#12 天才仙道
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魚住が鼻血を出したので、レフェリータイムとなり、今は各校ミーティングをしていた。
「さあ、のこりは9分よ!!」
「点差は7点!!赤木が帰ってくるまで、なんとかくらいついていくんだ!!ディフェンスがんばるぞ!!これ以上はなされるな!!」
「「「おう!!」」」
#12 天才仙道
レフェリータイムが終わり、魚住のフリースローから始まるが、魚住はフリースローがヘタなため、2本ともはずし、まだ7点差だった。
しかし、リバウンドは陵南がおさえ、ボールは池上が持っていた。
「さあ、1本いこう魚住さん!!赤木の代わりは大したことない!!」
ボールは池上から越野に渡り、越野は花道を挑発することを言った。
「ああ!?なんだコラァ。てめーをマークしてやろーか、おお!?」
「桜木!!魚住だ!!」
今の越野の言葉に腹を立てた花道は、越野にとびかかるが、木暮はなんとか、花道を魚住の前に連れていった。
そんな花道を見た魚住は、自分がライバルと認めた赤木が、花道に負けるわけがないと疑っていた。
これは、試合再開前に彦一に聞いたことだが、とてもではないが信じられなかった。
一方、ボールは再び池上の手に渡ろうとしていたが、木暮ととりあって外に出てしまい、どちらのボールかわからなくなった。
「陵南ボール!!」
「よっしゃ!!」
ボールは陵南側のものとなったので、池上はホッとしていたが、木暮は納得がいかなそうな顔をしていた。
「池上ィ!!」
「!!」
しかし、陵南ボールとなったのに、突然田岡から怒鳴られたので、池上はびびって固まってしまい、冷や汗をかいた。
「ルーズボールは最後まで追わんか!!」
「は…はい!!」
「気をぬいてる奴はいつでもはずすぞ!!」
田岡が怒鳴ったのは、池上が、コートの外に出ていくボールを一応は追っていたが、途中でやめてしまったからだった。
「おまえらもよく覚えとけ!!ボールに対する執着心のない者は試合には使わんからな!!」
「「「はい!!」」」
「ボールに対する執着心か…。シュウチャク心と…」
「さあ、どんどん中にボールを入れろ!!魚住で勝負だ!!赤い頭は大したこたあない!!」
田岡から指示がいくと、越野は言われた通りに魚住にボールをパスするが、花道にカットされてしまったので、ボールは魚住の手に渡ることはなかった。
カットされたボールは、またコートの外に出そうになったので、越野は悔しそうな顔でボールを追った。
すると、横を見ると、すでに花道が追いついてきたので、越野はびっくりしたが、びっくりしながらもボールを追った。
「そうだ越野、あきらめずに追え…」
と言った時だった。
花道が、外に出て宙に浮いたボールを、ジャンプしてとろうとしていた。しかも、田岡に向かって跳んできたので、田岡はあわてて避けようとするが、あわや花道の下敷きになってしまった。
「監督!!」
「ま…またか…」
「大丈夫ですか、監督!!」
当然のことながら、田岡は怒りで震えていた。
「監督!!コレですね。ボールに対する執着心!!」
そして、他の者は田岡を心配していたが、彦一だけは、先程田岡が言ったことに納得をして、熱くなっていた。
「む…」
「くそ…」
花道は、田岡のことは気にしておらず、ボールはとれたものの、外に出てしまったので、悔しそうな顔で起き上がった。
「ナイスファイトだ、桜木!!惜しい惜しい!!」
「くそ…。もうちょいだったのに…。ジジイがジャマだった…」
けど、このプレイに、木暮は手をたたいて称賛をした。
「すごい花道!!」
「やるわ、あの子…!!」
木暮だけでなく、魅真と彩子も称賛しており、安西はにっこりと笑っていた。
「早くも、ひとつ勉強させてもろたで、桜木さん!!最後まであきらめずにボールを追う!!これですね、監督!!シュウチャク心!!」
「(うるせーな、くそ…) ま…まあな!!」
「それに、あの俊敏かつ、ダイナミックな動き…!!まるで獣や!!ゾクゾクしてきたで…!!」
「ケダモノ?」
称賛しているのは彦一も同じで、花道のプレイに興奮していた。
「フン。ひたむきさだけでバスケットができるか」
「スピードもありますよ、あいつ」
「む…。仙道」
魚住は花道に対して否定的だったが、仙道は花道の才能を認めていた。
一方、越野はいつの間に花道に追いつかれたのかわからず、そのことを疑問に思いながら、植草にボールをパスした。
「いけるぞ!!ここをがんばろう!!」
「よーーし。ハンズアップ!!」
「1本止めるぞ!!」
今の花道のプレイで火がついたのか、湘北側(流川以外)は気合いが入った。
「おもしろい………!!
