#21 愛の再確認
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「それじゃ、湘北高校対三浦台高校の試合を始めます!!」
コートに入って数分後、いよいよ試合開始となった。
「おし!!」
「行くぞ!!」
両チームとも、初戦ということで、とても気合いが入っていた。
#21 愛の再確認
試合が始まり、ジャンプボールは赤木が勝ち、初めは湘北ボールとなった。
「さあ、1本行こう!!」
「「はい!!」」
ボールは木暮がとり、全員に声をかけた。
しかし、試合に出ていたのは、赤木と木暮の他には、安田、角田、潮崎の3人で、花道と流川はいなかった。
「おい、オヤジ。またオレを、いつまでも使わねー気じゃねーだろーな!?秘密兵器とかいって!」
その花道と流川は、宮城、三井とともにベンチにおり、魅真も流川の隣にすわっていて、マネージャーの仕事をおあずけされていた。
陵南との練習試合の時と動揺に、ベンチであることに不満を抱いた花道は、安西の肩に手を置いて、ブツブツと文句を言う。
「…………」
「ぬ!?」
しかし、いつもなら何かしらのリアクションがあるというのに、今日の安西は何も言わず、冷たい態度をとっていた。
「キミたちは、ケンカしたからおしおきです」
「………!!」
何故、花道、流川、宮城、三井、魅真がベンチにいるのかを簡潔に述べると、安西はそっぽを向く。
「せ…先生…」
「「「「……………!!」」」」
自分達がベンチにいる理由を知ると、全員ショックをうけた。
「おい!!オヤジの奴怒ってるぞ!!なんとかしろ、ミッチー!!もとはといえばてめーが!!」
「誰がミッチーだ。この無礼者!!安西先生にむかってオヤジだと!?」
「花道、おめーはどっちにしろベンチだからいーじゃねーか」
「ああ!?何だとリョーちん!!」
安西が理由を話すと、花道、三井、宮城の3人は言い争う。
「どあほうが3人に…」
「ぬ!!」
「流川!!」
そんな3人を見て流川がため息をつくと、花道、三井、宮城は腹を立て、鋭い目で流川を睨みつける。
「てめえが最初に手ェ出したくせに!!この短気者!!」
「えらそーに!!」
「てめー、先輩にむかってどあほーだと!?」
「みえん」
3人は流川に怒鳴るが、流川は相変わらず冷めていた。
「まったく…。往生際が悪いわよ、みんな」
「「「ん?」」」
「理由はどうあれ、ケンカしたのは事実なんだから、甘んじて罰をうけなさいよね」
魅真は試合を見ながら、花道、三井、宮城にもっともなことを言った。
「それよりも安西先生、なんで私も罰をうけなきゃいけないんですか?納得いきません!」
あの時、洋平達がうまく誤魔化してくれたはずなのに、何故かおしおきされる側なので、納得がいかない魅真は、立ち上がって安西に顔をむけて抗議する。
「いくら混乱していても、一発しか殴ってなくても、ケンカはケンカ。いけないことですよ」
「うっ……」
安西が、魅真にマネージャーの仕事をさせないのは、これが理由だったので、魅真は二の句が継げなくなった。
確かに、洋平達がうまく誤魔化して、元ヤンだという秘密と、ケンカをしたという秘密は守られた。
しかし、教師に何があったのか問われた時、魅真は名乗りをあげてしまった。何もないのに名乗りをあげるわけがないので、洋平達は事情説明の時、そのことを問われた時に、ケンカの最中に魅真が言ったことを言ってしまったため、人を殴ったという事実だけは、教師と安西に知られるところとなってしまったのだ。
「てめーだけ逃れようったって、そうはいかねーぜ」
ざまあみろ…とでも言うように、三井は魅真を指さした。
「うるさいですよ。大体、花道の言う通り、あなたがあんなバカなことをしなければよかったんですよ」
「んだとお!?」
けど、魅真は冷静な態度ではあるが、ケンカごしになると、三井はまたブチ切れて、魅真の前に立った。
「なんだかんだ言って、てめーオレを殴ったろーが!この暴力女!!」
三井もケンカごしできた上、暴力女と暴言を吐かれたので、魅真は腹を立てた。
「すぎたことを、いつまでも、ぐちゃぐちゃと言わないでくださいよ。あと、本当にうるさいです。ついでに前も見えません。どいてください」
「なにィ!?」
