#20 揺れる、ココロ
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「最近、真田の奴変なんじゃないかな?」
「変ってなんだ?」
次に話しかけたのは木暮で、花道は、木暮が言ってる意味がよくわからなかった。
「いや……この前の日曜日から、部員と距離を置いてる感じがするんだ」
「……………」
「入部当初の頃とも、陵南との練習試合があった時とも、そのあととも違うんだ。何があったかわからないし、桜木なら、真田と親しいみたいだから、何か知ってるかもと思ってな」
3人が花道のもとにやってきたのは、これが理由だった。
「それに、仕事にも影響があるのよ」
「影響って……。ミスばっかしてるんスか?」
「いいえ、むしろ逆なの」
「え?」
「完璧すぎるのよ。もともと失敗はほとんどないし、覚えも早いけど、それ以上なの。私がやることが、ほとんどないくらい完璧なのよ」
「………ならいいじゃないスか。ミスして迷惑かけてるわけじゃないんでしょ?」
「ええ、まあ…そうなんだけど…。でも、急に変わっちゃったからね…」
「やっぱり気になるんだ。チームメイトだからな」
「別に気にすることないぞ。早ければ、明日にはもとに戻ってるからな」
木暮と彩子に問われるも、花道は明確な理由は話さなかった。
「明日?なんで明日なんだ?明日、何かあるのか?」
「木曜日がくる」
木暮に聞かれると、花道は抽象的な答えを言った。
「誰がそんなボケを言えと言った」
赤木はすかさずつっこむが、花道はボケてるつもりはまったくなかった。
「だが、お前が今言ったことが本当だとして、早ければということは、確実に、明日もとに戻るわけじゃないだろう。もしかしたら、予選にも影響があるかもしれん。それは、なんとしてもさけねばならん。桜木、真田が今どんな状態なのか…。どうすれば元通りになるのか教えてくれ」
赤木に聞かれると、花道は話そうかどうか少し迷った。
「………あれは、あいつのタチの悪い病気だ」
けど、たぶん大丈夫だろうと思い、話すことにした。
「病気?やっぱり、どこか悪いのか?」
「体調面は問題ない。問題なのは心だ」
「心?精神的なものってこと?」
「あいつ、心にくるものがあると、すぐにそれが、表面に表れるんだ」
「心にくるって……それってどんな…?」
「あいつ、不良だったことと、鬼神って呼ばれてたことを、相当気にしてるからな。この前の事件で、実は元ヤンで鬼神といわれてたのがバレて、今は相当混乱してんだ。確かに、元ヤンだってバレるのを覚悟の上で、ケンカに加わった。けど、それとこれとは別だ。本当はバラしたくなかったし、バレたくなかったんだ。不良で鬼神と呼ばれてたことを、かなり嫌ってっからな。でも、それでもバスケ部が壊されるのは嫌だから、覚悟の上で正体をあかした。バレてみんなに嫌われると思ったし、怖がられると思った。けど、それもやむなしと思ったんだ。結果として秘密は守られたが、それでも一部の奴らには知られちまった。今は、いつおめーらの口から、周りの知らない奴らにバラされて、嫌われるのかと、気が気じゃないんだろ。仕事がカンペキなのは、そうでないと、自分を受け入れてもらえないと思ってるからだ」
魅真の今の状態を説明して、注目したのは、赤木、木暮、彩子の3人だけでなく、そこにいる部員と、バスケ部の練習を見に来ている晴子達もだった。
「そんなっ……。それくらいで嫌ったりは…」
説明されるも、木暮はなんで、魅真がそこまで深く気にやんでいるのかわからなかった。
「確かに、おめーらにとっては、何も言わなかったり態度を変えないのが、気にしてない…怖くない…嫌ってないってことなのかもしれねーが、魅真にとっちゃ、それが、気にしてる、嫌ってる、怖がってるって言ってることなんだ」
「どうすれば元通りになるの?」
「……言葉にすることだ。確かにあいつは、別に礼を言われたくて、あいつらを撃退しようとしたわけじゃない。バスケ部を守りたかっただけ。そのバスケ部の、部員全員を守りたかっただけ。ただの自己満足だ。礼なんて望んじゃいねえ。
けど、あいつにとって何も言わないのは、嫌ったり怖がったりしてるのと同じことなんだ。だから、なんでもないように話してやれば、まあ…たぶん大丈夫なんじゃねーの?
