#17 鬼神
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
花道はモップを折ると、それを床にたたきつけた。
「や、やめろ花道!!流川!!」
魅真は宮城をかばって、彼らに近づくなという意を示すように、宮城の体の前に手をのばすだけだったが、花道と流川はやる気満々だったので、宮城はやめるように言うが、二人は聞かなかった。
#17 鬼神
「ハッハッハッ。もう覚悟は固まったみてーだな、てめーら!!今日がバスケ部最後の日だ!!」
「うるせーーー!!ゴマカすつってんだろ、女男!!それより、まずその汚ねークツをぬぎやがれ!!」
花道が怒鳴ると、今度は流川が、先程鉄男がタバコを押しつけたボールを、三井の前にもってきた。
「ふけ」
そして、短く言い放つ。
三井はフッと笑うと、ボールにつばを吐いた。
「ブッ殺…」
今の三井の行為で、頭に血がのぼった花道は、三井に襲いかかろうとする。
「ぬ!?」
だが、安田が後ろから、花道の胴体に手をまわして止めた。
「ヤッちゃん!」
「安田!」
「なんだヤス!?放せ!!放せ!!」
花道に放すように言われるも、安田は決して放そうとはしなかった。
力では、圧倒的に花道の方が強いのに、それでも必死にしがみつく。
「桜木君!!」
その時、晴子が花道の名前を呼んだので、花道の動きが止まった。
「やめて…。ダメよ…」
「ハ…ハルコさん…」
晴子に止められると、花道は大人しくなり、頬を赤くして晴子に顔を向けた。
その間に、安田は花道から手を放し、花道の前に出て、三井と向かいあった。
「ヤス」
「な、なんだお前は?」
「た…」
どこからどう見ても、普通の生徒である安田が出てきたので、三井は少々困惑する。
「頼むから帰って下さい…。お願いします!」
三井と向かいあうと、安田は勇気をふりしぼって、三井に引くように頼んだ。
「試合が近いんです」
「あ?」
「今年は、いい新人も入ったし、リョータも戻ったし、もしかしたら、いけるかもしれないんです。全国に…。今出場停止になったら… (赤木さんに、なんていえば…)」
「(ヤス…)」
「安田先輩…」
「安田…」
「(安田さん…)」
安田の思いを聞くと、全員どこかしんみりとなる。
「桜木君もやめて…!!」
「…………」
「流川君も」
「……………」
「お願いです。帰って下さい。お願いします」
なんとか頼みを聞いてもらおうと、安田は頭をさげた。
「お前――見かけによらず、勇気あるな」
三井に声をかけられると、安田は頭をあげた。
「!!」
だが、退散するかと思った三井は、安田の願いを打ち砕くように、安田を殴りとばす。
「でも、バカだな!!」
「安田先輩!!」
「安田!!」
「ヤス!!」
「ヤス!!」
「安田さん!!」
殴りとばされた安田は、後ろに倒れたところを花道と宮城にささえられ、他の部員達は、心配そうに駆け寄っていく。
「あ……う」
「ヤス!!」
「うう…」
鼻からはたくさんの血が流れ、こういうのに慣れていない安田は、痛みに耐えかねて、涙を流し、うめき声をあげた。
その時、三井に向けてボールが投げられたが、三井はボールを、自分にあたる前に顔の前で受け止めた。
手のひらでガードしただけなので、ボールはすぐに床に落ち、その後手のひらを見てみると、そこには、先程自分が吐きかけたつばがついていた。
手のひらを見ていると、目の前には流川がやって来ていた。いつもと違う、どこか怒った表情で、三井を睨みつけていた。
「るっ、流川君ダメ。やめて!!」
晴子が一歩前に出て止めるが、流川はぴくりとも反応しなかった。
「る……」
何かただならぬ雰囲気に、晴子は止めるのをやめた。
「許さん」
「あ?」
怒りが頂点に達したらしい流川が、三井を睨みつけると、三井もまた、流川を睨み返した。
二人が対峙していると、竜は折れたモップをひろいあげて、流川の背後から、流川の頭を思いっきり殴りつけた。
その衝撃で前によろけて、体が傾いてしまったが、なんとかふんばって体を伸ばすと、後ろを睨みつける。
後ろにいる竜は、モップを後ろに投げてすてると、流川の動きが止まっている隙に、流川にボディーブローを決めた。
「フッ」
三井はその光景を見ながら、手をふってつばを落とし、流川が傷ついてもなんとも思っていないが、対照的に晴子は、目と口を大きく開いて固まっていた。
