#2 花道と流川
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次の日……。
「ええっ。花道がフラれたあ!?」
昼休みの時間、1年7組の教室に行く途中で洋平に会い、午前中の休み時間に、花道がフラれたという話を聞いて驚いていた。
「って、あのハルコちゃんてこに?」
「そう。ハルコちゃん」
「いくらなんでも早くない?昨日の今日だよ」
「いや…。花道がハルコちゃんに、昨日ハルコちゃんが言ってた、ルカワって奴が彼氏かどうか聞いてみたら、彼氏じゃないけど、片思いだって言われてさ」
「あっちゃあ~~…」
「それで、ハルコちゃんのことは本気だったらしくて、今相当ピリピリしてっから」
「行かない方がいいかもね。本気で暴れたら、何するかわかんないし」
「そういうことだ」
本当は、花道と洋平としゃべろうと思って、7組の教室に行こうとしたのだが、こうなった花道は、少しでも刺激するとどう出るかわからず、そうなると確実に周りに被害が出るのがわかっているのと、何よりも花道は、今は傷心の身なので、魅真はそっとしておこうと思ったのだった。
「それにしても、ルカワか……」
「なんだ、知ってんのか?」
「あ、いや……全然知らないけど…」
「けど?」
「んーー…。なーんか、どっかで聞いたことがあるような…ないような…」
「なんだよ、それ」
ルカワという名前がどこかでひっかかっている魅真は、思い出そうと考えるが、結局思い出せなかった。
#2 花道と流川
そして放課後。
魅真は帰宅するために、荷物を持って廊下を歩いていた。
「あれ?」
その途中で、花道達五人が、屋上へ続く階段をあがっていくのをみかけた。
「(どうしたんだろ?)」
彼らが屋上へ向かっていくのを見て、魅真はあとをつけていった。
花道達は階段を上がっていき、扉の前まで来ると、大楠がドアノブに手をかけた。
「行くぜ!!」
気合充分に、ドアノブをひねって押した瞬間。
「わっ!!!!」
「「「「「うおっ!!」」」」」
いきなり魅真が後ろから現れて、花道達を驚かすと、突然大きな声をかけられた花道達は驚いた。
「あっははははは。驚いた驚いた」
予想通りにびっくりした花道達に、魅真は子供のように、おもしろそうに笑った。
「魅真っ」
「おい、びっくりしたじゃねーかよ」
洋平が魅真の名前を呼び、一番驚いた大楠は、ドアノブをつかんだまま体を魅真に向け、文句を言うも、魅真は平然として笑っていた。
「何やってんのよ?みんなして、こんなところで。……あれ?」
「どした?魅真」
魅真はしゃべっている途中で、開いた扉の先に見た、見知らぬ黒髪の男子生徒と、堀田達の姿に気づいて、疑問の声をあげた。
「ん?」
魅真につられて、花道達も扉の先の光景を見ると、目を丸くした。
「なんだこりゃあ…」
「全員…やられてる」
「堀田は…?」
その黒髪の男子生徒の周りには、何人か男子生徒が倒れていたので、洋平達も目を見張った。
目の前にいるのは堀田ではなかったので、洋平は堀田がどこにいるか探した。
「いた」
周りを見回すと、角刈りの男の股の間に、堀田が倒れていた。
堀田をみつけると、彼らの中心に立っていた男子生徒は、花道達の方へとふり向いた。
男は、黒い短髪の、どこにでもいる生徒といった感じだった。
顔立ちがととのっており、背の高い花道と同じくらいの身長をもっていた。
状況からして、堀田達をやったのはこの男で、頭から血を流しているが、彼はまったく気にとめていなかった。
「「……………………」」
男子生徒がふり向くと、花道と目が合い、二人はお互いに凝視した。
「オマエ一人でやったのか…?だれだ、オマエは!?」
