#26 不死鳥の如く
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「いいか!!ここまできたら、去年までの成績なんか関係ねえ!!目の前の敵がだれだろうと、そいつらを倒すのみだ!!」
「「「「おお!!」」」」
安西の言葉で気合が入った湘北は、最初から勝つつもりでいたが、ここまできたら、もう何がなんでも勝つという気持ちが強くなっていた。
#26 不死鳥の如く
「流川、桜木!!」
「おお!!」
「うす」
赤木に名前を呼ばれると、花道と流川は返事をするが、そのあと、横目でお互いを見て、火花を散らした。
「⑦と⑧!!奴らに絶対にやられるな!!」
「「!!」」
そう言われると、花道と流川は確認するために、翔陽側を見た。
すると、花道と流川が見たことに気づいた7と8の高野と永野は、2人にガンをとばした。
「(ガンたれてやがる!!)」
「(にゃろう…)」
相手が睨みつけてくるので、2人も負けじとガンをとばす。
「奴らはお前らよりデカいが…」
「ぬ…!!」
「お前らのジャンプ力が上だ。制空権をとれ!!花形はオレに任せろ」
「ゴリ」
「ゴ…主将(キャプテン)」
赤木がこのあとの作戦を話すと、花道は真剣な顔で赤木の名前を呼び、流川も続いて呼ぼうとするも、花道に少しつられてしまったが、すぐに言い直した。
赤木の花道と流川への指示が終わると、三井は疲れているので、一人椅子にすわった。
「真田、ポカリとってくれ」
「はい!」
三井の近くにいた魅真は、三井に頼まれると、ベンチの後ろからポカリを取り出し、三井に渡す。
「サンキュ」
魅真からポカリを受け取った三井は、フタをあけて飲み始めた。
ポカリを渡した魅真は、裏から表にまわってきて、三井の隣にすわった。
「ん?どうした」
缶から口を離すと、自分の隣にすわってきた魅真をふしぎに思った三井は、何故こちらに来たのかを問う。
「三井先輩、あともうちょっとですよ。あと10分もしないうちに、湘北が決勝リーグに進出できます」
重要な用事があるか、「大丈夫?」と声をかけるかと思っていたが、そうではなかったので、三井は目を丸くした。
「全員あきらめの悪い奴ばっかですし、ちょっとやそっとじゃくたばらない奴ばかりですから。だから、絶対にいけますよ!」
「お前……もうちょっと言い方ってもんがねえのかよ」
一応ほめ言葉なのだが、とてもそうは聞こえないので、三井はつっこんだ。
「でも、本当のことですよ。それに、私、信じてますから。みんながこの試合に勝つのを」
「信じる…ねえ…」
今はチームメイトでも、まだ少しだけ、不良時代の魅真とのいざこざが頭にある三井は、なんだか変な感じもした。
「三井先輩、不死鳥って知ってますか?」
「あの、死んでも炎の中から甦るっていうアレか?」
「アレです」
「それが今、なんの関係があんだよ?」
「あなたはその不死鳥です」
「ハ!?」
信じると言われ、その後になんの脈絡もない話をされ、しかもいきなり自分が不死鳥だと言われたので、三井は変なものを見る目で魅真を見た。
「三井先輩は、中学でMVPをとりましたが、ケガがもとで一度やめてしまい、不良の道に進んで、バスケ部ぶっ壊すとか言って、この前体育館にのりこんできましたけど」
「オイ…」
更に、いきなり過去のことをほじくり返してきたので、三井はやめろと言うように声をかける。
「でも、そのあとは更生して、再びバスケを始めて、今は全国制覇するためにがんばっています。私は、あなたが不屈の魂を持っているのを知ってます。3年前の全中での決勝戦でも、そうだったのでしょう?」
けど、次の言葉でハッとなり、目を大きく見開いた。
「だから、今回も絶対に大丈夫です。自分を信じて。絶対に勝ってください!!」
魅真が三井をまっすぐな瞳で見ると、三井は最初は目を見開いて固まっていたが、それもほんの数秒のことで、次第にやわらかい顔つきになる。
「ったりめーだろーが」
そして、不敵な笑みを浮かべて、魅真に返した。
