#14 もう一人のスーパー問題児・その1
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「いよ~~花道!!」
「きのうは…」
次の日の朝。花道は学校に登校すると、学校の近くで高宮達が声をかけるが、花道は彼らが全部言う前に、高宮に頭突きをした。
高宮に続いて、大楠、野間にも頭突きをしたので、彼らは、次々と地面に倒れていく。
「いってーな。まだ、なにもいってねーだろ!!」
「なぐさめてやろうとしたのによ!!」
倒れたが、すぐに立ち上がり、文句を言った。
「いーーや、今のはチャカす顔だった。こーんな目をして」
花道は三人が言ったことを否定し、最後に、いつも彼らが自分をチャカす時の目をした。
「ハハハハ。しょーがねーな」
「おはよ、みんな」
「洋平、魅真」
そこへ高宮、大楠、野間の後ろから、魅真と洋平がやって来た。
「あいつ、きのうは陵南に負けたくやしさで、ほとんど眠れなかったらしい。相当気が立ってるぜ」
「夜どころか、帰り道でも文句言いまくってたのよ」
「こりゃ当分きのうの試合のことは禁句かな」
腹を立てながら、ぶつぶつと昨日の試合の文句を言う花道の後ろを、魅真達は少し離れて歩いた。
「桜木!」
少し歩くと学校の前につき、校門の前の横断歩道を渡ると、校門の前に、一人の男が現れた。
「きのうは負けたってなあ!!これでバスケット部がイヤになったろう、桜木!!」
そこに現れたのは、黒髪の、ガタイのいい男。
実はこの男は、以前花道を、百年に一人の逸材と惚れこみ、柔道部に勧誘した男・青田だった。
「柔道部に…」
禁句を言った上、すかさず花道を勧誘するが、花道は話を聞かずに、青田に頭突きをくらわせたので、青田は仰向けに倒れた。
「まてい桜木!!この青田率いる柔道部には、負けの2文字はないぞ!!お前が入ればなおさらだ!!」
青田はすぐに起き上がり、フラフラとした足取りで花道を追いかけながら、めげずに勧誘するが、花道は聞いておらず、昨日の試合の文句を言いながら、学校内に入っていった。
「ぐおっ!!」
勧誘をしてると、後ろから、流川が眠ったまま自転車に乗って登校してきて、青田をひいたので、青田はまた、今度はうつぶせに倒れた。
「先行っちまったな」
「まあ、しばらくほっとくしかないわね」
花道の姿が見えなくなると、野間と魅真はぽつりとつぶやく。
「今はあんな風に気が立ってるけど、きっとすぐに立ち直るでしょ。何しろ単純王だからね」
魅真は、花道がすぐに立ち直ることを見抜いていた。
おそらくは、晴子が昨日の試合のことで花道と話し、晴子と話して立ち直るだろうと予想していたのだ。
そして放課後……。
「チューーーース!!」
「遅いぞ、桜木!!」
その日の練習、花道は、いつもよりも遅れてやって来た。
「ハッハッハッ。天才桜木、バッシュをはいて登場!!さあ、いくぞ!!」
遅れてきたのは、昨日の試合で体育館シューズが破れたので、バッシュを買いに行って遅くなったからだった。
花道は魅真の読み通り、晴子と会って昨日の試合のことを話し、晴子にベタ褒めされて有頂天になり、更にはこのバッシュも、晴子と一緒に部活が始まる前に買いに行っていた。
まるでデートのような夢ごこちで、そのおかげで、花道はすっかり立ち直ったのである。
そんな花道を見た魅真は…
「(やっぱりね)」
と思っており、ほっとした様子で、優しい笑顔を浮かべていた。
#14 もう一人のスーパー問題児・その1
何時間か練習をすると、彩子が笛を鳴らした。
「よーーーし。ストップ、集合!!」
「「「「「はい!!」」」」」
彩子が笛を鳴らすと、赤木が声をかけ、全員赤木のもとへ集まった。
「ふーーっ」
部員が集まると、赤木は話す前に息を吐く。
「たくさんいた1年も、あっという間に、お前ら5人になっちまったな」
「はい…」
「まあいい。毎年のことだからな。今年はマシな方だ」
「地区予選は近い!!そして県大会!!このメンバーで戦い抜くしかない!!」