仙道!!池上!!植草!!越野!!どんどんオレにボールをまわせ!!ガンガン入れてやる!!!
こいつの上からな!!」
「ぬ…」
対して魚住は、花道を指さして挑発をした。
「なんだとコラァ、ボス猿!!!上等だ!!」
「桜木!!ケンカじゃないぞ!!」
挑発されると、短気な花道はケンカを売り、今にも噛みつきそうだった。
「フン…。ゴリにくらべりゃ、てめーくらいどってこたねえ。来いや!!」
「――――!!」
しかも、挑発に挑発で返すほどである。
「小僧…!!」
「(おーーっ!!)」
「(このへんはさすがだなぁ、花道の奴…)」
このやりとりに、魅真と仙道は感心していた。
2人のやりとりが終わると、試合が再開された。
陵南側がパスをまわし、ドリブルをして、ボールをはこんでいった。
そして、ボールがゴール下にいる魚住にまわってくると、魚住はシュートを打とうとした。
「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフン」
だが花道は、赤木との勝負の時に見せた、あの壁のようなディフェンスで、魚住がシュートをするのを阻止する。
この、妙であるが、ダイナミックでどこかすごさを感じさせる動きに、陵南側は呆然とした。
「あ……あれは!!」
けど木暮は、見覚えがあるあの動きに目を見張った。
「な……なんだコイツは!?」
「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフン」
どこから見てもバスケットのものとは思えない動きに、魚住の動きが止まった。
「取りっ」
「!!」
そして、魚住の動きが止まってるうちに、花道は魚住からボールを奪いとった。
「あれは、ゴリとの勝負で見せた、フンフンフンディフェンス!!」
「花道、気合十分じゃねーか!!」
「早くも奥義を使ってきたぜ!!」
「ナイスディフェンス!!花道!!」
この花道のプレイに、観客や魅真達は興奮し、彦一と田岡は口をあけて驚いていた。
「魚住さん、ディフェンス!もどって!!」
「お、おう!!」
「……………」
ボールをとられた魚住はというと、仙道に声をかけられるまで固まっていたが、仙道は今の花道のプレイににっこりと笑っていた。
魚住は戻りながら、花道の、あの壁のようなディフェンスが未だ信じられなかった。
「よーし。いっけえ花道!!」
「花道攻めろ!ドリブルだ」
ボールを奪った花道は、ドリブルをして攻めこんだ。
「さあ、おめーら!!オレの足をひっぱるなよ!!」
「おおーーーーっ!!」
「完全にチョーシにのっている!!」
「おおう!!」
「「いくぞ!!」」
「(えらそーに…)」
1年の上に素人なのに、どこからそんな自信がわいてくるのかわからないが、調子にのった偉そうな態度も、流川以外は気にしていなかった。
「オラ、いくぞ陵南!!ビビってんじゃねーぞ!!」
花道はドリブルしながら、湘北側のゴールまでボールをはこんでいき、魚住の前でシュートを打とうとした。
目の前に魚住が立ち塞がっている状況では、ボールを奪われかねないので、木暮は止めるが、それもむなしく、あっさりと魚住にブロックされてしまう。
だが、花道はなんとかボールをひろい、再びシュートを打とうとしており、潮崎にパスするように言われるが、まったく聞いていなかった。
シュートを決めたい花道。しかし、魚住を抜き去る技術はなく、その場でドリブルを続けていた。
花道は素人、大黒柱の赤木は治療のため医務室にいる。…となれば、もう流川にパスをするだろう。田岡も池上も植草もそう思った。
だが花道は、魚住の後ろから手を伸ばした流川ではなく、池上が離れたことでフリーになった木暮にパスをした。
池上があわてて止めようとするも、木暮はシュートを決め、点差は5点に縮まる。
「よーーし!!」
「ナイッシュウ木暮さん。絶好調!!」
石井、佐々岡、桑田は木暮を称賛し、木暮もガッツポーズをして喜んだ。
田岡は流川へのマークを読んで木暮に渡したのかと、呆然としていた。
「ナイスパスだ、桜木!!いけるぞ!!」
その花道は、木暮に称賛されながら背中をたたかれ、ブイサインをした。