竜は、一発だけで終わりにせず、もう一発同じところにボディーブローを決めると、流川と距離をとった。
味方側の全員が呆然として見ている中、流川はやられたところを右手でおさえ、二回せきをすると、モップで殴られたところをさわり、何度かなでると、頭をさわった手を目の前に持ってきた。
手には、べったりと血がついていた。
「タフだな」
まだ倒れそうにないので、竜はもう一度かまえて、流川を攻撃しようとした。
しかし、今度は流川が、竜にボディーブローを決めたので、竜も、三井達も驚いていた。
「お………………くお…」
かなりの威力のようで、竜はつばが口からたれてきて、殴られたところを両手でおさえた。
「どあほうが」
流川は竜をバカにしながら、頭からたれてきた血をぬぐった。
血をぬぐうと、竜の動きが止まってる隙に、また同じところに一発決める。
「がはっ!!」
流川は、自分がやられたことを、相手にもやり返したのだ。
「…………………ぐぁ………」
同じところを二度も殴られたので、竜は背中をまげ、痛みで顔をゆがめていた。
流川は竜が痛みで動きが止まっている隙に、一歩後ろに下がると、今度はあごにアッパーをくらわせた。
「竜!!」
そして、竜は今ので後ろに倒れた。
「…………………る……流川…」
「やっちまった…。あのバカ…」
流川がついに手を出してしまったので、木暮も宮城も冷や汗をかいた。
「やりやがったな!!ははははは。とうとう手を出しやがったな!!これでお前らも…」
仲間はやられたが、流川が手を出したので、三井はうれしそうに笑う。
「ほ!?」
だが、最後まで言う前に、流川に顔を殴られて体が傾いた。
「切れてる…」
流川が完全にキレているのがわかった宮城は、目が点になる。
「やめろ流川!!こらえろ。よせーーっ!!」
けど、これ以上やったら本当にまずいので、宮城は立ち上がり、流川のもとまで行きながら、必死になって止める。
「こいつらが悪い」
「!!」
だが、流川は聞き入れることなく、三井の髪の毛をつかみあげた。
「コラァ!!」
するとそこへ、三井を助けるように、三井と同じで髪を真ん中で分けた背の低い男が、流川の尻を蹴ったので、流川はそちらに顔を向けた。
「バカが…」
男は、今度は流川の顔面を殴ろうとするが、流川はあっさりと、相手の腕を両手でつかんで攻撃を止めると、右手で相手の腕をひねってつかみあげた。
「いててててててて。折れる!!折れるーーーーっ!!!」
相当な力のようで、相手は痛みをこらえきれずに叫ぶが、流川はやめず、鉄男と三井も、だまって見ているだけだった。
「いいい…おっおっ…折れるってーーー!!!」
「よさねーか、流川……」
どんなに叫んでも放そうとしない流川を止めるために、宮城はとびだそうとした。
「やめなさい、流川!」
だが、宮城がとびだす前に、彩子が流川を止めた。
「アヤちゃん!」
「大変なことになるわよ」
「先輩…」
彩子が止めると、流川は手を放した。
「くそ…!!」
手を放されると 、男はつかまれたところをおさえる。
「もうなってるぞ、コラァ!!」
「あっ!!」
「―――――!!!」
まるで八つ当たりをするように、男は彩子の頬を殴りとばし、それに衝撃をうけた宮城は、目と口を大きく開いた。
「はあああっ!!!」
そして、彩子がやられたことで怒った宮城は、その場を跳んで男に向かっていった。
「宮城!!」
「リョ…」
その宮城を見て、全員がまずいと思った。
「があっ!!!」
けど、もう宮城は止まらず、彩子がやられたところと同じところを蹴りとばした。
「あがっ!!」
「!!」
今の蹴りで、男は床に倒れた。
「…………」
しかし、それでも鉄男はだまって見ているだけだった。
まるで、相手側の性格や戦い方を、観察するかのように…。
「あああーーーっ、宮城!!」
「もうダメだ~~~!!メチャクチャだ!!」
やめろと言っていた宮城さえも手を出してしまったので、木暮達は焦った。
「ブッ殺す!!」
「あうああああいあ~~~!!」
「ブッ殺してやる、てめえ!!」
もちろん、一回蹴っただけで、宮城の気がおさまるわけがなく、宮城は男の顔を、何度も何度も殴り続ける。
「宮城ィ!!」
