#26 不死鳥の如く
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「フリースロー!!」
フリースローを打つため、三井はフリースローラインの前に立つと、審判にボールをもらう。
「3本だ!!これで三井も少しは休める…。
!?」
制限時間は、1本につきたったの5秒だが、それでも、ほんの数秒でも休むと少し変わってくるので、木暮はほっとしていたが、三井はボールをもらうと、すぐにシュートを打った。
「どーしてそんなスグうつんだー!?」
明らかに疲労しているのに、休むことなくすぐに打ってしまったので、木暮は叫んだ。
シュートはあたり前のように決まった。
「さっさと続きを始めるぞ!!オレの気持ちが醒めないうちにな!!」
ボックスワンで長谷川にマークされ、更に疲労したはずだが、長谷川のマークによって、三井は3年前の全中の決勝戦を思い出し、気持ちが燃えあがった。
眠れる獅子を呼び覚ましてしまったのだ。
三井は、その後の2本のシュートも決めて、58対49と、点差を10点以内に縮めた。
「さあ、1本だ!!じっくりいくぞ!!」
「おう!!」
今度は翔陽のオフェンスとなり、藤真が指揮をとった。
「さがるな!!あたるぞ!!」
全員がさがっていく中、三井はまっこうから迎え撃とうと、センターラインのあたりで止まった。
「三井!!」
「ミッチー!!」
三井はオールコートであたっていった。ここでなんとかしないと、このままで試合終了となってしまうからだ。
「(バカな。オールコートなんて、三井…!!お前はもう限界のはずだ…!!)」
「(三井先輩…。がんばって!!)」
オールコートのディフェンスはかなり疲れるので、体力が限界にきている三井を、木暮は心配するが、魅真はまっすぐな目で三井を応援した。
ボールは藤真から長谷川に渡り、長谷川は攻めようとしたが、着地したところで、足の動きが止まってしまう。
目の前にいた三井が、すさまじい気迫に満ちた目で構えていたからだ。
「来い」
その三井に、長谷川は一瞬ひるみ、それを宮城は見逃さず、ボールを奪いとった。
宮城はドリブルをしながらゴールまで走っていき、そのあとを、三井も長谷川も追いかけていく。
宮城は、この1本は大事だと、じっくり攻めて絶対モノにすると、慎重になっていた。
「宮城」
そこへ、三井が宮城の近くにやって来て、ボールを渡すよう、名前を呼んだので、宮城は三井にパスをした。
慎重になっている宮城は、どう攻めるかと考えていた。中へ切れこんでかき回して、赤木につなぐかと思っていたが、三井はパスなどせず、そのままそこからシュートを打ったので、宮城は驚く。
落ちるかもしれないので、ゴール下にいる赤木、高野、花形、永野は、リバウンドをとろうとするが、シュートは決まり、3点が加点された。
「うわああーーーっ!!!」
「入った!!!」
フリースローと合わせて、一気に6点も縮めたので、湘北は喜び、思わず席を立ちあがって盛り上がった。
「やったあ。三井先輩!!」
もちろん魅真も、立ち上がるまではしないが、うれしそうに顔をほころばせていた。
「負けねえ…。負けねえぞ…」
三井はもう相当疲れており、荒い息をくり返して、今にも倒れそうだった。だが、それでも負けまいと、気力で立っていた。
長谷川は、今のでもう11点も入ってしまったので、悔しそうにしていた。
「「「ディフェンス!!ディフェンス!!」」」
この三井のプレイで、湘北は勢いづき、ベンチの応援にも力が入る。
「さあ、ここだ!!根性見せろよ、お前ら!!」
「「おお!!」」
それは、ベンチだけでなく、コートにいる選手達もだった。三井の今のプレイで、更に気合が入ったのである。