その後に、後ろを走っている流川を、ニヤッと笑いながら横目で見ており、流川もまた、パスを出さなかったことに腹を立てて、花道をジト目で見ていた。
次は絶対流川でくるはず。田岡はそう思っていたが、花道はまたしても木暮にパスをした。
木暮はまたシュートを決め、とうとう3点差にまで縮まった。
「ナイスパス!!」
シュートを決めると、木暮はまた花道を称賛する。
「桜木…。もしかして、木暮さんが今日調子いいことを見ぬいてたのか…?」
「「ワッハッハッハッ。んなわきゃねーって!!」」
「うん。そんなわけない」
「え?」
そう…。そんなわけなかった。ただ単に、大嫌いな流川には、パスをしたくないという個人的な感情だった。
「(フッフッフッ。ルカワ、てめーにはパスはやらん)」
「(あんにゃろう…)」
花道は先程と同じように、流川を横目で見てニヤッと笑い、流川は、ワザと自分にパスをしない花道を、横目で睨みつけていた。
そして、木暮がシュートを決めたことで、3点差になったので、観客達はざわついていた。
「ハッハッハッ。オレの力だ!!」
まだ、まったく点を入れていないのに、有頂天になり、得意気に笑っていた。
「おおーーーっ。完全にのぼせ上がってるぞ!!」
「有頂天だ!!」
「パスしただけで、あそこまで得意になるのもめずらしいわね」
まだほとんど何もしていないのに、それなのにあそこまで言い切ったので、魅真はある意味で感心していた。
「オヤジ!!秘密兵器の起用はズバリあたったぜ!!ナイス起用!!ちょっとおそかったけどな。まー許してやるよ」
「そうかね」
「さっきまでガチガチだったくせに…」
安西に対しても、相変わらず上から目線で偉そうだが、安西はまったく気にしていなかった。
「さあ、ラスト6分よ!!がんばろう!!」
「みんな、ファイト!!」
試合の時間は残り6分となり、あと少しで終わりなので、魅真と彩子は、コートにいる選手達にエールを送る。
陵南ボールから始まり、植草がゴール近くまでボールを運んできた。
魚住が他の選手達を落ちつかせるが、花道は、自分が出てきたからには逆転されたも同然だと挑発しながら構える。
どう転ぶかわからないこの状況に、両校とも気合い十分で、試合は白熱した。
「陵南のエース仙道が、ここまで18得点。残り6分でこの得点なら、仙道としては少ない方だわ。流川はよくおさえてる!!信じられないくらいよ!!」
「それで、ここまで競った試合ができてるんだ!!去年は仙道一人に47点とられて完敗だったからな!!」
「「「よ…47点!!」」」
去年のことだが、仙道がたった一人で50点近くもとっていたと知り、桑田達は驚いた。
「流川…オレたちと同じ1年なのに…。オレだったら、もう82点くらいとられてるぜ!!」
「あたりめーだ」
「ガンバレ~~流川君!!」
一人で50点近くとったという仙道にも驚いていたが、その仙道を20点以下におさえてるという流川にも感心していた。
その流川はというと、最初からずっと試合に出ているので、顔に疲れが表れてきた。
その隙を逃さず、仙道は流川を抜き去った。
そして流川は、仙道の方へふり向いた瞬間、足に大きな痛みを感じ、仙道がシュートをしたと同時に後ろへ倒れ、尻もちをついた。
「あっ!?」
「流川!?」
「流川っ!!」
突然倒れた流川を、魅真達は心配そうにした。
「流川!!どうかしたのか!!」
シュートを決めると、仙道は流川の異変に気づき、安田はいち早く流川のもとへ駆け寄った。
「ぬ?」
流川の異変に、花道も目を向ける。
「ち……」
流川は右ひざをおさえ、その痛みに立ち上がることができないでいた。
「(あ…足がつってる!!)」
流川が倒れたのは、足がつったせいだった。
「(しめた!!)」
心配している安田とは逆に、花道はこれで流川がベンチにさがるかもしれないので、これで自分のひとり舞台だと笑っていた。
「よーーしよしよし!!これでもらった!!」
「湘北はここまでだ!!」
「やっぱり、陵南(うち)と湘北じゃ、鍛え方がちがうからな!!」
「オレたちは、毎日地獄を見てるんだ!!」
「ぬ…」
けど、陵南の部員達がヤジをとばすと、そのことに腹を立てた。
「交替しますか?」
「いや、ちょっとまって…」
「どけい、ヤス!!足がつっただと!?情けねー!!そんなのはこうすりゃいいんだ!!」
