#25 決勝リーグをかけて
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「はっはっはっ。見たかルカワ!!今日のオレは、てめーより点をとーーーーーーーーーーーーーーる!!!」
いつもの調子が戻った花道は、大きなことを言って、笑いながら走っていき、宮城にパスを求めた。
パスを求められた宮城は、一瞬花道を方を見ると、再び前を見て、走りながら、片手で花道にパスを出す。
宮城からパスをもらうと、花道はレイアップを決めようとする。
だが、ボールはバックボードにあたってはね返ってしまうが、高野がボールをとろうとしたところで、流川がボールを押し、そのおかげで点が入った。
「……この天才としたことが初歩のミスを…」
「バカモノ。チャンスのときこそ平常心だ」
ミスした上に、流川のアシストで点が入ったので、花道は体を震わせていた。
「花道、今のはパスか~!?ルカワへの!」
「うるせい。くそ!!」
更に、洋平達にバカにされたので、顔を赤くして、額に青筋を浮かべて怒鳴り、それを聞いていた魅真は小さく笑う。
「(マズイ…!2ゴール差になっちまったぞ…。なんとかしないと…!!)」
「個人プレーに走るなよ、花道!」
花道の現在の得点は0点、対して流川は4点。花道は流川の隣を走りながら、流川をライバル視しており、それに気づいた宮城は釘をさした。
「さあ、もういっちょ止めるぞ!!」
「おお!!」
流川が連続で点を入れたので、少しだけ盛り上がった。
しかし、宮城と対戦をしている伊藤との身長差は12cm。スタメンの中で一番小さい伊藤ですら180cmもあり、他の選手達はそれ以上あるので、どう考えてもミスマッチ。
そのせいで、簡単に上を通されてしまい、高野にボールが渡ってしまう。
だが、高野はトラベリングという初歩のミスをしてしまったので、湘北ボールでスタートすることとなった。
「速攻!!走れっ!!」
宮城が指示を出すと、赤木は宮城にボールをパスをして、ボールをもらった宮城は走りながらボールをとり、止めようとする伊藤を抜き去った。
宮城のあとに続いて、花道、三井、流川も走りだし、ゴール近くまで来ると、宮城は自分の右横…少し前を走っていた花道にボールをパスした。
ボールをとった花道は、長谷川が止めようとする中で、レイアップを決めた。
「やったあ。花道!!」
得点が入ると、魅真や洋平達は喜び、翔陽側は称賛した。
その後翔陽ボールから始まり、伊藤が高野にパスをするが、宮城がカットしてボールを奪う。
「さあ、もう1本だ!!」
高身長ばかりがそろう中、背が低くてもたくみなプレイを見せる宮城に、観客達は称賛する。
「いいぞォ、リョータッ!!」
そして、彩子も宮城を称賛した。
「アヤちゃん❤」
「!!」
彩子の声援に、宮城はまたしても、三浦台戦の時のようによそ見をする。
「バカモノ。よそ見…むっ」
赤木はそんな宮城を注意するが、その途中で、いきなり宮城にパスをされた。
赤木にパスをした宮城は、そのまま赤木のもとへ走ってきてボールをもらい、ゴールへと走っていく。
伊藤が止めようとするも、赤木が盾になったために、それは叶わなかった。
だが、シュートを打とうとすると、赤木の後ろにいた花形と永野が、ジャンプをして止めようとした。身長差がすごいあるのに、まったくの容赦なしだった。
しかし、今のはフェイクで、宮城はその身長差を利用して、ジャンプした花形と永野の間を、ドリブルを使ってすりぬけていき、彼らの後ろからレイアップを決めた。
今ので11対8となり、湘北は翔陽に追いついてきた。
「歩いた!!歩いただろう、今の!?」
「イヤ!!歩いてないよ!!」
宮城が歩いたと思った永野が、審判に抗議するが、審判の判断では、宮城は歩いてなかった。
その宮城は、横に顔を向けると、人差し指をさす。
その先には藤真がいた。
「チャージドタイムアウト!!翔陽!!」
藤真は宮城を見た後、タイムアウトをとった。
「ナイス、リョータ!!」
宮城が戻ってくると、宮城の連続の活躍を安田は称賛し、2人はハイタッチをする。
そのあとに、彩子が宮城のもとにやって来て、宮城を称賛したので、宮城は頬を赤くして、うれしそうに笑いながら右手を後頭部にあてた。
「いける!!いけるぞ!!」
「ハッハッハッ。当然だ、メガネ君!!」
この調子なら、もしかしたら、翔陽にも勝てるかもと思った木暮に、花道は調子にのってVサインをした。
