#10 試合開始
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それから湘北バスケ部は、練習をすると、部室に移動した。
「よーーし。それじゃあスタメンを発表して、ユニフォームをくばる」
「おお…!!スタメン…。ユニフォーム…………!!オレの番号は何番だ…!?ついに、桜木花道待望のデビューかあ!?」
他の者はおとなしく聞いているが、その中で花道だけが、ドキドキわくわくしながら、一人興奮していた。
#10 試合開始
「それじゃ、スターティングファイブを先生から」
「うむ」
安西はせきばらいを一つすると、魅真にボードを渡された。
「センター。赤木君、#4」
「はい!!」
それは、各選手の名前やポジションなどが書かれているもので、赤木は名前を呼ばれると前に出た。
「4番」
「がんばってくださいね、赤木先輩」
「おう」
彩子にユニフォームを渡されると、赤木はそのユニフォームをジッとみつめる。
「(ゴリは4番か…。じゃあ、オレは3番かな。センターって何だ…?)」
そんな赤木を見て、ポジションすらわからない花道は、自分の名前が呼ばれるのを、今か今かと待っていた。
「ガード。ポイントガード安田君、#6」
「!!」
「セカンドガード潮崎君、#8」
次に呼ばれたのは安田と潮崎で、名前を呼ばれたことに、二人ともびっくりしていた。
「ガンバッてね。やっちゃん、シオちゃん!!」
「がんばってください」
「スタメン…オレが…」
「ほお~~」
「6番…」
「ほーーーーう」
「6番…」
スタメンでユニフォームをもらえたことに、安田は感動のあまり涙を流す。
「しっかりしろよ。ゲーム中は、ガードのおめーらがリーダーにならなきゃいけないんだぞ。安田、潮崎」
「ガンバレよ」
「「はい!!」」
赤木と木暮にエールを送られると、安田と潮崎は、明るい顔で、元気よく返事をした。
「いがいとやるじゃねーか、キミタチも。オレの足をひっぱらんよーにね」
「「桜木君…」」
1年で初心者なのに、もとからの性格で、妙に偉そうな態度をとる花道だが、安田と潮崎は大して気にしていなかった。
「……………」
ただ安田は、スタメンでユニフォームをもらったというのに、何故かユニフォームを見て、沈んだ顔をしていた。
「(さあ、次あたりオレだろう。へっへっ。ドキドキしてきた)」
赤木、安田、潮崎と三人呼ばれたので、もう呼ばれるだろうと、花道は更にドキドキわくわくしていた。
「次、フォワード」
「(フォワードか…)」
「スモールフォワード」
「(桜木…桜木…)」
「木暮君、#5」
「はい!!」
「ぬ……」
今度こそ自分の名前が呼ばれるようにと祈っていたが、その願いもむなしく、呼ばれたのは木暮だった。
「(ま…まあ、メガネ君も、あれで副主将(キャプテン)だからな。次はオレだろう)」
そう思いつつも、花道は冷や汗をかきながら、彩子からユニフォームを受け取っている木暮を見ていた。
「最後に、パワーフォワード」
「なに、最後!?」
たったの4人しか呼ばれていないのに、もう最後だというので、思わず大声を出した。
「どーした」
「イヤ… (もう最後か…。まさか、オレがスタメンじゃないなんてことは…。イヤイヤ、最後の一人はオレだろう。オレを最後に呼ぶとは気にくわねーが…まーいーや。許してやるよ」
「パワーフォワード」
「(桜木…桜木…さ…さ…さ…さ…さ…さ…)」
花道は自分の名前が呼ばれるのを、ドキドキしながら待っていた。
「る」
しかし……
「川君」
呼ばれたのは流川だった。
名前を呼ばれなかったので、花道はショックを受ける。
「#10」
「はい」
「……………」
花道はショックを受けるが、他の1年生達はざわついていた。
「さすが流川…」
「1年でいきなりスタメンか…!!やっぱりちがうな、オレたちとは…」
他の1年生達は、流川がスタメンだということに納得していたが、当然花道は、自分がスタメンでない上に、よりによって呼ばれたのが、大嫌いな流川だったので、プルプルと震えていた。
「燃えろよ、流川!!」
「うぃす」
「ファイト!!」
「おう」
流川は名前を呼ばれ、前に出ると、彩子からユニフォームを受け取り、魅真からのエールに答えた。
「ちょ…ちょ…ちょ…ちょっと待てい、オヤジ!!」
流川がユニフォームを受け取ると、花道は安西にとびかかる。
「!!」
「あのバカ…」
当然ながら、赤木達はぎょっとした。
「なんでオレがスタメンじゃねーんだ!!どーゆーことだ、こりゃあ!!」
「やめんか!!」
安西の背後にまわった花道は、いつものように安西のあごの脂肪をゆらし、そこを赤木が止める。
その後、いつものように、花道と赤木の言い争いに発展してしまう。
「まーた始まった」
「もういいから。ユニフォームくばっちゃいましょう」
その様子を見て、魅真と彩子はあきれてたが、魅真はあきれつつも冷静だった。
「アンタ…ヤケに冷静ね」