「200校を超えるチームが県内にはあるわ!!中でも、去年優勝の、海南大附属高校!!ここは、10年連続IHにでているほどの、全国でも有名な強豪!!その海南大附属に、年々迫っている、去年2位の翔陽!!そして…天才・仙道、怪物・魚住を擁する陵南!!」
仙道や魚住の名前を聞くと、花道と流川は、過剰な反応を示す。
「いいか、それら強豪を倒すのは…」
「ショーーホク!!」
「ん?そうだ」
「超天才・桜木&大怪獣・ゴリを擁する…湘北が勝~~~~つ」
「誰が大怪獣だ」
「(どあほう)」
余計な一言を言ったせいで、花道はいつものように、赤木に頭を殴られた。
「桜木花道!バッシュも新しく買ったし!がんばんのよ」
「これでまた、気合入れてがんばってね」
「へっへっ。似合う?魅真、アヤコさん」
「「似合う似合う」」
「「「「「……………」」」」」
魅真と彩子がほめていると、他の部員達は、花道のバッシュをじーーっと見た後、花道のバッシュをふみつけた。
「あーーーっ!!!ななな、なにすんだ、てめーーら!!人のバッシュを!!」
おニューのバッシュなのに、いきなりふみつけられたので、花道は文句を言った。
「新しいバッシュは、えてしてケガしやすい。だが、こうしとけば大丈夫。ゲンかつぎだ。一種の」
「そ…そーか」
「オレはふまなかったけど」
「ぬ…。ルカワ…」
ふみつけても腹は立っただろうが、ふまなかったらふまなかったで、腹が立つ花道だった。
「いいか忘れるな!!あくまで最終目標は…」
「全国制覇!!!」
「そーだ、桜木」
いつも自分でも言ってることだが、いちいち口をはさんでくるので、いちいちいわんでいいとつっこんだ。
「厳しい練習だが、みんな、なんとしてもついてこい!!いいな!!」
「「「「「おおう!!」」」」」
赤木の言葉に、全員が気合いの入った返事をすると、安西がやって来た。
「先生」
「きのうはいい試合をしました。がんばれば、いつかきっといい思いができますよ。
君達は強くなる…」
「「「「「…………!!」」」」」
安西にそう言われると、全員の顔が明るくなった。
「「「「はい!!」」」」」
「よおおーし。がんばるぞ!!」
「絶対県を制すぞ!!」
「うおおおっ!!」
安西のこの一言で、部員達は、ますますやる気になった。
「(よしっ!!私もマネージャーとして、みんなが全国制覇できるようにがんばんなきゃ!!)」
やる気になったのは、選手だけでなく、魅真もで、魅真はよりいっそう気合いを入れた。
そして、次の日の放課後……。
校舎裏で、ある一人の男が、地面にすわって、くつにひもを通していた。ねじれたところは指でつまんでのばし、丁寧に…。
その男は、後頭部や側頭部をそり、天然なのかあてているのかはわからないが、くせのついた髪の毛をもち、小さな緑色の石のピアスをつけていた。
「宮城!!」
「ん…」
くつにひもを通していると、突然名前を呼ばれた男…宮城は、くつに向けていた顔をあげて、声がした方へ顔を向けた。
「退院したんなら、オレに教えてくれてもいいだろう?ああ?宮城よ?」
彼の名前を呼んだのは、この湘北高校の番長の堀田だった。
堀田は子分を三人従えて、宮城を見下ろしていた。
「堀田…………」
彼らの姿を目にすると、宮城は静かに堀田の名前を呼んだ。
一方その頃、1年10組の教室では……。
「流川っ!!流川ってば!!」
もう放課後だというのに、まだ机につっぷして寝ている流川を、魅真が起こしていた。
「流川!!るーーかーーわーーーっ!!!!」
大きめの声で呼んでみるも、流川はピクリとも動かなかった。
そんな流川を見た魅真は、大きく息を吸いこむと、流川の耳に顔を近づけた。
「こらあっ!!流川楓っ!!」
流川の耳に顔を近づけると、大きな声で流川の名前を叫んだ。
すると流川は目がさめ、上半身を起こした。
「やっと起きた」
「んだよ?」
「もう授業終わったわよ。放課後よ。部活の時間!」
魅真が要点のみを矢継ぎ早に言うと、流川はまだぼんやりとした目で、頭をガシガシとかいた後、のそのそと席を立ち上がり、教室を出ようとした。
「ちょっとちょっと!カバン忘れてる!」
けど、カバンを持たず、手ぶらで教室を出ようとしていたので、魅真は流川の机にかけられていたカバンを手にとり、流川に渡すために、カバンを持ってる方の手を、流川に向けてのばした。
