#13 決着
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「くそう…。くそう…」
フリースローレーンに立っている花道は、先程自分をぬき、赤木の上からダンクをした時の仙道を思い出して、悔しそうに、ぶつぶつとつぶやいていた。
「くそう。センドー!!」
簡単にやられたので、悔しさのあまり、眉間にしわをよせ、鋭い目を向けていた。
フリースローラインでは、仙道は2回ボールをつくと、シュートを打ち、シュートはあたりまえのように決まった。
#13 決着
1分もしないうちに、あっさりと逆転したので、陵南は仙道を称賛し、館内は仙道コールで盛り上がり、逆に湘北は焦りを見せた。
「すげー奴だ、あの7番は…。花道に止められるわけがない!!なんで花道が、あいつをマークしてんだ…!!」
「うーーん。今出てる5人の中では、仙道に劣らないスピードをもってる、唯一の男だからね……。身長も同じくらいだし。…でも…もう、ゴマカシは通じないわね、これじゃあ…」
「スピードと身長だけじゃ、バスケはできないから。花道はドシロートだし、実力も経験も、仙道さんが圧倒的に上だからね」
「あーーあ」
「……………」
「これがあたりまえだ…」
彩子が高宮の質問に答えると、高宮は肩をすくめる。
「でも…こんなとこで終わる奴じゃないけど」
実力の差はあきらかで、魅真もそれはわかってるが、それでも魅真はニッと笑った。
「仙道はオレがマークする」
「ぬ!?」
フリースローが終わると、赤木は仙道をマークするために走り出す。
「ちょちょちょ、ちょっと待てい、ゴリ!!今のはちょっとユダンしただけで、次はゼッタイに…」
けど、仙道を倒したい花道は、あわてて赤木の前にまわる。
「お前をせめてるんじゃない!!お前には、はじめから荷が重すぎるんだ!!本気になった仙道を止められる男は、県内の強豪にすら、1人もいないかもしれない!!お前が今抜かれたのはそういう男なんだ!!お前の恥じゃない!!」
「おいっ!!何やってんだ、赤木!!桜木!!はやくこい!!」
2人が参戦してないため、負担が重くなってるので、木暮はボールをもち、越野と池上を相手にしながら2人に声をかける。
「仙道はオレがマークする」
木暮に声をかけられると、赤木は再び走り出すが、そこを花道に、肩をつかんで止められる。
ふりむいた先にいる花道は、それはダメだと言うように、首を横にふった。
「まだわからんのか!!試合中だ、いくぞ!!」
無言でダダをこねる花道を怒鳴り、手をどかそうとするが、花道の手は離れなかった。
「…………」
「む………」
それでも赤木は、なんとか花道の手をふりほどいた。
「魅真の言う通り、あんなになすすべなく抜かれて、そのままにはできねーさ…。負けず嫌いなんだ、あいつは。キョクタンに!」
「センドーは、オレが倒す!」
洋平が言ったように、負けず嫌いな花道は、闘志を燃やしていた。
花道の前では、木暮がもっていたボールを仙道が奪い、花道と赤木の間を通り抜けていった。
「コラァ。ちょっと待てい、センドー!!!」
また抜かれたので、花道は更に闘志を燃やして仙道を追いかけていき、あっという間に仙道に追いついた。
しかし仙道は、フリースローラインの上で止まると、シュートを決めた。
「く…くそ…。おのれ…」
「…………」
追いついたことは追いついたが、シュートを決められたので、ボールをとると、悔しそうな顔で仙道を見た。
そんな花道を見て、仙道は笑っていた。
ボールを安田にパスして戻ると、赤木がジーっと見ていることに気づいた。
「ぬ…ゴリ…」
「……………」
「イヤ…今のは…」
また失敗を責められるかと思った花道は、焦って言い訳をしようとする。
「よく追いついた」
「………!!」
しかし、逆にほめられたので、花道は面くらった。