「花道が自分の思い通りにならないと暴れるのは、いつものことですから」
「なるほど」
花道の友人ということで、説得力があり、納得をした彩子は、魅真と手分けして、残りのユニフォームをくばった。
二人がユニフォームをくばってる最中も、花道と赤木は言い争いをしていたが、突然赤木はあきれ、花道に背を向けた。
「おい彩子、真田、ユニフォームはくばり終わったか」
「はい。15番まで全部」
「くばり終わりました」
「そうか」
「ちょ…ちょっと、オレまだもらってないんすけど…」
赤木が無視して、魅真と彩子のもとに行ってしまい、しかももうユニフォームをくばり終えたというので、花道は焦った。
「…………」
「オレオレ」
花道は、自分自身を指さして、ユニフォームをくれるように、赤木に頼む。
「これでよし!と」
だが、もうユニフォームはないので、赤木は花道の練習着に、紙テープで16の番号を書いた。
「さァ、いくぞ!!」
「…………」
ユニフォームがないどころか、ただのテープで練習着に番号を書いただけなので、花道は怒りで震えた。
「ふんぬーーっ!!!てめえゴリ、なんだこりゃあ!!」
怒りが爆発した花道は、テープで書かれた番号を、練習着ごと破った。
「オレはスタメンだ!!背番号は3!!」
「3などないわ、たわけ!!4からだ!!」
ついに、言い争いどころかケンカにまで発展してしまい、赤木は花道の足とズボンをつかみ、花道は赤木の頭に何度もチョップをかました。
「ああ~~~。試合前だっていうのになんてこった!!」
「メチャクチャだ」
「結局こうなるのね」
「流川!あの二人を止めなさい。あんたなら止められる!!」
「なんでオレが」
木暮は頭をかかえて、安田はおろおろしていたが、魅真は冷静なままだった。
彼らの後ろでは、彩子が流川に、花道と赤木を止めるように言うが、流川にそんな気はなく、めんどくさそうにしていた。
「ホッホッホッ、桜木君」
「ぬ!?」
「キミは秘密兵器だから、スタメンじゃないんです」
「!!」
けど、そこを安西が止め、花道は安西が言った言葉に反応し、周りの者達は、安西の意外な言葉に呆然とし、言葉を失った。
「ひ…ひ…ひみつ兵器」
「秘密兵器は温存しとかないと」
「温存!!」
「(うまいな、この人)」
狙ったのかそうでないのかはわからないが、花道が喜ぶことを言ったので、魅真は感心していた。
「へっへっへっへっへっ」
秘密兵器と言われ、有頂天になった花道は、先程とはうって変わり、調子よく笑う。
「なるほど!!オヤジの考えはわかったぜ!!」
「手を放せ。この無礼者が!!」
すっかり機嫌がよくなった花道は、安西の肩になれなれしく手をまわして、体をたたいた。
赤木が怒るが、安西は気にする様子もなく、花道と一緒に笑っていた。
「じゃあユニフォームくれ。秘密兵器だからいい番号を」
「もうないってば」
花道は魅真のもとへ行き、ユニフォームをくれるよう言うが、魅真はあっさりと返した。
「ルカワ、おめーはテープで十分だ。おれによこせ、ユニフォーム」
「放せ」
もうないと魅真に言われたので、花道は流川のユニフォームを奪おうと、テープを見せながら流川のユニフォームをつかむが、当然流川はそれを阻止するために、ユニフォームを強くにぎった。
「おらァ、よこせルカワ!!」
「イヤダ」
「てめー、ちょっとスタメンだと思っていばってやがるな!!」
「わかった。もうやめろ、桜木!!」
やはりケンカになったので、木暮はあわてて二人を止めた。
「桜木は10番、流川は11番。で、あとは1番ずつずれてくれ」
木暮が妥協案を出すが、花道と流川は、まだ横目でお互いを睨みあっていた。
「練習試合だから、これでいいだろう。赤木」
「どこまで甘いんだ、おまえは」
争いが嫌な木暮は、花道にもユニフォームを与えるが、木暮とは反対できびしい赤木は、このことに苛立っていた。
こうして、花道もユニフォームをもらえることとなり、15番をもらっていた佐々岡は、テープとなってしまったのだった。
そして……。
「いくぞ!!!」
ユニフォームに着替えた湘北バスケ部は、気合が入った顔で、体育館に戻ってきた。
「フッフッフッ」
その中で花道は、何故か自信に満ちた顔で歩いている。
「おお!花道、ちゃんとユニフォームもらってんじゃねーか!!」
「しかも10番!!」
「ルカワよりも前の番号とは、一体どーゆーことだ!!」
試合を見に来た、2階にいる洋平達は、花道がユニフォームをもらっている上に、流川よりも若い番号なので、とても驚いていた。
「ハッハッハッ。実力だ、実力」
洋平達が驚いていたので、花道はいつもの調子で、笑いながらブイサインをした。
「…………」
「まあ、格のちがいって言うのかな。ハハ」
素人の花道よりも格下扱いされたので、流川は何か言いたそうに花道を睨みつけていた。
「番号はひとつしかちがわねーけど、10番と11番の間は、実質20くらいの開きがあるな。実力的に!」
「…………」