「あ………」
カバンを忘れてるというのに、流川本人はあまり気にしていなさそうだった。
「もう~~、しっかりしなさいよ。バスケうまいだけが取り柄なのに、カバン忘れてどうすんのよ」
「だけってなんだよ?」
「だけでしょうよ」
流川は、授業中はいつも寝てばかりで、勉強できないのも知っているので、鋭いツッコミを入れると、事実だけに、流川は何も言い返せなかった。
このやりとりが終わると、魅真は流川と教室を出て、部室に行こうとした。
「あの………真田…さん……」
「え?」
教室を出ると後ろから声をかけられたので、魅真だけでなく、流川も一緒に後ろへふり返る。
そこには、魅真より頭1つ分ほど背の高い男子生徒が、何やら緊張した表情で立っていた。
「何か用ですか?」
「は、はい!あの………真田さんにお話があるので、来ていただけませんか?お時間とらせませんので……」
ここでは話せないことらしく、本当は流川と一緒に部室に行こうと思っていたが、仕方なしに流川と分かれて、男子生徒について行った。
同じ頃、昇降口付近では……。
「えっ。リョータが学校来てる!?」
彩子は友人と歩いており、友人からその話を聞くと驚いていた。
「うそ。来てなかったわよ。あたし同じクラスだもの。まだ休みよ?」
「でも、タイ子がさっき見たって。部活だけしに来たんじゃないの。宮城君のことだから」
「……………」
友人にそう言われると、彩子は目を上に向けて考えごとをした。
すると、ちょうどそこへ、花道が鼻歌を歌いながら、彩子の後ろからやって来た。
「おーーーおーーーおーーれはーーてーーんさーーいてんーーさーーいてんさあーーーいバスケットマーーン桜木~~~~♪」
「なによ、その歌は」
「おおっ!!アヤコさん」
彩子のもとへ歩いてきたが、自分に酔った歌い方をしていたからか、花道は彩子の存在に気づいておらず、彩子の目の前に来た時に、彩子に白けた目で話しかけられて、ようやく存在に気づいたのだった。
「ハッハッハッ。イヤイヤ、今日はハルコさん見に来ないかな」
「あの子もそんなヒマじゃないわよ」
少しはずかしくなった花道は、あわてて話題を変える。
「(そーーか…。退院したのか、あいつ…)」
その話題に答えると、彩子は先程友人が言っていたことを思い出し、その後に、花道の顔を見上げた。
「(これでまた、バスケ部のスーパー問題児が、一人増えるわね………)」
彩子が顔を見上げて花道を見たのは、先程リョータと言っていた男子生徒のことを考えていたからだった。
場所は戻り、校舎裏の宮城は、横目で堀田を無言で見ると、その場を立ち上がり、堀田達と向かいあった。
「やめて下さいよ…。退院したばっかりなんだから」
「ハハハ!!病院で、心を入れかえたか!?宮城!!お前らしくもねーセリフだな。ビビッてんのか!?」
「オレなんかより、ずっと生意気なのが入ってるみてーじゃないすか、1年に。4人組のあっちやれば…」
「ハハハハ!!」
「敬語も習ってきたのか!?最近の病院はいろいろしてくれるな!!ハッハッ。心配すんな。あいつらは、いずれやってやる!!ゴマカすんじゃねーよ。まずはお前だよ、宮城!!」
「いずれね…」
堀田の子分の一人である角刈りの男が言うと、宮城はぽつりとつぶやく。
「ジツは相手にされてないとか?」
そして、堀田の前まで来ると、挑発的に言い放つ。
「あんたより、あの水戸って奴が、上って気がしないでもないぜ。堀田君」
さっきまでは、やめて下さいよと言っていたのに、相手を挑発する宮城。
「………!!」
「おっ」
あっさりと挑発にのった堀田は、怒りを露わにして宮城に殴りかかるが、宮城は堀田の拳を、いとも簡単によけた。
その時、堀田の腕をつかんで、止める者が現れた。
「三井君…」
後ろから現れたのは、堀田がひきつれてきたのとは別の男…。
「元気そーじゃねーか、宮城。安心したぜ」
肩に少しかかるくらいの長い髪を真ん中でわけた、マスクをした長身の男だった。
同じ頃……。校舎裏の、宮城達がいる場所とは別のところでは…。
「お話ってなんですか?」
