#6 1年生対2・3年生 前編
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そして次の日。
花道は前以上にはりきっており、かけ声を出しながら、彩子を相手に、パスの基礎練習にはげんでいた。
「うわっ」
しかし、花道の強い力で投げられたボールは、普通の女子高生の彩子には、キツいものがあった。
「いった~~~~。ちょっとは手加減しなさいよ!!かよわい少女が相手なんだから!!」
「ぬ…!?」
「もういい。次、バウンドパス!!」
それでも、基礎練習の面倒を見るのは自分なので、次のメニューにいこうとした。
「あの、彩子先輩。私変わります」
「え?」
「私もバスケ部でしたし、赤木先輩に面倒みるように言われましたから」
「そう?じゃあお願い」
強いパスを何度もうけて、手がしびれてきていたので、彩子は魅真の申し出を受け入れた。
「よしっ。さあ、始めるわよ。花道!!」
「おうよ!!」
彩子からボールを受け取った魅真は、花道に声をかけると、バウンドパスの練習を始めた。
「桜木のやつ、なんだかんだいっても、バスケ部員らしくなってきたじゃないか」
「そうか?」
「教えたことをどんどん吸収していくし…。あんなに上達の早いやつは初めて見たぜ」
「もとがカラッポだから、教えりゃどんどん入るんだろ。ツーメン!!」
魅真達の近くでは、木暮と赤木が話しており、木暮が花道のことをほめていたが、赤木は性格上素直に認めず、練習にはげんでいた。
「にしても…あの赤木との勝負といい、相当な運動神経をもってることはまちがいない。もともとパワーはあるし…。今年は流川も入って、オレのフォワードのポジションは、いずれあいつら二人にとられるかもな。だが、そうなりゃ湘北(ウチ)は強くなるぞ、赤木。
こりゃあ…楽しみだな…!!」
今まで弱小で、赤木だけでもっていたようなチームに、逸材が入ったので、木暮はうれしそうにしていた。
#6 1年生対2・3年生 前編
一方、体育館に続く廊下では……。
「ん?」
「いい?いくわよいくわよ。せーの」
白髪頭の太った男が、体育館の前に歩いてきており、目の前に三人の女子生徒がいるのに気がついた。
「流川クーーーン❤!!」
「ガンバッテ❤!!」
彼女達は流川のファンで、緊張した様子で、流川に声援を送った。
その声に流川は反応し、彼女達の方へ顔を向ける。
「キャーーーーッ。こっちむいたこっちむいた!!!!」
ただ顔を向けただけなのに、彼女達は興奮してさわぎたて、手足をバタバタと動かした。
「ちょっとゴメンなさいよ、お嬢さん」
彼女達の隣では、後ろにいた男が、ショートカットの女子生徒と扉の隙間から、体育館の中に入ろうとしていた。
「「「キャ~~~❤」」」
「!!」
しかし、彼女達は興奮しているために男の存在に気づかず、男の隣にいたショートカットの女子生徒が、お尻で男をつきとばすが、それにすら気づいていなかった。
「ウオ…」
男は受け身をとれず、後ろに倒れてしまう。
だが、それでも気づいてもらえなかった。
「ヒューヒュー。もてるじゃん流川。無愛想なくせに」
「んだよ」
「………」
女の子にきゃーきゃーさわがれているので、彩子は流川の胸をひじでつついてからかう。
流川は、相手が中学時代からの先輩なので、あまり強く出れなかった。
そして、二人の前にいる花道は、大嫌いな流川が女にモテているので、かなり苛立っていた。
「おっ」
苛立った花道は、彼女達がいる方へと歩いていく。
「きゃ?」
「…………」
そして彼女達の前に立つと、彼女達はいきなり目の前に現れた花道に、何事かと思い、さわぐのをやめた。
「あの…。練習中なんで、気が散るんでですね…。あんまりルカワルカワと…」
文句を言いに行ったのだが、相手が女性なので洋平達のようにはできず、顔を赤くしながらたどたどしくしゃべり、いつもの迫力はまったくなかった。
「プッ…。あの子も、女にはヨワいわねー。とことん」
「見かけによらずフェミニストなんですよ、アイツは」
そんな花道を見て、彩子は口をおさえてニヤニヤと笑っていた。
「うわ…赤い髪」
「コワい…」
「変ー」
「でっかーい」
「あたし、この人知ってる」
「1年の番長よ、番長!!」
「あたしの友達は、レッドヤンキー桜木っていってた」
「レッドモンキー?赤い猿?」