今ここで流川にぬけられるのは困るので、安田が焦っていると、花道がすごい勢いで歩いてきた。
「とう!!」
そして、あろうことか、つった方の足を蹴りあげた。
「厶…ムチャするな、桜木!!流川はずっと仙道をマークしてきて、相当疲れてるんだ!!お前は今出たばかりだから、元気だけどな!!」
「うるせー!!湘北の看板を背負う男として許せん!!情けねーー!!」
めちゃくちゃやる花道を、木暮と安田が止めるが、花道は今にも噛みつきそうだった。
「いつ湘北の看板背負ったんだ、あいつは…」
「イヤ、ほら、今のぼせ上がってるから…」
「それより、足つってる相手に、ムチャクチャやるわね…」
「おい、オヤジ。交替だ!!ルカワはバテバテ…」
そして、安西に、流川を交替させるように言うが、途中で花道は尻を蹴られた。
「ぬ…」
「だれがバテてるって?」
後ろへふり向いてみると、そこにいたのはやはり流川だった。
「おめーだ、おめー!!」
「うるせー。ちょっとつまずいただけだ」
「(ま…また始まった…)」
「(イジのはりあい…)」
「ああ…赤木のいない時に…」
誰も止められる人物がいない時に、険悪なムードになったので、木暮、安田、潮崎は顔が青ざめる。
「交替はなし。試合再開」
「!!」
「なに」
「そうこなくちゃよ、スーパールーキー」
体力が限界の上、足までつったのに、続行するようなので、田岡は驚いたが、仙道は笑っていた。
「けっ!!オレの足をひっぱりやがったら、すぐ交替さすぞ!!」
「おめーこそ、ボロがでねーうちに代われよ、どあほう」
「ほざけ、この天才にむかって!!」
「いってろ」
試合が再開されると、花道と流川は並行して走っていくが、こんな時ですら、イジのはりあいをしていた。
ゴール近くまで来ると、花道は安田にパスを求め、花道がボールを受けとると、流川が仙道の前に来たので、今度こそコンビプレイでくると田岡は叫んだ。
「やんねーよ!!」
でもそんなわけがなく、花道は絶対に流川にボールを渡してなるかと、安田にパスをした。
「いらねーよ」
けど、流川は大して気に止めておらず、スクリーンアウトをとった。
その後、安田はそこからシュートを打つ。
「自分でとる」
シュートははずれてしまい、リングにあたってはねかえったボールを、流川はジャンプしてとると、もう一度ジャンプして、シュートを決めた。
「おおーーーっ。ナイスリバン!!」
「ナイスシュート!!」
「さすが流川!!」
流川の活躍に、湘北側は歓声をあげる。
「(あ…あれは…リバウンド………!!)」
そして花道は、今の流川のプレイにハッとなった。
「よーーし。これでまた3点差だ!!」
「ナイスリバン流川!!」
「がんばれ。離されるな!!」
流川のプレイで、湘北側は盛り上がった。
「くそっ、しぶといぜ!!完全にバテてるはずなのに、どっからあんな力がでてくるんだ、流川め!!」
けど、陵南側は焦りを見せていた。
「ふーーっ。しんどい相手だ……」
「フン…。なめんなよ」
今までに、これほどの相手に会ったことがなかったのか、仙道は少し疲れている様子だった。
一方の花道は、何やらぶつぶつとつぶやいており、試合に集中していないようだった。
ボールを持ってる植草はシュートを打つが、はずれてしまい、植草をマークしていた安田はほっとしたが、結局リバウンドを仙道にとられ、そのままシュートを決められてしまう。
仙道が決めると湘北ボールからスタートした。
木暮が安田に渡すと、安田がボールを運んでいき、シュートを打つがはずれてしまい、リバウンドをとろうと、仙道、魚住、池上がジャンプしたところ、魚住がリバウンドをとった。
「(リバウンドがとれない!!)」
魚住がリバウンドをとったので、陵南ボールとなり、今度は陵南が攻めていく。
そして、そうこうしているうちに、残り5分となった。
「陵南は、④魚住202cm、⑦仙道190cm、⑤池上183cm。それに対し湘北は、⑩桜木188cm、⑪流川187cm、⑤木暮先輩178cm!!」
「高さでは負けてますね…」
「ええ。桜木花道には、いくらなんでも赤木先輩のかわりはムリだし…。流川も、相当疲れてる…!!」
コートでは、ボールをはこんでいた植草がそのままシュートを打つがはずれ、リバウンドを魚住と仙道がとろうとした。