そこには魅真と、先程魅真に声をかけた男子生徒がおり、魅真は自分に背を向けている彼に、用件を聞きだしていた。
問われると、彼は顔を赤くして、未だに緊張した顔で、魅真の方へふり向いた。
「あの……。オレ、2年1組の、坂田っていいます」
「坂田先輩……ですか…」
「はい!あの……オレ………真田さんを初めて見た時から、真田さんのこといいなって思ってて……。それで、あの………」
坂田と名乗った男子生徒は、緊張しながらも自分の思いをつむいでいき、最後にゴクリとのどを鳴らす。
「オレと………付き合ってください!!」
そして、やや大きめの声で告白をした。
「ごめんなさい」
しかし、魅真の口から出た答えはノーで、坂田はショックをうける。
「えっ…なんで!?そんな間髪入れず……」
「だって私、先輩のこと知りませんもん」
坂田が理由を問うと、魅真はあっさりとその理由を答えた。
「な、なら…友達からでもいいです。あの…それで……!!」
「ごめんなさい」
坂田は必死に、懇願するように頼みこむが、それでも魅真の答えはノーだったので、坂田は更にショックをうけた。
「な、なぜ!?」
「だって…私には、好きな人がいますから」
断った理由を聞かされると、坂田は目の前が真っ白になる。
「そ………そうですか……。じゃあ、オレはこれで……」
好きな人がいては、自分が立ち入る隙などないので、坂田はショックのあまり、ふらふらしながら、もと来た道を歩いていく。
魅真は坂田の姿が小さくなると、軽くため息をついた。
「なーにい?告白!?モテるわねー、アンタ」
そこへ、後ろからハイテンションで、魅真に話しかける者がいた。
「彩子先輩…。それに花道…」
それは彩子だった。
彩子の隣には花道もいて、花道はそうでもないが、彩子はニヤニヤと笑っていた。
二人が来ると、もう用も終わったので、一緒に部室に行こうと、魅真は花道の隣にならんで、二人と一緒に歩きだした。
「ひょっとして、見てました…?」
「そりゃもう、バッチリ!!」
「そうですか…」
「それより今の、坂田君じゃない」
「えっ…。知ってるんですか?」
「もちろん!同じクラスだしね」
「そうなんですか」
「坂田君て、サッカー部のエースなのよ。しかも女子の間じゃ、かっこいいって評判の!」
「はあ……」
これだけ聞けば、ミーハーな女子なら食いついたかもしれないが、魅真は気のない返事をするだけだった。
「でも私、あの人とは初めて会いましたし、まったくカケラも興味ありませんし」
「はっきり言うわね、アンタも。でも、せめて友達にでも、なってあげたらよかったんじゃない?」
「初めて会ったばかりなのに、どう友達になれと?第一、あわよくば彼氏になろうって下心が丸見えじゃないですか。さっきも言いましたけど、私はあの人には、カケラも興味ないので、あの人を好きになるなんてことは、絶対に、確実に、一生ありえませんから、期待させるだけ酷というものです」
「い…意外と歯に衣着せないわね…」
「自分にうそをついて、曖昧な返事をして、相手を受け入れるだけが、優しさじゃありませんよ、彩子先輩」
確かに、一見すると、毒舌でひどい人間ともとれるが、結構ちゃんとした考えをもち、見方を変えれば誠実とも言えるので、彩子は目を丸くした。
「それもこれも、好きな人がいるから?」
今まで饒舌に話していたが、核心をつかれるとドキッとなり、口をとざす。
「で、誰なの?アンタの好きな人って!」
彩子はニヤニヤと笑いながら、興味津々で聞いてくる。
「秘密です…」
けど魅真は、彩子の問いに答えることはしなかった。
場所は戻り、宮城のいるところでは……。
「なんだ。あんたも、退院してたのか。三井サン」
「元気そーじゃねーか、宮城。これで安心だ」
宮城は、突然目の前に現れた長髪の男…三井を睨み、三井はつけているマスクをとった。
「安心して殴れるな」
マスクをとり、ニヤッと笑う三井の口には、上の前歯がなかった。
同じ頃、宮城がいる場所からほど近いところでは、魅真、花道、彩子の三人が歩いていた。
角をまがり、彩子が何気なく校舎のくぼんでいる場所に目を向けると、そこには宮城がいた。
「あっ!!」
「ぬ?」
「え?」
宮城を目にすると、彩子はハッとなり、突然声をあげた。
