#15 もう一人のスーパー問題児・その2
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騒動がおさまると、四人はそれぞれ部室に行った。
「えっ!!それじゃあ、あの人が入院してたっていう、もう一人の2年生なんですか!?」
魅真は着替えながら、同じく隣で着替えている彩子から、宮城のことを聞いており、実は入院してたという、もう一人のバスケ部員だと知ると驚いていた。
「そう…。宮城リョータ。私と同じクラスで、湘北高校バスケ部。そして、もう一人のスーパー問題児」
「ス……スーパー問題児!?」
「まあ、かなりヤンチャなのよ。控えめに言えばね」
「なんか、花道みたいですね…」
「だから問題なのよ」
「なるほど……」
花道と、花道と同じ部類の人間がぶつかりあえば、どんな風になるかは想像に難くないので、魅真は頬をひきつらせた。
「(それにしても、あの三井って人、本当にどこかで会ったことが……。どこだっけ?)」
宮城のことを彩子から聞くと、今度は、宮城と一緒にいた長髪の男…三井のことを考えた。
「どうしたの?急にだまりこんじゃって…。具合でも悪いの?」
「え?いや…大丈夫です…」
「そう。じゃあ、着替えたんなら行きましょ」
「あ…はい」
二人は話しているうちに着替え終わったので、荷物を持って部室を出ると、体育館がある方へ歩いていく。
「(さっきの、三井と呼ばれてた人……。ひょっとしてあの長髪の人が、私が憧れた、三井寿?……まさかね…)」
部室を出ると、魅真はまた、先程の三井のことを考えていた。
「(だけど、確かにあの人は、三井と呼ばれていた。じゃあ、本当にあの人が、私が探している三井寿なの!?でも、三井っていう苗字はそんなにめずらしくない。それに、私の知ってる三井さんは、バスケ部。不良じゃない)」
もしや、あの人物が、探し人の三井かと思ったが、魅真は思ったことを否定した。
「(だけど……私は、三井さんが入院してるって聞いてからも、何度か3年生の教室に足をはこんだ。だから、結構3年生の顔は覚えた。逆に3年生にも、結構知られている。でも、あの人のことは初めて見たし、あの人も私を知らないみたいだった。それに、三井さんは、5月のはじめ頃に退院すると、先生が言っていた。時期的に今ぐらいだし…それに……あの人が、私が探してる三井さんなら、バスケ部にいないのも合点がいく!すべて辻褄があっている!)」
否定したが、それでもやはり、可能性はゼロではないと、いろいろと考えていた。
先程会った三井が、絶対に3年生だとはかぎらないが、堀田達と一緒にいたのと、三井と宮城のお互いの接し方や、堀田の子分の三井への接し方を見ると、恐らくは3年生だろうということが想定されたので、可能性は高かった。
「「あっ」」
「ぬ?」
「ああっ」
考えごとをしながら彩子と階段を降りると、同じように体育館に向かっている、花道と宮城と遭遇した。
「魅真、アヤコさん」
「アヤちゃん!!」
魅真と彩子と遭遇すると、花道は普通の反応だったが、宮城はまだ魅真のことを知らないのもあり、彩子の名前だけを呼び、うれしそうに顔をほころばせて、彩子のもとへ歩いていく。
「アヤちゃんも今から体育館?奇遇だね」
「そうね。…あっ、そうだ!リョータ、あんたちょっと、ここの階段にすわりなさいよ」
「え、なんで?」
「ケガしてるでしょ。手当てするから」
「ほっ、本当に!?」
「本当よ」
手当てをすると言っただけで、宮城は鼻の下をのばし、頬を赤くして、うれしそうに階段にすわった。
「ほら、桜木花道も」
「ん?おお」
けど、花道も手当てしてもらうのがわかると、宮城は気にいらなさそうに花道を睨んだが、花道はそのことには気づかず、同じように、宮城の隣にすわる。
「じゃあ魅真、よろしく」
「「え?」」