今度はオフェンスとなった湘北は、赤木がシュートを決める。
「さあ、ディフェンスだ!!1本止めるぞ!!」
「おうよ!!来い、センドー!!」
気合いを入れる花道だが、仙道にあっさりと抜かれた。
そして、また抜かれ、更に花道の前でパスをもらい、更にはシュートを決められた。
「だめだ。スゴすぎる、仙道は…」
「あの流川ですら止められなかったんだ…。初心者の桜木にはムリだよ」
「で…でも、桜木君いいディフェンスしてるよね!!あの仙道さんを相手に…。この前バスケを始めたばかりとは思えないくらい、いいディフェンスしてるよね!!」
「うん、ハルコちゃん。それにあの子、この試合の中でもどんどん上達してるわよ!!」
「!!」
「その証拠に…」
彩子がそう言った時、花道は、植草が仙道にパスしたボールをカットした。
「あっ!!」
更に、コートの外に出ようとしているボールをとろうと、跳躍した。
「キャーーーー。桜木君桜木君」
その花道の姿に晴子は興奮するが、花道はボールをとることはできず、壁に頭がぶつかってしまう。
「くそう!!」
「!!」
ボールはカットしたのに、とることができなかったので、花道は悔しそうに、仙道の方へふり返った。
「ホラ、その証拠に…今までずっと涼しい顔してた仙道の――息が弾んでる…!!ほかの9人と同じように!!」
「あ…!!」
「先輩…真田…」
「「?」」
その時、魅真の隣にすわっていた流川が、魅真と彩子に声をかける。
「そろそろじゃねえ?」
「そろそろ?」
「ラスト2分だろ」
声をかけたのは、休憩した時に、安西に休憩は1分だけと言われたからだった。
流川は肩にかけていたタオルをとると、コートへと歩いていく。
「メンバーチェンジ、湘北!!」
笛が鳴り、交替したのは潮崎だった。
流川が出ると陵南はざわつき、安西は椅子から立ち上がる。
「流川君、桜木君」
立ち上がると、2人の名前を呼びながら、手招きをした。
「ぬ!?」
「!!」
安西に呼ばれると、2人は安西のもとへ行き、周りは、今まで動かなかった安西が動いたので、それだけでざわついた。
「なにーーーっ!?ちょっと待て、オヤジ!!なんだそりゃ!!それはいかん!!」
「イヤダ」
「ほっほっ」
2人は安西に指示されたことに対し、反対の意を示すが、安西は笑うだけで、花道と流川は横目でお互いを見ると、火花を散らした。
「オヤジ!さっきのオレの惜しいプレイを見ただろ!!オレの…」
「ゼンゼン惜しくねー、あんなの」
花道が抗議し、そのことに対して流川がつっこんでいると、審判が笛を鳴らしながら、安西のもとへやってきた。
「指示は、ちゃんとタイムアウトをとってして下さい。試合進行の妨げに…」
「もう終わったよ」
「ちょ…ちょっと、待てい!!オヤジ…。コラッ。オヤ…」
まだ納得していない花道は、安西に抗議をしようとするも、試合が始まってしまったので、不可能となった。
陵南ボールから再開されると、ボールは池上から越野に、越野から仙道に渡り、仙道はボールをもつと、ゴールの方へ体を向ける。
すると目の前に、花道と流川の2人が立ちはだかる。先程安西が指示をしたのはこれだった。
「オレの足をひっぱんじゃねーぞルカワ!!」
「よそ見してんじゃねえ、初心者!!」
仲が悪い2人は、当然いがみあう。
「………………」
けど仙道は、2人にマークされたというのに、うれしそうに笑った。
「おもしれえっ!!」
「「!!」」
そして、笑顔を浮かべると、仙道は二人に挑んでいく。
花道は仙道がもつボールをとろうとするが、仙道はドリブルをうまく使って、ボールを反対の手にもちかえた。
抜かれると思った花道だったが、仙道が抜こうとしたところを流川が止めたので、抜かれることはなく、花道はあわてて仙道の前に行く。
「とれもしねーのに、むやみにとびつくな、どあほう!!」