「この天才・桜木のスタメン起用は、ズバリ当たったぜ、オヤジ!!」
「(なにもしてねーくせに)」
相変わらず、なれなれしく安西の肩をたたき、笑いながら調子のいいことを言う花道に、流川はいつものように、心の中で毒づく。
そして、数十秒後に試合が再開されたが、少しだけ焦りを見せていた翔陽は、落ちつきをとり戻し、また気合が入っていた。
しかし、伊藤はまた宮城にボールをとられた。
だが、速攻を出そうとした時、花形と永野は、宮城の前に立ちはだかった。
「も…戻りがはやい!!」
「(翔陽の動きが急によくなった。藤真に何か言われた?……そっか。気合をいれるため…。あまりにも点差が開くと、絶望的になって、やる気がなくなる。だから、まだ気力と体力がある今のうちに、タイムアウトをとって、気合をいれさせたんだ。それと同時に、湘北の勢いを断った。あいつ……かなりやるわ…!)」
藤真が何かを言ってるのだけは聞こえていた魅真は、きっと気合が入る言葉を、それぞれの選手に言ったのだということがわかった。
しかも、それぞれがどんなことを言えば、気合が入るのかを心得ており、この短時間でそれを成したとなると、それだけでも相当な選手であり、また優れた監督であると、魅真は感心していた。
それと同時に、不安にもなった。
少なくともあと1回。湘北のタイムアウトをいれれば、3回も気合をいれさせることができる。加えて、神奈川2位の強豪校。このまま勢いにのれなければ、湘北の勝利は難しいのではないかと思ったからだ。
その翔陽は、ディフェンスがゾーンに変わる。
ボールは赤木に渡ったが、花形と高野の激しいディフェンスに攻めあぐねており、もうそろそろ30秒経とうとしていた。
「赤木!!」
「!!」
だがその時、外から三井の声が聞こえたので、赤木は三井の姿をとらえると、ジャンプをして三井にパスをした。
「おし!!」
「「!!」」
三井はボールをとると、そのまま3Pを打った。
長谷川は止めようとしたが、今の翔陽のディフェンスはゾーンなので間に合わず、シュートが入ってしまった。
「よォーーっしゃあ!!!」
フリーの状態だった三井は、誰にも邪魔をされることなく、3Pを決めたのだった。
しかも、とうとう同点にまでなった。
「ナイッシュー、三井!!」
「同点だっ!!」
三井が決め、同点になったので、湘北側は盛り上がった。
「(三井先輩❤)」
魅真は、同点になったのも喜ばしいことだが、何よりも三井が決めたので、頬を赤くして三井をみつめていた。
一方翔陽側では、同点になってしまったので、藤真がジャージをぬいで、試合に出ようとしていた。
「同点だーーーーーっ!!」
「湘北が翔陽をとらえたーーーっ!!」
「三井!?三井寿だと!?」
「あの14番、知ってるんですか、先輩!?」
「ああ…。髪型がちがうから、わからなかったが……!!3年前のことだが、今でもはっきり覚えてるよ!!決勝での、あの、どたん場の逆転シュート!!あいつは、3年前に全中に出場した、あの、武石中の4番だ!!MVPの、あの三井寿だ!!」
観客席にいる翔陽の選手の1人が、今3Pシュートを打ったのが、3年前にMVPをとった三井だと知ると、とても驚いてさわぎだした。
「ぬ…。ちょっとさわぎすぎじゃねーか!?1本決めたくらいで!」
1本決めただけで周りがさわぐのは、三井にはそれだけの実力があるからなのだが、自分以外の者がさわがれたので、流川ほどではないが、花道は対抗意識をもつ。
「三井寿!!あの三井寿か!!」
「あいつが湘北にいて、なぜ今まで出てこなかったんだ!!」
「それはグレてたから」
翔陽の者だけでなく、他の観客もさわぎ、疑問を口にすると、何気に隣にいた野間達がつっこんだ。
「こりゃつええ!!」
「湘北はやっぱ、とんでもねーチームになってるぞ!!」
「中学MVP三井!!スーパーガード宮城!!スーパールーキー流川!!それにキングコング赤木!!」
「赤木・流川・宮城・三井!!」
「ぬ…!!」
「湘北強い!!ここまで上がってきたのもマグレじゃねえ!!」
「コラァ、ちょっとまてい!!この、スーパー天才児桜木を忘れてねーか!?」
「来るぞ、桜木!!」
花道以外の全員が称賛されていたのに、花道だけはずされていたので、こんな時にまで、花道は食ってかかっていた。
「(くそう!?オレは天才のハズだ!!こいつら4人よりもオレの方が!!くそ!!)」