てっきり、彩子がケガの手当てをするのかと思ったのだが、違ったので、魅真と宮城はすっとんきょうな声を同時に出し、同時に彩子の方へ顔を向けた。
「ええ~~~。アヤちゃんが手当てしてくれるんじゃないの?」
「そうしてあげたいけど、この子、新しいマネージャーなのよ。だから、この子に経験つませてあげないとね」
彩子がそう言ったことで、何故彩子ではなく、自分が手当てをするのか、魅真は納得をした。
「ちぇっ…。アヤちゃんがしてくれると思ったのに…」
しかし、宮城は納得しておらず、ぶつぶつと文句を言っていた。
魅真は、相手は一応先輩だし、気持ちがわからなくはないので、何も言わなかった。
「文句言わないの!」
けど彩子は、すねる宮城を、大きな声でしかった。
「フン…」
確かに、彩子が手当てをするとは言ってなかったが、雰囲気からして彩子が手当てをすると思ったし、彩子に手当てをしてもらいたかった宮城は、鼻を鳴らすと、見るからに不機嫌そうな顔になる。
「じゃあ、さっさとやれよ」
仕方ねーな…といった感じで、ふてぶてしい態度で魅真を見上げ、睨みつける宮城。あまりにも違いすぎる彩子との態度の差に、魅真はブチ切れた。
「(このヤロウ~~~~~……。いくら彩子先輩が好きだからって、ここまであからさまに態度変えることないでしょーが!!ぶっとばしたろか?このチビッ!!)」
宮城が彩子を好きなのは、先程の校舎裏でのやりとりでわかったし、彩子に手当てしてもらえないので、がっかりしているのも今のやりとりでわかったが、態度があまりにも違いすぎるので、魅真は今にも、宮城に襲いかかりそうな雰囲気だった。
「(……って…いかんいかん。私はもう不良じゃないんだから。こういうところも、少しずつ直していかないと…)」
今のは、思わず不良時代のクセが出てしまったので、魅真は反省した。
「(それにしてもこの人、あの三井ってロン毛とは、どういう関係なんだろう?この人と、さっきの三井って人は、何か深い関係があるみたいだった。親しいんじゃなくて、何か因縁めいたものだけど…。でも、何かしらのかかわりがあるのは確か…)」
魅真は気をとりなおして、救急箱からバンドエイドをとり出すと、箱の中から一枚手にとり、包装している紙を左右に開いた。
「(もしかして……この人に聞けば、さっきの三井って人のことがわかる!?)」
包装の紙をとると、バンドエイドを持って、宮城をジッと見た。
#15 もう一人のスーパー問題児・その2
ボールをドリブルする音や、シュートする時にバックボードにあたる音が、体育館に響いていた。
それは、すでに体育館に来ている部員が、練習している音だった。
「!」
「!」
「あっ!!」
練習していると、体育館にやって来た人物に気づき、出入口の方へ顔を向けた。
「宮城!!」
「宮城!!」
「宮城だ!!」
そこにいたのは宮城で、久しぶりに見るその姿に、2・3年生はざわついた。
「ただいま」
全員が注目すると、宮城は右手をあげて、淡々とあいさつをした。
「(ちっ…。野郎がバスケ部だったとは…) チュース」
後ろからは、花道、魅真、彩子も続いて入ってきて、花道は宮城がバスケ部員なのが気にいらないようで、ぶつぶつと文句を言っており、彩子は不安そうな顔をしていた。
すぐ近くでは、流川が床にすわり、バッシュのひもを結びながら、無言で宮城を見ていた。
「宮城…」
「あ…あれが宮城さん…」
「やっぱり、コワソーだ……」
部室で、宮城の話(悪評)を潮崎から聞いていた桑田と佐々岡は、宮城を見ただけでビビった。
「リョータ。もういいのか、体の方は?」
「ああ」
そんな中、安田は親しげに宮城に話しかける。
「ヤス…。1対1やろーぜ!!」
そう言って、宮城はボールを手にとった。
その頃、先程の校舎裏では…。
「み…三井君」
「平気?」