見た目は普通の男子生徒なのに、まさか複数の不良を相手にして勝ってしまったのかと、洋平は彼に問いかける。
「流川楓」
洋平の問いに、男ははずれていた一番上のぼたんを片手でとめながら、名前を名乗った。
「ルカワ!?」
「なに、ルカワ!?」
「ルカワ…?」
男の正体はなんと、晴子が片思いをしているという、あの流川楓だった。
「(コイツが…コイツが、ハルコさんが片思いをしているとゆう…)」
「?」
「(ルカワ!!!)」
まさかの対面に、花道はわなわなと体をふるわせると、メラメラと嫉妬の炎を燃やし、流川の周りを移動しながら、睨んだ目つきでジロジロと見た。
「…………」
「? 何だ、オマエは。コイツらの仲間か?」
次に、流川の隣にならんで、手を左右に動かして身長をはかるが、流川はそんな花道の行動を意に介することなく質問をした。
「あぁ!!何だとコラァ!!オ…オレの名前を教えてやろうかァ!!お?」
「おい、ちょっとおちつけよ、花道!」
流川への嫉妬から、怒りをぶつけるも、興奮しすぎているせいか、いつもよりもやや迫力にかけた。
「(しかし、この流川って奴、あの堀田たちを一人でやっちまうとは…!!
マズイ…!!この流川とシットに狂って逆上してる花道がやりあえば、とんでもないことになるぞ!!)」
「うーーん。こりゃ、おもしろくなってきた」
冷静に状況を判断してる洋平と違って、高宮、野間、大楠は、わくわくしながらこの状況の成り行きを見ていた。
「(んーーー……。ほんとに……どっかで見た気が……)」
一方、魅真は魅真で、どこかで会ったことがあるであろう流川を、マイペースに観察をしていた。
魅真達が花道と流川の様子を見ていると、急に花道は、流川の胸ぐらをつかむが、それでも流川は、気にもとめておらず、無表情のままだった。
「あ、こら!!花道、やめなさいっ!!」
さすがに胸ぐらをつかむのはまずいので、魅真が止めるが、花道は聞いてなかった。
「オレは、1年の桜木花道だ!!よーくおぼえとけ!!」
「あ、もう忘れた」
「………!!」
「………」
「お…?」
花道とは正反対の流川の冷めた態度は、花道の心を余計に刺激した。
「おおっ。なんだコラァ!!!」
「花道ってば!!」
「お、おい花道、やめとけ!!」
「「「………」」」
魅真と洋平は花道を止めようとするが、大楠、野間、高宮の三人は、相変わらずワクワクしながら、この成り行きを見ていた。
「桜木君、やめて!!」
そこへ、晴子がやってきて、扉を開けると花道を止めるために叫んだ。
「ハルコさん!?」
晴子の思わぬ登場に、晴子に惚れている花道は顔を赤くしながら、流川の胸ぐらをつかんでいる手をはなした。
「(なんか、ちょっと…マズイ展開になってきたか…?)」
「「「(おお~~!?役者がそろったかあ)」」」
晴子の登場で、魅真は、話がこじれてしまうのではと不安になっていたが、大楠、高宮、野間は、相変わらずおもしろそうにしていた。
「(はっ!!血――!!)」
晴子はというと、流川の頭から、たくさんの血が流れていることに気がついた。
「桜木君…。みんなは、桜木君のことを、不良だとかコワイとかって言うけど。私はそんな人じゃないと思ってた。こんなことをする人だとは思わなかったわ」
「………?」
拳をぎゅっとにぎりしめ、自分を見据えて話す晴子は、一体何を言っているのか、花道はわからなかった。
「暴力をふるって人を傷つけるなんて最低よ!!!しかも流川君を。見そこなったわ、桜木君!!!!」
「!!」
今の晴子の言葉は、まるで砲弾のような破壊力をもっていた。
その言葉にうちのめされた花道は、ショックをうけ、涙を流し、頭の中で、晴子の「みそこなったわ」というセリフがくり返されていた。
「ちょっとまった、ハルコちゃん。そりゃあカンチガイ…」