「「リバウン…」」
けど、そのボールをとったのは、魚住でも仙道でもなく、花道で、これには仙道も流川も驚いた。
しかし、着地した瞬間を狙って、越野がボールをとろうとしたが、花道はとられてなるものかと、ボールを自分の方にひっぱった。
すると、越野はボールごとふりまわされ、宙に浮くと、後ろにふっとんでいき、そこをなんとか魚住が受け止める。
これには、敵も味方も、全員が驚いた。
「さ…さ…桜木!!おまえってやつは…」
「ナイスリバウンドだ!!」
そこへ、木暮と安田が、花道を称賛しながら花道のもとに駆け寄ってきて、称賛された花道はニヤリと笑った。
「ヘルドボールヘルドボール!!」
「オッケーオッケー、ジャンプボールね。いいよそのくらい」
けど、今のでどっちのボールかわからなくなったため、審判が笛を鳴らしながら駆け寄ってきた。
今の花道のプレイでテンションが高くなった木暮は、笑いながら審判にボールを渡し、これならまだいけると思った。
「この試合(ゲーム)はオレが制す!!」
花道は、昨日の居残り練習で赤木に言われたことを思い出すと、また有頂天で大きなことを言った。
「オレが制~す!!」
「そんなにアマかねーよ」
「フッフッフッ。負けおしみだな」
負けおしみではなく本当のことなのだが、めんどくさくなったのか、流川はそれ以上何も言わなかった。
その時、田岡はあることに気づくと、魚住を呼び、田岡に呼ばれた魚住は田岡のところへ行くと、田岡は魚住に話をした。
「それじゃ、ジャンプボール!!湘北⑩と陵南⑥!!」
「フッフッフッ。オレが制す!」
そしてジャンプボールが始まるが、背の高さとジャンプ力で花道が勝ち、湘北ボールでスタートとなった。
「さあっ、ラスト5分だ!!追いつくぞ!!」
「「「おう!!」」」
今の花道のリバウンドで、湘北は多少勢いがついた。
「はっはっはっはっ。すぐだ、すぐ!!このリバウンド王桜木がいるかぎり、すぐに追いつく!!」
花道の大きな態度に周りはざわついたので、花道はニヤッと笑い、晴子も自分の活躍を見てくれただろうかと、鼻の下をのばしながら観客席を見るが、そこには友人の松井と藤井しかおらず、肝心の晴子の姿はなかった。
そのことにショックを受けていると、安田がパスしたボールが花道の頬に直撃したので、よそ見するなと木暮に注意され、安田は自分が悪いわけでもないのに、あわれにも花道に殴られてしまう。
そして、木暮がシュートを打つと、リバウンドをとろうとするが、魚住にジャマされて中に入れず、魚住にとられてしまった。
「ドンマイ、桜木。リバウンドは、ディフェンスの方が、どうしても有利なんだ!!気にするな。ディフェンスがんばろう!!」
「くそ…。全部とるハズが…ボス猿め…」
木暮にはげまされるが、負けず嫌いな花道は悔しがった。
「ところでメガネ君。ハルコさんはどこに?」
「うわっ!!」
悔しがっていたが、突然晴子の話題をふったので、木暮はびっくりしていた。
「は…晴子ちゃん!?赤木のつきそいで医務室だろ!!それよりディフェンス!!集中力だ!!」
「(試合中に何言ってんのよ、アイツは……)」
試合中だというのに、試合とは関係ないことを聞いてきたので、木暮は適当に答えると指示を出し、それを見ていた魅真はあきれていた。
木暮に言われ、ディフェンスにつくと、池上がシュートを打ったので、魚住はリバウンドをとるためにスクリーンアウトをとり、花道の前に立った。
花道はポジションをとれず、リバウンドは魚住がとり、そのままダンクを決めた。
試合時間は、残り4分をきり、点差は7点に開いた。
「ああっ…どうした桜木!!」
「ぬぬ……。とれん!!リバウンドがとれん!!なぜだ!!」
さっきはとれていたのに、リバウンドが2回も続けてとれなかったので、花道は困惑し、焦りだした。
次は安田がシュートを打ち、リバウンドをとろうとしたが、これは決まり、しかも3点シュートなので、点差は4点差に縮まり、陵南はあわてだす。
「あわてるこたーない。おちついて攻めよう」
しかし、唯一仙道はあわてておらず、冷静なままだった。
「!」
「仙道」
「そうだ、仙道」
そして仙道の一言で、陵南の選手はおちつきをとり戻し、仙道は越野にボールを渡した。