それでも、冷静なままで対応すると、三井は更にヒートアップした。
「てめえ!!オレは先輩だぞ!!」
「今まで素行悪かったくせに、こんな時ばっかり先輩風吹かせないでください。あと、本当にジャマです」
「うるせえ!!それでも、オレの方が年上なのは変わりねえだろ!!」
「どあほう」
「てめっ!!先輩にむかって…」
「みえん」
「流川かてめーは!!」
自分が怒ってるのに、冷静な態度のまま悪態をつく魅真が気にいらない三井は、ますます怒った。
「ったく…。やっぱりおめーは、かわいくねえな!!」
そして、この前魅真に言った暴言を吐いた。
その言葉に、言われた魅真だけでなく、花道も過剰に反応を示した。
今ので魅真は固まってしまい、花道は魅真のもとまで行くと、魅真の手をつかんで立たせ、流川の3つ隣の席にすわらせ、自分も流川とは1つ間をあけた2つ隣の席…魅真の隣に、魅真を三井からかくすようにすわった。
「ミッチー、女の子にむかって、かわいくないはダメだぞ。サイテーだ」
「なっ」
すわると、顔を三井にむけて、三井に説教をした。
「そースよ、三井サン。サイテーですよ」
「そーだそーだ」
「てっ…てめえら…!」
花道に続いて、宮城と流川も三井を非難した。
流川に至ってはあきらかにノリだったが、誰も味方がいなくなった三井は、体をブルブルとふるわせながら、もとの席にすわる。
三井の意識が宮城と流川にむくと、花道は魅真の背中にまわした手を頭にそえ、自分の方にひきよせた。
「気にすんな」
そして、今にも泣きそうな魅真を、真剣な顔でなぐさめる。
一方で、試合の方は、早くもピンチに陥っていた。
16対4で、圧倒的に湘北が負けていたのだ。
相手チームのキャプテンの村雨がレイアップを決めたので、また2点追加され、三浦台のベンチは盛り上がっていた。
「さあさあ、どうした赤木!!オレたちゃ今年は、王者・海南を倒して全国に行くんだ!!湘北なんざ、陵南の相手にはなっても、オレたち三浦台の相手じゃねー!!オレたちゃ陵南ごときとはちがうんだ!!」
シュートが決まると、村雨は赤木を挑発し、湘北だけでなく、陵南も格下扱いした。
「陵南ごとき?」
観客席にはその陵南がおり、ザコ扱いされたので、魚住がキレていた。
「コラァ、赤木。なにやってんだーーーーー!!」
「そやそや」
「そんなブタにてこずるなーーーー!!流川を出せー!!」
「三浦台ごときに!!」
「ウチの方が強いでーーー。赤木さん!!」
そして、続けざまに他の陵南のメンバーもキレて、ヤジをとばした。
「うるせーな、まったく…」
このブーイングに、赤木はため息をついた。
安田、潮崎、角田は、三浦台の雰囲気にのまれてしまっているので、練習の半分の力も出せていなかった。
そして、赤木にボールが渡ると、村雨を含む3人の選手で、赤木を封じた。ワンマンチームなので、赤木さえつぶせばいいと思ったからだ。
それでも赤木はシュートを決めようとするが、村雨にジャマされてしまった。
「プッシング!!黒④番!!」
今のは村雨のファウルとなり、赤木はフリースローをもらい、それを決めた。
「(赤木の奴、フリースローがうまくなったな……)」
自分の知ってる赤木は、フリースローがヘタクソだったので、三井は凝視する。
「さあ動け!!1本止めるぞ!!」
赤木の声で、全員ディフェンスに切り替える。
しかし、安田は相手の挑発に縮こまり、うまく動けず、シュートを決められてしまう。
「ああん、もう!何やってるの!!」
安い挑発で動けなくなり、シュートが決まったので、彩子は怒りながら記録をとっていた。
「君達反省してるかね?」
「「「「!」」」」
「もう、ケンカはしないかね?」
「先生…」
「オヤジ…」
それは、自分達を出すということなので、全員反応して、明るい顔で安西を見た。
「ハッハッハッ、オヤジ。しねーよ、ケンカなんか。この平和主義者桜木!」
「やめんか!」
花道はいつものように調子にのって、安西のあごの脂肪をゆらした。
それを見た三井は、顔を青くして止める。
「しません」
「たぶん」
「もう、二度と…………!!」
流川は微妙な返事だったが、宮城と三井…特に三井は真剣な顔で、固く誓った。
「メンバーチェンジ、湘北!!」