「流川君、大丈夫!?」
「ダメだ。きいてねー」
予想通りの展開に、魅真は頭をおさえ、大楠、高宮、野間の三人は、涙を流しながら爆笑し、先程まで止めようとしていた洋平までも、おもしろそうに笑っていた。
晴子は晴子で、流川が心配で、洋平の話をまったく聞かずに、流川のもとへ走っていった。
「さっきフラれたばかりなのに、そのうえこの仕打ちとは…。神様、そんなに僕がお嫌いですか?」
「おおっ!」
花道はというと、体を起こすと四つん這いになって、涙を流しながら、体をふるわせていた。
「そーなんだそーなんだ。そしてきっと、あの流川のことが好きなんだ。そーなんだ」
「お…おちつけ!」
かなりダメージをうけている花道を見て、洋平もさすがに笑えなくなってきて、なんとかなだめようとした。
「る…流川君、血をふかなきゃ…!!」
一方晴子は、憧れの流川が目の前にいるので、顔を赤くしながらハンカチを差し出していた。
「いいよ、こんなの」
けど流川は、声をかけられると、一瞬晴子を見るが、すぐにそらし、そでで血をぬぐった。
「ああ。だめよ、そんな…!!ちゃんと消毒して…。病院に行った方がいいかも!!」
「うるせーな。ほっとけよ。だれだ、おまえ」
「!!」
晴子の優しさを一蹴するだけでなく、冷たくあしらい、その上ようやく合わせた目は冷たいもので、それだけで晴子はショックをうけて固まり、花道は、晴子と流川のやりとりを見て、顔がけわしくなる。
「流川ーーっ!!!!」
そして、その場を立ちあがると、流川の名前を叫びながら、流川にむかってまっすぐ走っていき、流川の顔を殴りとばした。
「てめえ、ハルコさんのやさしい心を!!」
更に、流川の顔を両手でつかんで固定すると、得意の頭突きを何度もくらわせる。
「キャアアア。やめてえ、桜木君!!」
「花道!!」
「やめなさい、花道!!」
いくらなんでもやりすぎな花道を、魅真達は止めようとするが、花道の耳には届いていなかった。
「いてーな、この…」
花道にしてみればいわれはあるのだが、流川からしてみれば、いわれのない暴力をうけ、血が更に流れたので、お返しとばかりに花道の顔を殴った。
「…………お…」
それは結構な威力で、鼻血が出た上に、頭がクラクラして、少しばかり固まった。
「上等だコラァ!!!!!勝負せいやァ!!おお!?」
「花道」
「おちつけ、花道!!」
もともと嫉妬に狂っていたが、殴られ、鼻血まで出た花道は、更に頭に血がのぼって、再び流川に襲いかかろうとするが、そこを洋平達が止めに入る。
「「…………」」
そして流川は、少しだけ花道を睨みつけると、踵を返してそこから立ち去っていく。
「流川君、大丈夫!?血がすごいわ」
「ほっとけつってんだろ」
先程よりもひどい状態に、晴子は涙を流しながら再び流川に歩みよるが、流川は意地になってるのもあり、そでで血をぬぐいながら、晴子を冷たくつっぱねた。
「流川君…」
流川は、それ以上は何も言わず、そでで血をぬぐい続け、フラフラとした足どりで、校内へ入っていった。
「…………」
その様子を、晴子は目に涙を浮かべて見送る。
「桜木君。ヒドいわ、あんなに!!もう大ッキライ!!!」
そして晴子も、涙を浮かべたまま、花道を睨むように見ると、校内へ入っていった。
大ッキライという、花道にとって破壊力が抜群の言葉は、花道の脳内で何度もくり返され、完全に嫌われたので、花道は涙を流した。
「完ペキに嫌われた~!!もういやだ!!この世に、神も仏もあるもんか!!大キライだってさ」
「お…おちつけ、花道!!大丈夫。ハルコちゃんも、スグカンちがいだったってわかるさ!!な!!」
「それだけはダメよ!!」
「放してくれ~!!」
とどめをさされた花道は、手すりまで行くと、そこから飛び降りようとしたので、焦った魅真達は止めに入る。