「始めます!!」
2人が話し終えると、ちょうどタイミングよく笛が鳴った。
それに気づいた三井は、魅真に向けていた顔をコートに向け、肩にかけていたタオルをとり、魅真に渡した。
三井の顔は、とても疲れていた。
「三井先輩!!」
「あ?」
「絶対に負けないでくださいね!!」
「おう」
けど、それでも魅真はエールを送り、三井をコートに送り出した。
三井は疲れた顔をしていたが、それでも軽く笑って答えた。
「桜木君!!ファウル三つよ。気をつけて!!」
「ハルコさん!!」
コートに出ようとすると、観客席から、晴子が花道に声援を送ったので、花道は過剰に反応をして、顔を赤くしながら、うれしそうな顔でふり向いた。
「(ハルコさん!!この試合、絶対退場はしませんよ。この天才・桜木!!そしてリバウンドを制し…)」
しかし、声には出さないが、晴子は頬を赤くして、流川にも声援を送っていた。
だが、そんなことを知らない花道は、晴子に声援を送られたのでやる気になり、心の中で課題を唱えていた。
「アヤコさん、今の得点は?」
「2点」
「ルカワは?」
「14点」
「(そして、ルカワより点をとる!!)」
彩子に現在の得点を確認すると、流川の方が圧倒的に勝っているので、花道は燃えた。
「(見ててください、ハルコさん!!」
花道は晴子に向けて、右手でにぎり拳を作り、それを高くあげて勝利のポーズを決めるが、晴子の目に映っているのは流川だけで、花道は映っていなかった。
「いくぞ!!勝って決勝リーグだ!!」
「「「おおっ!!」」」
湘北は勝利をつかみとるために、より一層気合が入っていた。
それはもちろん三井もだが、三井はこの中の誰よりも疲れており、タイムアウトで体を休めたのに、荒い息をしていた。
「先生、三井を、少し休ませた方がいいんじゃないですか?かなり疲れてますよ……!!」
三井が疲れてるのは、誰が見てもわかることで、心配になった木暮は、安西に提案をする。
「本当だわ…。いくら中学時代のスーパースターでも、2年のブランクがある上に、相手は強豪・翔陽……。疲れがでて当然よ…!!」
「オレ、アップしときます!!」
木暮はもしもの時のために、アップしようと、席を立った。
「木暮君、彼はひっこめませんよ」
「先生…」
けど安西は、三井をさげようとはしなかった。
「大丈夫です」
「「え?」」
その時、魅真は力強い口調で断言する。
「三井先輩は……絶対に大丈夫!!」
断言する魅真の目は、とても強く、とてもまっすぐで、心から三井のことを信じているという目だった。
「三井!」
コートでは、赤木が三井の後ろから、三井に声をかけていた。
「翔陽のディフェンスを広げるぞ!!バンバンパス回すから、決めろよ、3P!!」
「…………」
それは、今から再開する試合での、三井への指示をするためだった。
「フッ……。出世したな、赤木。誰にいってんだ?」
「フン…。おめーだ」
2年前までは、見るからにヘタクソだった赤木が、自分に指示を出してきたので、三井は口もとに笑みを浮かべて強気に返すが、赤木もまた強気に返した。
「オレにも。パス…」
「……!!」
そこへ、赤木の後ろから花道がやって来て、赤木の左肩に手を置き、反対の手で自身を指さしながら、自分にもパスをよこすように言ってきたので、三井と赤木は花道に目を向ける。
「オレが2点で、ルカワが14点…。これは、どー考えても、ルカワにばっかりパスして、オレにはくれないからとしか思えん!ひーきだ!だからパス!!」
それはどう考えても、実力の差以外の何ものでもないのだが、花道には、流川を贔屓しているように見えたのだった。
「お前は得点で、流川に勝とうなんて思うな!」
「10年はえーよ。バカヤロウ」
「ぬ…!!」
当然そのことを、三井と赤木につっこまれ、バカにされた。
「おのれ…」
バカにされると、花道は腹を立てる。
「ぬ!!」
すると、赤木は花道の両頬を、両手ではさみこんだ。
「お前のちーーーとも入らんシュートには、期待しとらん」