「ヤンキーよ」
しかし、彼女達から返ってきたのは、自分が言ったことに対する答えではなく、自分に対する悪口だった。
「(ぬう…)」
悪口を言われたことで、花道は更に苛立った。
「でも、この人もバスケ部なのー?」
「ヘンーー」
「全然似合わなーい!!」
けど、彼女達はおかまいなしに、更に悪口を言った。
「ふぬーーーっ!!!!」
言いたい放題言われた上に、何気に流川と比較されたので、花道は頭にきて、扉を閉めて、彼女達が流川を見えないようにした。
「あーーーーっ」
「やだーっ。あけてよーっ。流川くんがみえないじゃないのよーっ!!」
「赤い猿!!」
当然、彼女達からは、ブーイングの嵐が起こった。
「ちょ…ちょっとお嬢さん方、通して、そこ」
先程の男は、もう一度声をかけるが、彼女達は相変わらず気づいていなかった。
けど、その後なんとか気づいてもらい、扉を開ける。
「ぬっ!?」
「あっ」
「あっ」
「(あれ?あの人……)」
「お~~う。やっとるかあ」
男は中に入ると、親しげに、部員達に声をかけた。
魅真は彼の姿に見覚えがあり、頭を悩ませる。
「コラコラ、なんだおっさん。勝手に入るんじゃねーー」
「おっ、なんだキミは?なんだ、その頭は」
「ぬっ!!おっさんにまで、とやかくいわれるスジアイはねーぞ、人の頭を!!」
勝手に扉を開けて入ってきた上に、外見のことを言われたので、頭にきた花道は、相手が男ということで強気に出た。
「なんだ。このハラは」
「あっ!?」
外見のことを指摘された花道は、お返しというように、男の外見を指摘して、腹をさわった。
「おーのびる。ホラホラ」
「………!!」
腹をさわると、今度はあごの脂肪をつまんでひっぱった。
「「「!!」」」
この花道の行動に、彩子、木暮、安田は顔が青ざめる。
「フン。オレのことを知らないなら、教えてやる。かっかっか。オレの名は、バスケットマン桜木――――」
花道は、かなり偉そうな態度で名乗ろうとするが、名前を最後まで言う前に、赤木に頭を殴られた。
「どーも失礼しました、安西監督。この男の処分は、煮るなり焼くなり…」
「ああ、まあまあ赤木君。いいじゃないか。知らずにやったことだ」
どこからどう見ても、失礼な行動と態度だったというのに、それでも安西は気にしていなかった。
「カントク………!?」
「バカねー」
男が監督だったと知ると、さすがの花道もギョッとした。
「(そういえば…。どこかで見たことあると思ったら、あの時の……。正面から顔が見えていなかったから、はっきり覚えてなかった)」
3年前に全中の決勝戦を見に行った魅真は、その時に安西の姿も目にしていたが、魅真がすわっていた位置からは、安西の顔がはっきりと見えなかったのと、基本的に三井ばかり目で追っていたので、気づくのに時間がかかった。
「安西先生っていってね。たまにしかこないけど、ああみえても若いころは、全日本選手だったらしいわよ」
「あのデブが……!?」
「へ~~。すごい人なんですね」
「今の先生からは想像もつかないけど、つい5年前までは某大学の鬼コーチとして知られてて、そのころついた異名が、"白髪鬼"…ホワイトヘアードデビルっていうんだって」
「どっかできいたよーな…」
「だけど、今はあのとーり、すっかりおだやかになって…白髪仏(ホワイトヘアードブッダ)ってよばれてるわ」
彩子は魅真と花道に、安西のことを説明していた。
今の雰囲気からは想像もできないが、現役時代はすごい選手だったようなので、魅真は目を輝かせていた。
「あーそうそう。練習試合をきめてきたから。陵南高校」
「りょ、陵南!!」
「去年、県でベスト4の強豪と…!?」
そんなにすごい学校と練習試合をするというので、花道、流川、赤木以外の者達は、高校の名前を聞いただけでびびっていた。
「んーーー。新入生がわりと入ってるな。よーーし。それじゃあ、1年生対上級生で、試合をしなさい」
「「「「「!」」」」」
「なに!?試合!?」
試合と言われ、花道ははりきりまくっていた。
「オマエはまだダメだぞ」
「!!」
けど、つい最近バスケを始めたばかりの、基礎練習しかしていない素人である花道が出れるはずもなく、止められるとガッカリしていた。
「なんで急に試合を…!?」
「1年の力をみるためだろう。どれくらいやれるか。なんせ2・3年が少ないから、1年もすぐ試合に使うことになるだろうからな」