「(こんなところで負けてたまるか…。オレが入ったのに、ベスト8くらいで、負けてたまるか…!!)」
それでもまだ、逆転したわけでも、試合が終わったわけでもないので、三井は戦うために、闘志を燃やした。
「(ここで働けなけりゃ…オレは、ただの大バカヤロウだ)」
そして、少し前に、バスケ部をブッ壊すと、体育館を襲撃した時のことを思い出す。
「(負けねえぞ!!)」
そのことを思い出すと、三井は更に闘志を燃やして、まっすぐに相手を見据えた。
三井が決めたので、翔陽ボールで始まり、藤真がゴール近くまで来ると、そこから3Pを打とうとしたが、宮城がカットして、ボールを奪い取る。
「宮城!!速攻だっ!!」
宮城がボールを奪うと、三井は走り出した。
「おう!!へっへっ、やったぜ!!」
三井に声をかけられると、宮城もドリブルをしながら、湘北側のゴールへと走っていく。
「いっけええーーーっ!!三井先輩!!」
息を乱しながらも、懸命にプレイをしてる三井の姿に、魅真は声援を送った。
宮城が走っていると、藤真が宮城に追いつき、宮城からボールをカットするが、宮城はすぐにボールをとったので、奪われることは免れた。
「三井サン!!」
このままだと藤真に奪われるかもしれないので、宮城はフリーの状態の三井にボールをパスする。
ボールをとった三井は、3Pラインの中にいたので、ドリブルを使って外に出ると、3Pシュートを打った。
その、シュートを打った時の綺麗なフォームを見て、魅真は3年前の全中の決勝戦の時のことを思い出し、頬を赤くそめる。
「(入った!!)」
まだボールはネットに入ってはいないが、その前に、すでにシュートが決まると確信した三井は、右手でにぎり拳を作って、まっすぐ上にあげた。
その後、シュートは決まり、また湘北に3点が加点された。
シュートが決まると、赤木が三井の前にやって来た。
「まだ錆びついちゃいなかったようだな、三井!!」
「あ?」
そして、いきなり悪態をついた。
「おめーはどーした、赤木。まだゴリラらしい暴れっぷりが、出てねーんじゃねーか?」
けど、三井は三井で、赤木に悪態で返す。
「ぬかせ」
「フン」
お互いに悪態をついていたが、すれ違いざまに、健闘をたたえるように、ハイタッチをした。
「よーーし、いけるっ!!いけるぞ!!」
「3点差!!」
「翔陽を倒して、決勝リーグ進出だ!!」
とうとう3点差になり、時間はまだ4分近くあるので、このままいけば勝てると、湘北側は希望をもった。
「3点差なら、ミッチーの3点シュート1発で同点だぜ!!」
「ミッチーにうたせろ!!」
「ミッチー!!」
「あんときはムカついたけど、今は好きさ!!」
「「「「ミッチーミッチーミッチーミッチー」」」」
希望をもち、盛り上がっているのは洋平達も同じで、洋平達は、あと3点で同点なので、三井に打つように叫んだ。
「あいつら…」
その応援が聞こえていた三井は、まさか、つい最近、不良だった自分や自分の友人達とケンカをした洋平達が、自分を応援してくれるとは思わず、洋平達に顔を向けた。
一方、その洋平達の友人である花道は、もうファウル4つになって、あとがないので、ファウルを恐れ、体の接触をさけていた。
その間にも、藤真は宮城の前で、宮城の方に顔を向けながら、花道がマークをしている高野にパスをした。
三井と赤木は、花道に止めるように言うが、ファウルを恐れて縮こまってしまったので、高野はシュートを決めてしまい、点差は5点にひろがった。
「(くっ……。ファウルを怖がってるな…。しかし、それでも桜木には、1分でも長くコートにいてもらわんとこまる。桜木が抜けると、高さのバランスが崩れて、一気にやられる恐れがあるからな)」
赤木は、花道がファウルを恐れていることを見抜いていた。