「ぐっ……。なにおう」
「それよりもリバウンドだ!」
そして、花道が成すべきことを指示した。
「お前のリバウンドには、少し期待している」
「……!!」
シュートには期待してないと言われたが、少しだが、リバウンドには期待していると言うので、花道は驚いていた。
「ちゃんととれよ」
「お前の退場にも、けっこう期待している」
「なんだとコラァ!!」
三井にはエールを送られるが、流川にはいつものように嫌味を言われたので、また腹を立てた。
「いくぞ、花道!!」
「リョーちん」
三井、流川、赤木がコートに散っていくと、後ろから宮城が来て、気合を入れるように、花道の尻をたたく。
「お前のリバウンドは、この試合で、一躍県内トップクラスだぜ」
そして、花道が調子にのりそうなことを言った。
「さあ、1本いこう!!」
「「「おお!!」」」
湘北ボールからなので、宮城はドリブルをしながら、ゴールがある方へ歩いていく。
「(県内トップクラス……)」
宮城が言ったことに気をよくした花道は、ニヤっと笑うと、自信に満ちあふれた顔になる。
「この試合もらった!!」
そして、いつものように高らかに笑いながら、コートに走っていった。
「リバウンドはオレがとる!!」
自分がマークする高野の前まで来ると、高野に大きく宣言をした。
試合が始まり、宮城から赤木にボールが渡ると、花形、高野、永野の190cm台が、3人がかりで赤木をマークした。
「190台が3枚!!あれじゃあ、さすがの赤木先輩も、どうすることもできない!!」
196cmという高身長の赤木だが、今赤木をおさえているのは同じ190cm台なので、赤木も苦戦していた。
赤木は当初の予定通り、ディフェンスを広げるために、三井にパスをした。
「いっけえーーー!!三井先輩!!」
赤木からパスをもらった三井は、3Pを打った。
だが、打った瞬間に、長谷川にブロックされてしまい、三井は呆然としたが、翔陽は盛り上がった。
「くそっ!!」
対照的に、三井は悔しそうにしながら、荒い息をくり返していた。
宮城がボールをもらい、再び湘北の攻撃となったが、今の長谷川のプレイで、翔陽は気合が入っていた。
翔陽は、ボックスワンの作戦だった。長谷川が三井を、マンツーマンでマークするというものだった。
「ドンマイ、ミッチー。この、県内トップクラス男桜木を擁する湘北が、負けるハズはねー!!」
「?」
三井がブロックされたので、花道は三井を元気づけながらも、いつもの強気な態度を見せると、電子ボードを横目で見る。
「(県内屈指のリバウンダーといわれる、この、天才・桜木…。得点でも、ルカワに負けたまま、黙ってるわけにはいかねー!!でも、今から14点とるのは、ちょっときびしい…。となると…1発でルカワを黙らし、かつ、翔陽も黙らす、そんなシュートが要求される……。となると…)」
試合時間は、残り10分を切っている。いくら流川に負けたくないと思っていても、さすがに今から14点もとるのが無理なのは、花道でもわかっていた。
「三井さんに、ボックスワンでマークがついた…!!」
「ふりきるための動きでますます疲れてしまうぞ!!」
「それと、三井は高校の試合は、この大会が初めてだ。まだ、40分フル出場の経験はない!!」
ボックスワンで長谷川を相手にしている三井は、更に疲れてきていた。
「この試合のカギを握っているのは、桜木君と三井君。この二人です。ここまで、これだけ競った試合をしてこれたのは、桜木君の、予想外の活躍が大きい。あのリバウンドで、ゴール下の高さのハンディは、ほぼなくなった。でも、それだけではまだ勝てない。勝ちにいくためには、ここから三井君の力が必要になる」
その三井は、長谷川をふりきれず、苦戦していた。
「疲れてても…ひっこめる訳にはいきませんよ」
それが安西の作戦だった。安西が、先程木暮に、三井はひっこめないと言った理由はこれだったのだ。
「(こいつ、本当に中学でオレに負けたのか!?どこの奴だ!?こんだけ動きのいい奴を、忘れるはずはねえ…!!)