大楠、高宮、野間の三人も、さすがに笑っていられる状況ではなくなったので、全員で、なんとか花道が飛び降りるのを阻止していた。
「(しかし、花道の本気のパンチをくらって、立ってられた奴なんて、はじめて見たぜ…。あの流川って奴…!!)」
洋平は、花道を止めながら、冷静に流川のことを考えていた。
一方その流川は……。
「(こりゃあマジに病院かな…。血がとまらん。桜木か…。あんにゃろう)」
そででぬぐったのに、未だに血が止まらず、本当に病院に行こうかと考えながら、ふらふらとした足どりで階段を降りていた。
桜木花道と流川楓、実はこれが、のちに終生のライバルといわれる二人の、最初の出会いであった。
次の日…。
魅真は、晴子が勘違いをしているので、昨日の花道と流川との誤解をとこうとした。
けど、よく考えると、晴子のクラスを知らないので、洋平なら知っているだろうと思った魅真は、洋平に晴子のクラスを聞こうと7組まで行った。
もちろん、今花道は、今まで以上に落ちこんでいるので、廊下に出て、7組の教室から離れたところで話していた。
「じゃあ、もう洋平が誤解をといたのね」
「ああ。結構焦ってたな、ハルコちゃん。カン違いだったとはいえ、いろいろと言っちまったからな」
「そっか。それで?そのハルコちゃんて子は、やっぱりまだ花道には…」
「まだ何も言ってねえ」
「そう…」
晴子が花道にまだ何も言っていないのは、先程7組の教室をのぞいた時、花道が気落ちしているのを見たのでわかった。
「まあ、ハルコちゃん焦ってたし、このまま何もないってことはないだろうけど…」
「早くなんとかしてあげてほしいわね。あの状態の花道を立ち直らせることができるのは、そのハルコちゃんて子だけだろうから…」
この世の終わりがきた状態の花道をどうにかできるのは、この世でただ一人。晴子しかいないのは、まだその場に居合わせたことしかない魅真でもわかった。だが、それを晴子自身に強要するのも間違っているので、他力本願ではあるが、早くどうにかしてほしいと願っていた。
そして放課後……。
授業終了のチャイムが鳴ると、魅真は急いで7組まで行った。
そこには、相変わらず落ちこんでいる花道がいたので、まだ晴子は何もアクションを起こしていないのだということが、すぐにわかった。
花道は授業が終わると、カバンをとり、魂がぬけた状態で廊下を歩いており、その数メートル後ろを、花道を見守るようにして、魅真達が歩いていた。
「じゃあ私、職員室に寄ってから帰るから、花道のことよろしくね」
1階まで降りると、魅真は洋平達に声をかけた。
「職員室?何しに行くんだよ?」
「入部届を出しによ」
大楠が尋ねると、魅真は理由を簡潔に答えた。
「それなら、オレ達も一緒に行くぜ。届けを出すだけならすぐだろ」
「ダ、ダメよ。そんなの!!」
「え?」
今度は野間が話しかけ、魅真に提案するが、魅真は全力で断った。
「だって、私が入部するのって…」
「あ…」
何故全力で断るのかふしぎに思ったが、そこまで言われて、初めて野間は、魅真が断った理由がわかった。
「本当は昼休みに出しに行こうと思ったけど、花道のことが心配だし…。どこで花道と会うかわからなかったからね」
「そっか」
「それじゃあ仕方ねえな。花道のことは、オレ達にまかせろ」
事情がわかると、今度は高宮が、大船にのった気でいろというように、自分の胸をたたいた。
「うん、よろしくね。じゃあ、また明日ね」
「「「「おー、またなー」」」」
魅真は手をふると職員室へ歩いていき、手をふられると、四人もつられるように手をふって、魅真を見送った。
魅真は洋平達と別れると、まっすぐに職員室に行った。
「失礼しまーす」