魅真と花道は、一体どうしたのかと、彩子を見た。
そして宮城は、声がした方へ顔を向け、彩子の姿をとらえると、目を大きく見開いた。
「アヤちゃん!!!!なに、そいつはあっ!!?」
目を大きく開くと、急に滝のような涙を流したので、それを見た三井達はぎょっとした。
「オレのいない間にそんな男と!?なぜ!?オレにはふりむいてくれないくせに!!!」
「?」
いきなり目の前に現れた宮城がなげいて涙を流すと、魅真は何故宮城がこの言動をとったのか瞬時に理解したが、花道はわかっておらず、彩子本人はうざったそうにしていた。
「てめえっ!!!」
「ぐおっ!!?」
宮城は泣きながら、一気に間合いをつめると、花道の左頬を殴りとばした。
「!!!」
それを見た魅真は、いきなり花道が殴られたので、大きく目を見開き、彩子は焦っていた。
彼の名前は、宮城リョータ。湘北バスケ部の、入院してたというもう一人の2年生で、もう一人の超問題児。そして、彩子にホレていた。
「リョータ!!」
「花道!!」
「「「…………!!」」」」
宮城が花道を殴りとばすと、彩子は宮城の名前を、魅真は花道の名前を叫び、三井達は突然すぎるこの展開に、呆然としており、殴られた花道は地面に倒れ、尻もちをついた。
「(ちくしょう)」
花道を、彩子の彼氏だと思いこんだ宮城は、花道を殴ると、荒い息をしながら涙ぐんだ。
「おお…。あの、デカい桜木をふっとばしたぞ…」
宮城が、自分よりも背が高く体も大きな花道を殴りとばしたので、堀田の子分達は感心していた。
「な………なにをする!!」
いきなり、なんのいわれもなく殴られたので、花道はわけがわからず、殴られたところをおさえた。
「コラ宮城、相手を間違えんなよ…」
そこへ三井が割って入り、宮城に声をかける。
「ちょっとリョータ!!なにカンチガイしてんのよ!!コラッ、ちょっと…」
彩子も宮城を止めるために声をかけるが、宮城は怒りのあまり頭に血がのぼっており、二人の言ってることなど聞いておらず、その場を跳躍する。
「おおっ!?」
跳躍して、花道に向かってきた宮城は、勢いのままに、今度は先程殴ったところを蹴りとばした。
「ぐおおっ!!」
花道を蹴りとばすと、宮城は地面に着地し、蹴りとばされた花道は、後ろの植木の中に、仰向けに倒れた。
「花道っ!!」
花道が宮城に蹴りとばされると、魅真は心配そうに、花道の方へと駆け寄っていく。
そして花壇の前まで来て、花道が倒れこんだところを見ると、宮城に顔を向けて、キッと睨んだ。
「ちょっとあなた!!」
「あ?」
宮城を睨むと、大きめの声で、宮城に声をかける。
名前ではなく二人称だったが、魅真の顔が自分の方に向いていたので、自分に言ってるのだろうと思った宮城は、うなるような声で返事をした。
「いきなりなにするのよっ!!ひどいじゃないのっ!!花道、なにもしてないのに!!」
見た目大人しそうな魅真が、急に声を荒くして抗議してきたので、宮城は驚き、声が出なかった。
「あやまりなさいっ」
「は?」
「あ・や・ま・り・な・さ・いっ!!」
「な、なんだてめえ…」
ややキツめの口調でせまってくる魅真に、宮城は妙な威圧感を感じ、思わずたじろいだ。
「コラ宮城…」
魅真が宮城と話していると、再び三井が宮城に話しかける。しかも、どこか苛立った様子だった。
「お前、相手を間違えてんじゃねーか」
「!」
三井が宮城の腕をつかむと、宮城は魅真から顔をそらして、後ろの三井がいる方へふり向く。
「もういいじゃないすか…。あんたらとは痛み分けってことで…」
宮城は魅真に話しかけられていたが、途中で三井に話しかけられたために、魅真から三井に顔と意識を向けたので、魅真はムッとした。
「ちょっと、長髪のあなた!!」
「あ!?」
そして、今度は三井に、大きめの声で話しかける。
三井もまた、自分の方に顔が向いていたのと、身体的特徴を言われたのとで、二人称だが、魅真が自分のことを言ってるのだとわかった三井は、魅真を横目で見て、うなるような声で返事をした。
「今は私がこの人と話してるんだから。ジャマしないで!!ひっこんでなさいよ!!」
「ああっ?」
