#11 花道デビュー
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あくしゅをすると、スタメンでない花道は席に戻った。
試合がもう始まるので、2階にはたくさんの人がいた。
ほとんどが陵南や仙道の応援だったが、中には晴子達や流川の親衛隊もおり、彼女達はどうやって用意したのか、キャミソールのようなワンピースタイプのミニスカにハイヒールという、独自の衣装で応援して、すでに盛り上がっていた。
そして試合が始まり、赤木と魚住はジャンプボールをした。
いよいよ試合が始まったので、両チームとも盛り上がった。
ジャンプボールの結果、最初は湘北ボールからだった。
「でも、ジャンプボールは互角だったわ…!!去年は赤木先輩が必ず勝ってたのに…」
「今年の魚住は去年とはちがうってわけか…」
「そりゃあ、敵も相手を倒すために必死になってるでしょうから、ずっと同じということはないでしょうね」
湘北ボールになったのに、それでもジャンプが互角だったので、彩子と角田は驚いていた。
「さァ来い、湘北!!!」
その魚住はふり向くと、勢いのある顔と声で叫び、安田と潮崎はその勢いに気おされた。
「おお!!気合入ってんじゃねーかボス猿!!でも、おめーはオレに倒されるけどな!!ハハハ」
「やめなさい、はずかしいわね!」
コートに立ってすらいないのに、宣戦布告をしてヤジまでとばす、相変わらずな花道を魅真止める。
「おおーーー、いいぞヤジ将軍!!」
「国会議員みてーだな」
「ぬ…」
そこへ、上にいる洋平達からすかさずツッコミが入ったので、花道は反応して、後ろへふり向く。
コートでは、安田がボールをはこぼうとしていたが、相手のポイントガードの植草にボールをカットされてしまった。
「ああっ!!」
「やっちゃん!!」
「安田先輩!!」
あまりの速さに安田は驚いた。
「おいオヤジ、オレの出番はまだか!?ピンチだぞ」
「まだ始まって1分も経ってないってば」
試合に出たくて出たくて仕方ない花道は、試合が始まったばかりなのにピンチと決めつけ、いつものように、安西のあごの脂肪をゆらした。
その時、館内でざわめきが起こった。
「ぬ!?」
ざわめきに反応した花道は、安西に向けていた顔をコートに向ける。
「センドー!!」
ざわめきが起こったのは、仙道にボールが渡ったからだった。
仙道にボールが渡ると、仙道をマークする流川は腰をおとし、ぬかせないようにするが、仙道は横にいる池上にボールを渡した。
ボールをとると、池上はシュートを決め、陵南側は盛り上がった。
池上がシュートを決めると、湘北のボールからスタートした。
安田がはこんでいったボールが赤木に渡ると、魚住はジャンプボールをした直後のような、すごい迫力を見せる。
しかし、赤木は魚住と勝負することなく、木暮にボールを渡す。
「おーーーし。いけ、メガネ君!!ノーマーク!!」
木暮はボールをもらうとシュートを打つが、それも魚住にブロックされてしまった。
だが、ボールはまだ生きてるので、それを流川がひろい、シュートを打つが、またしても魚住にブロックされてしまい、そのボールを安田がとると、安田は赤木に渡し、赤木がシュートを打とうとすると、それすらも魚住にブロックされてしまった。
「ゴリ!!」
まさか、あの赤木がブロックされるとは思わなかった花道は、思わず赤木の名前を叫んだ。
魚住が、3回連続で湘北のシュートをブロックしたので、陵南は更に盛り上がる。
「く…」
「…………」
「魚住…」
シュートをブロックされた木暮、流川、赤木は悔しそうに魚住を見た。
「(どうだ!!見たか、赤木!!) さあ、この試合、100点とるぞ!!!」
「「「「おう!!!」」」」
燃えていたのは、どうしても赤木を倒したいという、気持ちの表れだった。
#11 花道デビュー
「マズイ!!マズイぞ、オヤジ!!ボス猿のやつ…」
魚住の3連続ブロックに焦った花道は、安西の体をゆらした。
「オ…オヤジじゃないでしょ。ちゃんと安西先生って言いなさい!!」
「マズイっスよ、アヤコさん!!」
「なんでアタシに敬語使って、先生に使わないの?」