「ああ!?」
「よそ見すんな。相手を見てろ!!腰を落とせ!!足を動かせ!!相手の目を見ろ!!」
「珍しくよくしゃべるじゃねーか、ルカワ!!ハッハッ。この天才の力を借りたくなったか!?」
「負けるよりはましだ」
流川はそう言うと、ディフェンスに専念し、花道もまたディフェンスに専念した。
「いっけえ花道!!流川!!」
「ガンバレ流川!!桜木!!」
「「「ディフェンスディフェンス」」」
「ディフェンス!!ディフェンス!!」
「いいぞいいぞ!!ナイスディフェンス!!」
このすごいディフェンスに、湘北も、自然と応援に力が入った。
このままではらちがあかないので、魚住は越野にボールをもらいに行くように指示を出し、指示された越野は、ボールをもらうために仙道の後ろに行く。
声をかけられた仙道は、おとしていた腰をのばして、軽く息を吐いた。
そして、そんな仙道を見た花道も、つられておとしていた腰をのばして、軽く息を吐く。
その瞬間、仙道は二人を抜いてゴールまで走っていく。
花道と流川は仙道を追いかけ、ゴール下にいた赤木が仙道を阻むが、仙道はバウンズパスで魚住にボールを渡し、ボールをもらった魚住は、シュートを決めた。
「よォーーし!!」
陵南に点が入ったので、仙道はガッツポーズをする。
「くそ!!」
「気を抜きやがって、どあほうが」
「ぬ!!なんだと!!」
花道の油断でこうなったので、流川は舌打ちをすると、花道はいつものように噛みついた。
「どう考えてもこの作戦は失敗だ。こんなどあほうとコンビとは」
「うるせールカワ!!てめーこそ、センドーにやられて、さっきまでバテバテで泣いてたくせに、えらそーに…」
花道は悔しさと苛立ちで、やや誇張して噛みつく。
「さあ来い、1年坊」
「「!!」」
そこへ、2人の後ろに仙道がやって来て、挑発すると、花道と流川は闘志を燃やして、後ろへふり返りながら、仙道を鋭い目で睨みつけた。
「上等だ、センドーてめえ!!!オレが倒すつったら倒~~す!!!」
「上等だ」
「フッ。来い」
すごい迫力で立ちむかってく花道と流川だが、そんな二人を前にしても、仙道は笑っていた。
しかし、仙道がマークしたのは流川だった。そのことに文句を言う花道だが、一人で二人マークするのはムリなので、そのことを伝える。
そこへ、花道の後ろから、池上が花道をバカにした態度でマークをすると、花道は池上の腹にチョップをかました。
池上は審判に訴えるも、その場面を見ていなかった審判は何もわからず、花道は、仙道が自分をバスケット始めたばかりだと思ってナメてると思っていた。
その間にボールは赤木の手に渡り、赤木はシュートを決めた。
「さあ、この1本だ!!ディフェンス絶対止めるぞ!!」
「(止めてやる!!)」
花道は、今度こそ仙道を止めると、闘志を燃やす。
しかし、時間はもう、あと1分とちょっとになっていた。
「あと1分ちょっと…。4点差…。どうですか、先生…」
「うむ。この1本…止めれば、まだ可能性ありですね」
「止めれば…」
コートでは、ボールを運んでいる植草を安田が止めようとしているが、あまり止められそうな雰囲気ではなかった。
「じゃあ…もしここで、1本決められたら…?」
植草が運んでいたボールは、池上に渡されており、木暮が止めようとしているが、木暮も止めることができる雰囲気はなかった。
「とどめだな」
「……!!」
「あの二人が…流川と桜木花道が、仙道に対して、どこまで頑張れるかにかかってるわ!!こういう勝負のポイントになる場面では、陵南は必ず…」
「そう。仙道君です」
安西がそう言った時、安西の言ったことが真実であるように、ボールは仙道の手に渡り、仙道の手にボールが渡ると、花道と流川の目の色が変わった。
花道は止めようとしていたが、そうこうしているうちに、残りは1分になってしまった。