三井は相当疲れていた。
だが、疲れているのは長谷川も同じだった。しかし、三井とくらべると、疲労度は違い、まだ長谷川の方が体力が残っていた。
長谷川は、3年前の全中の時のことを思い出していた。
それは、三井と対決していた時、三井に、お前にオレは止められないぜ!!と、余裕のある顔で、自信満々に言われた時のことだった。その時の三井は、ほとんど疲れていなかったが、長谷川はかなり疲弊していた。
そう……ちょうど今の三井のように…。
そして現在。3年前とは立場が違い、三井はかなり疲弊していた。
別の場所では、花道がボールをとっていた。
「三井寿…」
花道がボールをとると、長谷川は、三井に声をかける。
「お前はオレに勝てない」
「なに!?」
そして、三井に宣戦布告をした。
「スラムダンクしかない!!」
一方、ボールをとった花道は、翔陽も流川も黙らすシュート…すなわち、ダンクを決めようとしていた。
「このオレが、お前に勝てないだと…!!」
宣戦布告をされた三井は、聞きずてならないというように返す。
長谷川は、再び昔のことを思い出した。
それは、去年の夏、タバコを吸っている、ガラの悪い、見るからに不良といった男達とつるんでいる、まだ不良だった頃の三井だった。
偶然にも街で見かけた長谷川は、以前、中学の頃に戦った時と正反対の雰囲気の三井を見て驚き、思わず凝視してしまい、三井にガンをとばされた時のことである。
何が原因か知らないが、見るからにガラが悪くなり、見た目や雰囲気が、いかにも不良だと言っている三井。
それが、長谷川が三井に、お前はオレに勝てないと言った理由だった。
「高校バスケットをナメるなよ、三井!!」
「………!!」
更には挑発までしてきた。
その言葉に、三井は腹を立てる。
「(スラムダンクしか……)」
「桜木!!よこせ!!」
「ぬ!!」
なんとかダンクを決めようとしている花道に、三井はボールを渡すように叫んだ。
花道は言われた通り、三井にパスをする。
「てめえ、試合前に、オレを5点以内におさえるといいやがったな!!オレが前半で、何点とったかわかってんのか!!」
三井は花道からパスをもらうと、そこからリングの近くまで走り出した。
「5点だ。それで終わりだ」
次いで長谷川も、三井を追うように走り出し、また挑発をする。
「ナメんなーーー」
サイドラインとエンドラインぎりぎりのところでとまると、三井は頭に血がのぼった状態でシュートを打った。
だが、力が入りすぎてるし、フォームもバラバラになってしまい、シュートは入らないと長谷川は確信する。
「リバウンドォ!!」
それは三井もわかっているので、リバウンドをとるように叫んだ。
リバウンドといわれ、花道はとろうとしたが、それは花形も同じで、花形は花道をおさえこんで前に出た。
けど、それでも花道はあきらめずに、前に入ろうとするが、花形はおさえこむ。
だが、次の瞬間、花道がスクリーンアウトをとったために、中に入られてしまい、リバウンドをとられてしまった。
「リッ……リバウンド王桜木!!!」
「きゃあーー!やったあ花道!!」
花形相手に負けていないので、湘北は全員喜んだ。
花道に負けた花形は、呆然としていた。まさか、花道に中に入られ、リバウンドをとられるとは、思いもしなかったからだ。
だが、着地した瞬間を藤真は狙い、花道のもとまで走っていった。
それに気づいた宮城が、花道に注意を促したので、花道はとられてなるものかと、ボールを後ろに引いた。
しかし、引いた腕が、花形の顔にあたってしまった。
「オフェンスファウル!!白⑩番!!」
それによって笛が鳴り、花道はこれでファウルが4つになったので、もうあとがなくなってしまった。
「レフェリータイム!!」
花形が倒れてしまったので、試合は一時中断された。
翔陽は、安否確認をするために花形に駆け寄っていき、高野は伊藤に用意をするように指示をした。
藤真はまずいと思った。花形はゴール下の要だからだ。
だが、花形はすぐに起きあがり、メガネで切ったせいで右の眉尻のあたりをケガして、血を流してはいたが、これで桜木はファウル4つだと、ニヤリと笑っていた。
そして、勝って決勝リーグに行くと、全員を鼓舞した。
花形は手当てをすると、そのまま試合に出た。
このプレイを境に、試合の流れは翔陽に傾いていった。
