清田に向けてボールを放った。
その後も湘北は、海南相手に、予想に反して大健闘をした。
赤木の気合の入ったプレイで海南にくらいつき、4点以上のリードを許さず、前半は残り10分となり、得点は20対16となった。
花道は海南相手に、オフェンスリバウンドをとる。
牧は目を見張り、三井は花道の健闘を称え、人がたくさんいたので、赤木は立て直すためにいったん戻すよう花道に指示をする。
花道はその指示に従って、ラインの外にいる宮城にボールを渡した。
「よーーし、じっくり!もう1本いこう!!」
この大健闘に、観客席や関係者席からは、拍手がわき起こった。
「いいぞ桜木!!」
「ナイスリバン!!」
「桜木のあのリバウンド力は、今やうちに欠かせない戦力になってきましたね、先生!海南相手にも通用してますよ…!!」
「ほっほっほっ。そうですね」
その花道は、ドリブルでボールを運んでいたが、途中で牧にカットされてしまう。
もう、ボールはコートの外に出ていたが、床についてはいないので、あきらめずに追いかけていき、ジャンプをすると、ボールをはじいて中に戻し、それを宮城がとった。
「危なーーい!!」
しかし、花道はそのままベンチに倒れこんでいき、ちょうど前にいた安西にぶつかり、ベンチごと倒れてしまった。
だが、すぐにジャンプして起きあがってコートに入って走っていき、宮城に追いついた。
「大丈夫ですか、先生!!」
「うむ…」
「ナイスファイトだけど…。ムチャするわね、相変わらず…」
安西は巻きこまれたが、魅真達は、花道がジャンプした時に立ち上がっていたので、難を逃れており、一緒に倒れた安西の身を案じた。
一方で高頭は、花道の運動量に目を見張り、牧もまた花道に目を見張っていた。
そして、その花道は、またリバウンドをとった。
「おもしろい。10番、オレがマークしてやる!!」
「ぬっ!?」
花道のリバウンドを見た牧は、花道をマークすることを宣言すると、宣言通りに花道をマークしだした。
「牧さん!!」
牧が自ら花道をマークしだしたので、清田と神は驚き、観客席もどよめいた。
「…君、何年?」
「ん?」
「高校生?」
「!」
けど花道は、この試合とはまったく関係ない、とても失礼なことを牧に聞いていた。
「バッ…バカヤロウ!!」
「おい野猿!!ズルイぞてめーら。OBを連れてくるとは!!」
「バカかてめーは!!牧さんはこれでも、れっきとした高3だ!!17才だぞ!!」
「何、17!?」
フォローしてはいるが、何気に清田も失礼なことを言っていた。
花道は、牧が17才だと知ると、後ろにいる牧をちらっと見た。
「何が17才だ!!ダマされるか!」
「…………」
チームメイトの清田が証言するが、それでも花道は信じなかった。
「試合中だぞ!!私語はつつしみなさい、両チームとも!!」
試合の途中で、試合に関係ないことを話していたので、審判は笛を鳴らして注意をする。
「今回は警告だが、次からは、没収試合にもなりうるから、気をつけるよーに!特に両方の10番!」
「どあほうは死ななきゃなおらない」
主に花道と清田への警告なので、審判が指さして注意すると、二人はお互いに睨みあい、流川は二人をバカにした。
「やれやれ」
「困ったもんです」
高頭も安西も、チームの問題児に頭を抱えていた。
まさか、県NO.1プレイヤーとして名高い牧を、コケにする奴がいるとは思わず、館内はざわついた。
「ぬ…?」
館内がざわつく中、話の中心になっていた牧は、黙ったままつっ立っていたが、突然花道の方へ、一歩歩み寄った。
「赤木の方がフケてるぞ!!」
そして、花道が言ったことを否定した。
「牧!!」
まさか、飛び火がくるとは思わず、赤木はショックを受け、牧に顔を向ける。
「そういえば…」
「見るな!」
「(気にしていたのか…)」
牧が言ったことに、高野、永野、村雨、審判は間のぬけた声を出し、花道は言われてみればそうかもしれないと思い、後ろにいる赤木を見て、魅真は今のやりとりに、声を押し殺して笑っていた。
「来い、桜木!!」
「おお!!いくぞジイ!!」
いつまでも話しているわけにもいかないので、試合を再開した。
湘北側のオフェンスで、ゴール下まで行ったが、シュートははずれたので、花道がリバウンドをとるも、牧にカットされてしまい、ボールを奪われ、神にパスすると、神はレイアップを決めた。
「すごい…」
「え?」
「さすがは、神奈川NO.1プレイヤーの牧さん。守り方も攻め方もすごいわ。積極的で、果敢で、運動能力もいいし、守りながら攻めている…。それに神さんも、運動能力は牧さんほどじゃないけど、あの流れるようなシュートは、相当なものだわ」
すごいと言ったのは、相手チームのプレイだった。バスケ好きの血がさわぎ、今の牧のプレイと、神の流れるようなシュートに見惚れていたのだった。