審判の声で、4人はコートの中に入っていき、赤木以外のメンバーはベンチに下がった。
「ハッハッハッ。勝利を呼ぶ男登場!!おめーら、これでもう負け決定!!」
「なんだァ?」
「生意気そうな奴らがでてきやがったな…」
「ふーーーーっ。この問題児軍団をまとめ上げるのも、ひと苦労だな…」
初っ端から大きなことを言う花道を、三浦台は注目し、赤木はすでに、どこかつかれた顔を見せていた。
「魅真君」
「はい、安西先生」
「君ももう、暴力沙汰を起こしませんか?」
「はい!必ず!」
「よろしい。では、君も今から、彩子君と一緒にマネージャー業に専念しなさい」
「はい!安西先生!」
ベンチでは、魅真も花道達同様に罰が終わり、許可がおりると、顔が明るくなった。
許可されると、魅真は彩子の隣にすわり、分担として、魅真が時間の計測係、彩子が記録係となり、他のことは、臨機応変にそれぞれが対応することとなった。
「オレが10番をマークする!!」
「ほほう。君が、この天才をね…。止められるもんなら止めてみろい」
「なに」
村雨が自分をマークするというと、花道はいつものように、根拠のない自信に満ちあふれており、村雨を挑発した。
「なにをえらそーに」
「ぬ……」
けど、すでにボールを持っている宮城は、ドリブルをしながら花道バカにして、花道の横を走っていった。
「どっからそんな自信がでてくるんだ」
「ミッチー…」
続いて、三井がバカにしながら花道の横を走っていく。
「…………」
「ルカワ!!」
更に流川は、何も言わず、ため息をつきながら花道の横を走っていったので、流川が嫌いなのもあり、腹を立てた。
「試合に集中せんか」
「!!」
そして、後ろからやって来た赤木が、花道の頭を撲る。
「桜木…」
「ぬ…?」
「足をひっぱるなよ」
「ふぬ…!!」
それだけでなく、去り際にニヤリと笑いながら挑発してきたので、花道はまた腹を立てる。
「11番オッケー!!」
「…………」
三浦台の選手は、コートに入ってきた流川をマークするが、流川は目も合わせずに無視していた。
「14マーク!!」
「うるせーな。ブッ殺すぞ」
三井は、相手はただ、自分がマークすべき選手をチェックしてるだけなのに、鋭い目で睨みつけ、ぶっそうなことを言っていた。
それぞれマークすべき相手のもとへ行くと、試合は再開され、メンバーチェンジする前は三浦台がシュートを決めたところで終わったので、湘北のオフェンスから始まった。
宮城は、三浦台の5番と8番の選手の間を、持ち前の運動能力をもって、素早い動きで走り抜けていく。
村雨がガードしようと、宮城の前に立ちはだかるが、宮城は前を向きながら、横にいる赤木にパスを出し、ボールを受け取った赤木はダンクを決め、赤木がダンクを決めると、歓声が響き渡った。
次のオフェンスは三浦台からだったが、宮城はあっという間にボールを奪い、ドリブルをしてゴールへ向かっていった。
「すっごい!宮城先輩」
宮城の力は普段の練習を見て知っていたが、生の試合で宮城の実力を見るのは初めてなので、魅真は改めて宮城のすごさを知った。
「いいぞォ、リョータ!!」
今のプレイに、彩子が称賛すると、宮城は頬を赤くして鼻の下を伸ばし、うれしそうに笑いながら、彩子がいる方へふり向いた。
「ああっ、見るな!!バカ」
試合中で、しかもボールを持っているというのに、彩子に顔を向けたので、彩子は焦った。
宮城をマークしている三浦台の7番は、その隙にボールを奪おうとしたが、宮城はそのままの体勢で、ジャンプをすると、背中側から片手で、横にパスを出した。
そのボールを三井がとり、三井はそこから、3Pシュートを打った。
「!!」
その瞬間、魅真は目と口をあけて固まり、頭の中では、3年前の全中の決勝戦で、逆転シュートを打った時の三井の姿が蘇った。
シュートは当然のように決まり、湘北には3点追加された。
「よォーーし!!」
シュートが決まると、三井はガッツポーズをする。
得点は18対16と2点差になり、あっという間に追いついた。
今の三井のプレイを見た魅真は、目を輝かせ、頬を赤くして、三井をまっすぐみつめていた。
それは、3年前の全中の決勝戦を見た時の顔と同じだった。
三井が決めた後、三浦台からのオフェンスだったが、またも宮城がボールをとり、そのボールは花道の手に渡る。