湘北は、ゴール下の一角である花道が、ファウル4つになってしまったために、それまでの積極的なプレイができなくなり、リバウンドがとれなくなった。
高さで勝る翔陽は、インサイドから着々と点を入れていき、湘北も流川の個人技などで返すが、それでも追撃の決め手はなく、残り5分を切った頃には、点差は逆に開いてしまった。
ここまで来ると、三井は更に疲労が増していた。
顔色が悪く、肩で息をしていた。
もう、勝ちは翔陽に決まったと観客は思い、花道はファウルを4つもとられ、三井は疲れており、12点差をつけられてしまった湘北は、ますます窮地に立たされてしまい、一部をのぞいて落ちこみムードになっていた。
「長谷川!そろそろ三井も限界だぞ!!」
三井のそばでは、永野が長谷川に、わざとなのか、三井に聞こえる大きな声で話していた。
「ちっ……」
その言葉を聞くと、三井は荒い息をしながら、悔しそうに舌打ちをする。
それでも、まだ試合は続いているので、歩きだしたが、歩きだした途端に体がフラついた。
「くそ…」
本当に、永野が言った通りになりそうなので、三井は悔しそうにする。
「三井…」
「「「三井さん…」」」
木暮も1年生三人も、そんな三井を見て心配になった。
「………!!」
1年生三人の心配そうな顔を見た三井は、目を見開く。
「(これがオレの姿か…!?)」
試合は始まり、三井はパスされたボールをとった。
「(ベンチの一年にまで心配されちまってる。これが、三井寿の姿か!?)」
3年前のあの頃は、こんな風ではなかった。誰も心配しないくらいの、絶妙なプレイをしており、自分の力に自信をもっていた。誰も、自分に勝てる奴などいないと思っていた。
そして、それはバスケを再び始めた今でも同じだった。
自分に自信があった。
しかし、翔陽と試合をしている今の三井は、ベンチの1年生に心配されてしまい、長谷川をふりきることができなかった。
けど、それでも勝ちたいという気持ちがあり、3Pを打った瞬間、長谷川にブロックされてしまった。
「三井先輩!!」
「三井!!」
シュートをブロックされ、そのせいで体が後ろへ倒れていってるので、魅真と木暮は心配そうに叫ぶ。
「ファウル⑥番!!」
三井は仰向けに倒れてしまったので、長谷川はファウルをとられてしまった。
「ミッチー!!大丈夫か、おい!」
「三井サン」
結構大きな音がして、かなり痛そうだったので、花道と宮城は、三井の後ろにやって来て、心配そうに声をかけた。
同時に、湘北のベンチでは、魅真がその場を立ち上がった。
「三井先輩!!!」
そして立ち上がると、三井の名前を大きな声で叫んだ。
その声に、そこにいた者は、湘北も翔陽も観客も、全員が魅真に注目する。
当然、名前を呼ばれた三井も、魅真を見た。
「不死鳥です!!!」
魅真は三井の名前を呼んだ後、先程のタイムアウトの時に言ったことを、三井に向かって叫んだ。
「はっははははは。何言ってんだ?あのマネージャー」
「何だ、不死鳥って?」
わけがわからないその言葉に、観客は笑い、笑ってない者も、なんのことかさっぱりだったので、変なものを見る目で魅真を見た。
笑いものにされているが、それでも魅真は動じず、その場に立ち、まっすぐに三井をみつめていた。
「ぬ!?何言ってんだ、魅真の奴」
「なんのことだ?」
湘北側のベンチにいても、先程の魅真と三井の会話は聞こえていなかったので、花道も宮城も、ふしぎそうな目で魅真を見た。
だが、三井は違った。
魅真にそのことを言われた三井は、タイムアウトの時、魅真が話していた不死鳥の会話を思い出していた。
そして、すべて思い出すと、再び前を向く。
「(そうだ…。思い出せ……)」
魅真の激励で、三井は、3年前の全中の決勝戦のことを思い出す。
「ミッチー」
「さわるな」
「ぬ」
花道は心配そうに三井にふれようとするが、三井は腕を動かして、花道の手をふりはらってこばんだ。
「そうだった…。MVPをとった時も、そうだったはずだ……」
あの時のことを思い出した三井は、その顔に笑みを浮かべた。
「こういう展開でこそ、オレは燃える奴だったはずだ…!!」
「ミッチー」
その場を立ち上がり、肩であらい息をしながらも、三井の目はまだまだ死んでおらず、不敵な笑みを浮かべていた。
三井が立ち上がると、三井のフリースローで試合が再開された。
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