「ボス猿の奴…。メガネ君とルカワとゴリのシュートを止めて、完全にチョーシにのってやがる!!」
「うん…。イヤなムードだな…。魚住のガッツにつられて、ほかのみんなものってきた」
「まあ、チームの大黒柱がのってくると、他の選手も勢いにのるってのは、普通にあることだしね」
「そう!!そうだろ」
花道が言ってる通り、陵南は勢いにのっているので、魅真と角田は花道の意見に同意する。
「オヤジ!!ここは大ピンチだぞ!!秘密兵器の投入しかねえ!!な!!」
言ってることは正しいが、結局は自分が試合に出たいだけだった。
「さァ、ついに秘密兵器・桜木の出番!!おいルカワ、交替だ!!」
「「「「まてまてまて!!」」」」
花道は、勝手にコートに歩いていき、彩子、角田、石井、桑田は、花道を止めるために追いかけた。
「何がついによ!!まだ始まって2分しかたってないのよ!!座ってなさい!!」
「桜木!!ダメだよ」
「桜木君!!」
出る気満々な花道だが、彩子達に席にひっぱられていったので、出ることはできなかった。
「くっそーーー。おめーら、ボス猿なんかに負けてんじゃねーーー!!ガンガン行けえ、ガンガン!!」
自分が出ることはできないので、花道は応援のようなヤジのような、よくわからないことを叫んだ。
それを見ていた洋平達は笑っており、席についた花道は彩子になだめられており、一方で晴子は、そんな花道を見て微笑ましそうに笑っていた。
コートでは、安田がボールを持ってるが、赤木や流川までも止められたことで、萎縮してしまい、気持ちの上ですでに負けてしまっていた。
「安田、どんどんパスまわしていけ!!」
「攻めて攻めて!!」
「まずいな。魚住のシュートブロックを見て萎縮しちゃってる。気持ちで負けたら、一気につきはなされるぞ」
「ほらみろ。やっぱりここは、秘密兵器投入だぞ、オヤジ」
「座んなさい!!」
「いい加減にしなさいよ、花道」
「大丈夫よ。湘北には、ちょっとやそっとじゃ動じない、図太い男がいるでしょう」
「ああ…確かに…」
そう言われてみると、魅真は思いあたる人物がいるので、納得をした。
彩子いわく、ちょっとやそっとじゃ動じない図太い男…もとい流川が、魚住の前に立ちはだかり、安田にボールを寄こすように言った。
安田は言われた通りに、流川にボールをパスするが、それを見た仙道が、流川に渡る前に、ボールをカットする。
「さあ、いこーか」
「にゃろう」
あっさりとボールをカットされたので、流川は悔しそうに仙道を見た。
仙道はボールをカットすると、ドリブルをしながら、一気にゴールに向かって走っていった。
仙道も早いが流川も負けておらず、仙道に追いつき、仙道の前にまわった。
仙道はゴールの前まで来ると、シュートをするためにジャンプをしたので、流川は止めようとした。
しかし、仙道はシュートをするのではなく、シュート体勢のまま、右ななめ後ろにいる越野にボールをパスした。
越野がシュートを決めると、陵南側は盛り上がった。
「さあ、ガンガン行こーか」
越野と健闘を称えあうようにタッチをすると、不敵な笑みを浮かべた。
「おおっ!!」
「おう!!」
「行くぞ!!」
今のプレイと仙道の声で、陵南は更に盛り上がり、気合は入った。
「くっそ~、盛りあがりやがって…!!」
「………………」
湘北側はというと、全員悔しそうにしており、特に花道は、強く睨みつけていた。
陵南の監督の田岡は、魚住と仙道を中心によくまとまったいいチームになってるので、今年はいけると確信していた。
「今日がそのスタートだ!!おまえたち、この試合、30点差をつけてみろ!!」
「「「「「おおう!!!」」」」」
「(30点だと?)」
あまりにもなめられているので、赤木はムッとして、田岡に顔を向けた。
顔を向けた先には、田岡の後ろに、何故か花道がいた。
「うるせー」
「!!」
そして花道は、あろうことか、田岡の尻にカンチョーをしたのだった。
しかし、今ので花道は、テクニカル・ファウルをとられることとなる。
試合は続いた。
仙道は木暮が持っていたボールをあっさりととって、先程と同じように、ドリブルをして走っていく。