以前、陵南との練習試合の時にもこんなことがあったので、彩子はいつものことだと、つっこむ気にすらなれなかった。
すると、魅真が称賛して神に目を向けていると、神がにこにこと笑いながら、魅真に手をふってきたので、魅真もまだぎこちなさがある動作で手をふり返した。
今のプレイで、点差は6点と差が開き始めた。
牧にカットされたので、花道が悔しがりながら走っていると、後ろから走っていた宮城が、あれやってみろと声をかける。
「…しかし、桜木って奴は、海南の牧相手でもものおじしないな…!!見てる方が怖くなってくるよ…」
「なんせ、入学早々、あの赤木先輩に、ケンカ売った男だからね…」
「あいつは、よくも悪くも怖いもの知らずなんですよ」
なんの躊躇もなく牧に立ち向かっていく花道に、木暮と彩子は冷や冷やしていた。
花道がゴールの近くまで来ると、牧の隣に清田が来て、牧自らマークすることはないので、自分がマークをすると、花道のマークを代わった。
更には、自分でももったいなすぎると、挑発をする。
そしてボールは、宮城から花道に渡り、ボールが花道に渡ると清田は構えるが、花道はそのままシュートをしようとした。
清田はブロックしようと手をあげたが、それはフェイクで、花道は清田を抜き去ってシュートを決めた。
まさか、花道に出し抜かれるとは思わず、清田はショックを受けた。
「今のはワザとらしくなかったぞ、花道!!」
「リョーちん!!」
先程、宮城が花道に言っていたあれというのは、以前宮城が花道に教えたフェイクのことだった。
「計算外の選手にかき回されて、翔陽はペースを乱した…」
現時点では、まだ自分のとこのチームが勝っているが、それでもまた点をつめられたが、高頭は冷静だった。
「(ハルコさん。やった!!)」
コートでは、晴子にいいところを見せられたので、花道が晴子に向けて、Vサインをした。
「彼には、カヤの外にいてもらおうかな」
点差はそんなに離れていないので、高頭は今のうちに、花道をなんとかしようと、席を立ち上がった。
「チャージドタイムアウト、海南!!」
そのために、まだ海南側がリードしているが、高頭は最初のタイムアウトをとった。
「ナイス桜木!!練習でも、あんなに決まったことはないだろう!!」
「ハッハッハッ!!ここ一番の桜木と呼んでくれい、メガネ君!!」
リバウンドはよくとったし、フェイクは成功したしで、花道はかなり有頂天になっていた。
魅真はタオルとドリンクをそれぞれに渡し、花道達試合に出ていた者は、少しでも体を休めるために、ベンチにすわった。
この時点では、特に伝えることもないため、安西は何か言うことはせず、しばらくすると審判の笛が鳴り、タイムアウトは終わりとなった。
「さあ来ーーい!!」
試合が再開されても、花道は有頂天のままだった。
その時、目の前にいる人物に、全員目を見張った。
目の前には、神ではなく、魅真とほとんど背の高さが変わらない、小さくて、体が細くて、見た目がひよわな人物…宮益が、牧の隣で、すごいぎこちない動きでドリブルをしながら、花道達の方へ走ってきた。
「おおっ!?なんだ、あの小さいヘンな奴は!?宇宙人?」
相手がゴーグルのような眼鏡をしているので、花道はかなり失礼なことを言っていた。
「どういうことだ。キープレイヤーの神を外して…?そんなにいい選手なのか?」
「いい選手かどうかはわかりませんけど…。でも、油断は禁物です。何しろ、あの王者海南のユニフォームをつけてる人ですからね」
とてもではないが、見た目はそんなにすごくいい選手には見えなかった。
宮城は宮益のもとまで走っていくと、ボールをカットした。あっさりとカットできたし、足も遅いので、宮城はふしぎに思っていた。
しかし、フォローするために、フリースローラインの前に、素早く牧がやって来て、宮城の前に立ちはだかったので、速攻は不発に終わった。
そして、海南のディフェンスとなったが、海南はボックス&ワンで、神の代わりに出てきた宮益が、花道のマークについた。
「ぬ…!?」
「10番オッケー!!」
身長差も体格差もありすぎるので、あまりにもミスマッチだった。
「なるほどね…」
二人のミスマッチを見た魅真は、何故高頭が神と交替させ、しかも花道のマークにつかせたのかがわかった。
そして、高頭の思惑に気づいたのは、魅真だけでなく、赤木や流川もだった。
花道は、宮益が見た目弱そうなので激怒するが、宮益は挑発した。
花道はそれが気に入らず、宮益を睨みつけると、花道の眼力に宮益はびくつくが、清田にはやしたてられると、弱々しくも更に挑発をする。
あっさりと挑発にのった花道は、パスをもらうとシュートをしようとするが、宮益は何もしなかった。それは、できるだけ花道を挑発しろ。でも、ディフェンスは何もしなくていいと、タイムアウトの時に、高頭に言われたからだった。
花道はフリーなのにシュートをはずし、リバウンドは武藤がとった。
