#25 決勝リーグをかけて
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第3回戦から数日後、湘北は、第4回戦で津久武高校と対戦した。
序盤では、津久武の3Pシュートがよく決まり、リードを許すが、宮城のスティールからの速攻をきっかけに、得意の速い展開にもちこむと、津久武はその速さについていけずに、ミスを連発してしまい、湘北は一気にたたみかけた。
その後は、津久武に再び追いつかれることはなく、111対79で、4回戦を突破し、決勝リーグ進出をかけて、翔陽高校と対戦することになったのだった。
ちなみに花道は、またしても5ファウルをもらったので、退場となった。これで、4試合連続で5ファウルで退場となる。それだけでなく、得点は未だに0点なので、自分は、もしかして天才ではないのではないかと落ちこんだが、その日の夜に、なんとなく立ち寄った学校で、流川の練習風景を目にした花道は、ライバル意識を燃やし、宣戦布告をすると、またいつもの花道に戻った。
そして、きたる翔陽戦……。
#25 決勝リーグをかけて
「正念場だ!!」
湘北の控室では、赤木が腕を組み、部員達に話をしていた。
「今までの相手とは次元が違うぞ、翔陽は!!気合いれて…ん?」
話している途中で、隣で花道が、穴があくくらいに自分を見ているのに気づく。
「目の下にクマが」
「オマエだろ」
「赤木でもキンチョーして眠れなかったか…。オレも、けさ4時に目が覚めちゃったよ」
花道が赤木を凝視していたのは、赤木の目の下にクマがあったからなのだが、実はからかった花道も、同じように目の下にクマがあるのでつっこまれた。
「全く、情けねえ連中だ!翔陽ぐらいでオタオタするな」
「ぬ!?」
「おい、どこ行くんだ三井!もう時間ないぞ」
そこへ、三井が呆れながらため息をつき、もうすぐ時間だというのに、どこかへ行こうとしていた。
「便所だよ」
木暮の問いに簡潔に答えると、三井は今言った通り、控室の外に出て、トイレに行った。
「へっへっへっ。ミッチー!!1番キンチョーしてるくせに!!何度めだ?」
「えらそーに」
実は、情けないと言った三井本人が、一番緊張していたのだった。
けど、花道や赤木や木暮や三井だけでなく、宮城も流川も、少なからず緊張しているのか、宮城はすわって、ボールを、右手と左手の間をいったりきたりさせており、流川もベンチにすわり、もとから寡黙なタイプだが、何もしゃべらずに、目をつむって腕と足を組んでいた。
「やっぱり、今までとはちがうな、みんな」
「うん…。なんせ、去年2位ってことは、陵南より強いってことだからな…」
「あの陵南より…」
「勝てるのかな…」
1年生3人組は、自分達が出るわけではないが、花道達の様子を見て妙に緊張しており、今日の試合の心配をしていた。
一方、男子トイレでは…。
「(ふーーーっ…。でねえ!!)」
個室にこもってる三井は、思うように用を足すことができず、ため息をついた。
「くそ…。中学んときは、こんなにキンチョーしなかったけどな。ん?」
1人でぶつぶつとつぶやいていると、外から人の声が聞こえてきた。
それは、別の人物が、トイレに入ってきたからだった。
「(ウンコしてる時に人が入ってくると、おちつかねー気持ちになるのはなぜだろう…)」
個室にこもってるので、三井はそわそわしていた。
「相手の湘北の14番…」
「…!」
けど、突然自分の話題になったので、三井は反応を示し、耳を傾ける。
「知ってるか?武石中の、あの、三井寿だってよ。MVPとった」
「ああ、知ってるよ………」
「ポジション的にお前のマークだろ。たぶん」
「わかってる…」
「(翔陽の奴か…!!)」
個室の外で三井の話をしているのは、今日の対戦相手の翔陽の選手だった。