しかし、村雨が押してきたので、ズルしてることに気づき、審判に訴えるも、訴えた瞬間に村雨が手を離したので、審判はわからなかった。
ボールを止めたことで、赤木がボールを止めるなと叫ぶと、花道はターンアラウンドで村雨をふりきり、レイアップを決めようとするが、後ろから村雨に止められる。
ボールをブロックするというよりは、体当たりしてるといった感じで、わざとやったようにも見えた。
「黒、4番!!」
当然、今のはファウルになった。
「ふんぬーーっ!!!」
「やめんか!!」
せっかくシュートを決めようとしたのに、ジャマをされたので、花道は村雨につっかかろうとするが、赤木が後ろから羽交い締めにして止めた。
「フリースロー!!白10番!!」
「ぬ?」
その時、審判がボールを持ち、花道に声をかけるが、花道はフリースローがなんなのかわかっておらず、花道にフリースローを教えた覚えがない赤木は、冷や汗をかいた。
「マズイ…」
「誰か教えたか?」
冷や汗をかいたのは、赤木だけでなく、ベンチにいる者達もだった。
「フリースロー?」
「10番」
いきなりフリースローになったので、意味がわからないように審判に返すと、審判はお前が打つんだというようにうなずいた。
「どーせ入んねーよ。リバウンドとるぞ!!」
「おう!!」
「なんだとコラァ!!」
「やめんか!!」
バカにする村雨と8番に腹が立った花道はまた噛みつくが、赤木は花道の行動を制するように頭を殴る。
「桜木、入らなくてもいいから、とにかくあのリングにあてろ!!そしたらリバウンドはオレがとる!!初めから入るとは思っとらん!!」
「ぬ……」
赤木は花道の肩に腕をまわし、策を授けるが、バカにされたと思った花道は、肩に置いている赤木の腕を、自分の腕ではじいた。
「フン!!フリースローくらい決めてやらあ!!誰もジャマがいないんだろ?カルイぜ!!」
そして、フリースローを打つために、フリースローラインの方へと歩いていく。
「線をふむなよ」
「ぬ……。わーってらい!!」
赤木としてはアドバイスなのだが、以前流川がやってたのを見ていたからか、そのことはわかっているので、バカにされたと思った花道は、また噛みついた。
「ツーショット!!」
「(ツー…。2本か)」
フリースローレーンの周りに、三浦台の選手が左右合計4人。その三浦台の選手の間に、花道から見て右側に赤木、左側に流川が立ち、花道のフリースローが始まった。
しかし、花道は誰もジャマがいないのでカルイと言っていたが、現実はそうではなかった。
線を踏んだらマズイのがわかっているので、足を少し下げたのはいいが、緊張のせいで、目の前が真っ白になる。
途中で、宮城がリングの手前のふちを狙えとアドバイスをするが、そのすぐ後に、三井がリングの奥を狙えとアドバイスをしたので、こんがらがってしまい、ますますドキドキしていた。
更に追い討ちをかけるかの如く、彦一が2本とも決めたら同点だと叫んだので、それはつまり、1本たりとも落とせないという結論に達し、ますます緊張した花道の耳には、敵味方関係なく、シュートを外せという心の声が聞こえ、奥だ手前だと笑う三井と宮城の心の声が聞こえ、陵南の追い討ちをかけるような心の声も聞こえてきたので、花道はたくさんの冷や汗をかき、荒い呼吸をくり返した。
「5秒!!ヴァイオレーション!!」
しかし、5秒経ってしまったので、フリースローを1本損してしまった。
「「「だああああっ!!」」」
「ハッハッハッ。もうけもうけ!!」
「何やってんだ~桜木!!みすみす1本損したぞーー!!大バカヤロー!!」
そのため、陵南はずっこけ、村雨はにこにこと笑いながらはくしゅをし、魚住はヤジをとばした。
「奥が深い…!!フリースロー!!」
「どあほう」
ただ、5秒以内にシュートを打てばいいだけなのに、奥深さを感じていたので、流川はバカにしていた。
「バカ者が!!いいかっこしようとするからそうなるんだ!!」
「!!」
そこへ、1本損したことに怒った赤木が、後ろから花道を殴る。
「お前はまだ、フリースローの練習はしてないんだから、下手で当たり前だ!!」
「イヤ、しかし……」
「1つ1つ覚えていけばいい!!