そして、シュートを決めようとして、それを流川が止めようとするが、仙道は先程と同じように、今度は植草にパスをして、植草はシュートを決めた。
これで17対0となり、流川の親衛隊は残念そうにしているが、陵南側は盛りあがり、館内は仙道の応援一色にそまる。
それに苛立った花道は、再び席を立った。
「あっ、こら。どこいくの、桜木花道!!」
「イヤ…。ちょっとだまらせてきますよ…」
「やめなさい!!テクニカルファウルをとられたばかりなのに!!」
拳でだまらせようと、バカなことを考えている花道を、彩子は必死で止める。
「くそう。おめーらも湘北の応援をしろ!!何しに来たんだ、一体!!」
「イヤ、ヒヤカシに」
「座ってろつーの。まったく」
何度言っても聞かないが、それでも彩子は、花道をすわらせようとした。
「スゲエな、陵南(むこう)の7番は…。てっきりシュートかと思った」
「その前に、オレたちじゃ追いつけないよ…。流川だから、あそこまでできたんだ。格がちがうよ、仙道は…」
まだ前半が終わっていないのに、石井と佐々岡は、すでにあきらめムードだった。
そして、またしても同じ手口にひっかかってしまったので、当の流川は悔しそうにしていた。
試合は進み、安田が3Pを打つ。
「おっ!!」
「3点シュート。よし、入れ!!」
それを見た彩子は、入るように祈るが、ボールはリングにあたってはねかえってしまった。
「ああ、惜しい!!」
はずれたボールをとろうと、流川、赤木、魚住がジャンプをした。
結果、ボールをとったのは魚住で、リバウンドをとった魚住に、花道は目を見張った。
魚住は池上にボールをパスし、池上は仙道にパスをした。
速攻をかけて、ゴールへと走っていく仙道。仙道の右ななめ後ろからは、池上が走ってきていた。
それを見た流川は、また先程と同じ手口でくるかと読んで、池上へのパスを阻止しようとしたが、仙道は右手で持っていたボールを、左手に持ちかえて流川をぬき、そのままダンクを決めた。
先程まではパスしていたのに、今度は自ら攻めてきたので、花道、赤木、流川は口をあけて呆然とした。
そして、今のプレイに、火がついたように歓声が響きわたった。
「おっしゃ」
今度も作戦は成功し、ダンクを決めたので、仙道は満足そうにしていた。
「すっ…ごい…」
一方、湘北の席では、魅真が仙道の今のプレイに感嘆の息を吐いていた。
「すごい、仙道さん。今のプレイ、思わず見惚れちゃった。さっきのパスもすごかったし…。こんなにすごい人、久しぶりに見たわ!!」
「ちょっとちょっと!!魅真、アンタ湘北の人間でしょ!!敵に惚れこんでどうすんの!?」
湘北側の人間でありながら、敵に見惚れ、称賛し、興奮していたので、彩子は思わずつっこんだ。
「え?あはは…。いや…私、バスケはやるのも見るのも大好きなんですよ。すごい選手がいると、敵味方関係なく見惚れちゃうんです。陵南にはエースがいるって聞いてたから、どんな人かと思ってたんですけど…。想像以上にすごい人だったので、思わず…。
あ!もちろん気持ちの上では、湘北の応援ですよ」
つっこまれると、魅真は何故敵に惚れこむのかという説明をした。
試合が始まってそんなに時間は経ってないが、陵南は19点、湘北は0点と、陵南が20点近くの差をつけてリードしていた。
だが、今の仙道のプレイで、流川と赤木に火がついてしまったのだった。
「ふぬ…」
そして花道は、今の仙道のプレイに腹を立て、青筋を浮かべていた。
「さあ、まず1本よ!!」
「まだまだ追いつけるわ。ファイト!!」
点差は開いてしまったが、それでもまだ前半が終わってないので、マネージャーである魅真と彩子が選手達に声をかけた。
「おちついて、1本ずつ返していこう!!これからだ、これから!!」
副キャプテンの木暮も声を出し、安田にボールを渡した。
しかし、仙道と魚住の存在に圧倒されてしまったので、あっさりと木暮にパスをするが、植草がカットした。
「ああ!!」
またしても陵南ボールとなり、植草は速攻をかける。もちろん安田も追いかけていくが、追いつくことができなかった。
「コラァーーーーッ。しっかりせんか、安!!ぶっとばすぞ!!」