「さ…いこーか!!」
「おーし!!」
「いくぞ!!」
「いこう!!」
更に、とり戻したのはおちつきだけでなく、自信もだった。
それだけでなく、陵南の応援も勢いがついた。
「(すごい…仙道さん…。点をつめられても、まったくあわてていない。それだけでなく、他の選手達のおちつきと自信をとり戻させた。それは、それだけの実力があり、信頼されているということ…。選手はもちろん、監督にも…。だからこの人は、エースと呼ばれ、天才と言われてるんだわ)」
陵南がおちつきをとり戻したのとは逆に、湘北は焦りを見せた。木暮は、この先もう1点もとれないのではと思ったが、自分がそんなことを考えてどうすると、赤木のいない時にしっかりしろと気合いをいれ、他の選手達に声をかけた。
シュートが打たれたので、リバウンドをとるように叫ぶ。
だが、花道はまた魚住に中に入られたので、木暮は花道にスクリーンアウトをとるように言うが、花道はスクリーンアウトのことをわかっていなかった。
基礎中に基礎である、スクリーンアウトすら知らない花道を、魚住は素人だと見抜いた。
「基礎中の基礎だ!!バスケットはそんなに甘くはないぞ!!」
「うるせー!!」
田岡が言ったのはごくあたりまえのことだが、負けず嫌いな花道は、ヤケになったようにリバウンドをとろうとするが、またしても魚住にとられ、ダンクを決められる。
「ぬ…。くそ…こんなハズは…」
「(やはり、桜木にはまだムリだったか…)」
「「ああ…」」
連続で魚住にリバウンドをとられ、更にはまた点差を広げられたので、角田や桑田達はお通夜のように暗くなった。
「ちが~~う!!」
「!!」
その時、館内全体に響き渡るほどの、大きな声が聞こえた。
「あっ!!」
その声の主を見ると、木暮は明るくなり、花道はおそるおそる、声がした方へふり向いた。
「バカタレが。なんだ、そのリバウンドは」
「赤木!!」
「赤木さん!!」
「「赤木先輩!!」」
そこにいたのは、ケガをして、医務室に治療に行った赤木だった。
「!!」
そして、赤木だけでなく、晴子も赤木の隣にいたので、花道は表情が明るくなる。
「(ハルコさん!!)」
晴子をみつけると、花道は顔がゆるみ、ブイサインをした。
「6点差!!スゴイワ!!よくくらいついている!!」
「ハッハッハッ。それは、この天才の活躍によるものですよ、ハルコさん!!」
「桜木君」
「すべて!」
「あっ」
そして、素早く晴子のもとへ行くと、いつもの調子のよさでウソ(本人はそう思っている)を話した。
「!!」
だがその時、いつものように、赤木が花道の頭を殴る。
「試合中にウロチョロするな!!」
「ぬ…くそ」
頭を殴ると、花道と晴子を引き離すように、コートに放り投げた。
「ゴリめ…。ケガしてもおとろえてやがらねえ!!」
「(まったく、この大事な場面に…)」
せっかく晴子と話していたのにジャマされたので、花道は文句を言うが、状況が状況なので、木暮はあきれていた。
「メンバーチェンジ!!」
「はい」
赤木は審査員の席まで歩いて行くと、選手交代の旨を、一番端にすわっていた男に告げた。
「おおおおっ。湘北の怪物が帰ってきたぞ!!」
「ゴリ復活!」
「帰ってきたゴリ!!」
「ゴリ!!」
洋平達は、赤木が帰ってきたので、これでまた追いつけるかもと目が輝いた。
「「「「ゴーリゴーリゴーリゴーリゴーリゴーリゴーリゴーリゴーリ」」」」
そして、どこから出したのか、紙ふぶきやクラッカーやラッパを使い、場を盛り上げた。
「ゴ…」
「やめんか」
だが、あまりにもゴリと連呼しすぎたせいで、赤木は四人の頭を殴り、強制的にだまらせた。
「メンバーチェンジ、湘北!!」
ようやくメンバーチェンジとなり、赤木が出ると、陵南側も湘北側も、全員がさわぎだした。
「流川!」
「!!」
赤木が交替するのは流川で、2人が交替すると試合再開となり、館内は盛り上がった。
「ナイスファイト、流川!!すごかったわよ!!」
「流川、ナイスプレイ!!」
「…………」
魅真の隣の空いてる席にすわった流川を、魅真と彩子は称賛し、花道は流川がベンチにひっこんだので、うれしそうな顔をしていた。
「(くそう…)」