「(んなわけないでしょーが!)」
いろいろとツッコミどころ満載なことを言う花道に、流川は何か言うのも面倒なのか、何も言わずに先に歩いていき、魅真も歩きながら、立場上は表に出さないが、心の中でつっこんでいた。
「なにをホザいとるか」
「ホッホッ」
実力そのものがないのに、大きなことを言っていたので、赤木は怒りながらもあきれており、後ろにいた安西はニコニコと笑っているだけだった。
「(なんせオレはよ~~。フッフッフッ。秘密兵器だからよ!!)」
安西に言われた、秘密兵器という言葉にすっかり舞い上がった花道は、誰よりも先に歩いていった。
そして、自分とこの湘北チームの席ではなく、相手側の陵南チームの席に行き、仙道が誰かを聞いていたが、陵南の選手には変だと言われ、まったく相手にされておらず、キレた花道はケンカを売っていた。
「何やってんのよ、あの子は」
「いつものことですよ」
この花道の行動に、彩子はまたあきれるが、魅真は変わらず冷静だった。
「仙道はまだかァ、おい!!」
もう試合が始まるというのに、肝心の仙道が来ていないので、田岡はイライラした様子で辺りを見回す。
「おうヒコイチ。センドーはどこだ、センドーは?」
「そ…それが、まだ来てへんのですよ。時間に大らかな人やから…」
「ルーズって言うんだ」
陵南側では、花道が彦一に、仙道がどこにいるのか聞いており、まだ来ていない仙道に、魚住はあきれていた。
「チワーーース!!!」
「!!」
「ぬ?」
その時、体育館の扉が開き、一人の男が入ってきた。
「チワーース!!」
彼が入ってくると、彦一は彼に向かって元気よくあいさつをした。
「来はりました。仙道さんですよ!!」
「なに、センドー!?」
それは、花道が待っていた仙道だった。
「フッフッ。遅れてくるとはナマイキな…。オレに負けるとも知らねーで」
「来たか…」
「仙道…」
「……………」
仙道がやって来ると、そこにいる誰もが注目する。
「わりィ」
体育館の扉の前に立っていた仙道は、長身で、整髪剤で髪をたてている、顔が整った男で、荒い息をくり返しながら謝罪をした。
「コラァーーッ。この馬鹿者!!!」
遅れてきたので、当然田岡は仙道に怒鳴った。
「今までいったい、何をしとったんじゃあ、仙道!!!」
「すいません、先生」
田岡が仙道の前まで歩いてきて詰め寄ると、仙道は反省はしているようで、頭に手をあてて謝った。
「寝坊です」
「ぐ…」
しかし、遅刻の理由は正当なものではなく、田岡は言葉につまった。
「仙道さん!!」
「おっ、サンキュー彦一」
「堂々と言いおって。怒る気がなくなるわ」
体育館に上がった仙道は、彦一からユニフォームを渡されるとそれを受け取り、仙道の後ろでは、田岡があきれながらも、怒気をそがれたようだった。
「仙道さん」
「仙道さん」
「おお、なんだ。みんなで出迎えか」
仙道は彦一以外の部員からも慕われているようで、仙道が来たというだけで、部員のほとんどが仙道のもとへやって来ていた。
「仙道、アップの時間はねーぞ。すぐに出てもらうからな」
仙道がユニフォームに着替えると、魚住が仙道に、すぐに出番があることを告げる。
「大丈夫ですよ、魚住さん。走ってきたから」
けど、仙道はどうってことはないように、平然とした顔で返す。
ここから仙道の家まで、どのくらいの距離があるのかはわからないが、走ってきて、先程まで荒い息をしていたというのに、そんなに時間が経っていないのにもう息を整えており、まったく苦にしておらず、アップができなくても、問題視していなかった。
「「「「「「…………」」」」」」
それだけでも、仙道という人物が、いかにすごい選手なのかということがわかり、湘北は、花道、赤木、流川、木暮以外の選手達は呆然としていた。
「さあ、いこーか」
ユニフォームを着て、バッシュをはいた仙道は準備が整い、コートの中央の、センターサークルへと歩いていく。
「おい、何ボーッとしてる」
「い、いえ」
「いくぞ!!」
「「「おう!!」」」
仙道をはじめとする陵南がセンターサークルに行くと、湘北もセンターサークルまで歩いて行った。
「ん?」
「「!!」」
だが、センターサークルまで歩いていくと、そこにはすでに花道が立っていたので、赤木と木暮はぎょっとした。
「秘密兵器の桜木だ!!センドー、おめーはオレが倒す!!」
スタメンでもないのにセンターサークルにいたのは、仙道に宣戦布告をするためだった。
宣戦布告をされた仙道は、花道をまっすぐに見る。
「あのバカ…!」
「桜木さん…」
「……………」
「あの子は…」
またしても、礼儀がなってない態度をとったので、赤木と木暮は焦るが、仙道はそんなことは気にしておらず、ニコッと笑った。
「よろしく」
「おう」
そして、花道にあいさつをすると、花道と仙道はあくしゅを交わした。
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