その後、また湘北の攻撃のチャンスとなり、花道にボールが渡ったが、それでも外し、更にまた外し、その上また外し、海南ボールとなり、清田に速攻を出された。
「ダメだ!!この前バスケを始めたばかりの桜木には、ゴール下シュートやジャンプシュートは、まだ教えてない!!あんなディフェンスでも入らないんだ!!」
「海南の監督は、なかなかキレる人ね。冷静で、頭がよくて、選手をよく見ている」
「…………まだ、牧君にマークされてる方がよかったね……。 (さすが高頭君…。桜木君を裸にした……)」
高頭の智略に、魅真と安西は感心した。
そして、花道は連続で外したが、清田は速攻を決め、点差は10点になった。
「あの15番のマークは軽くしていいんだ!!その分ほかの4人にあたるぞ!!神のいない今、離されてちゃ話にならねーぞ!!」
点差が10点になり、湘北に焦りが見え始めた。そのせいか三井は、更に首をしめるようなことを指示する。
一方花道は、何度もシュートを失敗したので、赤木に、どうすればシュートが入るのかと質問していた。
花道が赤木に質問している間にも、牧は宮城からボールを奪い、速攻を出したので、今はそれどころではないため、赤木はディフェンスをするように指示しながら走り出した。
牧は3Pラインの前まで来ると、宮益にパスを出したが、三井は15番はいいので牧につけと指示するが、それは甘かった。
宮益はそこからシュートを決め、更に3点が加点されたので、三井はショックをうける。
「油断しすぎでしょ。見た目がどんなだって、相手は海南のユニフォームを勝ちとった人なのよ」
三井達は、見るからに宮益を甘く見て、油断していたので、魅真は呆れていた。
宮益は喜び、海南は宮益を称賛し、湘北は呆然としていた。
「海南のユニフォームをとった男だぞ」
湘北は、明らかに宮益になめてかかっていたので、牧はなめてもらっちゃ困ると言うように、宮益の肩に手を置き、魅真と同じことを言った。
10点以上の差をあけ、更には部員達の信頼が厚い彼なので、周りは称賛して盛り上がった。
「まずいわ…」
「何が?」
「完全にペースを乱された。ここでなんとかしないと…負けるわ」
監督ではないが、経験者ではあるので、魅真が言ってることは信憑性があり、実際にそういう雰囲気になってるので、彩子は冷や汗をかいた。
「さあ来ォい、桜木!!」
「ふぬ…!!」
称賛されて有頂天になったのもあり、宮益は、また花道を挑発をした。
「ゴリ!!何かコツを教えてくれ!!コツを!!」
宮益が投入されてからのプレイで、まずいと感じた花道は、再び赤木にアドバイスを求める。
「今何とかしないと、一気にいかれるぞ!!とり返しがつかなくなる!!負けるぞ!」
「…………!! (コイツなりに、海南の強さを肌で感じたか…!!その通りだ…!!)」
ここでなんとかしないと、花道が言った通り、負けるのは赤木にもわかっていたが、言ってすぐにできるものでもなかった。
「桜木…!!」
「おう!!」
「この試合中に、ゴール下シュートを身につけようと思ってもムリだ。もううつな」
「なに!?」
一朝一夕でできるものではないので、もうシュートはしないようにアドバイスをする。
まさか、そんなアドバイスをされるとは思わず、花道が驚きの声をあげると、赤木は花道の肩に腕をまわした。
「ぬ!?」
「ゴール下では、ダンクだけ狙え!!」
「!!」
「(おそらく、それが最も確率が高い……!!)」
直接リングにたたきこむダンクなら、まだ可能性があるので、赤木は花道に、そのように指示を出した。
湘北のオフェンスとなり、海南はまた、ボックスワンのディフェンスをしいた。
そして、マンツーマンで宮益にマークされてる花道に、ボールが渡った。
「またあいつだ!!」
花道にボールが渡ると、観客はざわついた。
花道は、自分が決めていたら、こんなに点差がついてないはずなので、自分が決めると、心の中で意気込んでいた。
「よせーーっ。どーせ入りっこねーんだから!!」
観客が汚いヤジをとばしたので、そのヤジに魅真はムッとして、声がした方を睨みつけた。
「来ォい、桜木!!」
「うるせーーっ!!!」
シュートは決まらないし、点差が開くし、汚いヤジをとばされるし、宮益に挑発されるしで、花道は頭に血がのぼった状態で、ダンクを決めようとする。
ダンクを決めようとした花道にびびった宮益は叫ぶが、そこを後ろから、牧が花道の腕をたたいて止めた。
「ファウル!!白4番!!」
今のは牧のファウルとなった。
「フリースロー!!」
「!!」
しかも、花道のフリースローとなってしまった。
「フ………フリースロー…?」
フリースローが苦手な花道は、苦い顔をするが、牧はニヤリと笑った。
「(牧…!!)」
その笑みで、赤木は牧がわざとやったのを見抜いた。
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