「桜木んとこが穴だ!!」
「桜木を狙え!!」
しかも、高野には弱点扱いまでされる始末で、その話が聞こえていた花道は、過剰に反応を示す。
そして、高野と永野に、わざとらしいくらいに声を出してマークされるも、うまく動くことができなかった。
しかし、三井は更に活躍した。
また3Pを打ち、それを決めたのだ。
長谷川は、ボールには触れなかったがバランスは崩したので落ちると思ったが、決まってしまったので、ショックを受けた。
これで、とうとう1ゴール差となった。
三井が決めて、翔陽ボールになると、高野が自分にパスをするように叫んだ。もちろんこれは、花道が穴だと見抜いたからで、パスをとると花道の方へふり向き、止められるもんなら止めてみろと、挑発をする。花道は腹を立てるが、それでも手出しはできず、高野はシュートを打とうとした。
しかし後ろから、流川が、高野の腕と腕の間からボールをカットしたために、打つことができなかった。
「ファウル!!白⑪番!!」
カットした際、高野の腕にあたってしまったために、流川はファウルをもらってしまう。
もちろんこれは、花道のところから攻めてくるのをわかってたからなのだが、ファウルになってしまったので、流川は舌打ちをしており、高野は腹を立てていた。
高野は今のでフリースローをもらったが、2本ともミスし、リバウンドは流川がとった。
そんな中、まっさきにゴールに向かって走っていた三井は、パスを寄こすようにと、流川の名前を叫んだ。
流川は三井にパスを出すが、三井の手に渡る直前に、追いついた藤真がカットをしたので、ボールはラインの外に出ようとしていた。
だが、三井はあきらめず、ボールを追い、ジャンプをして、すでに外に出かかっているボールをとった。
そして、近くに味方はいないかと後ろへふり向くと、ちょうどいいところに流川が走ってきていたので、三井は流川にパスをして、流川がパスをとると、三井はそのまま、翔陽のベンチに倒れこんだ。
「三井先輩!!」
「三井!!」
それを見た魅真と木暮は、心配そうに叫ぶ。
その間にも、ゴール前に来た流川は、花形、高野、永野の3人が止めようとする中、ダンクを決めたので、残り2分30秒、ついに同点にまで追いついた。
「三井、大丈夫か!!」
三井が倒れたので、木暮と安田は、翔陽側のベンチまで走ってきた。
本当は、魅真も駆けつけたかったのだが、マネージャーとしての仕事があったため、ベンチに残ったのだった。
「おい…」
「ぬ…!!」
一方コートの中では、めずらしく、流川が花道に声をかけていた。
「なに縮こまってやがる」
だが、声をかけたと思ったら、いきなり悪態をついてきた。
「らしくねーんじゃねーのか」
「……!!」
しかし、それは流川なりの激励だった。
そして三井は、体力を使いはたしてしまったため、後半残り2分30秒で、20得点という数字を残して、ついにコートから去った。
最後までコートにいることはできなかったが、三井が去る時、観客席からは、三井の健闘を称えるように、拍手が送られた。
「すいません、先生…」
「三井君…」
ベンチまで来ると、最後までコートに立っていることができなかったので、三井は安西に謝罪した。
「君がいてよかった…」
だが、安西は三井の健闘をたたえた。
安西の言葉に、三井は笑顔になった。
それは三井にとって、何よりの言葉だったからだ。
「先生…」
木暮はシャツをぬぎ、ユニフォーム姿になると、三井の背中を軽くたたいた。
「三井先輩」
「ん?おお…サンキュ」
三井と安西の会話が終わると、魅真はタオルとポカリスエットを渡す。
タオルとポカリスエットを受け取ると、三井は、魅真の顔を見て微笑みを向けた。