「安田さん!!先輩でしょ!!」
「ああーーーー。もう強すぎるよ陵南は!!」
「やっぱりベスト4はちがう!!」
「湘北(ウチ)が戦えるような相手じゃなかったんだ!!」
「ぬ?」
かたや去年ベスト4の強豪校。かたや去年緒戦敗退の弱小校。安田だけでなく、桑田、石井、佐々岡も気持ちで負けていたので、花道は苛立ちながら、彼らの方へ顔を向けた。
コートでは植草がボールを運び、ゴールの前にいる仙道にボールを投げた。パスにしては高い位置にあるボールを、仙道はジャンプをしてとろうとする。
アリウープを決めようとしていたのだ。
「「「ああーーっ。もうやめてくれーーっ!!」」」
「コラァ、てめーーら!!」
またしても嘆く桑田達に、花道はいい加減にしろと言うように席を立った。
「「あっ!!」」
「ぬ?」
その時、魅真と彩子が声をあげたので、花道は後ろへ顔を向ける。
そこでは、仙道がとるはずだったボールを、流川がとっていた。
「ルカワ!!」
ボールを流川がカットしたことで、仙道以外の陵南メンバー全員が注目する。
「さあ、行こーか」
流川は先程の仙道と同じことを言って、挑発的に仙道に目を向けると、一気に走り出した。
「ぬぬ…。ルカワ」
それを見ていた花道は、湘北が負けるのは嫌だが、流川が活躍するのも嫌なので、複雑な気持ちを抱いていた。
流川は植草を抜き、越野の足の間にボールをバウンドさせ、バウンドさせたボールをとると越野も抜いた。
池上もなんとかしようとしていたが、流川の速さについていけてなかった。
「よーーーし。いけえーーっ流川!!」
「シュート!!」
流川はそのままゴールの前まで来ると、シュートをしようとするが、唯一追いついてきた仙道が、流川がシュートをしようとジャンプをした時、ブロックしようとした。
「仙道!!」
このままでは、仙道にブロックされてしまうと思われたが、流川は隣まで走ってきていた赤木にパスをした。
そして、ボールを受け取った赤木は、そのままダンクを決めたのだった。
赤木がダンクを決めると、館内が騒然とした。
「おお、ゴリ!!」
「でたあああっ!!」
「ゴリラダーーンク!!」
「やったあ。ナイスパス流川!!ナイッシュー赤木先輩!!」
「よしよしよし!!さすがゴリ!おれの次に実力者といわれるだけある!!ハッハッハッ」
「赤木さん…流川…」
試合に出ていない上に、そんなことは言われていないのに、何故か偉そうにしている花道だった。
「すっげえダンク…」
今のダンクには、陵南の選手も驚きながら、湘北側の得点を2点入れた。
「イヤ、今のは10点くらいあるだろう」
「ああっ、ちょ…ちょっと!!」
そこへ花道がやって来て、湘北側に10点加点したので、陵南の選手は焦った。
「!!」
またしても勝手な行動をとる花道だが、そこを赤木に殴られて止められた。
「ウロチョロするな」
「ぬ…。公衆の面前で…」
そして、赤木に首ねっこをつかまれて席まで戻されていく花道は、今の奇行に、周りから笑われていた。
「さァ、ここからだ!!」
「1本も入れさすな!!」
「「おお!!」」
赤木のダンクで勢いがつき、赤木と木暮が声をかけると、安田と潮崎も気合いが入り、洋平達も応援を始める。
「そうよ。ここからよ!!あんたたちも声出して!!」
「なげくんじゃなくて、勝利への応援をするのよ!!」
「「「は…はい!!」」」
魅真と彩子に言われると、桑田達は、言われた通りに声を出した。
そして、赤木のダンクで、安田は動きがよくなり、植草を止めていた。
動きがよくなったのは、安田だけでなく木暮もで、木暮にマークをされていた池上は、無理なシュートを打ったためにはずれてしまい、リングにぶつかってはねかえったボールを赤木がとり、赤木はそのボールを投げた。
投げられたボールは安田がとり、安田はレイアップシュートを決める。
「ナイッシュ!!安田先輩!!」
「よっしゃ!!いいぞヤス!!」
速攻が成功したので、魅真と花道は安田を称賛する。
「よーーーし!!」
そして、安田は赤木に称賛するように尻をたたかれると、いつもは怒鳴られてるのに、めずらしくほめられたので、顔が明るくなった。