魅真はバスケ部の奴らは嫌いじゃない。むしろ好きだかんな。好きだから、余計に中途半端に好かれるのは嫌なんだ。人間関係に関しちゃ、曖昧なのは嫌いだかんな」
そこまで説明されると、事件以来、どこか話しかけにくそうにしていたので、全員思うところがあった。
「んじゃ、オレちょっと水飲んでくるわ」
それ以上、3人の誰も話そうとしないので、もう話は終わったと判断すると、花道は外へ出て行った。
「お礼か……」
「考えてみたら私達、あの子に助けてもらったのに、何も言ってなかったわね」
「確かにただのケンカだし、よくないことではあるけど…。でも………真田が助けてくれたところもあるんだよな…」
花道がいなくなると、3人は、花道に言われたことについて考えていた。
次の日の朝、魅真は花道だけでなく、停学があけた洋平達とも一緒に登校しており、すごくうれしそうにしていた。
「それにしても、本当に久しぶりだね。こうやって、みんなで一緒に登校するの」
魅真は前日とは違い、満面の笑顔だった。
「まあな。お前は、とりあえず大丈夫そうか」
魅真の顔を見ると、笑顔だったので、どこかほっとした洋平が話しかけた。
「…まあ、とりあえずはね」
洋平の言ってる意味がわかってる魅真は、どこか沈んだ顔で、曖昧に返した。
曖昧に返されても、それ以上は、誰も何もつっこまなかった。
「それに、私の秘密もバレなかったし。これで安心して、スクールライフを送れるわね」
「でもお前、オレ達といたら、そのうちバレんじゃねーの?」
けど、次の瞬間には明るくふるまったが、魅真が言ったことに、大楠がすかさずつっこんだ。
「バレるのが怖くて、アンタ達と付き合えますか。バレるのと、アンタらと離れるのと、どっちが嫌かなんて、はかりにかけるまでもないでしょ。それに、実際赤木先輩の妹サンの例もあるから、大丈夫よ」
「そういえばそうだな」
5人は、今魅真が言った言葉で、魅真の変化に気づいたが、敢えてそこには誰もつっこまなかった。
その様子を、晴子達がちょっと離れた後ろから見てるのだが、魅真達は、そのことには気づいていなかった。
数分すると、魅真達は学校に着いた。
「じゃあ、またあとで」
「「「「「おう」」」」」
それぞれクラスが違うので、魅真達は昇降口で別れた。
魅真はあとで、花道と洋平のいる7組まで行くことを約束すると、自分のクラスの、10組のロッカーまで行った。
「桜木君」
魅真がいなくなると、後ろから晴子達がやってきて、晴子が花道に声をかける。
「ハ!ハルコさん!!」
「よーー、ハルコちゃん」
「おはよ」
「久しぶりだな」
「元気してたか?」
晴子がやってくると、花道は顔を赤くして、洋平、大楠、野間、高宮の順であいさつをした。
「うん。あのね、実は話というか……相談があるんだけど…。いいかな?」
「も!もちろんです!!」
他ならぬ晴子の頼みなので、舞い上がった花道は、4人が答える前にイエスと答え、花道達は、晴子に連れられて校舎裏に行った。
一方魅真は、花道達が晴子と一緒に校舎裏に行ってるとは知らず、上履きに履き替えていた。
「あの、真田さん」
上履きに履き替えると、後ろから声がしたのでふり返った。
「石井君…」
そこにいたのは石井で、石井は緊張した顔でそこに立っていた。
「あ、あの……実は……」
石井は、魅真が元ヤンなのを気にしてないというのを話そうとした。
「おはよう!今日も1日がんばろうね」
けど、石井が何を話そうとしたのかを察した魅真は、石井が話そうとする前に、貼り付けの笑顔であいさつをして先手をうったため、石井はそれ以上話せなかった。
「え…?あっ………うん……。そうだね……」
石井がしどろもどろに返事をすると、魅真は先に教室に行った。
「あっ…」
話したいことがあったのに、魅真があいさつという形で拒否をしたため、不可能となった石井は、そこにとり残されてしまった。