堀田の子分達が、未だに地面にすわっている三井の周りに集まって、心配そうに声をかけていた。
「……………宮城の野郎…」
三井は、先程宮城のひじがあたった時に出てしまった鼻血がまだ止まらないのと、下の歯が抜けてしまったのとで、鼻と口を、手のひらで覆うようにおさえていた。
「おい…。なんなんだ、あの赤い髪は…。今年入った1年か?」
「うん。1年7組、桜木花道。奴もバスケ部なんだ。前に屋上でシメようとしたんだけど、変なジャマが入ってダメだった」
「そういえば、そんときのあいつもバスケ部だぜ。前髪たらした奴…。ルカワとかいう。奴は強かった…」
「バスケ部ばっかじゃねーかよ」
花道と流川のことを聞くと、三井は忌々しそうに言い放つ。
「ち…」
そして、舌打ちをすると、その場を立ちあがった。
「いつまで寝てんだ、徳男!!」
「ぐえ!!」
立ちあがると、すぐそばにいる、未だに気絶して、地面に寝ている堀田を蹴りとばした。
「はっ」
三井に蹴られた堀田は、ようやく意識を取り戻し、起き上がると、あたりを見回した。
「許さんぞ、あいつら…。絶対許さねえ…」
敵意は、宮城だけでなく花道にも向けられ、三井は恨みがこもった目で、前を見ていた。
一方体育館では、ドリブルの音が響くと、安田はゴールがある後ろの方へ顔を向け、壁によりかかって見ていた流川は目を見張った。
「「「「あっ!!」」」」
「ああっ!!」
流川だけでなく、この1対1を見ていた全員が驚き、目を見張る。
それは、宮城があっという間に安田を抜き、レイアップを決めたからだ。
あっさりと抜かれたので、安田は呆然とし、着地すると、宮城は安田に顔を向ける。
「は…………」
「はやい―!!」
「湘北(うち)のスターティングガードの安田さんが、反応もできないほどのはやさとは…。スゲエ…!!」
「上背はないが、あのスピードは、湘北一じゃねえか…!?」
「……………」
桑田、佐々岡、石井は宮城を称賛していたが、流川はだまったままで、宮城を凝視していた。
シュートが決まった宮城は、頬を赤くして、彩子の方へふり向く。
「(まーーたかっこつけて…)」
今のは彩子に対するただのかっこつけで、彩子にもそれはわかっており、どこかあきれている感じはあったが、あたたかい雰囲気もあった。
「(へえ…。ただ態度デカいだけの奴かと思ったけど、結構やるわね)」
先程の手当ての時、宮城の態度に腹を立てていたが、ちゃんと実力があるので、魅真は目を見張り、また感心していた。
「あいつは問題も多いが…バスケの実力は、次期キャプテンといわれるくらいさ」
「―――!!」
木暮が宮城について話すと、花道は腹が立ち、こめかみに青筋が浮かんだ。
「まいったな。全然衰えてないなリョータ!!今日こそ止めてやろうと思ったのに」
「ふっふっふっ。10年はえーよヤス」
「入院中は…」
宮城と話している途中で、安田は花道に首をつかまれ、後ろに放り投げられた。
「なんだ」
花道が目の前に来ると、宮城は花道を睨みつけて、花道は安田を放り投げると、宮城が持つボールを奪いとった。
「オレが次期キャプテンだ」
「勝負すんのか!?」
そして、花道は宣戦布告をするように、宮城を睨みつける。
睨みあう二人の間には、見えない火花がバチバチと散っているようだった。
「ああ…」
「なんかイヤな予感…」
「ほほう…」
「(なんか…確実に悪いことが起こりそう…)」
この二人の対決の行く末に、魅真は悪い方向へ進みそうな予感がしており、魅真と同じく、嫌な予感がした安田、潮崎、角田はハラハラとして見ていたが、流川だけは興味津々だった。
一方で、三井達は今、学校の外へ出ようと、校舎裏を歩いていた。
「おい、お前ら」
歩いていると、急に三井は、後ろを歩いてる堀田達に声をかけた。
「なんだ?三っちゃん」
「宮城と話してる時に、オレに意見してきた、あのハーフアップの女……。どこかで見たことねえか?」