「さあ、ここを1本がんばるぞ!!おさえどころだ!!」
「「はい!!」」
赤木のリーダーシップにより、湘北は勢いづいた。
ボールを持っている越野に、魚住が名前を呼ぶと、越野は魚住にボールを渡した。
ボールをとった魚住は、赤木をぬいてシュートを決めようとするが、赤木のきびしいディフェンスにあい、それができなかった。
「「「3秒3秒!!」」」
それを見ていた魅真、彩子、角田が叫ぶが、ルールを知らない花道は、よくわかっていなかった。
3人が叫ぶと、審判の笛が鳴る。
「3秒オーバータイム!!」
「!!」
魚住は、フリースローレーンの中に3秒以上とどまってしまったので、3秒ルールで笛が鳴ってしまったのだった。
「「「よォーーし!!」」」
「よーし!!」
3秒ルールで笛が鳴ったので、魅真達はガッツポーズをして喜んだ。
3秒ルールを知らない花道は、何故魅真達が喜んだかわからないが、雰囲気からして、こちらが有利になったのはわかったので、同じようにガッツポーズをして喜んだ。
「お兄ちゃん、ガンバッテ!!」
「!!」
その時、2階から晴子の声が聞こえてきたので、花道は過剰に反応をした。
「ハ…ハルコさん!!ハルコさんがいる!」
晴子の声がすると、花道は試合そっちのけで晴子を探した。
「いた❤!!」
「地獄耳………」
晴子をみつけると、花道はいつものように顔がゆるんだ。
「桜木君」
そして、花道が自分に気づいたことに気づいた晴子は、にこっと笑いながら手をふった。
「おお…。私服姿もいい…❤三つ編も…❤」
晴子が手をふると、花道はうれしそうに手をふり返す。
「…………」
その後、花道はますますうずうずしだした。
「おいっ!!まだか、秘密兵器の出番は!!早くだせオヤジ!!」
「やめろつってんだろ!」
晴子がいるのがわかると、晴子の前でいいカッコをしたい花道は、また安西のあごの脂肪をゆらしながら試合への出場を要求し、花道の後ろから、彩子がハリセンで花道の後頭部をたたいた。
コートでは、シュートミスしたボールを赤木がとった。
「おーーし。オフェンスリバウンドもとったあ!!」
「シュート、赤木さん!!」
リバウンドをとった赤木は、シュートを打とうとしたが、魚住にブロックされる。
ファウルだと木暮が叫んだが、ファウルではなく、魚住にブロックされたボールははずれ、リングにあたってはね返った。
「ああーーっ」
「惜しいっ!!」
だが、そのボールを流川がとり、そのままダンクを決める。
「ルカワ!!」
今ので歓声がわき、流川が好きな晴子は黄色い叫び声をあげる。
「ぬぬ…」
それがますます、花道を苛立たせ、同時にうずうずさせた。
それから数分が経ち、前半が終了した。
最初は19対0と大きく離されてしまったが、50対42と8点差まで詰め寄った。赤木と流川のダンクで、完全に火がつき、勢いにのったからだった。前半の得点は、赤木17点、流川14点、木暮7点、安田と潮崎ともに2点。
そして肝心の花道は、前半は出番なしだった。
それから後半が始まり、湘北の勢いは止まらなかった。
流川が3Pを打ち、陵南との点差は5点にまで縮められる。
「チャージドタイムアウト陵南!!」
そして、ついに田岡の顔から笑みが消え、陵南はタイムアウトをとった。
タイムアウトをとり、選手がベンチに戻ってくると、田岡はいきなり選手達を怒鳴りつける。最初30点の差をつけてみろと言ったのに、5点まで点差をつめられたからだ。
田岡は選手達に怒鳴り、全員マジメに聞いているが、その中で仙道だけは、汗をふきながら彦一にポカリをとるように頼み、彦一からポカリを受け取ると、のんきに、マイペースに水分補給をしていた。
自分達のところはベスト4で今年は優勝するチームだが、対して湘北は、緒戦敗退のチームだと全員に怒鳴った後、魚住に、今年も赤木に負けるのかと奮い立たせ、その後指示を出す。
「聞いとるのか、仙道!!」
「は」
けど、仙道はまったく聞いておらず、少し離れたところで、すわってレモンの輪切りをかじろうとしていた。
ちょうどレモンを食べるために口をあけていたところだったので、仙道は少々まのぬけた声を出す。