「奴とは、中学時代あたったことがある…。あの時は、まったく止めようがなかった…。本当に中学生かと思ったよ。スゴいシューターだった…。だが、あの時が三井はピークだった。もう、あの時ほどのインパクトはないな…」
「それはお前が進歩したからじゃないのか?」
「…そうかもな…。どっちにしろ、三井の得点は、5点以内におさえるよ」
「頼むぜ」
三井が個室にいるとは知らず、用を足すと、翔陽の2人はトイレから出ていこうとした。
「(5点だと!?)」
聞きずてならないセリフに、三井は過剰に反応をする。
「誰だ!?」
そして、ズボンをあげると、カギをあけて、怒りながら扉を蹴って開けた。
けど、そこには、もうすでに誰もいなかったので、出入口を急いで開けて外に出るが、翔陽のジャージを着た男が2人、廊下の角をまがるところで、顔は見えなかった。見えたのは、後ろの方を歩く、ジャージの上着を着ていない男の、ユニフォームに記された、6という数字だけだった。
「ちっ…」
顔はわからず、ユニフォームの背番号しか見えなかったので、三井は舌打ちをした。
「(中学時代、名もなかった奴が、翔陽に入ったからってのぼせやがって…。できるもんなら抑えてみやがれ)」
大きな口をたたいたのが気に入らない三井は、顔を知らない対戦相手に敵対心を抱いた。
そしてトイレから戻ると、すぐに安西がやってきた。
「さて…。それじゃあ行きますか」
「「「「はい!!」」」」
時間がきたので、選手達は、控え室からコートへと向かっていく。
そして、扉を開けて、コートへ足を踏み入れると、席をうめるほどの観客が湘北に注目した。
「(おお…。今日は客が多い…。こういう時こそ実力を発揮するのが、天才・桜木…)」
いつもよりも観客が多いので、花道は強気になりつつも、やはり緊張していた。
「いよ~~~花道!!相変わらず浮いてるな~~!!」
「ぬ!?」
その時、聞き覚えのある声が観客席から聞こえてきたので、そちらに顔を向けた。
「ハッハッハッハッ。今日で、5試合連続退場の記録達成か~~~~!?」
「今日は何分で退場するか、ちゃんと見といてやるぜ!!」
「おめーら!!またヒヤカシに来やがったな!!帰りやがれ…
!」
そこにいたのは洋平達で、いつものように花道を冷やかしてきたので、そのことに怒ったが、ふいに、洋平の隣に晴子をみつけたので、顔を赤くして、全部言う前に口を止めた。
「桜木君、がんばって!」
「(ハルコさん!)」
しかも応援してくれたので、いつものように鼻の下をのばした。
「桜木!何やってんだ。早く来い!!」
「お…おう!!」
鼻の下をのばしていると赤木に呼ばれたので、あわてて赤木がいる方へ行った。
「(よーーし。やってやる!!やってやるぞ!!)」
「湘北ーーーーーー」
「(今日のオレの課題は、退場しないこと!!それと、得点を入れることだ!!ルカワ以上に!!)」
「ファイ」
「「「「「オオ!!」」」」」
「(自らに、課題をもうける天才・桜木!やはりちがう!)」
晴子に応援されてやる気が出た花道は、緊張しながらも、いつもよりもがんばることを決意していた。
「翔陽って、確か県内2位の学校でしたよね」
「あら、よく知ってるわね」
ベンチの方では、魅真が彩子に、今日の対戦相手の翔陽のことを話していた。
「調べたんですよ。それで、どんな学校なんですか?」
「対戦はしたことがないのよね。試合は見たけど…」
「へぇ~…」
「翔陽は、去年見た限りじゃ、わりと小さいチームでしたよね!!」
「それじゃあ、高さでは、180センチ以上が4人もいるうちが勝ちますね」
「うむ…。スタメンは小さかったね。でも、控えには、かなり大きい子がそろってましたよ、彩子君。おぼえてますか?」
「あ…」
「彼らが、今年の3年です」
「「―――!!」」