「残り1分!!」
「ぐああっ、こりゃもうダメだ。時間がねーーっ!!」
「大丈夫!」
「でも4点差だぜ、アネゴ!」
「だれがアネゴよ!」
「ええと。4点差で、残り1分てことは、ええと…。30秒でシュート打たなきゃいけないから、ええと…」
「まだ望みはある!!とにかく、この1本止めれば、まだ十分追いつける数字よ!!」
「おおお。そうこういってるうちに、残り50秒!!」
「なんとかしろーーーっ!!」
「止めてくれえっ、流川!!桜木ーっ!!」
「花道!!流川!!ファイトォ!!」
もう時間がないので、湘北側はなんとかしてほしいと思っていたが、願いもむなしく、仙道はあっさりと花道と流川を抜いた。
「ああっ、抜かれた!!!」
二人を抜いた仙道は、そのままシュートをしようとした。
当然赤木と流川は止めようと、仙道の前でジャンプをするが、あの少しのところで届かなかった。
だがその時、仙道の後ろでジャンプをした花道が、仙道がシュートしようとしたボールをブロックした。
このことに、仙道はもとより、流川も赤木も魚住も驚いた。
花道は着地すると、後ろによろけて何度かステップをふむが、なんとかふんばると、仙道に続いてボールを追いかけた。
「おおおお。信じられん!!あの、初心者花道が、天才を止めた!!」
「あの単純王が!!」
「あの万年フラれ男が!!」
「予想外だわ…」
「スゴイスゴイスゴイスゴーーーイ。桜木君!!!」
天才といわれている仙道を、初心者の花道が止めたので、陵南だけでなく、魅真達も驚いていたが、唯一晴子だけは称賛していた。
しかも、それだけでなく、花道はボールまでとった。
「ハッハッハッ。見たか、天才の実力!!オレの勝ちだ、センドー!!」
「甘い!!」
「!!」
ボールをとると、ドリブルをしてゴールへとむかっていくが、あっさりと仙道にボールをカットされた。
「ぬおっ!!」
「ドリブルはまだまだだな!」
カットはされたが、なんとかボールをとった。
しかし、とられるのは時間の問題で、花道自信もそれは感じていたが、なんとかとられまいと必死にドリブルをしていた。
その時、後ろにパスするよう声がしたので、花道はパスをしたが、パスをした後に相手の顔を見ると、しまった…という顔をした。
何故なら、それは流川で、流川はパスをもらうと、その場でジャンプをして、シュートを決めた。
しかも3Pなので、1点差にまで縮まった。
「よし!!ナイッシューー流川!!」
一気に1点差になったので、魅真は流川を称賛する。
「「「「「ル・カ・ワ!!ル・カ・ワ!!ル・カ・ワ!!ル・カ・ワ!!」」」」」
魅真の後ろでは、洋平達がいつもの小道具で盛り上がっていた。
晴子も自ら参加しており、木暮の時は流川に冷めた目で見られてはずかしがっていたが、今度は好きな流川のことなので、目がハートマークになり、頬を赤くしながら、紙ふぶきをまいていた。
「しまった。ルカワにパスするとは…このオレが…」
自分のチームに点が入ったのに、流川にパスしてしまったので、花道は悔しくて震えていた。
「「「「ナ~~~イスアシスト!ハーナミチ!ナ~~イスアシスト!!ハーナミチ!!」」」」
そこへ、火に油をそそぐように、洋平達は花道をはやしたてた。
「時間ないわよ!!あと40秒!!」
「ディフェンスがんばって!!」
陵南の攻撃となり、池上から植草にパスが出されるが、安田がカットした。
「白!!」
しかし、コートの外に出てしまったので、結局陵南ボールになってしまう。
「おしいおしい!!ナイスカット、安田さん!!」
「これを止めて入れば逆転だよな…」
「逆転だ!!1点差だもの」
「さっきの流川の3点がきいてるぜ」
「逆転…」
「陵南に…」
「勝てる…!!」
石井達の言う通り、先程の流川の3Pがきいているのか、全員なおのこと気合いが入っており、木暮が全員に声かけすると、花道から気合いの入った返事がした。