いきなり試合をやると言い出したので、安田が疑問に思ってると、安西の意図を理解した木暮が、安田に説明をした。
「こりゃあおもしろくなってきた。1年対2・3年かあ!!」
「本当、すごく楽しみです。わくわくしちゃいますね」
チーム内での試合だが、これから試合が見れるというので、魅真も彩子もワクワクしていた。
「フン。ちーともおもしろくねえ」
しかし、ワクワクしている女子二人の隣では、一人だけ試合に出れない花道が、ブツブツと文句を言っていじけていた。
「あっ、晴子ちゃん!!」
「!!」
だが、彩子が体育館の出入口の前にいる晴子をみつけると、花道は過剰に反応を示した。
「晴子ちゃん晴子ちゃん。ちょうどいい所にきたわ」
晴子をみつけた彩子は、出入口の方へ歩いていき、魅真は試合が始まるのでコートの外に出るために、花道は単純に晴子がいるから、彩子に続いて体育館の出入口の方まで歩いていった。
「えっ、試合!?1年生対上級生で!?」
彩子から話を聞くと、晴子は目を輝かせた。
「桜木君もでるの!?」
「桜木花道はまだ基礎練習よ、晴子ちゃん」
「あ…そか…。桜木君は、まだバスケ始めたばっかりだもんね。しかたないよね。桜木君、あせらないでね。地道な努力は、いつか必ず報われるって、お兄ちゃんがいってたわ。あたしもそう思う」
「そうよ」
「ハルコさん… (やさしいなあ…)」
晴子にはげまされると、花道はそれだけで心がなごんだ。
「(ああ、ますます試合にでたい!!でたい!!でたい!!でたい!!でたい!!でたい!!)」
同時に、ますます試合に出たいという気持ちも高まった。
「だけど、1年対2・3年かあ…。てことはぁ…赤木先輩対流川ってことね」
「!!」
両チームの実力者は流川と赤木なので、自然とこの二人の対決ということになる。
「…………」
自分の兄と好きな人が対決するので、晴子は内心複雑だった。
「よォし。始めるぞ!!」
そうこうしているうちに両チームの準備ができたので、試合が始まることとなった。
「「「「「しゃーす!!」」」」」
両チームは、整列をすると、互いにあいさつをした。
その後で、センターをつとめる赤木と流川は中央に、それ以外の選手は二人の周りに移動をした。
「…………」
「(流川君………)」
今まさに始まろうとしている試合。まだボールを投げられてもいないのに、晴子はすでにドキドキしながら、流川を赤い顔でみつめている。
そして、そんな晴子を花道は横目で見ていた。
「手加減はなしだ」
コートの中央では、赤木が不敵な笑みを浮かべて、流川を挑発した。
「ぬ………。なーーーんか、イヤな予感がする……」
晴子を見ていた花道は、何やらよくないことが起こるのではと予感した。
「いきます!!」
審判が中央に来ると、全員構えた。
そして、審判の手から、上にボールが投げられると、いよいよ試合が始まった。
流川と赤木は、ジャンプボールをするが、互角だった。
二人とも、自分が勝つと思っていたのに、まさか互角になるとは思わず、驚いていた。
「流川は勝てると思ってたみたいだけどね…」
「でも、10cm近くも身長差があるのに、互角にもつれこむなんて、やっぱ流川はすごいですよ」
彩子は流川の甘さを指摘していたが、魅真は流川のことをほめたので、花道はムッとした。
そしてその流川は、ジャンプボールで負けてしまったので、悔しそうにしていた。
「フン。ルカワめ、ナマイキな。この天才バスケットマン桜木でさえ、ちょびっとてこずった相手だぞ、ゴリは。ちょびっとね。ほんのちょびっと。てめーなんかかなうもんか、バカめ」
「(んなわけねーだろ)」
全体的にツッコミどころしかないことを言う花道に、魅真は心の中でつっこんだ。
「ん…まてよ。オレはゴリに勝った。てことは…ゴリがルカワに勝てば…そのゴリに勝ったオレは当然… (ルカワより上!!!)」
そんなわけないのだが、あまりにも単純な考えをもっている花道は、赤木が流川に勝ち、それを見た晴子が、兄が流川に勝ち、その兄に勝った花道は流川よりも上と判断し、花道の腕に抱きつくという妄想をしていた。
「ということに…」
「(だから、そんなわけないって…)」
「どんな女だ」
あまりにバカバカしい妄想に、魅真はまた心の中でつっこみ、彩子は冷めた目をして、ハリセンで花道の頭をたたいた。