それを見た、金髪の男とリーゼントの男は、宮城をやろうと走りだすが、目の前に流川が現れた。
「おうっ!!」
「…………」
そして、金髪の男は、流川に蹴られてジャマされたので、それは適わなかった。
「らァ!!てめーの罪は、こんなもんじゃ消えねーぞ!!立て!!らァ!!」
「ぐえ」
「立てえ!!」
「……………」
相手の血がとび散るくらいに殴り続けるその光景は、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図ともいえた。
「のりおくれた…」
一方、誰よりもまっさきにとびだしていきそうな花道は、安田をささえていたので、とびだすことができなかった。
「た…大変なことになった…。大変なことに…」
とうとうこちら側も手を出し、メチャクチャになったので、こういうことに慣れていない木暮は、どう対処していいかわからず、困惑していた。
「(本当にメチャクチャ。宮城先輩、さっきまでやめろって言ってたくせに…)」
魅真は、今の状況に渋い顔をすると、軽く息を吐いた。
「(………仕方ない…か…)」
少しだけ悩んだが、意を決すると、そこから一気にとびだした。
「真田っ!?」
いきなりとびだした魅真を見て、一体何をする気なのかと、木暮は疑問に思った。
すごい早さで駆けていく魅真は、三井のもとにまっすぐに向かっていく。
集団の場合は、リーダーを倒すのがいいとわかっているからだ。
「なんだ!?オレとやろうってのか!?上等だっ!!」
自分に向かってきた魅真に、三井はやる気満々で、拳をかまえようとした。
だが魅真は、三井が拳を突き出すため、後ろに手をひこうとする前に、三井の両腕をつかみ、投げとばすのではなく、勢いをつけて、自分の足を、三井の足の間にすべりこませて、三井の股の下をくぐりぬけ、同時に三井の腕を強くひっぱった。
そうされたことで、三井は体勢をくずされ、仰向けに倒れた。
三井を仰向けに倒すと、魅真は三井の腕を放して、素早く立ち上がる。
「くそっ」
魅真が手を放すと、三井は急いで起き上がろうとする。
「ぐっ」
だが、魅真に腹をふみつけられたために、不可能となった。
あまりの手際のよさと、意外な姿に、敵・味方全員が呆然とした。
「何やってんだ、魅真!!やめろっ!!お前はもう……」
しかし、唯一花道だけはそうではなく、声をはりあげた。
しかも、どこか焦っている様子で…。
「大丈夫よ、花道。あんたはそこで大人しくしてて」
対して魅真は冷静で、花道に顔を向けると、にこっと笑った。
「すぐにすませるから…」
そう言いながら、再び顔を三井に向ける。
「!!」
花道に向けた笑顔とは真逆の、異様なほどおそろしく冷たい目に、三井は背すじが凍りつき、体が固まった。
「うっ」
三井が固まっている間に、魅真は三井の腹にまたがって、マウントポジションをとった。
「くそっ」
いとも簡単に動けなくされたので、三井はくやしそうにした。
「すぐにすませるだ!?やれるもんならやってみやがれっ!!」
しかし、強気な姿勢だけは崩さなかった。
「がっ!!」
挑発をされると、魅真はなんの躊躇も容赦もなく、三井の右頬を殴った。
「てめっ…」
「やれるもんならやってみろって言われたから…」
文句を言おうとする三井の言葉を遮り、答える魅真は、変わらず冷たい目をしていた。
「やれるからやっただけだけど、なにか文句でも?」
「く……」
そして、魅真から放たれる、ただならぬ威圧感に、三井はまた背すじが凍る。
「くそおっ!!」
それでも、なんとか腕を動かして、魅真を殴ろうとした。
しかし、床に仰向けで寝ている状態のため、拳が勢いにのらないのもあり、あっさりと魅真に拳をつかまれて止められた。
三井のパンチを止めると、魅真はまた三井の顔を殴りだした。今度は一発ではなく、何度も…何度も…。
「(くそうっ…。どこだ!!一体どこで会ったんだ!?)」
一方的にやられながらも、三井は魅真のことを思い出そうとしていた。
「さあ!!早く出ていきなさい!!」
その魅真は、とにかく三井を殴りまくった。三井が出ていきたくなるよう、仕向けるために。
「てめえっ!!三っちゃんに何しやがる!!」
三井を殴ってると、後ろから、堀田が怒りながら走ってきて、魅真を止めようとした。