「あと30秒!!」
「ディフェンス1本!!」
「ディフェンス1本!!」
流川の3Pで、また湘北は勢いづいたが、陵南はあわてておらず、植草は冷静なままドリブルをすると、越野にパスをした。
「あと25秒!!」
「時間がない!!」
「止めてくれえっ!!」
「ディフェンス!!ディフェンス!!」
もう時間は30秒を切ったので、余計に焦りだした。
越野に渡ったボールは魚住に渡ったが、魚住は目の前に赤木が立ちはだかると、挑まずに、植草にパスした。
残りはもう15秒となり、植草は越野にパスをして、越野は再び植草にパスをするが、赤木にカットされた。
赤木がボールをとったのを見ると、流川は我先にと走りだし、あとに続いて仙道が、仙道のあとに続いて花道も走りだした。
赤木は流川にパスをするが、あっという間に仙道に追いつかれて、ボールをカットされてしまう。
それでも流川はあきらめず、ジャンプをして、ラインの外に出たボールをとると、誰か味方はいないかと、後ろへふり向いた。
ふり向くと湘北のユニフォームが見えたので、ふり向きざまにパスをするが、パスをした相手は花道だったので、流川は嫌そうな顔をした。
「ナーーーイスアシスト!!ルカワ!!」
流川がパスしたボールをとると、花道はダンクをしようとした。
それを見た、魅真と流川と洋平達と晴子と安西以外の人物は、ムチャはよせと思ったが、そんなことを知らない花道は、ダンクを決めようとした。
「桜木君!!」
だが、晴子に名前を呼ばれると、晴子の教えが閃いた花道は、ダンクではなく、レイアップシュートを打った。
シュートは決まり、花道は、ボールがネットをくぐったのを確かめた後に、得点ボードの方を見た。
点は入り、逆転したので、花道の顔は明るくなった。
「入った!!」
「花道!!!」
「やったあ!!ナイッシュ花道!!」
「いやったああーーーっ!!!」
「庶民シュート!!」
「逆転だああああっ!!!」
この奇跡の逆転劇に、湘北の誰もが喜んだ。
「ハッハッハッ!!!やはり天才!!!」
一発逆転のシュートを決めたので、花道はいつも以上に有頂天になり、まさかこんなことが起きると思わなかった田岡と彦一は、呆然としていた。
「勝利を呼ぶ男!!と呼びなさい!!」
「桜木!!」
調子にのって豪快に笑っていると、木暮と安田が駆け寄ってきた。
「フッ…。バカタレが」
赤木がそう言った瞬間、赤木の前にいる植草はパスをもらった。
「まだだっ!!」
そう……まだ試合は続いていた。
ボールをもらった植草は、仙道にパスをする。
目の前で、植草から仙道にボールが渡るシーンを見た赤木はハッとなったが、仙道と植草は、すでに走り出していた。
あわてて流川と花道が追いかけていき、仙道の後ろまで来た流川はボールを奪おうとするが、仙道は素早くボールを移動させて、植草にパスをする。
パスをもらった植草は、すぐに仙道にパスをすると、仙道はドリブルをして走っていき、そのままシュートをしようとした。
けど、そうはさせるかと、前から赤木が、後ろからは流川が、手をのばして止めようとした。
二人の腕は、ボールにかぶさるようにのびていたので、これではシュートが打てないかと思えるが、仙道は両手を一度下にさげると同時に、反対の左手にボールをもちかえて、隙間をぬうようにして、赤木の背後から、レイアップシュートを打った。
ボールはリングの回りをまわると、ネットをくぐり、ボールと床がぶつかる音が館内に響き、逆転につぐ逆転で、大歓声が起こった。
逆転されたが、それでも笛はまだ鳴っていないので、試合は続いていた。
赤木は誰かにパスをしようとするが、全員が陵南にきびしいマークをされ、自分自身も仙道にマークされているので、パスを出せずにいた。