「おい」
魅真がいなくなると、石井は後ろから声をかけられた。
「え?あ……流川君…」
それは流川だった。
「何やってんだ?」
「え?いや……だって…」
「先手うたれたくらいでひるんでんじゃねえ、どあほう」
「うっ……」
口は悪いが、実際その通りなので、石井は何も言えなかった。
その頃、校舎裏では、花道達が晴子と話していた。
晴子は、この前の藤井と松井との会話を聞かれていたことを、花道達に話した。
「それはマズイな…」
話を聞くと、洋平は渋い顔をした。
「やっぱり…まずいですか…?」
魅真のことを怖いと言ってしまった藤井は、おずおずと聞いてみる。
「ああ、マズイ」
洋平と同じく、野間も渋い顔で答える。
「かなりマズイな」
そして高宮。
「マズすぎるな」
大楠も、花道以外の全員が、口をそろえて同じことを返した。
「みんなが口をそろえるなんて、よっぽどなのね。昨日桜木君が、魅真ちゃんは元ヤンなのを嫌ってるって言ってたけど、それが本当なら、もう修復できないのかな?」
落ちこんだ晴子は、花道達に質問をする。
「ハルコさん達は、魅真とどういう関係を築きたいんですか?」
「え?ど、どういうって……」
いつもの花道なら、晴子が相手だと、鼻の下をのばしてデレデレしてるのに、とても真剣な目をして、少し厳しめの表情と声で晴子に問う。
「もし、魅真に謝って、ただ満足したいだけなら、やめた方がいいです」
「え…?」
「昨日も言いましたが、魅真は曖昧な人間関係を嫌うんです。もし、本当に魅真と仲良くしたいという思いがないなら、そのままにしといた方がいいです」
「ど、どうしてですか?」
花道が言ったことに、晴子ではなく、藤井が問う。
「魅真は少なくとも、この前の事件が起こる前までは、ハルコさん達のことは、特別好きというわけではなかったけど、そんなに嫌ってはいなかったと思うんです。けど、藤井さんと松井さんの言葉で、藤井さんと松井さんは自分を嫌ってると思ったし、他意はなくても、ハルコさんの言葉で、ハルコさんも自分を嫌ってると勘違いしたと思います。だからもう、修復は不可能でしょう」
「そんな……」
可能性はないと言われたも同然なので、晴子は落ちこむ。
「でも、晴子の場合は誤解で…」
晴子が落ちこむと、松井がフォローする。
「たとえ誤解だとしても、魅真がそう思いこんで、ハルコさんに、魅真と本当に良好な関係を築きたいと思う気持ちがなければ、まったくの無意味です」
けど、そのフォローすらも打ち砕くことを言われ、3人は黙ってしまう。
「それに魅真は、女は特に嫌いなんだ。くわしいことは言えないけど、昔嫌なことがあったみたいだからな」
「「「え…」」」
更に追い打ちをかけることを洋平が言うと、3人は呆然とする。
「だから、余計にハルコちゃん達の場合は、好きという気持ちや、仲良くしたいという気持ちを、はっきりさせとかないとダメなんだよ」
洋平のその言葉に、3人はもう、何も言えなくなった。
その頃、教室に荷物を置いた魅真は、7組に行った。
「いないし…」
しかし、高宮、大楠、野間の3人どころか、このクラスの花道と洋平すらいなかった。
「あとでって言ったのに誰もいないなんて…」
いつもなら、さっきみたいな約束をすれば、少なくとも、花道か洋平のどちらかはいるのに、どっちもいなかったので、魅真は文句を言っていた。
「まさか……赤木先輩の妹サンと…!?」
もしやと思った魅真は、その可能性は十分に考えられるので、とても複雑な気分になった。
「みんなのバカ…」
全員姿が見当たらないし、花道達は晴子についていったかもしれないしで、不満そうに唇をとがらせる。
不満だが、ここでこうしていても意味がないので、仕方なしに、魅真は屋上に行った。
屋上の出入口まで行き、扉を開けると、誰もいないので、魅真には好都合だった。