そう思っていたが、一瞬考えこんだ。
「(オレが、天才じゃないなんてことは…。まさか!ありえん!)」
考えこむと、らしくないことを思うが、その後で強がった。
その時、藤真が出てきたので、花形は驚き、同じPGである宮城はニッと笑い、翔陽はそれだけでさわぎたてた。
しかし、花形は手を横にして、藤真を止めた。
オレを信じろ…と心の中で言い、目で会話をした。
「さあ、気合いれていくぞ!!!翔陽の力を見せてやる!!!」
「!!」
「ぬ!!」
「花形!!」
「おう!!」
急に気合の入った声で叫んだので、花道と赤木はびっくりし、永野と高野は気合をいれた。
永野はシュートを打ち、はずしてしまったが、花形がリバウンドをとり、ダンクを決めた。
今のプレイで翔陽は盛り上がり、藤真はすわって、またジャージをはおった。
結局藤真が出なかったので、宮城は悔しそうにした。
「(オヤジ…!!)」
花道は、試合前に安西に言われた、「リバウンドは君が制するんですよ」という言葉を思い出していた。
「さあ、ディフェンス!!」
「もう手加減はいらんぞ!!」
「おう!!」
「!!」
「手加減だと!?」
「なめるな、花形ァ!!」
「三井!!」
頭に血がのぼった三井は、つっこむようにシュートをして、決まったが、花形が倒れたので笛が鳴ってしまう。
「ノーカウント!!オフェンスチャージング!!14番!!」
「なにっ!!」
佐々岡と潮崎は称賛していたが、ファウルとなったので、得点は入らなかった。
「(あのヤロウ、ワザと…!)」
この花形のプレイに翔陽側は喜び、三井はわざと倒れたのだとわかり、悔しそうにしていた。
そして花形は、他の翔陽の選手達を奮い立たせて、藤真に、オレが出るまでもない…と思わせた。
そこからは、翔陽は勢いにのった。
どんどんと点をとられ、前半残り34秒になった時には、31対22で、10点近くもリードされてしまったのだ。
10点近く離されたのと緊張してるのとで、湘北側には疲労が見えていた。
それでも、なんとかがんばるも、ラスト5秒のところで、花形がシュートをしようと構える。
だが、赤木は負けないと気合をいれて、ブロックしようと手を伸ばすが、花形がフェイダウェイで打ったボールにふれ、軌道をそらしたために外れてしまう。
シュートは外れたので、花道、流川、高野、長谷川、永野がリバウンドをとろうとしたが、リバウンドをとったのは、意外にも花道だった。
「リバウンド王桜木!!!」
そして、花道がリバウンドをとったところで、前半が終了したのである。
それから数分後…。
後半に入ると、花道は俄然元気になり、ジャンプボールではじかれたボールをとった。
「さあ、後半いくぞ!!一気に逆転してやる!!」
花道はかなり気合が入っていた。
というのも、前半が終わった後の休憩時間に、晴子にベタぼめされ、リバウンド王桜木と言われたのが理由だった。
そのことで調子にのった花道は、シュートを打つが、いつものようにはずしてしまう。
だが、それでもめげることなく、何度もリバウンドをとって何度もシュートしたが、ことごとくはずしてしまい、後ろにいた赤木が、しびれを切らしたように花道からボールを奪い、ダンクを決めた。
赤木のゴリラダンクは有名で、赤木がダンクを決めると、観客は歓声をあげる。
「でたあーーっ!!」
「本当に17歳ですか、あなたは!?」
「これで7点差!!」
点がまた縮まったので、湘北は喜んだ。
「ズル!!横どり!!」
「うるさい」
けど、花道だけは納得しておらず、ボールを奪ってダンクを決めたので、赤木の後ろで、左右に移動しながら文句を言っていた。
これは、前半1ケタで終わったのが大きかった。花道のリバウンドがきいたのだ。
「リバウンドはオレにまかせろ!!」
前半1ケタにおさえた花道は、いつものように大きなことを言った。
けど、その言葉の通り、花道の快進撃が始まった。
シュートではずれたボールを、永野相手にスクリーンアウトをとって、リバウンドをとった。
「よーーーし!!いいぞ、花道!!」
「ナイスリバン!!」
「すっ、すげえっ!!」
永野や花形は驚いていたが、翔陽相手にリバウンドをとる花道に、魅真達は盛り上がったり、称賛したりしていた。
その後も、花道はリバウンドを3回連続でとり、赤木がシュートを決め、とうとう1点差にまで点を縮めた。
このプレイで、湘北も洋平達もおおいに盛り上がり、のってきた。