オレも昔は苦手だった!!」
「!」
「そう…。こいつのは笑えた…。本当に下手でな」
「ほー」
「うるせえ。やめさすぞ、てめえ!!」
その、昔のことを知っている三井は赤木を指さしてバカにするが、指摘されて腹を立てた赤木は、三井に怒鳴って脅した。
「な……!!あんまりだっ」
「2投目だ、桜木」
相手の弱味につけこむように、横暴なことを言う赤木だが、三井を無視して、花道に話しかけた。
「おちついていけ」
「リングの奥を狙え」
「手前だ」
「目つぶって投げれば」
「あーーーーーーっ、いっぺんに言うな!!」
全員がアドバイスするも、それぞれ違うことを言ってきたので、花道は頭がこんがらがった。
「ワンショット!!」
2本目のフリースローが始まり、花道は今度こそ決めてやると、気合いをいれる。
赤木が流川に、リバウンドをとるぞと声をかけて、流川が返事をすると、花道はあることを閃いた。
そして、バスケットのシュートではなく、野球の球を投げる時のようにボールを構えると、リングに向けて投げた。
投げたボールは、リングにあたってはねかえるが、ジャンプをして距離をつめた花道は、そのボールをとろうとした。赤木との対決の時のように、投げてはね返ったボールを自らとり、そのままダンクを決めようと思ったのだ。
しかし、同じ考えをもっていた流川が、花道の前でジャンプをして、花道よりも先にボールをとると、そのままダンクを決めた。行き場をなくした花道の手は、バックボードとリングにあたると、そのまま着地をする。
「よ……横どりしやがって……!!」
「知るか」
着地すると、花道は流川に文句を言うが、流川の反応は冷たかった。
今のプレイで、観客は流川のことでさわぎたてる。
「くそう、ルカワ!!オレのボールをとりやがって!!」
「知るか」
自分の活躍を阻止するようにボールをとるし、流川が注目されるしで、まだ怒りがおさまらない花道は、流川に噛みつくが、流川の反応は変わらずだった。
流川が決めたので、三浦台の攻撃になった。
5番にボールを渡された村雨は、去年海南に負けて以来、海南を倒すことだけ考えて練習してきたので、湘北に負けるかという気持ちがあり、シュートを決めようとするが、花道、流川、赤木にはばまれたために不可能となり、仕方なしに、着地と同時に、5番にボールを戻すが、そのボールをとったのは、5番ではなく宮城だった。
ボールをとった宮城は走りだし、それを見た花道も、着地すると、宮城のあとを追うように走っていく。
花道は、これ以上流川にいいかっこをさせてなるかと、そして、今こそ自分の天才ぶりを見せてやると闘魂を燃やし、宮城にパスを求めた。宮城は自分の近くまで来た花道に、パスをしようとした。
しかし、相手の5番が自分と花道の間に入り、パスカットしようとしてるのが目に入ったので、花道にではなく、股の間から後ろにボールを投げた。
まさかの展開に、呆然とする花道をよそに、そのボールをうけとったのは流川で、流川はまたダンクを決め、観客達は再びさわぐ。
「チャージドタイムアウト!!三浦台!!」
情勢が悪くなってきたためか、三浦台がタイムアウトをとったので、湘北も一時ベンチに下がった。
「よしよしよし、上出来上出来!!」
「ナイス流川!!」
「逆転したぞ!!」
「この調子ですよ!!」
5人が戻ってくると、ベンチにいる選手達は彼らを称賛した。
タオルは木暮と1年生3人が渡したので、魅真はベンチの後ろ側に行って、ドリンクボトルを用意した。
「はい、赤木先輩」
「悪いな」
ベンチの前まで行くと、まずは赤木に渡す。
「宮城先輩」
「サンキュー」
「流川」
「おう」
「花道」
「おお」
赤木に渡すと、宮城、流川、花道の順で渡していく。
そして最後に、まだ渡していない三井の前まで来て、三井と顔を合わせると、心臓がとびはねて、胸がドキドキした。