一言断りをいれて中に入ると、担当教員の机まで歩いていき、机の上につまれた入部届の一番上に、自分の入部届の紙を置いた。
「これでよし」
入部届は提出したので、魅真は満足そうな笑顔を浮かべて、帰宅しようとした。
「きゃっ」
「あ……」
けど、後ろへふり向いた瞬間に、人とぶつかってしまった。
ぶつかった瞬間、相手が持っていた紙がひらひらと宙を舞って床に落ち、落ちた時に、床と紙がふれあう、カサッという小さな音が響く。
「す…すみません」
いくら背中を向けていたとしても、人にぶつかってしまったので、魅真は謝りながら、あわてて相手が落とした紙をひろおうとしゃがんだ。
「あれ」
魅真の指先が紙にふれた時、魅真は紙に記入されている文字に気がつき、手を一瞬止めた。
けど、すぐに手を動かして、紙をひろって目の近くまで持っていき、記入されている文字を確かめる。
そして、記入された文字を確かめると、目を丸くし、ぶつかった相手を見上げた。
そこにいたのは、昨日の放課後に屋上で出会った、あの流川楓だった。
「おまえ…」
見覚えがある顔なので、流川が先に口を開いた時…。
「あーーーーっ!!!」
急に魅真が立ちあがって大声を出したので、開いた口を閉じた。
「あなた!!富ヶ丘中学校の、流川楓君!!」
「そーだけど…」
いきなり出身中学を言いあて、フルネームで呼んできたので、流川は魅真のことを、変なものを見るような目で見た。
「おまえ誰だ?」
「あ、ごめんね。名乗りもせずに…」
考えてみたら、自分は昨日流川と会って、流川の名前を知ったのに、名乗ってはいなかったので、軽く謝罪をした。
「私、1年10組の真田魅真っていうの。流川君のことは、試合を見て知ったんだ」
「試合?」
「そう!!私ね、バスケはやるのも見るのも大好きなの。以前、富ヶ丘中学校の試合を見て、そこで流川君のことを知ったんだ。その中で、流川君が一番目立ってたから、すぐに目がいっちゃったの。一人で50点以上も点をとってたのもすごかったけど、バスケのテクニックも、高いシュート成功率も、中学生なのにダンクを決めちゃうのも、とにかく何もかもがすごくて、めちゃくちゃバスケがうまいから、もう見惚れちゃって」
魅真が突然流川のことを思い出したのは、入部届の部活名を書く欄に、男子バスケット部と書かれていたからだった。
魅真の口をはさむ隙がない長い話を聞いて、何故魅真が自分を知ってるのかをようやく知った流川は、納得すると同時に、バスケのことでほめられたので、まんざらでもなさそうな顔をしていた。
「まさかその流川君が、湘北に来てるとは思わなかったな。流川君、やっぱりバスケ部に入るんだね」
「まあな」
「これから、流川君のプレイが目の前で見れると思うと、今から楽しみ。ね、流川君はクラスはどこ?」
にこにことうれしそうに笑いながら問うと、流川は無言で、魅真が持っている自分の入部届を指さした。
流川の指が、自分が持っている流川の入部届をさしているので、魅真は入部届を見てみた。
見てみると、魅真は目がとび出るほどに驚く。
「1年……10組…」
入部届のクラスを書く欄に、1年10組と記入されていたので、魅真は呆然としてクラスを読みあげると、流川と目を合わせた。
「おんなじクラス!?」
「みてーだな」
「え……でも、私クラスで流川君を見たこと………あっ!!」
同じクラスなのに、見たことないので、魅真はふしぎに思ったが、そこまで言うとあることに気がつく。
「あの…流川君てひょっとして、廊下側の一番後ろの席?」
「おー」
「やっぱり…」
いくら入学して間もないといっても、まったく見たことがないのはおかしいと思ったので、もしやと思い、思ったことを聞いてみると、思った通りの答えが返ってきたので、納得をした。