そのせいか、永野は焦ってシュートを打ってしまい、はずれたボールを、再び花道がとった。
「リバウンダーとしての素質を、開花させ始めましたね、彼は…」
花道の雄姿に、安西はにっこりと笑う。
「ハッハッハッ。やはり天才!!」
その花道は、いつものように調子のいいことを言うと、宮城にボールをパスした。
「速攻ださせるなっ!!」
それに気づいた藤真は、選手達に声をかける。
しかし、翔陽は宮城の速さに追いつく前に、宮城は我先にと走っていた流川にパスをして、流川はダンクを決め、とうとう逆転をしたのだった。
そのことで藤真は、残り時間14分2秒となった時、再び、ジャージをぬいで立ちあがった。
湘北も翔陽も藤真に気づき、赤木と木暮は緊張感を抱いたが、同じPGの宮城は、うれしそうな顔をしていた。
「交替お願いします」
そして、藤真は審判の席に行くと、交替を申し出た。
「メンバーチェンジ!!」
藤真が交替を申し出ると、藤真と伊藤が交替することとなった。
それと同時に、海南と陵南の選手が、コートの中に入ってきた。
「(あれ?あの人この前の……)」
海南と陵南が入ってくると、魅真は神の存在に気づいた。
神もまた、魅真が自分を見たのに気がついたので、この前のように、にこっと笑って手をふった。
手をふられると、魅真もまた、若干ひきつった笑いで、神に手をふり返した。
「ぬ!!補欠を出すとは!?」
「どあほう」
4番のユニフォームを着ているのに、補欠扱いする花道に、流川はいつものように毒づき、宮城は更に笑みを濃くした。
藤真が出ただけで、観客席の翔陽からは大歓声が起こり、その藤真は、花形、永野、高野、長谷川の順で、彼らのもとへ歩いていくと、尻をたたいた。
「藤真……」
「!?」
「シケたツラするな!!海南が見てるぞ!!」
「「「「!!」」」」
そして、彼らをまっすぐ強い目で見ると、活を入れた。
扉の前には海南の選手がおり、海南を目にした花形達は、メラメラとライバル闘志を燃やす。
「(翔陽の目つきが急に変わった。そっか、海南がいるから…)」
そのことに、唯一魅真は気づいた。
翔陽が2位で海南が1位ということは、ライバル意識をもって当然なので、そのことに気づいたのだった。
「行くぞォ!!」
「「「「おお!!」」」」
試合は翔陽ボールから始まり、PGの藤真がボールを運んだ。
「ベンチにいたときの、あのクールで冷静な藤真とは、まるで別人だ!!」
「目つきからして違う!!」
「ほかの4人もかわったぞ!!」
明らかに、翔陽の雰囲気が変わったのがわかったので、石井、桑田、佐々岡は、少し焦っていた。
「あの人……すごいわ…」
3人がさわいでいると、魅真も感心したように、ぽつりとつぶやいた。
「え?」
「やはり、藤真の影響力は違う…。それだけ、監督として、選手として、優れた人なんだわ」
「え……そうなの?」
藤真が選手として動くのはこれからで、前半も多く指示を出していたわけではないのに、何故魅真がそう思うのか彩子は謎だったが、魅真は彩子の疑問に無言でうなずいた。
2人が話してる間に、藤真は誰にもパスせずに、ゴール下のシュートを決めた。
「よォーーし!!」
「藤真!!」
開始早々に、あっさりと逆転したので、高野と花形は喜んだ。
「湘北は、ベスト4にはまだ早い!!さあ来い!!」
桑田が言ってた通り、ベンチにいた時とはまるで別人のように、熱く燃えている藤真は、自分達が勝つことを宣戦布告すると同時に、挑発までした。
「ぬ!!」
「なに」
「野郎!!」
「おもしれー!!」
「行くぞ!!早いかどうか見せてやる!!」
しかし、そんなものに怖気づくような5人ではなく、ますますやる気になった。
だが、やる気があるからといって、そう簡単にうまくいくはずはなく、赤木はシュートしようとしたところを、花形にブロックされた。
ブロックされたボールはリングにあたり、リングではじかれたボールを花道がとったのはいいが、着地すると同時に藤真にとられ、速攻を出された。
もちろん宮城も追いかけていき、あっという間に追い抜き、フリースローレーンの中に立った宮城は、藤真は勝負してくるとふんだ。
予想通り勝負してきた藤真だが、フリースローラインのあたりで止まり、ジャンプすると、思ったよりも早くボールを手放したので、宮城はタイミングを合わせることができず、ブロックすることができなかった。