「…は、はい……。三井……先輩……」
「…おう……」
魅真は顔を赤くして三井にドリンクを渡すが、先程のことを根にもっている三井は対照的に冷めていて、低い声で返事をし、表情もどこか冷たい雰囲気だった。
そんなことは、先程のやりとりで覚悟はしていたが、やはり実際に接して経験してみると、予想以上に心をえぐりとられた。
けど同時に、試合で、マネージャーとして、選手の三井に接することができたので、うれしいという気持ちもあった。
「くそう、リョーちん!!なんでオレにパスしねえ!!」
「あ?」
「さては、ルカワをひーきしてるな!!」
先程のことを根にもっている花道は、宮城に文句を言った。
「なにいってんだ」
「ひーきひーきひーき!!」
「バカヤロウ!!ディフェンスはお前へのパスを読んでただろーが!!オレのとっさのナイス判断に、ケチつける気か!!」
バカなことを言う花道に、宮城は怒鳴るが、それでも納得がいかない花道は、ひーきと連呼する。
「ケンカですか?」
「まさか!」
「チームワーク抜群!!」
ケンカしないと誓ったばかりなのに、すでにもめていたので、安西が目を光らせると、花道と宮城はあわてて肩を組んで、ケンカはしていないという意思表示をする。
「(くそう、ルカワ…!!もうこれ以上、てめーにいいかっこはさせねーぞ…!!)」
そのあとで、桑田に話しかけられてる流川を睨みつけた。
すると、時間がきたので笛が鳴り、赤木は他の4人を集めた。
「いいか、よく聞け。オレたちは強い。神奈川を制すまで、一気に突っ走るぞ!!」
「(よーーーーし、見てろよ。こうなったら、天才・桜木、天才の証明を見せてやる。禁じられたスラムダンクで!!)」
花道は1人決意をすると、再び流川を睨んだ。
だが、意気ごんでいたものの、その後も花道が活躍することがないまま、時間だけが過ぎていき、残り時間は5分を切り、赤木がシュートを決めた。
「ナイッシュウ赤木さん!!」
「100点め!!」
今赤木が決めたシュートで、湘北は100点になった。
後半戦で、残り時間は4分49秒。100対47で、圧倒的に湘北が勝っていた。
三井、流川、赤木の3人が点をとりまくってたので、100点という高得点をとることができ、50点以上の大差をつけることができていた。
しかし、花道だけはまだ得点が0点だったので、苛立ちながら村雨に文句を言う。
その文句に対して、ディフェンスがジャマするのはあたり前だと言う村雨に、ズルばかりしてるので、花道は余計に苛立った。更に腹立つことに、足にひざ蹴りまでしてきたので、花道は仕返しとばかりに、肘鉄をくらわせた。
「オフェンス!!チャージング!!」
けど、当然笛が鳴り、ファウルとなった。
「なんでオレばっかり!!あの野郎が…」
「花道!!」
自分はファウルをとられたのに、相手が何もなしなのは納得がいかない花道は、審判に噛みつくが、宮城が止めた。
「10番!!手を上げて!!あんまり口がすぎると、次はテクニカルファウルとるよ!!」
「(くそう……。天才の証明をしなくちゃいけないのに…)」
「イラつくな、花道。あいつは、審判にわからないようにファウルをするのがうまいんだ」
審判に忠告されると、花道は仕方なく手をあげるが、かなりイラついた様子だった。
そして、手をあげた後、後ろにいる流川を肩越しに見た。
「くそっ、時間がねえぞ!!攻めるしかねえ!!」
もう、かなり時間がなくなってきてるので、村雨は焦った。
「おお!?100対47!?」
その時出入口から、2人の男が入ってきた。
1人は、長身で短髪の男。もう1人は、そこそこ背は高いが、短髪の男よりは低い長髪の男だった。
普通は観客席にすわるが、何故かコートの方にやって来たこの2人は、制服を着てることから、学生であることがわかった。
短髪の男は、100点ゲームで、50点以上の差をつけて湘北が勝ってることに驚いていた。