「三っちゃんもそう思うのか?実はオレもなんだよ」
「あ?」
「オレがあの女と会ったのは、新学期が始まって間もない頃だ。桜木をシメようと屋上に呼んだが、奴は来なかった。仕方なくその日は帰ろうとした。それで、屋上から階段を降りていたら、さっきの女に会った。そん時オレは、あいつに会ったことがある気がしたんだが……こいつらが……」
「オレ達は気のせいだと思ったんだ。だって、あいつはどこからどう見ても一般の生徒だ。そんな奴に深くかかわるわけないし、どこかで会ったとしても、覚えてるわけないぜ」
堀田が後ろへ顔を向けると、角刈りの男が、以前堀田に言ったことと同じことを、三井に話した。
「(確かにそれも一理あるが、だが……あいつは…本当にどこかで…)」
そう言われると、三井はまた魅真のことを考えるが、やはりわからなかった。
「あっ!そういや、あの女も確か、バスケ部なんだよな。バスケ部のマネージャー」
「ちっ…。またバスケ部か」
角刈りの男が、思い出したように言えば、三井は鋭い目つきになり、眉間にしわをよせ、忌々しそうに舌打ちをする。
場所は戻り、体育館では、花道と宮城が対決していた。
「なんでお前みてーのがバスケ部にいるんだ。よく赤木のダンナが許したな」
向かい合うと、早くもバカにされたので、花道はムッとした。
「身長だけで、バスケができると思うなよ。赤頭」
「フッフッフッ、バカモノが!!陵南戦でマボロシの逆転シュートを決めた、この天才・桜木の実力を見せてやる!!行くぞ!!!」
もともと根拠のない自信がある花道だが、この前の陵南との試合で更に自信をもった花道は大きく笑う。
だが、何もしないうちに、あっさりとボールを下からはじかれてしまった。
「あっ」
あっという間にとられたので、花道は焦るが、ボールはすでに宮城の手にあった。
「EASYだな」
ボールをもち、花道に顔を向けると、挑発的な笑みを浮かべる。
「コ…コ…コラ、ちょっと待てい!!!フイ打ちとはヒキョーな!ヒキョー者!!ズル!!」
「(別に、卑怯でもズルでもないでしょ……)」
「(どあほう…)」
いろいろとツッコミどころがある花道に、魅真も流川もあきれていた。
「じゃあ、お前ディフェンスやれよ。止めてみな」
「上等だ!!この、天才の神技的ディフェンスをひろうしてやる!!来いや!!」
今度は負けないと言うように、花道は宮城に挑発する。
「(こいつ、まだ初心者に近いな…。それにしても、なんなんだ、一体。この、根拠のない自信は…。何が天才だ。変な奴。ま、素質は確かにあるけどな…)」
「フン」
「いて」
宮城がいろいろと考えている間に、花道はボールをカットしたが、宮城の手をたたいたので、あきらかなファウルだった。
「とーり」
カットすると、花道は床に落ちたボールをとった。
「ハッハッハッ。君も大したことないね。ん?リョータ君」
そして、ドリブルをしながら、高らかに笑い、宮城をバカにした。
「野郎…どっちがヒキョー者だ。完全なファウルじゃねーか…」
たたかれた手は赤くなり、反則でボールをとられたので、宮城は頭に血がのぼった。
「この反則野郎!!」
「ああっ!!」
目には目を歯には歯をというように、宮城は花道に体当たりをしてボールを奪った。
「コラァ」
この宮城の行動で、花道は頭に血がのぼった。
「もういい。そこまで!ストーーップ!!」
「ハッハッ。勝ーーち」
ケンカに発展したので、木暮と安田は止めようとする。
「フン」
「ごわ」
花道も、目には目を歯には歯をというように、体当たりをしてボールを奪った。
花道が体当たりをすると、後ろにふっとんだ宮城は、木暮と安田を巻きこみ、この光景に、彩子と晴子はぎょっとした。
「ハッハッ。君も大したことないね」
再びボールを奪った花道は、得意げな顔でドリブルをした。