魅真は三井の微笑みを見ると、三井がそんな顔を自分に向けるなんてめずらしいとも思ったが、三井が自分に笑いかけてくれたことがうれしくなり、三井の微笑みに顔を赤くしながら、満面の笑顔を返した。
一方コートでは、流川と向かい合っている花道が、先程の、らしくねーんじゃねーのかという言葉と、なにちぢこまってやがるというセリフが、頭の中でリピートされていた。
「ふんぬーーーーーーーー」
その後に、木暮がコートに片足を入れたタイミングで、大きな声で叫んだ。
その叫び声に、流川以外の全員がびくっとなる。
更に花道は、床に3回頭つきをしたので、その奇怪な行動に、流川をのぞいた湘北と翔陽の全員が驚き、奇妙なものを見る目で花道を見た。
「誰がちぢこまってるって?」
「おめーだ」
「てめーには負けねーぞ!!」
「口だけ男」
「ふぬ…」
「出た!!湘北名物イジのはりあい」
「こんな時に何やってんだか、アイツらは」
試合中なのに、意地のはりあいをしていたので、魅真と彩子はあきれていた。
「いくぞ!!絶対勝ーつ!!!」
木暮が、三井と交替でコートに入ってきたところで、試合再開となった。
「(頼む…。勝ってくれよ…)」
残りはあと2分30秒だが、いくらでも状況をひっくり返せるので、三井は心の中で、湘北が勝つように祈った。
「(4ファウルがどーした!!オレは天才だから、大丈夫のハズだ!!)」
試合が再開され、花道は気合が入った。
流川が言ったことに腹を立てていたが、なんだかんだと流川の影響を受けている花道だった。
翔陽ボールで始まり、そのまま翔陽側のコートにボールが運ばれていき、花形が決めようとするが落ちてしまったので、花道がリバウンドをとった。
「ナイスリバン!!これで10本め!!」
「すごいよ桜木君!!」
花道は今ので、今試合10本めのリバウンドをとったのだった。
ボールは最終的に流川の手に渡り、花形、永野、長谷川にマークされる中、永野と長谷川の隙間をぬうような形でレイアップを決めたので、とうとう逆転した。
「てめえ、かっこつけてんじゃねーぞ、ルカワ!!」
「そりゃおめーだろ」
流川が決めたので、花道は噛みつくが、流川は冷静だった。
それからも、花道は、先程までの固い動きがうそのように、いい動きをしていた。
花道にマークされた高野は、花道のディフェンスでシュートを打つことができないので、藤真にパスをしようとするが、そこを花道がカットし、カットされたボールを木暮がとった。
カットすると花道は走り出し、木暮にボールをパスするように名前を呼んだ。
フリーの状態の花道は、木暮からパスをもらう。
「見てやがれ、ルカワ!!」
対抗意識を燃やしている花道は、後ろにいる流川を横目で見ると、そのままゴールへとつっ走っていく。
「ファウルしろ、花形!!フリースローなら、そいつは入らない!!」
その花道を止めるように、藤真は花形に指示を出した。
指示を出された花形は、ゴール前に来ると、ジャンプをして花道を止めようとする。隣には永野もいて、同じく花道を止めようとしていた。
花道はボールを持ってジャンプをすると、みんなが見守る中、豪快なダンクを決めた。
ダンクを決めたことで、花形と永野はふっとばされた。
まさか、花道がそんなことをやってのけるとは思わず、湘北も、翔陽も、洋平達や晴子も、この試合を見ていた陵南や海南も、目と口を大きくあけて驚いていた。
「おおおおおーーっ!!!!」
「桜木!!!!」
そのすぐ後、静まり返った場内は、割れるような観客の叫び声が響いた。
しかし、叫び声があがった後、審判の笛が鳴った。
「オフェンス!!チャージング!!白⑩番!!」
だが、今のはチャージングとなり、ノーカウントとなった。
残り時間1分50秒、花道は退場となる。
「おい」
「ぬ……」
花道がベンチに戻る前、流川が後ろから声をかけた。