魅真は柵まで行くと、柵に腕をのせて体をあずけ、遠くの景色をぼんやりと見ていた。
その時、扉が開く音がしたので、1人になりたかった魅真は、別の場所に移動しようと、柵から腕を離して、屋上をあとにしようとした。
「あっ…」
けど、扉に顔を向けると固まってしまった。
「流川……」
「おう」
そこにいたのは流川で、流川はめずらしくあいさつをした。
「おはよう。ひょっとしてサボり?」
少々気まずいが、それでも精一杯笑顔を貼り付けて、適当にそれっぽいことを話すが、流川は何も答えなかった。
「あまりサボりすぎると、単位とれないわよ」
普段なら流川とは気軽に話すが、気まずさがあるために、適当に切り上げてそこから去ろうとする。
だが、流川が魅真の目の前に立ちはだかったので、それは無理となった。
「…なに?」
「すわれ」
「はっ!?」
めずらしく用があるのかと思い、顔を見上げて問いかけると、流川はいきなり命令口調で、意味不明なことを言ってきた。
「そこにすわれ」
淡々とした口調で、自分の隣を指さすが、魅真は流川の言う通りにはしなかった。
「何?いきなり」
「いいからすわれ」
「悪いけど……気分じゃないから…」
そう言って、流川と目も合わせずに、流川の横を通りすぎようとするが、流川に腕をつかまれてしまう。
「いつまでも逃げてんじゃねえ、どあほう」
「あ…あほって……」
「どあほうはどあほうだ。いい加減現実に目をむけろ」
「現実…?」
「オレがいつ、おまえのことを怖いって言った?」
「え…」
意外な言葉に、魅真は目を丸くする。
「別におまえのことは嫌いじゃねーし、おまえが元ヤンだとか鬼神だったとか、どーでもいいしな」
けど、流川らしくない言葉に、魅真は怪訝な顔をした。
「どーしたの?アンタ、そんなキャラだったっけ?熱でもあるんじゃ?」
らしくないことを言ってきたので、魅真は手をのばして、流川のおでこに手をあてる。
「熱なんてねー」
流川は魅真が言ったことを否定して、魅真の腕をつかんでどかした。
「いやいや、あるでしょ。無表情で、人に興味なくて、無視してばっかで、バスケにしか興味ないバスケバカが、私をはげますなんて、天地がひっくりかえってもありえないもの」
嫌味ではなく、率直な意見なのだが、流川はムッとする。
「あ……。もしかして、気分でも悪いとか?そうならそうと言いなさいよ。私はマネージャーよ!具合が悪いなら、ちゃんと面倒みるから」
これも、一見すると嫌味に聞こえるが、嫌味などではなく、真剣に心配していた。
「熱なんかねーし、気分も悪くねー。真剣だ」
真剣なのは流川も同じで、流川の口から真剣という言葉が出ると、魅真は面を食らった。
「ぷっ…。あっははははは!!」
けど、すぐにいつもの顔に戻り、突然吹き出して、そのあとに大笑いをした。
いきなり大笑いしたのと、魅真のキャラではないので、流川はぎょっとする。
「あ……あんたがぁ!?真剣?え?私へのはげましも、ウソじゃないってこと!?天上天下唯我独尊男のあんたがぁ!?他人の心配?」
だが、実はこれが魅真の素だった。
魅真はそんな流川の反応もおかまいなしで、お腹を抱えて、笑いながらズバズバものを言う。
いきなりキャラが変わったので、そんな魅真を見て、流川は呆然としていた。
「今年一番……いや、今までの人生で、一番の傑作だわ」
そう言った後に、また笑い出す。
まだ大笑いをする魅真に、流川はまたムッとした。
「笑いすぎだ、どあほう」
そして感情のままに、魅真の頭を軽く殴った。
「いったいわね!!何すんのよ!?」
頭の傷はもうふさがっているが、流川も花道ほどではないが力が強いので、軽くといってもそれなりに痛みを感じた魅真は、頭をおさえて抗議をした。
「いつものおまえだな」
「へ?」
「おまえはそのくらいの方がいい」