「(やっぱりこういうことになるのね。予想通りっていうか…。それにしても、彩子先輩の言う通り、かなりヤンチャね。あの宮城先輩も…)」
彩子と晴子はぎょっとしたが、この展開は予想通りの上に、不良時代に見慣れた光景なので、魅真は動じていなかった。
「このクソガキ!!」
「ぬ!!」
魅真が冷静に成り行きを見ていると、宮城は花道に体当たりをした。
「ふぬ!!」
宮城が体当たりをすると、花道は宮城の後頭部をはり倒す。
「ぐ!!」
宮城ははり倒されるも、器用にも、傾いた体をひねると、ふり返りざまに、花道の右頬に平手打ちをした。
「ぬお!!」
「ぐわ」
だが、花道は負けじと、宮城を蹴りとばす。
「ていっ」
「!!」
「あああああ…」
けど、宮城もやり返し、今度は花道の足をつかんでころばせた。
「(なるほど…。スーパー問題児か…)」
「すごい…。なんて戦いだ……」
「目にも止まらぬ連続技…」
目の前で繰り広げられている戦いを見て、魅真は、彩子が宮城をスーパー問題児と言っていたことに納得しており、桑田と石井は感心していた。
「感心してる場合か!!止めなさい!!」
「「「は…はいっ!!」」」
そこへ、彩子が怒鳴ると、桑田、石井、佐々岡の三人は、あわてて止めに行った。
「我関せず」
「あんたもよ!!」
けど、流川だけは動かず、指の先にボールをのせて回していた。
「「うあああっ!!」」
止めにいった桑田達は、近くまで行くと、宮城がとんできてぶつかったので、止めるのは困難となった。
「あああ、桜木君…」
2階では、部活を見にきていた晴子がおろおろしていた。
「このガキーッ!!」
「ふぬーーっ!!」
花道と宮城は、やったりやられたりをくり返して、ますますヒートアップした。
「!!」
「ぬ…」
するとそこへ、二人の後ろの体育館の出入口から赤木がやって来て、二人の首ねっこをつかんで止めた。
しかも、額に青筋を浮かべており、あきらかに怒った顔をしている。
「「「「「「!」」」」」」
一方、赤木が来たので、魅真と流川以外の部員は、全員ほっとした。
「ゴリ…」
「ダンナ…」
「ほっ…」
赤木の出現に、花道と宮城は今までの勢いがなくなり、たくさんの冷や汗をかいた。
「バカタレ(×2)が」
どこからどう見ても怒っている赤木は、花道と宮城にげんこつをくらわせた。
「赤木さん!!」
「チワース!!」
「赤木さん!!」
「さあ、練習だ」
「「……………」」
赤木は二人を殴ると、他の部員達のもとへ歩いていき、花道と宮城は、痛みのあまり、その場で頭をおさえてひざをついた。
「湘北ーーーーーファイ」
「「「「「オオ」」」」」
そして練習が始まり、体育館の中を走りだしたが、その間も、前後に並んで走っている花道と宮城は、お互いに睨みあっていた。
「やっとるかあ」
「チュース」
「チューース!!」
その途中で安西がやって来たので、全員走りながらあいさつをする。
「先生」
「おっ」
走っている最中だったが、安西が来ると、宮城は走るのをやめて、安西の前まで歩いてきた。
「宮城リョータ、ただ今戻りました。御迷惑をおかけしました」
先程まで、花道とケンカしていがみ合っていたとは思えないくらい、しおらしく丁寧なあいさつと謝罪をして、頭をさげる宮城。
そんな宮城を、赤木、木暮、彩子は、優しい顔で見守っており、魅真は問題行動を起こす、荒々しい宮城しか知らないので、びっくりしていた。
「宮城君」
宮城があいさつをすると、安西は宮城の名前を呼び、にっこりと笑う。
「これから、目一杯やりなさい」
「はい!」
「……………」
そして、優しい言葉をかけながら、宮城の腕をたたき、それを花道が、宮城の隣でじーーっと見ていた。
「何いい子ぶってんだ、てめー?」
宮城が返事をすると、隣でその様子を見ていた花道が、宮城の背後から声をかける。