「ん…?」
その時、何気なく湘北のベンチに目がいった短髪の男は、魅真の姿をとらえると、目を見張った。
「あの子は……」
そして、目を大きく見開き、口をあけ、魅真を凝視した。
「どうしたんすか?」
魅真の姿に驚いていると、長髪の男が、一体どうしたのかと声をかける。
「いや、なんでもない」
けど、短髪の男は、その場を誤魔化した。
一方で花道は
「(天才の証明を見せてやる!!見てろ、ルカワ!!)」
今度こそ、自分が天才であることを証明しようと燃えていた。
「変な奴がいる…」
その花道に気づいた長髪の男は、花道を凝視した。
花道が燃えていると、パスをうけとった5番が3ポイントシュートを打とうとするが、流川にブロックされてしまった。
それを見た花道は、好機とばかりに走り出す。
1人だけ先にゴールへ走っていく花道を見た宮城は、花道にボールをパスした。
ボールをとった花道は、天才の証明をするために、ダンクを決めようとするが、ボールを、リングではなく、ブロックしようとした村雨の頭に決めてしまった。
「またやった!!」
あれは、以前もやったことなので、赤木はショックを受けた。
「ワザとだ!!」
「ワザとだな!!」
「!? チガウ!!ワザとじゃない!」
今ので笛が鳴り、選手だけでなく監督も花道に詰め寄り、文句を言った。
「村雨!!」
そして当の村雨は、白目をむき、泡をふいて、体が痙攣していた。
「退場!」
「えっ!?うそ!!」
花道は、今ので退場になってしまった。
「ディスクォリファイイング・ファウル?」
「いや、5ファウル」
頭にダンクをかましたので、すごく悪質なファウルとされる、ディスクォリファイイング・ファウルかと赤木は思ったが、なんのことはなく、単に5回ファウルをもらっただけだった。
「かっかっかっかっ。おもしれー奴!!」
今の奇行に長髪の男は大笑いをし
「超どあほう」
流川は毒づいた。
花道が退場となってしまったため、代わりに木暮が試合に出て、残り4分を戦った。
そして……
「三井サン」
「おう」
残り時間5秒になったところで、宮城は近くにいた三井にパスを出し、三井はボールをとると、そこから3Pを決めた。
三井が3Pを決めた直後にブザーは鳴り、114対51で、湘北は勝利をおさめた。
そして、三井が3Pシュートを決めると、魅真は顔を赤くして、三井をジッと見た。
「(三井……先輩……)」
ブザーが鳴る直前に3Pシュートを決めた姿は、まるで3年前の、全中で一発逆転シュートを決めた時の三井と同じだったからだ。
細かい部分はもちろん違うが、魅真の目には、全中で活躍した時の三井と、今の三井が、重なって見えたのだった。
「(再会したばかりの時は、三井先輩のことが好きかどうか、まだわからなかった。でも、いろいろあったけど……やっぱり私、三井先輩が好きだ……)」
3年前の三井を思い出した魅真は、やはり三井が好きだという感情に気づいた。
「(あの時から混乱していたから、ずっとわからなかったけど………でも……今、はっきりとわかった。確かに、不良になったし、ブランクもあるけど、それでも、あの綺麗なシュートフォームは変わらない…。やっぱり……私、三井寿に、恋……してるんだ…!!)」
この時魅真は、三井に恋をしていると、はっきりと自覚をした。
それは、三井が試合で活躍している姿を見たから。3年前のあの日、全中の決勝戦で三井を初めて見て、一目惚れした時のように、試合でシュートを打ってる姿を見たから。3年前の三井とだぶり、あの時の気持ちが蘇ったからだった。
自覚をした魅真は、頬を赤くし、胸をドキドキさせながら、三井が試合に勝って喜んでいる姿を、目に焼きつけていた。
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