去年が控えで今年3年ということは、スタメンになってる可能性は十分に高いので、彩子も、翔陽のことをよく知らない魅真も緊張した。
「「「「「出たーー!!!」」」」」
その時観客席から、翔陽の選手の歓声が響き渡り、練習をしていた湘北は全員反対側のゴールにふり向き、注目した。
「「「「「しゃす!!」」」」」
湘北がいる反対側のゴール前には、翔陽の選手達がおり、湘北にあいさつをした。
翔陽が来ただけで、観客はさわいだ。
確かに彼らは、安西が言った通り大きかった。
全員というわけではないが、半分近くも身長が高い人物が多く、赤木ほどはないが、180センチ代後半の花道や流川が小さく見えるのが、並んでいなくてもわかるほどだった。
そして、翔陽が来てから数分後…。
「3分前!!」
試合開始の3分前となり、それぞれのチームは、それぞれのベンチに集まった。
「さあて……。今日の相手は、強いチームですよ」
「「「「「はい!!」」」」」
「(6番はどいつだ…)」
三井は、トイレに行った時に、自分にケンカを売った相手を探していた。
「スタートは、赤木君、三井君、宮城君、流川君、桜木君」
「!!」
「の5人でいきます」
今日のスタメンは、なんと花道が入っていた。
いつも、スタメンとして活躍したいと思っていた花道だったが、いざそうなると、緊張してしまった。
「君たちも、強いチームですよ…!!」
翔陽は強い。神奈川県で2番目に強い学校だからだ。対して湘北は、去年緒戦敗退の弱小校。しかし、それでも今の湘北は翔陽に負けていないと、安西は激励をした。
「桜木君」
「おうオヤジ!!」
「君の役割は、インサイドを固めること。リバウンドは、君が制するんですよ」
「!!」
「赤木君、流川君、桜木君の3人で、翔陽の高さに対抗する。まず、勝負はそれからです」
安西はスタメンの名前を呼ぶと、今回の試合の戦い方を、軽く説明した。
「さあ、行っておいで」
そして、説明を終えると、5人をコートに送り出した。
「いくぞ!!」
「おぉう!!」
「おお!!」
花道達は気合をいれて、コートのセンターサークルまで歩いていく。
「おお~~~~~~!!花道、スタメンじゃねえか~~~!!」
「勝負を投げたか、湘北ーーーー!?」
「バカモノ。実力的に当然だ!!この、天才・桜木!」
花道がスタメンとして出てきたので、洋平達は驚きでいっぱいだったが、花道は後ろへふり向くと、いつもの根拠のない自信で返した。
「(ハルコさん…。今日こそ、期待に応えますよ…!!)」
同時に、彼らの隣にいる晴子を見て顔を赤くすると、期待に応えることを決意していた。
「翔陽の監督は、あの人ですか?木暮さん。強豪の監督には見えないな…」
湘北のベンチでは、何気なく翔陽のベンチを見た桑田が、翔陽の監督について、木暮に聞いていた。
「イヤ、あの人はただの顧問の先生だ…。バスケは素人だよ」
てっきり、翔陽のベンチにすわっている、メガネをかけた年配の男性が監督かと思ったが、違うようだった。
「監督はあいつだ。選手兼監督」
木暮が目を向けた先にいたのは、短い茶色い髪の毛の、さやかそうな青年がいた。
「選手なのに監督なんですか?高校生が?」
まさか、部活とはいえ、高校生で監督だとは思わなかったので、そばで聞いていた魅真も驚いて、木暮に聞いてみた。
「ああ、そうだ。藤真健司…。1年の時から、唯一スタメンを勝ちとっていた人物で、海南と渡りあってきた男だ」
「へぇ~~…」
ということは、相当な猛者であることは間違いないので、魅真は思わず、藤真を食い入るように見た。
「(てことは、すごい強いんだ。監督に抜擢されるくらいだから、バスケのことを知りつくしてそうだし、視野もひろそう…。油断しちゃダメだよ、みんな。なんてったって相手は、県内2位の翔陽。しかも、その学校の選手であり、監督でもあるあの人が、ベンチなんだから…)」