更に最悪なことに、藤真の後ろには、藤真のシュートをブロックしようとジャンプした花道がおり、宮城と藤真に向かって倒れ、同時にシュートが決まり、直後に笛が鳴る。
「入った!!」
花道が藤真と宮城を巻きこんで倒れただけでなく、シュートが決まってしまったので、三井と木暮は呆然とした。
「あのバカ……」
最悪なことになったと思った魅真は、三井と木暮と同じように呆然となり、頭を抱える。
「ふっ…藤真!!」
「藤真ァーーー!!」
10cmも高い花道の下敷きになったので、翔陽は心配して、藤真のもとへ駆け寄ってきた。
「しまった…」
「この野郎…!!」
先に起きあがった花道に、高野は食ってかかった。
「大丈夫かね、ホケツ君」
「「てめえ!!何だその態度は!!」」
わざとではないが、故意でなくとも藤真を押しつぶしたことには違いないのに、ヘラヘラと笑い、失礼な呼び方をして、とても目上の人間に対する口の聞き方ではない上、反省してるとは思えない態度なので、翔陽のメンバーは憤慨した。
「よせ。このくらい何ともない!!」
「「藤真!!」」
けど、藤真自身は特に気にしていない様子で起きあがった。
「インテンショナルファウル!!白10番!!」
ちなみに、あたり前だが、花道はファウルをとられた。しかも、インテンショナルファウルなので、結構痛かった。
「このバカヤローが!!」
「ぬ…」
一番下になっていた宮城は、当然怒っており、背中をさすりながら、花道の尻を蹴った。
「(マズイ…。これで、ファウル3つめだぞ…)」
あと2つとられたら退場なので、花道は危機感を抱いた。
「(ボールを手放すのが早い…!!ジャンプしながら最高点に達する前に放ってるかんじだ。タイミングがあわせづらいな…。しかもサウスポー…)」
ジャンプ力が優れている宮城が止められなかったのは、藤真がシュートを打つタイミングが早かったからだった。
その藤真はフリースローを決め、翔陽には1点加点された。しかもインテンショナルなので、翔陽ボールでスタートした。
「これはちょっとマズイかも…」
「え?どういうこと?」
魅真はこの展開に危機感を抱いたが、彩子は言ってる意味がわからず、魅真に問う。
「前半でタイムアウトをとった時、藤真はあの短い時間で、選手達をやる気にさせた。さっき交替した時も、ほんの数秒で……。藤真は視野がひろい。全体や、個人をよく見てる。
そして、優れた選手であり、監督であり、また人格者であるから、みんなついていく。やる気になる。それだけ、強い影響力がある人物ってことよ。実際今のプレイで、翔陽はペースをつかんだわ」
「それじゃあ…」
「でもそれは、逆にいえば、藤真をなんとかおさえれば、チャンスがあるってこと。どんなに優れた選手でも、司令塔がいなくなれば、力が半減することがあるから」
だがそれは、とても難しいことなのだと、魅真はわかっていた。わかっていたが、花道と、流川と、宮城と、赤木と、何よりも三井は、絶対に翔陽に勝つと信じていた。
しかし、そう簡単にいくわけもなく、宮城は藤真にぬかれ、藤真はシュートを打とうとした。
なので赤木はブロックをしようと跳んだが、それはフェイクで、藤真は赤木の後ろにいる花形にボールをパスし、花形はダンクを決めた。
これでまた、翔陽が2点リードしてしまった。
「チャージドタイムアウト、湘北!!」
これはマズイと思ったのか、安西はタイムアウトをとった。
「「「「「よっしゃあ!!」」」」」
これでペースをつかみ、リードすることができたので、翔陽は喜んで、藤真と花形はハイタッチをした。
「くそ…!!」
対して湘北は、とても悔しそうだった。
選手が戻ってくると、魅真はタオルを渡し、タオルを受け取った彼らはベンチに腰をかけ、少しでも回復しようとしていたが、疲れが蓄積されているので、荒い息をくり返していた。
「さて…」
そこへ、木暮の後ろから安西が姿を見せた。
「試合前に、君達にいったことを覚えていますか?」
「「「「「………!!」」」」」
安西の言葉に、5人は反応を示した。
「もちろんです!!」
そして、赤木が代表で、安西が言ったことに答える。
「「「「「オレたちは強い」!!」」」」
赤木が答えると、全員が、試合前に安西が言ったことを叫んだ。
「よろしい」
安西は全員が答えると、それだけ言って席に戻った。
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