「惜しかったな。てめーにしては」
「…………」
また悪態をつくのかと思いきや、流川は流川なりに称賛して、花道から離れていった。
そんな流川に、花道はめずらしく何も返すことなく、肩で息をしたまま流川を見ていた。
「桜木!!スゴかったぞ!!」
「スーパーリバウンダー桜木!!」
「桜木!!」
「やっぱり桜木さんや!!とんでもないお方やったんや!!超要チェック人物やったんや!!やっぱりワイのゆうた通りや!!」
今のダンクは、チャージングをとられたことにより、ノーカウントとなった。
しかし、この日一番の大歓声は、花道に送られたのだった。
観客達は、ずっと桜木コールをしており、盛り上がっていた。
「やったやった!!すごいよ、花道!!」
「魅真…」
花道がベンチに戻ってくると、魅真は興奮しながら花道にタオルを渡す。
「桜木花道!よくやったわよ!!ダンク決めた気分は!?」
「アヤコさん…。イヤ…夢中で…」
「あれ?」
次に彩子が称賛するが、花道は口数が少なく、その上大人しかったので、いつものように「天才ですから!」と調子にのって笑うかと思いきや、意外なリアクションをしてきたので、彩子は戸惑った。
花道は、魅真からもらったタオルを肩にかけると、ベンチの空いてる場所にすわる。
「(心臓の音がきこえる…)」
花道の心は、まだ興奮が冷めていなかった。
肩で息をして、心臓の音がじかに聞こえてきていた。
花道のスラムダンクは、チャージングになってしまったが、観衆を味方につけた。
館内は、最初は翔陽の応援で盛り上がっていたが、今は湘北の応援でいっぱいになっていた。
けど、翔陽も負けじと盛り上げるが、どこか勢いがなかった。
「よーーし。後は任せろ!!!」
花道が退場になると、代わりに角田がコートにあがり、試合再開となった。
最後の気力をふりしぼる湘北は、残り1分50秒、県NO.2翔陽のプライドをかけた猛攻に、最後まで耐えぬいたのだった。
「試合終了~~~!!!」
それから1分50秒が経ち、試合は終了となり、62対60で湘北が勝ち、翔陽は負けてしまった。
「勝ったああああっ!!!」
「決勝リーグ進出だーっ!!!」
翔陽に勝ち、決勝リーグ進出となったので、湘北は全員が喜んだ。
対して翔陽は、全員が悔しそうにしており、花形と永野は涙を流した。
「62対60で、湘北の勝ち!!」
試合が終わったので整列をすると、審判の口から、湘北の勝利が告げられた。
「ありがとうございました!!」
あいさつをしながら、礼をして顔を下に向けた瞬間、藤真の目からは、こらえていた涙があふれ出した。
その後、試合が終了して更衣室に行くと、花道、流川、三井、宮城、赤木は、試合の疲れで眠ってしまった。
翔陽戦が行われた次の日。
その日、魅真は一人で登校していた。
「あっ!」
その途中で、目の前にあるものを目にすると、うれしそうに顔をほころばせる。
「三井先輩!!リョータ先輩も!」
目の前には、三井と宮城がいたので、魅真は笑顔で2人のもとへ走っていった。
「魅真ちゃん。おはよ」
「おう」
「おはようございます」
魅真は三井の隣にやって来て、魅真が隣に来ると、それぞれあいさつをした。
「昨日は勝ってよかったですね。いよいよ決勝リーグです」
「ああ」
「まあな」
「そうだ、真田」
「な、なんでしょう」
話していると、突然三井に名前を呼ばれたので、魅真はそれだけで顔が赤くなる。
「昨日はサンキューな」
「えっ…?」
「昨日、真田が激励してくれたおかげで、オレはあれだけ動くことができた。安西先生にも褒めてもらえた。真田のおかげだ」
まさか、昨日の件でお礼を言われるとは思いもしなかったので、魅真は驚き、更に顔を赤くした。
「い…いえっ…。三井先輩のお役に立てたのなら、私はそれで満足です!」