一方流川は、最後まで出られなかったので、悔しそうにしていた。
「流川君、休けいは1分だけです」
「……!!」
「ラスト2分が勝負。行けますか?」
「―――!!」
てっきりラストまで出られないかと思っていたが、安西の思わぬ言葉に、流川は安西を見た。
「さあ、残り3分きったぞーーーっ!!」
「「「いけいけ湘北!!おせおせ湘北!!」」」
赤木が戻ってきたことで、湘北の応援にも力が入った。
力が入っているのは赤木も同じで、赤木は戻ってくるなり、魚住の前でシュートを決めた。
「やった!赤木先輩!!」
「赤木さん!!」
「お兄ちゃん!!」
「ゴリ!!」
戻ってきていきなりの活躍と、点差がまた4点に戻ったので、湘北側は喜んだ。
「どうした魚住。遠慮はいらんぞ」
「赤木…!!」
ケガをしても力はおとろえておらず、いきなりやらえたので、魚住は悔しそうに赤木を睨みつけた。
「晴子ちゃん、先輩のケガは、大したことなかったのね!?」
「え…う…うん!!と思う (本当は、もうでちゃだめって言われたんだけど…)」
「(これはウソね…)」
いきなりとばしているので、赤木は大丈夫なのだと彩子は判断し、晴子に問いかけると、晴子は曖昧ながらも答えるが、実はウソで、魅真だけは、今の晴子の返事の仕方で、ウソだと見抜いていた。
「さあ、ディフェンス1本!!」
「「「「おう!!」」」」
次は陵南のオフェンスなので、赤木が声をかけると、全員気合が入った返事をする。
だが魚住は、赤木があっさりとシュートを決めた焦りからか、フリースローレーンの中に入ると、すぐにシュートを打った。
「リバウンド!!」
「ぬ。おう!!」
魚住がシュートを打つと、花道は赤木に言われた通りにポジションをとろうとするが、またしても魚住にとられてしまう。
「ちが~~う!!!!」
「!!」
ポジションをとるのに失敗すると、赤木のダメ出しが入る。
赤木にダメ出しされると、花道は昨日の練習後の、赤木とのリバウンドの練習を思い出した。
花道がポジションをとれなかったので、赤木がリバウンドをとろうとするが、指ではじいただけでとることができず、後ろにいた仙道にとられてしまった。
仙道はボールをとるとシュートを打つが、ブロックしようとジャンプをした赤木の指がかすってしまう。
夕べの練習で、赤木に言われたことを思い出した花道は、魚住に対して、ようやくポジションをとることができ、リバウンドをとれた。
そして、ボールは赤木に渡り、赤木はまたシュートを決める。これで1ゴール差となった。
「完全にノッてきた!!」
「湘北ペースだ!!」
「いけいけいけーっ!!」
「「「ディーーフェンス!!ディーーフェンス!!」」」
あと2点で逆転できるので、湘北のベンチは更に盛り上がる。
「でも、信じらんねーな。ここまで追いつめるなんて!!」
「相手はベスト4の陵南だぜ!!」
「ウチの先輩たちがここまで強いとは!」
「あんたたちも、がんばって試合に出れるようになったら、湘北はもっと強くなるわよ!!」
「彩子さん!!」
最初は19点も差をつけられていたので、あきらめムードだったが、とうとう2点差にまでなったので、興奮していた桑田達に、彩子は声をかける。
「流川だって桜木花道だって同じ1年生なんだから、あんたたちだって、やればできる!!」
「そ…そうですね!!」
桑田は彩子が言ったことにうなずくと、は流川を見た。
「(かっこいいな……)」
そして、流川を見ると、今度はコートにいる花道を見る。
「(オレも試合に出たい…!!)」
二人を見たのは、試合を見てるだけなのは嫌だと思ったからだった。
「「「ディーフェンス!!ディーフェンス!!」」」
けど、今は見てるだけしかできないので、必死に声援を送った。
試合を見ていると、植草が打ったボールを、赤木がブロックした。
「「「おおっ!!」」」
赤木がブロックすると、桑田、石井、佐々岡は驚き、安田はうれしそうな顔をするが、植草はショックを受ける。
「でたーーーーっ。必殺ハエたたき!!」
「陵南の攻撃をしのいだっ!!」
そのことで、湘北は盛り上がる。
ボールは安田の手に渡り、安田から潮崎の手に渡る。
そして木暮は、池上を撹乱させるために、自分と池上が動いた方とは反対側へ動き、フリーになったことで、潮崎から木暮の手にボールが渡り、ボールをとると、その場でシュートを打った。