花道が、赤木にパスするように叫ぶが、とうとう時間がきてしまった。
「タイムアップ!!」
時間がくると、笛が鳴り、試合終了の合図が、審判の口から言い渡された。
「おおーーっしゃあーっ!!!」
「勝ったあーーーっ!!!」
「ふぅーーーっ」
「仙道!!」
「やれやれ。胃が痛くなったわ」
陵南が勝ったので、陵南は大いに喜んでいた。
「ああ…」
「…………」
「負けた…」
しかし、負けた湘北は、当然だが沈んだ顔をしていた。
「も…もう終わり…?」
逆転につぐ逆転で、陵南が勝ったので、花道は呆然としていた。
「パス……」
「…………」
現実を受けいれることができないのか、花道は赤木にパスを求め、その姿を、花道の後ろから仙道がジッと見ていた。
「………… (桜木――)」
そして、仙道と同じように花道の姿を見ていた木暮と安田は、やるせない顔になり、流川は一人先に、センターラインの前まで歩いていく。
「整列だ…」
赤木は花道に整列をするように言いながら、ボールを審判に渡し、木暮は花道に、整列を促すように腕にふれる。
「ちょっと待て…」
けど、それでも納得できない花道は、後ろにある得点ボードを見た。
得点ボードは、陵南が87点で湘北は86点と表示されており、どこからどう見ても、陵南が勝っており、湘北は負けていた。
花道は確認した後、顔をもとの位置に戻すが、得点を確認しても、整列のために、センターラインの方まで歩いていくことはしなかった。
「……パス…」
得点ボードを見て確認したというのに、まだ納得できていない花道は、またパスを求めた。
「………!!」
「パス!」
整列するように言ったのに、それでもパスを求めていたので、歩いてる途中の赤木と木暮はふり返った。
「なんか、あと5秒あるらしいぞ、ジツは。パス!!」
顔を青くして、荒い息をする花道は、現実では負けたとわかっているが、それでも受け入れたくないといった雰囲気だった。
「桜木…!!」
「…………」
まるで、ダダをこねてる子供のような花道をどうしたらいいかわからず、木暮と安田は困っていた。
花道はボールをもらうため、ボールを持っている審判に顔を向けるが、花道に見られると、審判はぎくっとなる。
「パ…」
だがそこを、赤木が花道の首に腕をまわして止めた。
「終わりだ」
「…………!!」
「負けたんだ」
「……パス!」
赤木に現実を伝えられるも、そんな言葉は聞きたくないと言うように、花道は聞こえないふりをする。
「桜木……」
「くやしいがしかたない。負けたんだ…。オレ達は、負けたんだ」
負けて悔しいのは、花道だけではなかった。赤木や木暮、安田もそうだし、一足先に整列をしている流川も、何も言わないが、とても悔しそうな顔をしていた。
花道も、試合に負けたのも、試合が終わったのもわかっていた。
「プアアス!!」
「桜木!!」
それでも、現実を受け入れたくなくて、パスを求め、赤木の腕をふりほどいて走り出した。
だが、走り出したとたん、ころんで体育館シューズがぬげてしまった。
「ぬぬ…」
「あ…」
花道は体を起こし、後ろを見てみると、そこには、指の部分が、靴底と布の部分で破れて、真っ二つになった体育館シューズがころがっていた。
「お前はよくやった…。さあ、整列だ。桜木」
この赤木の言葉で花道は大人しくなり、整列をして、あいさつをすると、今日の試合は終わりとなった。
それから湘北は制服に着替えると、体育館の外に出た。
「ありがとうございました、田岡先生」
「赤木君」
外には陵南が見送りに出ており、田岡は赤木に手をのばした。
「たった1年で、見違えるようなチームになったな。強くなった」
田岡が手をのばしたのは、あくしゅをするためで、赤木はそれに応じた。
「それから…」
「……………」
「いや、インターハイ予選で会おう」
「はい」
田岡は何か言いかけたが、途中でやめた。