お礼を言われただけだが、魅真はうれしくなり、必死に言葉をつむいだ。
魅真がそう言うと、三井は口角をあげて優しい笑顔を浮かべたので、自分に笑顔を向けてくれたのがうれしい魅真は、更に顔を赤くして、三井の顔をみつめた。
それは、まさに恋する乙女だった。
一方で宮城は、魅真を応援してはいるものの、蚊帳の外といった感じなので、ちょっとだけふてくされていた。
そして、そこから少し歩いていくと、学校の校門の前まで来た。
「あれ?何かさわがしいですね」
校内が異様にざわついているので、魅真は何事かと思った。
「なんの騒ぎだ?」
「ん?何だこれ」
校内が騒がしいことに、宮城も疑問に思い、三井は校内に舞っている紙をとった。
その時、そこにいた花道の後ろで自転車のベルが鳴り、鳴ったかと思うと、そのすぐ後に、流川が自転車で、花道の背中に突進してきた。
「コラァ、ルカワ!!」
いきなり自転車がぶつかった上に、運転していたのが流川だったので、花道は怒鳴る。
「おおっ、バスケ部最強メンバーがそろった!!」
「この5人がそろうと、スゲエ迫力だな…」
「こわすぎる」
「こりゃいけるぜ…!!」
「赤木!!今年こそIHにいってくれよ!!」
「なんだ…?」
「ガンバレよ、バスケ部!!」
「いけるぜ、今年は!!」
バスケ部のスタメンがそろうと、周りにいた生徒達は、突然バスケ部の応援をし始めた。
「いい気になるなよ、バスケ部!」
だが、応援する者だけではなかった。
「きのうもまた退場したってなあ、桜木…。まったく、このくらいで退場とは、つくづくやわなスポーツだと思わんか?」
その男は、新聞記事の一部をコピーしたもの…先程魅真達が入ってきた時に校内に舞っていた紙を、花道に見せた。
その紙は、今朝の新聞に載っていた、昨日の翔陽との試合で、ダンクを決めた時の花道の記事だった。
「柔道部に入れ、桜木。今ならまだ間にあう」
その男はあの青田で、青田は紙をにぎりつぶしながら、花道を勧誘した。
「この天才が、バスケ部を優勝へ導く!!!」
しかし、青田の言うことなどいっさい聞いていない花道は、新聞に載ったことで増長し、いつものように調子にのっていた。
「おおおーーっ!!」
「そして次はTVにでる!」
「ガンバレよ、桜木!!」
「湘北優勝!!」
「………!!」
花道や周りの生徒達は盛り上がり、青田はガン無視されたので体がプルプルと震えており、魅真、三井、流川、赤木、宮城は、青田も花道達も無視して、校舎に入っていった。
そして放課後の、もうすっかり辺りが暗くなった頃…。
「集合ーーー!!!」
練習の途中で集合がかかったので、全員安西と魅真と彩子の前まで来た。
ずっと練習をしていたので、全員息がはずんでいた。
「さあ、いよいよ決勝リーグよ。Aブロックは、海南大附属が150点とって勝ってるわ。Cブロックは、陵南が圧勝。それに、Bブロックの湘北(うち)と、Dブロックの武里で、決勝リーグを戦うわけね」
「海南150点か…。ベスト8まで上がってきたチームを相手に…」
「フン。オレたちだって翔陽に勝ったぜ」
「そう…桜木君、ここからは、その気持ちが大事です」
「オヤジ」
「「勝ちたい」という気持ちがないなら、海南大附属などと戦うべきじゃない。今後のバスケ人生を左右するほどの、精神的ダメージを負いかねない」
脅しでも冗談でもないので、全員真剣な顔になる。
「勝ちたいですか?」
「「「おう!!!!」」」
聞かれはしたが、最初から気持ちは決まっているので、花道達は即座に、強く返事をした。
「よろしい。緒戦は、海南大附属です」
いよいよ決勝リーグに進む湘北。
翔陽に勝った湘北の次の相手…それは、神奈川県ナンバー1の、海南大附属高校だった。
.