池上が止めようとするが、一足遅く、シュートは決まった。
しかも3点シュートなので、とうとう逆転した。
「「「「「メ・ガ・ネ!!メ・ガ・ネ!!メ・ガ・ネ!!メ・ガ・ネ!!メ・ガ・ネ!!」」」」」
「木暮さん!!」
「木暮先輩!!」
逆転したので、湘北は今までにないくらいに盛り上がり、洋平達はまた、先程の小道具を出して盛り上がった。
「「「「「メ・ガ・ネっ…」」」」」
「ハッ!!」
晴子も洋平達と一緒に盛り上がっていたが、途中で、前にいる流川が冷めた目で見ていることに気づき、動きが止まった。
「(る…流川君の前で私ったら…。ああっ…)」
「「「「メ・ガ・ネ!!メ・ガ・ネ」」」」
好きな流川に、はしゃいでいるところを見られてしまったので、はずかしくなってやめたのだが、洋平達はそれがわかっておらず、一緒に盛り上がろうと声をかけた。
「すげえっ!!逆転した!!」
「マジで勝てるかもしんねーー!!」
「陵南に勝てるかもしんねー!!」
「(すげえ、かっこいい…!!やっぱり、見る側じゃだめだ!!オレもあの5人のうちの1人にならなくちゃ…!!)」
逆転したのを見た桑田は、更に試合に出たい気持ちが高まり、うずうずしていた。
「ナイッシュー木暮さん!!」
「いける!!」
潮崎や安田も木暮を称賛し、勢いがついた。
「…………」
一方仙道は、得点ボードを見ると、湘北の方に体を向けた。
「ふーーーっ。やるなあ、湘北」
「―――!!」
前を向くと、静かに湘北を称賛するが、仙道のその言葉に、赤木と木暮は緊張した。
「オッケー」
そう言った仙道の顔は、今までに見せていたほがらかなものではなく、とても真剣でまっすぐなものだった。
「ここからだ!」
「ぬ?」
「(どうする!基礎をかじっただけの桜木じゃ、相手にならん!!オレが奴をマークするか!?だが、魚住をどうする!!)」
緊張したのは、仙道が爆発することを予想してのことだった。
「フッフッフッ。センドー、おぼえてるだろーな。おめーはオレが倒す!」
そんなことに、気づいてすらいない花道は、ボールをパスされた仙道の前に立ちはだかった。
「(メンバーチェンジ!!流川を出す!!)」
仙道だけでなく、魚住もなんとかしなくてはならないので、赤木はこうなったら流川を出そうと思った。
その時、仙道が花道をぬいて、ダンクをしようとした。当然ブロックしようとした赤木は手をのばすが、仙道はそのままダンクを決めた。
「赤(湘北)④番、ハッキング!!バスケットカウント!!ワンスロー!!」
しかも、赤木がハッキングをもらってしまった上、得点が入り、フリースローまで仙道に与えられてしまった。
今の仙道のプレイに、陵南の選手達は喜び、観客も盛り上がる。
「くそ…。!?!?センドー…」
「…………」
ルールがよくわかってないので、なんで今の状況になったのかはわからないが、仙道にぬかれたことと、陵南が優位になったことはわかったので、花道は悔しそうにした。
「この終盤にきて…今までより数段はやく…そして、強い!!」
「仙道…。今までのは、本気じゃなかったのか…!?」
「いや…。集中力の問題だ…。今までのプレイも、手を抜いてたわけじゃないだろうが、100%の力というわけでもない。70%の力で勝てる相手なら、残りの30%は温存しておくというやり方が、無意識に身についてるんだろう。そして今、うちが逆転したことによって、危機感を感じたのか…集中力が増した!!逆転したことによって、仙道の力をひきだしてしまったんだ!!」
「(そっか…。仙道さんが天才と言われているのは、ただバスケがうまいという実力者なだけでなく、どんな危機的状況になっても、チームを勝利に導く力があるからなんだ。やっぱこの人は、とてつもなく手強い!!)」
魅真は今の仙道のプレイに、鳥肌を感じた。
それは、想像以上にすごい選手だからというのと、敵にするとすごく恐ろしいと感じたからだった。
「ワンスロー」
コートでは、フリースローラインに立った仙道が、シュートを打とうとしていた。
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