宮城に対してだけでなく、三井に対しても、強気な態度で接する魅真。
自分に抗議をする魅真に、三井は顔を向け、気にいらなさそうに睨みつけた。
「!!」
だが、魅真の顔を正面から見た途端に、三井は固まって、大きく目を見開き、魅真もまた、三井の顔を見ると、目を大きく見開いた。
三井が何か言ってくるとかまえていた魅真は、三井がだまりこんで何も言わないので、疑問に思った。
その時、植木の中から花道が姿を現し、鋭い目で宮城を睨みつけた。
「ん…。なんだ!?」
花道の存在にいち早く気づいた三井が顔を向けると、魅真もつられて顔を向けた。
そこには花道が立っており、どこからどう見ても怒り狂っているので、これはマズいと思った魅真は、あわてて横に逃げた。
そうこうしている間に、花道はその場を跳躍したので、三井と角刈りの男はぎょっとした。
「ん?」
「「!!」」
だが、唯一宮城だけが気づいていなかった。
跳躍した花道は、さっきの仕返しとばかりに、宮城にとび蹴りをくらわせた。
「うおっ!!」
花道が起き上がったことに気づいていなかった宮城は、その蹴りをくらってしまい、三井を巻き添えにして倒れた。
三井は気づいていたのに対処できずに、宮城が自分に覆いかぶさるという形で巻きこまれてしまい、バイクの上に倒れ、宮城の下敷きになった。
「あーーーーー。オレのバイクがっ!!」
角刈りの男は、巻きこまれることはまぬがれたものの、自分のバイクが二人の下敷きになったので、ショックをうけた。
「ふぬーーーーっ!!!」
「花道っ!!」
「やめなさい、桜木花道!!」
こうなった花道は止めることができないので、魅真と、近くにいる彩子も止めようと声をかけるが、花道は止まる気配がなかった。
「どっ、どうしたの。アヤコさん!」
「ハルコちゃん!」
そこへ、タイミングよく晴子がやって来て、彩子のもとに走り寄ってくると、事情を聞いた。
「この……」
一方で、蹴られた宮城は、体を起こすと花道がいる方に顔を向け、睨みつけた。
「赤頭っ!!」
「ぷっ」
蹴られた仕返しとばかりに、殴ろうと腕を後ろにひいた時、ひじが三井の顔面に当たってしまう。
三井は鼻血が出た上に、下の前歯まで折れてしまった。
「三井君!!」
「あっ?」
「三井君!」
ひじがあたったので、宮城は花道を殴るのをやめて三井の方にふりむき、堀田の子分達は、心配そうに三井の名前を呼んだ。
「(三井!?)」
三井という名前を聞くと、魅真は過剰に反応を示し、三井を見た。
「!!」
花道はというと、宮城が三井の方に顔を向けた隙に、宮城の頭に手をかけて、強制的に自分の方に顔を向けさせる。
「ぐおっ!!」
そして、得意の頭突きをくらわせた。
「くあ…」
かなりの威力がある花道の頭突きに、洋平達のように地面に倒れるまではいかないが、ひざをつき、頭突きされたところをおさえた。
「コラァ桜木、引っこん!!」
宮城がやられると、花道の後ろから、堀田が花道に怒鳴るが、花道は堀田の顔面にチョップをかまして、強制的にだまらせる。
「徳ちゃん!」
「徳ちゃん!」
堀田は花道のチョップ一つで気絶して倒れたので、子分達が心配そうに名前を呼んだ。
「ふぬーーーーーっ」
花道は、今度は気絶した堀田を、頭上より高く持ちあげる。
「フン」
「おおっ」
頭上より高くに持ちあげると、堀田を宮城に向けて投げた。
「くうか!」
宮城は堀田を、右足をあげてよける。
「ちっ!!」
「この野郎…!!」
攻撃(堀田)をよけられたことで、花道は舌打ちをし、堀田を投げてきたことで、宮城は更に苛立った。
また、今にも互いを攻撃しそうな二人。
「「やめろーーーーーっ!!!」」
だがその時、彩子と晴子が、声をはりあげて二人を止めた。
「「ハイ❤」」
好きな相手なので、二人は顔を赤くし、鼻の下をのばし、手をあげて争いをやめた。
「「ん?」」
今の言動が自分と同じだったので、花道と宮城は顔を見合わせた。
「まったく…」
バカみたいに争いをする二人に彩子はあきれ、晴子は現状がよくわかっていなかった。
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