ベンチにいるというのは、単に監督でもあるからというだけでなく、スタメンとして出なくても、湘北を倒すには、今回出てくるスタメンだけでも充分勝てるからだと思った魅真は、心の中で、花道達にエールを送った。
「(……といっても、油断しそうな奴ばっかだなぁ…。大丈夫かな?花道も、いつもよりも緊張してるみたいだし…。三井先輩は、何があったかわからないけど、いつもよりも熱くなってるし…)」
しかし、花道を筆頭に、油断しそうで、ついでに、熱くなって目の前が見えなくなるような人物が半数なので、心配にもなった。
「始めます!」
翔陽もコートに出てきて、いよいよ試合開始となり、審判が笛を鳴らした。
「(退場しない!!ルカワより点をとる!!リバウンドを制す!!天才に課せられる使命は多い…!!だが、やってやる!!)」
試合開始となるので、花道は更にドキドキしたが、それでもいつもの強気な姿勢で、試合に臨もうとしていた。
「(…………なんてデケエチームだ…)」
翔陽のスタメンは、一番低くても180cmあるので、宮城は軽く冷や汗をかいた。
観客席では、翔陽のベンチ入りできない選手達が、もともとお祭りさわぎのようにすごい声援を送っていたが、試合開始となったので、更にテンション高く、大きな声援を送っていた。
伊藤、高野、永野、長谷川の名前を次々に叫んで、場を盛り上げる。
「(ちっ…。こんな、顔も思い出せねーような奴が…)」
一方で三井は、トイレで自分を5点以内におさえると言っていた人物をみつけると、顔も思い出せないくらい、記憶にないような選手にケンカを売られたので、内心腹を立てていた。
「おい6番!オレを5点に抑えるらしいな?どこの中学か知らねーが…」
「………!」
「笑わすんじゃねーぞ」
「…………」
三井は、トイレに行った時に、自分を5点に抑えると言っていた人物をみつけると、相手を指さして、いきなりケンカを売っていた。
「(三井先輩、もうすでにケンカ売ってるし。勝負ごとは、冷静さをかいたらダメなのに。トイレ行った時に、何かあったのかしら)」
三井がいつもよりも熱くなっているのは、三井がトイレから帰ってきた時にわかったので、きっとトイレに行った時、相手の6番に何か言われた…もしくは聞いていたのだろうと察した魅真は、さっそくケンカを売っている三井を見て呆れていた。
一方観客席の翔陽の部員達は、花形の名を呼んで声援を送っていた。
花形透…。翔陽のセンターで、197cmという、赤木よりも高い、高身長の男だった。
「(確かに、安西先生が言っていた通り大きいわね。遠くから見ても大きいのがわかったけど、ああやって近くで花道達と並んでいると、180センチ後半の花道や流川が小さく見えてしまうわ。赤木先輩より少しだけ大きいし…)」
赤木よりも大きな花形を見て、その大きさに魅真はびっくりしていた。
魅真の目の前にあるセンターサークルでは、その赤木と花形があくしゅをかわし、あいさつをした。
「それでは、翔陽高校対湘北高校の試合を始めます!!」
「「「「「しゃす!!!」」」」」
審判の合図で両校はあいさつをし、その後、センターである赤木と花形は、互いにセンターラインの前で構え、他の選手達も、周りに移動した。
観客は、ほとんどが花形の応援だった。
「赤木先輩!!がんばって!!」
「赤木、勝てるぞ!!」
「赤木さん、ファイト!!」
館内のムードに飲みこまれそうな雰囲気はあったが、それでも魅真達は、赤木に精一杯の声援を送る。
そして、審判がボールを構え、上に放ると、赤木と花形は跳んだ。
ボールは赤木がはじき、花道がとったが、その直後に笛が鳴った。
「なに…!? (ファウル――!?)」
「ジャンパーヴァイオレーション!!白4番!!」
「!!」
「よーし!!」