また、流川らしくない言葉だが、今言ったことも、今まで言ったことも、心からの言葉だとわかり、魅真の心は少し軽くなる。
「ありがと、流川」
そして、貼り付けではない笑顔で、お礼を言った。
それからお昼の休み時間になった。
弁当を持ってきてる者、売店で買う者、食堂で食べる者、教室で食べる者、教室以外の場所で食べる者と様々で、各々、思い思いの場所へと移動した。
魅真は、お昼はいつも弁当を持ってきており、休み時間は教室で食べたり外で食べたりと様々だが、ここ最近は、教室の外で食べていた。
石井は、授業が終わってから、魅真がお昼の用意をして移動するまでの、わずかな隙を狙って話そうと思っていたが、魅真はすでにお昼ご飯一式を、授業が始まる前に用意していたので、チャイムが鳴り、授業が終わると同時に、速攻で教室から出ていったので、魅真と話すことができなかった。昼休みだけでなく、1時間目から3時間の授業が終わった時もすぐにいなくなったので、まだ流川以外は、誰も魅真と話せていなかった。
魅真はいつものように屋上に来ていた。意外にも、人があまり来ないので、絶好の休憩場所だった。
しかし、弁当箱を入れている巾着袋をほどこうとした時、扉が開いた。今日にかぎって、人が来てしまったのだ。しかも、それが花道達か、自分が知らない人物ならまだよかったが、そこに来たのは、よりによって、今自分がさけている人物の一人、宮城リョータだった。実は宮城は、魅真が逃げられないよう、また、魅真がどこにいるかを知るために、4時間目の授業をサボって、1年10組の教室の近くではりこんで、魅真のあとをつけてきたのだ。
そんなことを知らない魅真は、宮城が来たので固まってしまう。
「宮城先輩もお昼ですか?」
それでも、精一杯の笑顔を貼り付けて対応をすると、魅真はその場を立ちあがり、屋上をあとにしようとする。
「まてよ。どこに行くんだ?」
「飲みものを買ってくるんですよ」
「水筒持ってきてるのにか?」
宮城が質問をすると、魅真は簡潔に答えるが、宮城は地面に置いてある、赤色の水筒を指さしてつっこんだ。
「き…急にジュースが飲みたくなったんです」
痛いところをつかれたが、少し苦しい言い訳をして、そこから去ろうとする。
けど、宮城は魅真の腕をつかみ、強制的にすわらせた。
「あとでおごってやるから、ちょっとオレに付き合えよ」
「付き合うって…?」
本当はわかっているが、魅真は聞き返した。
「話があるんだ」
しかも、本題に入ろうとしているので、魅真はドキッとする。
「真田…」
「はい」
「ありがとな」
「え…?」
何を言われるのかと思い、ドキドキしてかまえていたが、いきなりお礼を言われたので、魅真はわけがわからなかった。
「この前の事件で、オレの代わりに戦おうとしてくれたことだ。オレのことを考えて、正体をあかしてくれたのは、正直うれしかった」
正直、お礼を言われるとは思っていなかったので、魅真は呆然とした。
「まあ…真田が、実はあの鬼神だったってのには、かなり驚いたけどな」
「……宮城先輩は、私が怖いですか?」
「鬼神だって知った時と、あの戦い方にはびっくりしたけど、怖いとは思わねーな。それに、今は不良じゃないんだろ?」
「ええ…。まあ…」
「じゃあ、いいじゃねーか」
宮城も、流川と同じで、元ヤンでも鬼神でも気にしてないので、目を丸くし、口をあけた。
「でも、そう言うならさ、真田は、なんで元ヤンだってバラしたんだ?そのままだまってればバレなかったのに。オレをかばうまでなら、強気で正義感が強い女とだけ思われたのによ…」
「仕方ないじゃないですか。花道もですけど、流川も結構短気ですし、宮城先輩だって、最初はこらえろとか言っていたくせに、彩子先輩がやられたら、あっさりと頭に血がのぼっちゃって、手ェ出してたんですから」