「おおっ!?」
「ん?」
「パスカットだ!!」
その時、コートの方から歓声があがったので、三人がふり向くと、赤木にパスされたボールを流川がカットしていた。
「流川君!!」
「ヤロウ!!」
流川が活躍したので、晴子はうれしそうに目を輝かせるが、花道は悔しそうにしていた。
コートでは、安田が流川からボールをとろうとしたが、プッシングになってしまい、1年ボールになってしまう。
「流川、ディフェンス上手くなったな…」
「マグレマグレ」
中学からの先輩である彩子は、流川の成長に感心していたが、花道はそれを否定する。
「………… (ああ、なんかフクザツだわ…。流川君に勝ってほしいけど、お兄ちゃんにも負けてほしくない。うーーーん…)」
一方晴子は、流川に勝ってほしいが、兄の赤木にも負けてほしくないので、複雑な思いを抱いていた。
「だけどまあ、流川たち1年が勝つなんてことはまずないわね」
「やっぱり!?」
「!!」
けど、次に彩子が言った言葉に、花道はうれしそうに笑い、晴子は過剰に反応して、彩子を見た。
「流川もスゴイけど、それはあくまで、中学のレベルでのことだからさ。高校入っていきなりじゃあ、まだかないっこないわよ」
「…………」
何気に流川をバカにされたので、晴子はむっとして、彩子を睨んだ。
「そんなのわかんないわよ、彩子さん。最近は中学のレベルも上がってるし」
「晴子ちゃん」
そして、体育館の中まで入ってきて、彩子に意見した。
「ホラ、それに、K・A・ジャバーって人の話だってあるし。1年生で上級生に勝ったっていう…」
「アラ。くわしいわね、晴子ちゃん」
「本でよんだのよ」
「まあ、だけど、流川はカリームじゃないからね」
「だけど、湘北もUCLAじゃないよね」
「…………」
流れで、生きた伝説とまで言われたカリームの話になり、何気に湘北が弱いと言われたので、今度は彩子がむっとした。
「UCLAじゃないけど、赤木先輩よ?赤木先輩がいるのよ?赤木先輩に、流川ごときが勝てるわけないわよ」
「ごとき!?」
けど、彩子は負けじと晴子に言い返し、彩子が更に流川をけなしてきたので、晴子はカチンときた。
「あら…。どうして流川君が、お兄ちゃんごときに勝てないのかな!?」
彩子の言うことにむっとした晴子は、相手は実の兄だというのに、流川をかばって赤木をけなす。
「…………」
「(なんか……不穏な空気が…)」
段々と、女同士の言い争いの、ドロドロした雰囲気になってきているので、魅真と花道は、後ろの安西がすわっているあたりまで後ずさっていた。
「お兄ちゃんなんて、ついこの前、桜木君ごときに負けたのよ!!」
普段そんなことは言わないが、勢いで花道をけなしたので、花道はショックをうける。
「そんなお兄ちゃんごときに、流川君が負けるかなあ」
そして、更に赤木のことをけなした。
この話はコートの方にも聞こえており、それを聞いた赤木は、妹にけなされたので涙ぐんでいた。
「どーして自分のお兄さんを、そんな風にいえるのかしら。赤木先輩、かわいそうだわ~~」
晴子が必死になって流川を擁護するが、彩子は余裕のある顔で笑いながら、晴子に返す。
「彩子さんこそ、流川君は、富中の後輩でしょう。高校に入ったばかりで、不安と緊張でいっぱいの1年生に、そんな冷たい言い方はないんじゃないかな」
彩子が余裕の顔で言い返すと、晴子も精一杯彩子に返すが、どこかひきつった笑顔で、あまり余裕はなさそうだった。
「不安と緊張!?アイツにそんなもんあると思う!?アイツは決勝戦の日でも寝ぼうして、遅刻するような奴なのよお!!図太いを通りこしてニブイのよ!!無神経なの!!おまけに無表情!!不安や緊張が、アイツのどこにあるっていうのよ!!キャハハハハ」
晴子に対して、彩子は更に笑い、言いたい放題言っており、何気に花道は、同意しながら笑っていた。
ボロクソにけなされているが、それでも事実なのと、相手は中学時代からの先輩で、なおかつ今はコートにいるので、流川は何も言い返すことができず、彩子を睨むように見ていた。
「ふんぬーーっ!!もう怒った!!」
「へっ!?」
「げっ!?」
好きな流川を言いたい放題言われたので、晴子はついにキレてしまった。
「いくら彩子さんでも許せないわ!!もーーーーー怒った!!」