笛が鳴ったので、花道はいきなりファウルになったかと思ったが、ミスをしたのは赤木で、赤木はジャンパーヴァイオレーションをとられてしまう。
「(赤木先輩がミス!?それだけ、相手がすごいっていうのもあるかもしれないけど、雰囲気にのまれちゃってるんだわ)」
始まった途端に、冷静な赤木がミスをしてしまったので、それだけ緊張してるのだということがわかった。
赤木がヴァイオレーションをとられたことで、翔陽ボールでスタートをした。
花道は8番をマークするが、自分よりも高い相手に圧を感じていた。
「赤木先輩以外、みんな自分より大きい相手ですね。リョータなんか、10cm以上も…」
「本当に大きなチームですね。花道や流川ですら子供に見えます」
「うむ…」
湘北は決して小さなチームではないが、相手の翔陽が、全員が大きすぎるため、全員がマッチアップする相手より小さく、その中でも一番小さな宮城は、伊藤がパスを出すと、簡単にボールが上を通ってしまった。
伊藤が投げたボールを花形がとると、赤木が止めようとする。ここで花形をたたけば、一気にのれると思ったのだ。
しかし、シュートをしようとする花形を止めようとする赤木だが、花形はフェイダウェイジャンプショットを打ったため、ブロックすることができず、得点が入ってしまった。
「おのれ、このメガネ!!」
「ん?」
花形が点を入れたので、花道は花形の前までやって来るとケンカを売り、そのことに木暮達はぎょっとした。
「桜木!!」
木暮は、ベンチにいながらも止めようとしており、花形は何がなんだかよくわかっていなかった。
「てめーも、いずれオレが倒す!」
首に指をあてて宣戦布告をする花道だが、花形は無視して、花道に背を向けて歩いていった。
「ああっ、てめえメガネ!ムシしやがったな、この天才を!!」
「のけ」
「ぬ…。ゴリ!!」
無視されたので腹を立てた花道は、花形に噛みつくが、花道の後ろにやって来た赤木が、花道の顔を横から押しのける。
試合は再開され、花道は今日の課題を、心の中で復唱した。
湘北は、なんとかボールをゴール付近まで運ぶも、流川が赤木にパスしたボールを、永野にカットされてしまった。
「ドンマイ!!ディフェンス止めよう!!」
木暮が声を出すと、花道は高野を止めようとした。
そして、以前赤木に言われたディフェンスにおける注意点と、今日の課題の一つである、退場しないこととファウルはしないことを、もう一度心の中で復唱する。
しかし、高野が花形にパスをしようとした時に腕を伸ばし、その腕が高野の腕にあたってしまい、審判が笛を鳴らした。
「ああっ。しまった!!」
心の中で復唱したというのに、その直後に高野の腕をたたいて、ファウルをもらってしまったので、花道は顔が青くなるが、もう遅かった。
「ファウル、白⑩番!!」
今のはファウルとみなされ、花道は試合開始して、たった数分で、しかも課題を復唱した直後に、ファウルをもらってしまったのだった。
「バカモンが!むやみに手を出すな!!」
「ぬ…」
アドバイスをしたのに、いつも通りにファウルをしたので、赤木は花道の頭を殴る。
「「ひと~つ!はやくも!」」
「うるせーな!!くそ!」
更には、三井と宮城がバカにしてきたので、花道は顔を赤くして、2人に噛みついた。
「(ダメだこりゃ…。あのバカ、いきなりファウルもらうとか…。まあ、花道らしいっちゃらしいけど。あの感じだと、今回の退場も、時間の問題かな)」
試合開始から、ものの数分でファウルをもらったので、魅真はあきれ、これでは、また退場になるのも時間の問題だとも思った。
「(どーも手が出てしまう…。反射神経がよすぎるのかな…)」
すぐに手が出てしまうのは、反射神経のよさではなく、ただ経験不足なだけなのだが、それでも花道は、自分の都合のいいように解釈する。
花形が決めて、盛り上がりを見せる翔陽。今いち乗りきれない湘北。