堀田が来ると、魅真は三井の上からどいて、堀田に向かって走っていき、間合いをつめると、まずあごの下に一発いれて、その後に、両手で堀田の後頭部をつかむと、跳んで顔面にひざ蹴りをくらわせた。
「ぐ……あ……」
たった二発いれただけだが、相当に効いたようで、堀田は顔をおさえると、ひざをついてもだえた。
「ジャマするな…」
魅真は堀田を見下ろし、吐き捨てるように言った。
「野郎っ!!」
その時、また後ろから、今度は竜が襲いかかってきたので、魅真は一瞬で間合いをつめると、先程流川が殴ったところを何度か殴り、更に、同じく流川にやられたあごを殴ると、服をつかんで背負い投げをした。
流川にやられたところをやられたのもあるのだが、魅真の攻撃の威力にも、竜はもだえ、苦しんだ。
けど、竜が苦しんでいても、魅真は冷たい目で見下ろすだけだった。
そして、再度三井のもとに行こうと、踵を返した時だった。
「!!!!!!!!」
三井がいる方へふり向いた瞬間、魅真は頭の頭頂部に衝撃を感じた。
それは、鉄男が魅真の頭を、モップの金属部分で殴ったからだ。
モップが動くと、金属部分の角に、髪をまとめていたシュシュがひっかかって、下に落ちていき、魅真の髪の毛は乱れた。
モップで殴られたところからは血が流れ、体が傾いたが、床に倒れる前にふんばったので、魅真は床に体をぶつけることはなかった。
「ほう…。なかなかタフだ…」
見かけによらず鍛えられてるようなので、鉄男は感心する。
「おいっ!!女の子だぞ!!」
味方側の誰もがこの光景にショックをうけている中、宮城が声をはりあげる。
「関係ねーな」
だが、鉄男の口から出たのは、なんとも冷たいものだった。
「オレはブッ壊すって言ったろ、宮城。この女も例外じゃねえ」
今度は三井が、鉄男に続いて答えた。男だろうと女だろうと、戦えようが戦えまいが、三井達には関係なかったのだ。
「…………オイ……」
その時、魅真の口から、魅真のものとは思えない低い声が出てきたので、鉄男は宮城に返すために、後ろに向けていた顔を戻した。
その瞬間、鉄男は股に衝撃をおぼえ、気がついたら後ろにふっとんでいた。
ふっとんだ鉄男は、何回か床をバウンドして移動していき、何メートルか移動してようやく止まると、床にうずくまり、股をおさえてもだえた。
「男の急所を、容赦なく蹴りやがった…」
「ひでえ…」
金髪の男とリーゼントの男は、もしやられたのが自分だったらと想像して、顔を青くした。
「ひどい…?」
それを聞いた魅真は反応し、眉間にしわをよせた。
「男なんてのは、ただそこに立ってるだけで、急所をさらけ出しているものなんだ。弱点狙うのは、ケンカじゃ常識。油断してたソイツが悪い」
だが、魅真が言うことももっともなので、彼らは言葉がつまる。
「それに、ひどいのはそっちだろう。人が、なるべく穏便にことをすませようと思ったのに、一向に出ていかないし、それどころか攻撃をする。だから私は…」
そこまで言うと、頭から血がたれてきた。
「ちっ」
言いたいことを遮るようにたれてきた血は、目に入りそうになったので、魅真は舌打ちをすると、手で顔をこすって血をぬぐう。
「くそっ」
けど、それでもたれてくるので、魅真は忌々しそうにして、血を、ケガした部分に押し戻すように、手を上に動かした。
その際に、血がついた前髪も同時にかきあげ、血が整髪剤代わりとなったので、前髪は頭部にはりついた。
「ああっ!!」
その姿を見た瞬間、堀田は驚きの声をあげた。
「三っちゃんっ!!あいつだっ!!あの女だよっ!!」
「あの女?」
堀田は興奮するが、三井はまったくわからなかった。
「前に、会ったことがある気がするって言っただろ。あの女だよっ!!ほらっ、去年の夏に会った…」
「あっ……。あいつかっ!!」
それでも、堀田は三井に説明すると、そこまで言われて、ようやくわかった三井は、驚きの声をあげた。
「ああ…。オレ達不良の間じゃ、特に有名だ。そして、不良だけでなく、一般人にも、ひろくその名は知られている…。かつて、神奈川を震撼させた、神奈川の奴なら、知らない奴はいないんじゃないかと言われているほどの女……」
堀田は、疑うように目を見張り、魅真の正体がわかったものの、信じがたそうにしていた。
「鬼神・真田魅真っ!!」
けど、三井と堀田の目の先にいる魅真は、何も否定せず、鋭い目で三井を見据えていた。
.