「おいオヤジ、こいつはやめさした方がいいかもよ。オヤジの権力でよ。天才・桜木の足をひっぱるタイプだぜ、絶対」
「ああ!!」
そして、次に安西の隣まで行くと、いつものように安西のあごの脂肪を下からたたいてゆらしたので、それを見た宮城はあわてた。
「何考えてんだてめーーは。この馬鹿!!」
「それに、実力も大したことねーー。それと、性格も悪い。やめさした方がいいぞ」
花道は話しながら、今度はあごの脂肪をひっぱる。
「おめーだ、やめるのは!!」
「いてっ」
すると宮城は、花道の愚行をやめさせるため、花道の左頬をつかんでひっぱった。
「何が天才だ。この大バカヤローが!!」
「放せ…」
怒った宮城が、強い力で頬をひっぱると、花道は痛がった。
「この」
「!!」
だが、花道も負けじと、宮城の左頬をつかんでひっぱった。
「ふっふっふっ。てめーがやめやがれ」
「てめーこそ…」
「やめるっつったら放してやるぞ。どーだ?早く楽になりたいだろ?」
「てめーこそ涙目になってるぞ。ムリすんな」
お互いムリをしてるようだが、それでも負けたくないので、痛みをガマンして、相手の頬をつかみ続けた。
「言っとくがオレは、まだ60%の力しか出してねーぞ。まだ余力があるんだぞ」
「フッフッフッ。オレもだ。オレはまだ50%」
「フッ。オレは40%だ、実は…」
「ウソつけ!オレは30だけど」
「オレは20」
「(まるで子供ね、あいつら…)」
「(バカバカしい!)」
この二人の、小学生のようなやりとりに、全員あきれ、赤木は怒る気力すらなくして、ため息をついていた。
「リョータッ!!」
その時、宮城の後ろから、彩子が宮城をハリセンでたたいて止めたので、その衝撃で宮城は、花道の頬をひっぱっている手を放してしまう。
「(勝った…!)」
ちょっと違う気もするのだが、最後までつかんでいたのは自分なので、花道は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「なにやってんのよ!!」
「アヤちゃん!」
すぐ後ろに彩子がいるのがわかると、宮城は顔つきがやわらかくなり、頬を赤くした。
「ぬ…」
そこで花道はあることに気づき、宮城を観察するように凝視した。
花道の前にいる宮城は、顔が緩み、鼻の下をのばしていた。
「(ははーーーん。こいつは…)」
観察していると、花道は、宮城の彩子に対する想いに気づいたのだった。
そして、辺りが暗くなった頃に練習は終わり、練習が終わると、魅真は宮城に、三井のことを聞こうと、男子の部室に行った。
とは言っても、中に入ることはできないので、扉の隣で、宮城が出てくるのを待っていた。
「あれ?真田」
「あ、おつかれさまです。木暮先輩」
部室の扉の隣で待ってると、木暮が出てきた。
「どうしたんだ?男子の部室まで来て…」
「あ、えっと……宮城先輩は…」
「もう帰ったぞ」
「そうなんですか…。ありがとうございます。おつかれさまです」
「おう」
木暮に宮城のことを聞くが、もう帰ったようなので、また別の機会に聞くことにして、その日は仕方なしに、そのまま帰宅した。
そして次の日…。
「!」
「あっ」
花道と宮城以外の部員はすでに全員体育館にいて、練習を始めていた。
そこへ、花道と宮城が、二人そろって体育館に入ってきた。
「今日もやるぜ、花道!!」
「オウ、リョータ君!!」
二人は昨日とは打って変わり、お互いに肩を組んで仲良くなっていた。
前日までは険悪なムードだったのに、昨日の今日で、急に仲が良くなったので、当然、全員驚いてざわついた。
「不気味な…」
「何があったんだろう…」
「これは一体…!?」
「…………」
「(どあほうが二人に…)」
全員唖然としており、その中で流川だけは、いつものように、心の中で毒づいた。
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