湘北ボールでスタートしたにもかかわらず、ゴール前で、またしても、花形がパスカットをした。
高野は花形からボールをもらうために走っていくが、あと少しでもらうというところで、赤木が立ちはだかる。
しかし、花形は高野にパスをせずに、赤木を抜いて、レイアップを決める。
またしても翔陽に点が入り、ベンチや観客席が盛り上がった。
翔陽の快進撃はなおも続き、今度は花形からボールをもらった伊藤が3Pを決めて、11対0になった。開始から6分も経つのに、湘北は未だにノーゴールで、翔陽は勢いにのって、大きくリードしていた。
更にまずいことに、全員がすでに、肩で息をしていた。
「どうしたんだ、みんな…。もう肩で息をしている…!!」
「どうしたの!?翔陽だからって、エンリョすることないのよ!!」
「(緊張してるんだわ。県内2位の強豪だから、知らず知らずのうちに、緊張で疲労が早まってるんだ!!)」
何故こんな風になっているのか、木暮と彩子はわからなかったが、魅真は、開始6分しか経っていないのに、全員が肩で息をしているのかを理解した。
緊張のために動きが固いので、宮城がパスを出すと、永野にスティールでボールを奪われ、永野がパスしたボールを花形がとった。
ボールをとった花形は、シュートを打とうとしたので、赤木はなんとか止めようとしたが、それはフェイクで、三井が叫ぶがすでに遅く、花形は、また赤木を出し抜いて点を決めようとした。
しかし、いつの間にか花形の横にやって来た流川に、下からはじかれ、ボールを奪われた。
流川はボールを奪うと、速攻を出した。
他の選手も追いかけていき、翔陽は止めようとするも止めることができず、花道はボールを寄こすように叫び、宮城は待つように叫ぶが、流川は一人でつっこんでいき、高野と永野の2人相手でもおかまいなしで、ダンクを決めようとした。
高野と永野は止めようとするが、流川は一度ボールを下に戻して、2人が伸ばした腕の下からレイアップを決めた。
湘北は、開始から7分近く経ったところで、ようやく点を入れることができたのだった。
「よおし!!ナイッシュ、流川!!」
点が入ったので、魅真はガッツポーズをして喜んだ。
そして、この流川のプレイに観客はざわめき、親衛隊は盛り上がった。
「てってってっ、てめー、個人プレーに走りやがって!!ルカワ!!」
「入ったからいいけど、今のはオレたちを待って、3対2でいくとこだろ!?」
「……………」
しかし、花道と宮城は、ワンマンプレーに走った流川に文句を言っていた。
「全員動きがカタい。パスが出せねー」
「「「「…………!!」」」」
その文句に対して、流川は嫌味を言うと、背中を向けて歩き出す。
流川が言ってることが聞こえていた魅真は、思わず吹き出した。
「「「「なんっ…てナマイキなヤローだ!!」」」」
この発言には、文句を言った花道と宮城だけでなく、近くにいた赤木と三井も腹を立てた。
「なにやってんだ!?ディフェンスディフェンス!!来たぞ!!」
あれこれ言い争っている間に、翔陽が攻めてきたので、木暮が注意する。
「「「「おおう!!!」」」」
流川にバカにされて燃えた4人は、先程より更にやる気になっていた。
花形がシュートを決めようとしたところを、赤木がハエたたきでブロックをし、ブロックしたボールをとった高野がシュートをしようとしたところを、花道が同じようにブロックする。
その、ブロックしてとんでいったボールを宮城がとると、花道と流川は走り出した。
「見たか、ルカワ!!」
「えらそーに」
この、赤木と花道のプレイで、観客は盛り上がり、止められた花形と高野は悔しそうにした。
速攻を出した湘北は、宮城を先頭に、ゴールまで走っていた。
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