「(あの廊下側の空席の子かあ。そりゃあ顔を知らないわけだよ。でも私、その空席の隣の席なのに、流川君を見てないなんて…) 流川君……授業って出てる?」
「出てねえ」
「でしょうね」
ちょっとした疑問を投げかけると、あっさりと答えが返ってきたので、魅真はその答えにすごく納得をした。
「大抵は屋上で寝てる」
「(寝てるだけか!!)」
まともに授業を受けていないようなので、魅真は流川の行動に対して、心の中でつっこんだ。
「でも、教室にいる時もある。寝てるけど」
「いても寝てるんだ」
「おー」
「(教室にいることもあるんだ。でも、寝ていても教室にいるのに、しかも隣の席なのに、全然存在に気づかなかった。いくら入学して間もなくて、まだクラス全員の顔を覚えてないといっても…。私も、結構周りのことを見てないんだな…)」
花道のように、外見が特別に目立つような人物ではないが、それでも同じクラスで隣の席なのに、存在を認識していなかったので、魅真は自分自身に呆れていた。
「あ、えっと…実はね、私もバスケ部に入ったんだ」
「バスケ部に?」
気をとりなおして、流川に自分もバスケ部に入部したことを伝えると、流川は反応を示す。
「そう、バスケ部のマネージャー。だから、流川君とはこれから、チームメイトってことになるわね」
「ああ」
「クラスメイトとしても、チームメイトとしても、これからよろしくね、流川君」
「おー」
魅真が手をさしだしてあくしゅを求めると、流川も手をさしだし、軽く手をにぎった。
そして、数秒間手をにぎると、魅真は持っていた流川の入部届を出して、今度こそ帰ろうとした。
「じゃあ、私は帰るけど……流川君も帰るの?それとも何か用事ある?」
「ああ、そういえば…」
問われると、流川は先程教室で入部届を書いていた時に聞いたことを、魅真に話そうとした。
「なあおい、聞いたか?今体育館で、バスケ部のキャプテンと7組の桜木君が、バスケの勝負してんだってよ」
「おもしろそー。行ってみようぜ」
「おう」
その時、職員室の前を、男子生徒二人が走りながら通っていき、今まさに、流川が話そうとしていたことを話していた。
「えっ!!花道が…バスケの勝負?バスケ部のキャプテンと!?」
再びバスケが嫌いになった花道が、どういう経緯かは知らないが、バスケ部のキャプテンと勝負をしているようなので、それを知った魅真は驚き、目を丸くした。
「大変。行かなきゃ」
傷心の花道が、バスケが原因で落ちこんでいる花道が、どういう行動に出るかわからないし、何よりも心配なので、特に何かできることがあるわけではないのはわかっているが、居ても立っても居られない魅真は、体育館へ行こうとした。
「あ…。じゃあね、流川君。また明日ね」
そして、一度流川の方へふり向くと、やや早口で流川にあいさつをして、職員室から出ていった。
「(花道…なんでまたバスケの勝負なんて…。バカなマネしなきゃいいけど…)」
魅真は、花道のことを心配しながら、廊下を急ぎめに歩いていた。
「ん?」
その時、後ろから足音が聴こえたのに気づいた魅真は、後ろへふり向いてみた。
「流川君!」
そこにいたのは、先程まで職員室に一緒にいた流川だった。
「えっと……ひょっとして、流川君も体育館に行くの?」
問われると、流川は無言でうなずいた。
「一緒に行く?」
そして、もう一度問われると、また無言でうなずく。
「(コミュニケーションがとりにくい人だな)」
無表情の上に、饒舌ではないので、ちょっと接しにくいと思った魅真だった。
けど、そう思いながらも、今はただ、体育館へと急いで向かっていた。
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