「イヤ、でも湘北はそんな弱くないっすよ。センター赤木の存在だけで、ベスト8くらいの力はあると思うけど…。だから恥じゃない」
「バカモンンンン!!エースがそんなことでどうするか!!」
「……………………」
あまりにのんきすぎる仙道に田岡は詰め寄り、大声で怒鳴ると、仙道はその声の大きさに、両耳の穴を指でおさえた。
「いいか!!ここからは、マンツーマンでいく!!魚住は赤木!!仙道は流川を徹底的にマークだ!!」
タイムアウト後の作戦を話していると、突然観客がざわついた。
「赤木と流川をおさえてしまえば、湘北に攻め手はない」
「!!」
その時、越野と池上も、ふいにベンチの横を見ると、あるものをとらえる。
「そして、ガード陣を早めにつぶして…ん?」
「…………」
「ああっ!?」
そして越野は、声をあげながら、ベンチの横を指さした。
「ス…スパイだ!!」
「………!!」
「敵のスパイだ!!」
そこにいたのは花道だった。
花道は泥棒のようにほっかむりをして、メガホンを耳にあてて、陵南側のベンチの横にすわって、陵南の今後の作戦を盗み聞いていたのだった。
「貴様!!」
「ばれたか」
「またお前か!!」
「さ…桜木さん…」
ばれたというのに、花道は大してあわてておらず、開き直っていた。
湘北側では、また花道がとんでもないことをしていたので、流川以外冷や汗をかいていた。
「おい!!ふざけるなよお前!!」
「ぬ?」
「どういうつもりだ!!」
「越野!!」
自分達の側にスパイにきたことで、越野はキレて、花道の胸ぐらをつかんだ。
「いくら練習試合でも、こっちにとっちゃ、今年最初の、大事な試合なんだ。さっきからウロチョロしやがって…。やる気がないなら帰りやがれ!!」
「やる気がねーだと?」
のんきにしていた花道だったが、越野の最後の一言に反応し、腹をたてた。
「小僧…。この…やる気がありあまってうずうずしてるが、秘密兵器だからガマンしているオレに…やる気がねーだと?」
「ああ…あかん…!!桜木さん、越野さん、やめなはれ!!」
今にも爆発しそうな花道を見て、彦一は止めようと、花道と越野の間に入った。
「どけサル!!」
「!!」
しかし、彦一は花道に、後ろにぶんなげられてしまった。
「上等だ。やる気がねーかどーか見せてやらあ…」
「なんだと」
「おいっ、やめろこら!!」
自分よりも背が低い越野を見下ろし、ケンカごしに詰め寄ると、田岡が止めようとした。
「うるせージジイ」
「なに…」
だが、花道は越野だけでなく、田岡にもケンカごしで噛みついた。
「湘北はゴリとルカワだけじゃねーんだ。ざけんなよ、クソジジイ」
「てめえ…なんて口のきき方だ!!」
「先生に向って少しは礼儀をわきまえろ!!」
「ぬ……」
「それでもスポーツマンか!!変な頭しやがって!!」
田岡に食ってかかったことで、池上や越野や他の部員は、怒って花道に注意をした。
「わっはっはっはっ」
「!!」
その時、この重苦しい空気を壊すような、明るい笑い声が聞こえてきた。
「はっはっはっ。うんうん」
それは仙道で、仙道は、花道達とはまったく反対の、ほがらかな顔で笑っていた。
「仙道さん…」
「………」
陵南の選手が呆然とする中、花道は怒った顔のまま、越野を押しのけて、仙道のもとへ歩いていく。
「なに笑ってやがる、センドー。てめーはオレが倒すつったのを忘れたか、あ?」
そして、花道はイライラした様子で仙道に噛みつく。
「ああ、おぼえてるぜ」
だが、対照的に仙道は、おちついた表情で返した。
するとそこへ、花道の後ろに、ある人物がやってきた。
「バカタレが!!」
「!!」
それは赤木で、赤木は花道があまりにバカなことをしているので、怒り心頭で、花道の頭を殴り倒した。
「さあ今だ!!みんなでとりおさえろ!!」
「「「「「はい!!」」」」」
「ああっ!!コラァ、てめーら!!」
更に、流川以外の部員がやってきて、全員で花道をとりおさえた。
さすがの花道も、たくさんの男におさえられてはどうにもできず、湘北側のベンチにひきずられていった。
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