正体をあかした理由を問うが、その理由を話されると、宮城は何も言い返せなくなり、顔が赤くなった。
「あと、宮城先輩と同じです。あそこはもう、私にとって大切な場所なので…。だから、その大切な場所の一部である宮城先輩達をキズつけるのは、どうしても許せなかった。入部したばかりの頃と違って、楽しくなってきたので…。だから、どうしても守りたかった。だから、私がやって罪をかぶれば、それで丸くおさまると思ったんです…。
教師っていうのは、見た目や経歴がどんなものでも、成績が良くて、自分達のいうことを大人しく聞いていれば、何も言わないので…。中学校の頃もそうでした。私が不良だった時は、毎日頭ごなしにガミガミとうるさいだけでしたけど、私が足を洗って、教師のいうことを大人しく聞いて、成績が上がってきたら、何も言わなくなったんです。だから、たとえバレても、このまま優等生を続けていれば、教師は何も言わないし、将来、進学にも就職にも有利になります。それに、嫌われるのだってなれてます。だから、私一人が犠牲になって、それで丸くおさまるのなら、それでも全然かまわなかったんです。
中学校の頃、私を救ってくれた花道を、退部になんてさせたくなかったから……」
「そっか」
「でも、結局うまくいかなくて、ケガさせてしまいましたけど…」
「ヤスも角田も潮崎も、あいつら全員、真田に感謝してたぜ」
「ウソ!私がちゃんと守れなかったせいで、ひどい目にあったのにですか!?」
自分では失敗したと思っていたのに、まさか感謝されてるとは思わず、魅真はすごく驚いた。
「ヘマしたことよりも、真田が正体をあかしてくれてまで、自分達を助けようとしてくれたことがうれしかったみたいだぜ」
「そう……ですか…」
「だから、バスケ部やめんなよ」
「…はい!」
宮城がその顔に笑みを浮かべると、魅真も笑顔で返事をした。魅真は、また少し心が軽くなった。
この時宮城は、今の魅真との会話で、魅真は人との付き合い方がヘタクソなだけで、人と付き合いたくないわけじゃないということがわかった。
また、少々自己犠牲の精神があることも…。
その後魅真は、お昼ご飯を食べながら、宮城と他愛ない話をした。
そして、屋上から戻ろうとした時に、石井、佐々岡、桑田の1年生組の3人が、教室に入ろうとしたところで、安田、潮崎、角田の2年生組の3人が、授業が始まる前にトイレに行こうとしたら彩子が、トイレから戻ってきたら晴子達が、5時間目が終わったら赤木と木暮がやってきて、流川と宮城が話したことと似た内容のことを、魅真と話した。
そして放課後。
「まったく…。貴重な昼休みだというのに、みんな次から次へとやってくるのよ。しかも、バスケ部じゃない赤木さん達まで!」
魅真は着替えると、体育館までの道のりを、花道と一緒に歩いており、今朝から5時間目が終わった時の休み時間のことを話していた。
「おかげでろくに休めなかったし。みんなもうちょっと、人のプライベートを考えてほしいものよね。それに、全員一気に来て、なんかわざとらしいのよ!」
けど、愚痴りながらも、そんなに嫌ではなさそうなので、花道は笑って見守っていた。
「でもまあ、よかったんじゃねーの?嫌われてなくてよ」
「……うん」
元ヤンであることも、鬼神であることも気にしていなかったので、魅真は、胸のしこりがとれたように、すがすがしい顔をして、うれしそうに笑った。
それから数日後。来たる5月19日。
「さて…。気合は入ってるな…」
場所は市の体育館。バスケのリングのあるコート。
「行くぞ!!!」
「「「「おう!!!」」」」
全員ユニフォームに着替え、顔も声も気合が入った様子で、コートに入っていく。
そう…今日はいよいよ、インターハイ予選の初日だった。
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