「あっはっはっはっ。冗談よ、晴子ちゃん (桜木花道に似てきたわね)」
「(意外にも花道っぽい。怒り方が…)」
しかもその怒り方は、花道によく似ていた。
晴子は怒り、手を上下にふりながら、彩子と密着するくらいに距離をつめるが、彩子は笑いながら、晴子の肩をおさえて止めていた。
「ちょーーっとからかってみただけよお。反応がオモシロくて。スナオなのねー、ハルコちゃんて」
「え…」
彩子はクスクスと笑いながら、晴子の頭をなでる。
「んーーー。かわいい人」
「ア…彩子さん!!」
「「!!」」
それだけでなく、頬にキスまでしてきたので、魅真と花道はぎょっとして、晴子ははずかしそうにしていた。
「まあ、二人とも同じチームになるわけだし、いいじゃないの。きっと、湘北は強くなるわよー」
「ヒドイワ。イジワル」
なんだかんだとうまくまとめた彩子は明るく笑うが、晴子はいじけて、涙ぐみながらそっぽを向いてしまった。
「なーにをやってんだ、あいつらは」
「………」
思いっきりけなされ、最終的に、バスケとはなんの関係もないことを話しながらじゃれあっていたので、赤木は呆れており、流川はジト目で見ていた。
「おーーし、気合いれていくぞ!!」
「「「「おお!!」」」」
彩子と晴子の話が終わると、仕切り直してゲームが再開された。
1年ボールで再開され、ボールは流川に渡った。
すると、上級生全員の目の色が変わる。
「おっ、ルカワにボールがわたったら、2・3年の目の色がかわったぞ」
「そりゃそうでしょ」
「…………」
いくら、高校に入って間もないといっても、相手はあの流川なので、一瞬たりとも気をぬけない。
なので、上級生は全員気合が入っていた。
けど、気合が入ってるのは流川も同じだった。
他の1年生達がまごまごとしている中、安田は流川からボールを奪おうとするが、流川は安田をよけるように、前ではなく後ろからパスを出した。
それはまるで、背中に目がついているようで、そのパス一つに、花道は目を見張る。
他の1年生に渡ったボールは、再び流川に渡されるが、流川は石井にパスをした。
自分にボールが渡ったことにびびった石井は、あわてて流川に返した。
そこを木暮が止めようとした。
流川はシュートを打とうとしたが、それはフェイクで、木暮をぬいた流川は、シュートを打った。
しかし、そのシュートは、赤木によってブロックされた。
「!!」
「"ハエたたき"!!」
「うわっ。すごいブロック」
赤木がブロックしたことで上級生のボールとなり、速攻をかけた。
そして、リングの近くまで来た赤木は、木暮からボールを受け取ると、すさまじいダンクを決める。
「でたあああっ。ゴリラダーンク!!」
赤木がダンクを決めると、安田が興奮して叫んだ。
が、安田は赤木に頭を殴られた。
「!! (しまった~っ!!)」
つい口をすべらせてしまったので、まずいと思ったが、もうすでに遅かった。
実は、今の赤木のダンクを、部員はゴリラダンクと呼んでいるのだが、それを赤木本人の前で言うことは禁じられていたのだった。
赤木はダンクを決めた後、流川の前まで来て、挑発するように流川を見た。
「スッゴイ!!さすが赤木先輩!!」
「ん~~。ハイレベルハイレベル」
「へぇ~~。赤木先輩もなかなか」
今のダンクに彩子は興奮しており、安西はその顔に笑みを浮かべ、魅真は称賛していたが、流川以外の1年生は、あまりのすごさに声も出ず、呆然としていた。
「…………ゴリ……」
花道は、ずっとバカにしていた赤木がすさまじいダンクを決めたので、思わず見入ってしまっていた。
「イヤ~~。けっこうやりますな、彼も」
けど、彩子に見られていることに気づいた花道は、笑って誤魔化し、そんな花道を見た彩子もまた笑っていた。
「ああ…。お兄ちゃんは、1年生相手にあんなにまたムキになって…。流川君がかわいそう…」
「あら、晴子ちゃん。流川のこと、案外わかってないのね」
「えっ!?」
「あいつは、一見ボーッとしてるように見えても、中身はすっごい負けずぎらいなのよ。目の前で、赤木先輩のあんなすごいプレイを見せつけられたら…胸中おだやかじゃないわよ」
彩子の言う通り、流川は今まで以上に真剣な目をして、闘志を燃やしていた。
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