「赤木」
田岡の話が終わると、今度は田岡の後ろから、魚住が赤木の前までやってきた。
「インターハイ予選ではオレが勝つ。おぼえとけよ」
名前を呼ぶと、宣戦布告をして、あくしゅを求めた。
「生意気な…」
赤木は軽く笑うと、あくしゅに応じる。
「おう…」
二人の隣では、仙道が前に歩いてきて、流川に声をかけて、流川の前まで来ると、あくしゅを求めた。
「…………」
しかし流川は、仙道を睨むように見た後、何も言わずに仙道のもとまで歩いてくると、あくしゅをせずに、手のひらを1回たたくだけだった。
「フッ…」
けど、仙道は気にすることなく、ニコッと笑った。
「桜木」
「ぬ」
流川に手をたたかれると、仙道は、今度は花道とあくしゅをするために、花道がいる方に体を向けて、手をさしだした。
「オレを倒すつもりなら…死ぬほど練習してこい!!」
そして、不敵な笑みを浮かべて、挑発をした。
「ぬ…センドー!!」
その言葉に腹が立つも、花道は仙道とあくしゅをした。
「そんじゃ、行きますか」
「安西先生、ありがとうございました」
田岡が礼を言いながら頭をさげると、湘北は陵南高校をあとにした。
田岡が赤木に言いかけたこと。それは、花道は鍛えればモノになるということだった。田岡がそのことを言うのをやめたのは、自分のチームの脅威になることを知っているからであった。
そして……。
「くそう…。だいたい、オヤジがオレを出すのが遅すぎんだよな。もっと早く出してりゃ、こんなことにはよ…」
「やめんか!!」
花道はまだ試合のことをひきずっており、安西の背後にまわって、八つ当たりをするように、安西のあごの脂肪を、下からたたいてゆらしていた。
「ほっほっほ。桜木君、あわてるでない」
花道の後ろから赤木が止めるが、安西はいつものように気にしていなかった。
「これからこれから」
そう言って、安西はまた笑った。
「いやーー。それにしても、今日は楽しかったな」
負けてしまったので、みんなうれしそうな顔をしていなかったが、唯一魅真だけはうれしそうにしていた。
「お前な!!試合は負けたんだぞ。それのどこが楽しいんだよ!?」
それを聞いた花道は、まっさきに魅真に噛みつく。
「確かに、試合には負けたから、それは悔しいけど…。でも、負けて学ぶこともあるわよ。それに私としては、久々に生のバスケの試合を見て、それだけでも楽しかったしね」
「そういやお前、すごい選手がいると、敵味方関係なく見惚れるんだったな」
「まあね」
「そうか、なるほどな」
「ん?」
「お前、もしかしなくても、今日の試合でのオレのプレイに見惚れたな?やっぱこの天才のプレイは、経験者をも魅了してしまうんだな。はっはっはっはっはっ!!」
「何言ってるの?そんなわけないじゃない。絶対にありえないし」
花道は自信満々で笑うが、魅真は花道が言ったことを全否定する。
「私が見惚れたのは、流川と仙道さん。間違っても、素人に毛すら生えてないアンタには、絶対に見惚れないから」
「ふぬっ!」
はっきりきっぱりと言われた上、その見惚れた選手というのが、よりによって、自分が大嫌いな流川と、自分を負かした仙道なので、花道は腹を立てた。
「でも、それは今のアンタでしょ。人生、1秒先だってどうなるかわからないんだから、この先練習をつんでいけば、化けるかもしれないじゃない」
「!」
「期待してるからさ」
「おう!」
魅真がそう言ってにこっと笑うと、花道もその顔に笑みを浮かべた。
こうして、陵南との練習試合は、湘北高校の敗北で幕を閉じた。
だが、こんなことで終わる花道ではなく、陵南を倒すため、仙道を倒すため、全国制覇をするために、明日からもまた、練習にはげむことを心に誓ったのである。
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